カミキヒカルアナザールート   作:だめねこ

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第65話

 撮影までまだ多少時間があるし、黒川にちゃんと言うべき事は言わないといけないな。

 

「黒川さんに聞きたい事がありますけど……良いですか?」

「何でしょう?」

 

 これから言う事は俺自身にも完璧にブーメランが刺さっているから非常に言いづらいけど……誰かが言わなきゃいけない事だ。

 

「友達っていますか?」

 

 俺が尋ねた瞬間黒川はまるで自身が石になったように固まってしまい、その拍子に膝上に置いてたお弁当箱を地面に落としてしまった。

 幸いな事に食べ終わっているので、中身がぶちまけられるなんて事は無かったが……黒川の反応を見るに友達は居ないようだ。

 

「ぐはぁ!!」

 

 何故かかなにもダメージが入ってしまったようだけど……どうやらかなも友達は居ないようだが……

 

「そ……そういうカミキさんはどうなんですか? 居ないですよね?」

「私も信じないわ! カミキに友達が居るなんて聞いた事ないもん」

 

 二人のお子様は途端に敵意を剥き出し……いや、これは友達が居ないグループを形成したいのか?

 まー流石にセフレを友達と言うにはちょっと無理があるのは分かってるし意地を張る場面じゃない

 

「顔は広いですけど同年代の友達は居ませんね」

「「カミキ(さん)もこっち側の人間ですもんね」」

 

 正直な事を言えば腹が立つ奴が多くて、友達になりたいと思える人間は居なかったのが理由だし、作ってる時間も無かった。

 

「私はそもそも友達になりたい人が居なかったので、作らなかっただけの話です。黒川さんやかなはどうですか? 今現在この人と友達になりたいと思える人は居ますか? そうゆう訳で無いなら無理に作る必要は無いと思います」 

「……でも、友達は作った方が良いってお母さん言ってたよ」

 

 そう言えば黒川は裕福な家庭に生まれて両親共に仲が良いだよな。

 1年に1回位海外旅行に連れて行って貰えるって話だから、家庭環境はかなり良いのだろう。

 

「それは自分を飾る事無く気楽に話せる対等の相手ならばって事です。気が合わない相手と話しても結局は負担になるだけなので無理に作れば蟠りが出来てしまい、悪循環に陥るのです。で、ここから本題になりますけど……役者が役を貰うにはどうすれば良いと思いますか? 勿論かなは分かりますよね」

「……カミキのおかげでその辺はここ数年でちゃんと勉強になったわよ」

 

 子役の全盛期と比べると今のかなは仕事が減っているがそれでも無くならないのはそういった地道な努力を続けて来た結果なのだ。

 

「……誰よりも凄い演技をするって事ですか?」

「……端役がメインを超える演技なんてしてしまったら、カットされて終わりですし、下手すればお仕事が来なくなっちゃいますよ」

「ええ~!?」

 

 黒川は物凄く驚いてしまったけど……それはそうでしょ!

 何のためにわざわざ主役・脇役・端役・エキストラって役を振り分けているのか分からなくなるじゃん!

 

「じゃあ答えは何なんですか!」

「それは……かな答えてあげてください」

「……ん、答えはコミュニケーション能力よ」

「え!? 演技力じゃなくてコミュニケーション能力なの?」

 

 再度驚いてる黒川だけど……役者が役を演じるのはやって当然出来て当たり前の事だ。

 だから、俺は演技力が凄いなんてのは役者にとって誉め言葉では無いと考えて居る。

 何故ならそれは他に褒めるところが無いから使う言葉だと思っている。

 本当に評価されているのであれば、例え抽象的な内容になってもその人の事を誉めようとするのだ。

 

「そうです。役者の演技力が低いなんてのは言語道断ですが、才能だけで食っていける程役者の……いえ、仕事って言うのは甘いものではありません。仕事を熟しているのが人である以上まず与えられた仕事を完璧に熟すのがコミュニケーションの第一歩です。そいった事を地道に繰り返して初めて、信頼されて脇役や主役をお願いされる訳です。なので一息に上を目指すのは構いませんけれど……それによって他の誰かに迷惑を掛けてしまう事も十分に理解してくださいね」

 

 才能が有るからと言って礼儀を軽んじてしまえば、手痛いしっぺ返しはいずれ来る。

 しかし、この芸能界は”金の切れ目が縁の切れ目”なのも事実なので、ちゃんと見極めないといけない……だが最後の最後にモノを言うのは義理と人情だと俺は思ってる。

 優しさは美徳ではあるものの、強かさも必要だし縦と横のつながりがだって重要だ。

 

「……なので端役は端役で良いんです。ではそろそろ撮影の時間になりますので準備しましょうか?」

 

「うん」

「分かったわよ」

 

 その後も俺とあかねとかなは端役としてピョンピョン飛び跳ねた。

 

 

 

「はーいOKでーす。端役の方々は上がって貰って大丈夫でーす」

 

 監督からもOKが出たので帰るとしよう。

 だけどその前に……

 

「じゃあ監督に挨拶してから帰りましょうか?」

「うん」

「ちなみに黒川さんはどうします? 送りましょうか?」

「えっと……じゃあカミキさんと一緒に帰ります!」

「連絡は大丈夫ですか?」

「あっ! 今しますから少し待っててください」

「分かりました。じゃあちょっと用事があるので済ませてきますね。かなはどうしますか?」

「勿論行くわよ」

「私は連絡して待ってます」

 

 とりあえず黒川には入口の所で待って貰って……俺は監督にコーヒーでも差し入れして帰るとしよう

 

「じゃあ、コレはかなから渡してあげてくださいね」

「えっ!? カミキが買ったのに私が渡しても良いの?」

「監督も男ですからね。どうせ渡されるなら可愛い女の子からのが良いですしね」

「……はあ~こういった接待もやらないといけないのね」

「やるとしたらこういった飲み物とかお菓子ぐらいで大丈夫です。それ以上は別の意味になってしまいますから、やり過ぎては逆にいけませんよ」

 

 俺は枕上等だから、女性の監督が居ればすぐさま口説いてホテルに連れ込む位全然やれるけど……このお業界は未だに男社会なので生憎女性監督は居ない訳では無いけれど少なすぎるし、そもそも俺には縁が無いのだ。

 

「監督じゃあ私達は上がりますけど頑張ってくださいね」

「えー!? カミキちゃん帰っちゃうの! ここからが良い所なのに?」

 

 まーここから先は不知火姉妹の独壇場だからファンならたまらない部分ではあるけど……別に俺はドルオタじゃないからね。

 

「居てもやる事無いですよね?」

 

 俺がそう言うと監督は大きな体を小さく丸めてしまい力なく答えた。

 

「……無いです」

「では帰ります。あっと……じゃあかなさっきの渡してあげてくださいね」

「あっ監督さんコレ良かったら飲んでくださいね」

「ありゃ……かなちゃんが差し入れしてくれるなんて……もしや俺に惚れたか?」

「惚れて無いです。……次回も仕事回してくださいね」

「……う~ん。分かった! ちなみにこれはカミキちゃんの仕込み?」

「勿論です。私よりも女の子から差し入れされたら監督も嬉しいですよね?」

「……はぁ~全くカミキちゃんは分かってるね。よし、じゃあまた映画作る時は声掛けるからかなちゃんとあと黒川さんにもよろしくって伝えてね」

 

 自身のデカいお腹をポンと叩くと監督はかなから貰ったコーヒーを一気に飲み干して撮影に戻って行った。

 

「それにしてもたったワンコイン程度で仕事が取れるなんて……営業を舐めてるわよね」

「こう言った事は積み重ねですよかな……ちなみにあの監督はかなり気難しいと有名なんですが知ってましたか?」

「全然知らなかったわよ! だってカミキに大して滅茶苦茶フレンドリーだったじゃない!」

「……信頼は1日にしてならずですよ」

 

 かなにそう言うと納得してくれたのかどうかは分かりづらい表情をされたけど……俺間違った事言って無いよね?

 

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