リビングにてかなの母親との今までのやり取りをドンペリを飲みながらニノとカナンに伝えると二人とも涙を堪えながら最後まで聞いていたが……
「かなちゃんが可哀そうだよ。……なんでかなちゃんばっかりこんな目に遭うの……」
「ねぇカミキ……拳一がこの事を知ったら、多分埋めちゃうんじゃないかな?」
ニノはかなの境遇に涙を流して悲しんでいたが、カナンの言葉に俺も一番マズイ事態に気が付いた。
拳一のバランス重視の考えの根底は”貧富の差”……もっと言えば恵まれない子供達に対して救いを与えられる環境を目指しているのだ。
だから子供達の為なら拳一は寄付もしているし、関暴連に入った理由がまさにそれだったはず。
まー関暴連に所属してる……いや、OUTの人間の家庭環境なんて皆似たり寄ったりだ。
ろくでもない環境で産まれて、ろくでもない環境で生きて、周囲からもろくでなしと蔑まれる事で自身がまともで無い事を自覚し、そして最後は立派なOUTの住人が完成するのだ。
全員が全員OUTの住人になる訳では決して無いが……やはり人を形成するのは周囲の環境が大切なのが良く分かる。
ならばこそ親がOUTなら子もOUTに育ってしまうのは仕方が無いのだ。
さて、そんなヤバいOUTの軍団をまとめ上げる拳一だが、拳一は俺と同じで自身の主義で生きてる以上……バランスの為なら約束を破る事は事は平気でするから質が悪いのだ。
今は上原パイセンが居るから、自分の主義を無理やり押し通す事はしないけれど、今回は多少なりとも関わっている訳だし……本当にかなの母親が知らないうちにこの世から消えてしまいかねないのだ。
「え!? あの人ってそんな人なんですか?」
あーそう言えば……ニノはカナンとあった喫茶店でしか会った事が無いから拳一の事を知らないもんな。
「拳一は自身が考えるバランスを重視しているから、それを無視したら最後……責任を取らされて行方不明になるんだよ」
「ひえぇ! 絶対に関わっちゃいけない人じゃないですか!」
ニノは涙目でそう言うけれど……どちらかと言えばニノも凸していたからアウトなんだよなぁ~
「そう言っても上原パイセンが居る以上は問題ないでしょう」
かなの件が片付いた後はかなのママがどういう末路を辿ろうと俺は知らないし興味もない。
ぶっちゃけ関暴連に唯の一般人が狙われた以上は助かる術は無いだろう。
「……話はかなの件に戻すけど、どうなの?」
「そ……そうだね。ヒカルさんは勝てるの?」
心配そうに二人は聞いて来たけど……
「これに関して言えば、手は打ちましたので問題無いと思いますが……」
唯一の懸念はかなも家庭裁判所に行って意志表明をして貰う必要があると言う事なんだよなぁ~。
出来ればかなには知られる事無く対処したいが……唯一の母親である以上はいずれどこかでぶつかる訳だし、儘ならないものだ。
時刻を見ると20時を回っている事からもうそろそろかなが帰ってくる時間だ。
「ただいま~」
ガチャっとドアを開ける音が聞こえたと思えば元気良くかなが入って来た。
「かな……ちょっと話があります」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ママとパパと離れてカミキ達と暮らす様になって長い時間が経った。
未だに私はあの時の事を考えてしまう。
もし、私が単なる子役だったら……いえ、芸能界で働いて居なければパパとママは喧嘩なんかせずに今でも一緒に暮らしていたのだろうかと……
でも、あの日私が見た光景は今でも忘れる事は出来無いし、パパとママが言った言葉は今でも思い出せる。
『私ばかりに子供の面倒を押し付けて……あなただって協力位しなさいよ!』
『俺は仕事で忙しいから子供の面倒を見るのは母親であるお前の役目だろう!』
『だったらもっと稼いで来なさいよ! 子供に収入で負けてる分際で偉そうなこと言わないで!』
『子供の金で散財してるお前に言われる気は無い! 俺が知らないと思っているのか? お前が夜な夜なホストクラブに通って若いホストに貢いでいる事をなぁ!』
『あなただって出張と偽って会社の若い子と不倫してるじゃないのよ!』
『しょ……証拠はあるのか! 俺はお前がホストクラブに入り浸ってる証拠があるんだぞ!』
『私だってあなたの不倫の証拠掴んでるわよ!』
パパとママの喧嘩は徐々にヒートアップして行くのを見て、私は助けを求めて……カミキに電話をしたらすぐさま来てくれた。
幸いカミキが来てくれたおかげで暴力沙汰にはならなかったけれど……もう、一緒に暮らす事は出来ない位私の家庭環境は崩壊した。
パパとママの離婚に関して言えば私は詳しい事は分からなかったけど、どちらと一緒に住みたいかと言われた時私は……パパとママを拒絶した。
パパは私の面倒を見るのが嫌いで、ママは私よりもホストクラブに行くのが好きだった。
私はその時初めて両親から必要とされていない事を知って大泣きしたが、そこでカミキが私を引き取る宣言をして、その後私はカミキに引き取られた。
パパはそれに関しては特に何も言わず、ママはカミキに条件を告げて許可を出していた。
その条件が何なのかカミキからは教えて貰えなかったけれど……一緒に生活するようになってカミキが家計簿を付けているのを見た時に何故か気になってしまい、後日誰も居ない時に私はカミキが付けている家計簿を見て気が付いた。
カミキの収入と出費の金額が合っていない事に……
カミキはアレで几帳面な性格をしているから電気・ガス・水道と細かく分類して金額を記載していたけれど……それ以外に月で300万近くの出費が私が引き取られてからされていた。
私も収入があるので、お金の価値は分かって居るつもりだし……300万という金額が如何に大金である事を子供ながらに私は理解している。
多分この事はニノやカナンも知らないカミキが私の為に背負った責任なのだ。
それを知った以上私は……前以上に仕事を頑張る事にした。
仕事があるのは当たり前じゃない事は身を以て理解していた。
売れるようになって優遇されるのも当たり前じゃない。
何せ役者が役を演じるのは出来て当然。やって当たり前なんだから、結果を出せれば良いなんて勘違いを私はもう二度としない!
だから……5000万を持って来たカミキに思わず涙を流してしまった。
私の所為で、カミキにこんな事をさせたと思うと涙が止まらなかったけれど……話を聞いたら競馬で儲けたと言ったので心の底からホッとしたけど……
まさか数日後に家庭裁判所に行くことになるとは思わなかったし……そこでママと再会するとも思わなかった。