『ねぇ何で……私以外の女と付き合ってるの? 君には私が居るじゃない……こんなの……裏切りだよね……』
ニノは目から涙を流し、包丁を構えて目の前の浮気男ににじり寄る。
『ご……誤解だ! ニノ……と、とにかく落ち着いて話合おう! 話せば理解出来るはずだ』
浮気男は叫ぶように……いや、これはもはや悲鳴に近いものを上げて、ニノから逃れようとするものの、すぐさま部屋の隅に追い詰められてしまった。
男の周囲には武器になるようなものは一切無く……狂気に魅入られたニノが一歩……また一歩男に近寄り……包丁を振り上げる。
『さよなら……私の愛した人……』
『や……やだ……嫌だぁぁぁ死にたくない……死にたくなーい』
しかし、男の叫びは無情にもニノには届かず、周囲に鮮血をまき散らし息絶えてしまった。
そして、最後にはニノの狂ったような笑みでこのシーンは終わった。
「いや……これは流石に怖すぎでしょ! 番組はこれを良く通したわね!」
かなの感想に俺も同意するが……この企画を通したのも凄いが流してる時間帯は22:00からと遅い時間帯なので問題無いと判断したのだろうか?
どう考えても問題しかないような気がするけど……
「なんかね……私の再現ドラマが一部の人達に絶大な人気を誇ってるみたいなの」
まーここまで振り切っていたら、そりゃ視聴率は取れるだろうよ。
「まさかニノがここまで化けるとは思わなかったわ!」
かなはそう言うと物凄く関心していたけれど……
「いえいえ、『B小町』の知名度も高い訳ですし、演技力に関してはララライで鍛えられてますからね。これは寧ろ当然の結果です」
「ヒカルさん……!」
俺がそう言うとニノは感極まって抱き着いて来た。
まー実際問題……背筋にぞくりとしたものが走ったから、演技力と言うよりも……感情の乗り具合が凄まじいものがあった。
このレベルの物が出来るのであればニノの将来は安泰だな!
ニノの頭を撫でながらその日はそんな事を考えて居た。
お金の工面に走る事が無くなったので、今日はかなを小学校に送ったら家でのんびりしようと朝ごはんを作りながら考えて居た時だった。
「おはよ~今日の朝ご飯って何?」
パジャマを着崩して髪もぼさぼさなカナンが起きて来た。
「今日はフレンチトーストですね。出来るまで時間が掛かりますからシャワーでも浴びて待っててくださいね」
「わかったよー」
カナンはそう言うと目をシパシパさせながら浴室に入って行った。
「ヒカルさんおはようございます。何か手伝いますか?」
カナンが浴室に入ったタイミングでニノも起きて来た。
「おはようございます。大丈夫ですからリビングで待っててくださいね」
「わかりましたー」
「ニノは今日も仕事ですか?」
「いえ、今日は事務所で今後の活動会議をするんです。『B小町』もそろそろ年齢的に厳しくなって来ましたし、事務所の方でも解散ライブをどのタイミングでやるか検討してるんです」
そう言えば年齢的に言えば24~26位だし……そう考えるとアイドルとしては厳しくなって来るよな。
「ニノはこのまま女優で行くんですか?」
「ヒカルさんがララライに引っ張ってくれたおかげで今は女優の仕事も増えてますからね」
ああ、昨日の『ヤンデレアイドルニノ』か……確かに衝撃的な内容だったしなぁ~
アレで反響が出ない訳が無し、そもそも再現VTRだからネタが尽きる事はほぼ無いから、干される事さえなければ番組が終わるまで安泰だな。
「そう言って貰えると紹介した甲斐がありますね」
「えへへ~」
ニノも顔をほころばせて喜んでいるとかなの部屋から目覚まし時計の音がする事からかなもまもなく起きて来るだろう。
ニノと会話しながらもフレンチトーストを作り続けて大皿に盛りつけてっと……
「出たよ~」
そうこうしているうちにカナンも浴室から出て来たようだ。
「おはよ~ごはんなに~」
同じタイミングでかなも起きてきてしまった。
「今日はフレンチトーストです。もう出来ましたから顔と歯だけでも磨いてくださいね」
「うん~」
さて、飲み物は紅茶が良いかなっと思い冷蔵庫の中を確認したところで……インターホンが鳴り始めた。
まー間違いなくアクアとルビーの2人なんだけどな……
「私が出ますから先に食べててくださいね」
「「頂きまーす」」
ニノとカナンはもはや慣れた様子だけど……うん、肝心かなめの俺がちょっと……慣れないと言うか……
「カミキさんお邪魔します」
「パパお邪魔しまーす」
ドアを開けるとルビーは普通だけど……アクアは物凄く嬉しそうにしていた。
ルビーと俺に接点が無いからこればかりは仕方が無いし、かと言って無理に距離を詰める訳にもいかない。
「はいどうぞ。では中に入ってくださいね」
「うん」「はーい」
アクアとルビーを中に招き入れたタイミングでかなが丁度出て来た。
いや、まぁーいずれは出て来るものだから仕方が無いけれど……
「あ……もう2人とも来たのね?」
「ぱぷりか先輩……」
「ロリ先輩おはよう~」
「2人とも顎にジャブ入れるわよ!」
「「ご、ごめんなさい!」」
「全く!」
困った事にルビーは兎も角……アクアがかなと仲が良く無いのだ。
「うーん……なんでかなちゃんとあの二人は仲が悪いんだろうね」
「カナン? ルビーちゃんはただのじゃれ合いだけど……アクア君の場合はかなちゃんや大輝君に子役取られていたからだよ?」
「いや……それは仕方ないじゃん? だってかなちゃんや大輝君だって小さい時から演技の練習していた訳なんでしょ? スタートが違うんだからそれは才能云々じゃないわよ」
「それはそうなんだけどね……私は気持ち分かるからさ」
「ニノ……」
カナンとニノは2人とも苦労して来た訳だから何とも言えないよな。
しかし、苦労したから評価されるべき問題では無く……芸能界は努力をした者が売れる世界なんだよね。
才能だけで食っていける程甘くはない。
とりあえず、かなを後ろから抱きかかえてテーブルに連れて行く
「あっ……カミキはなしてー」
「パパ。ズルい僕もー」
かなを抱きかかえればアクアも一緒に着いて来るのでこの辺は楽だけど問題は……
「えーっと……じゃあ私はここに座るよ」
ルビーが借りて来た猫みたいに大人しくなるんだよな~
そう考えるとルビーの学校生活が心配になって来るけど……流石に干渉し過ぎな気がするし……どうしたものかな?
「パパ! 僕もパパの膝の上に座りたい!」
「アクアは座布団の上に座ってなさいよ! ここは私の席よ!」
「ぱぷりか!」
「ファザコン!」
とりあえずルビーの問題は一旦置いといて……まずはアクアとかなの問題を先に解決しないとな!
「二人とも! 喧嘩しないように!」
アクアとルビーを両ひざの上に乗せるけど……小学生って事もあり二人ともそこそこ重くなって来た。
子供の成長は親が思っている以上に早いものだな。