「……ほら罰ゲームって事で、ホテルに行こうよ! 何なら今回は私がリードするからさ」
あの時のヒカル君は……正直下手?だったのか良く分からないけれど、私もゴローさんと色々経験したし、仮にヒカル君が下手だったとしても気持ちよくなれるはずなんだ。
「アイさん……私ともう別れましたよね? なので、こういった事は辞めた方が良いと思いますよ。何よりゴローさんに悪いですからね」
それを言われると反論出来ないなぁ~
確かにゴローさんを傷つけるのは良く無いけれど……それでも私は愛を知りたいんだ。
ルビーやゴローさんが私に向けてくれる視線は何処まで行ってもアイドルのアイであって私”星野アイ”では無い
そして、アクアは私を母親としては見ていないけれど……私を私として扱ってくれてる。
そんなアクアがヒカル君に対して全幅の信頼を寄せているのを見て私は思った。
ああ、あれこそが”愛”だと……
私も欲しい……アクアから向けられるその愛もアクアを見る優し気なヒカル君の愛も……
全部私に向けて注いで欲しい!
アクアと一緒にお風呂や添い寝は今はまだ出来るけど……流石にもうそろそろ限界だし、何となくではあるものの、アクアが私を見る目が徐々に女性として見て居るような気がするから不味いと思い始めてる。
流石に愛を知りたいからって息子に手を出す訳には行かないし、母親として出させる訳にもいかないのだ。
でも、ヒカル君なら別だ!
何せヒカル君とはやった事があるし、それが年単位越しとは言え問題は無いと思っていたんだけど……
流石にゴローさんに申し訳ないか……
いや、ゴローさんのおかげで夜は大分捗ったし、あの時の私がマグロだったのも理解出来た訳だけど……
「そういう訳で帰りますよアイさん」
ヒカル君は私の腕を掴み車を置いてる駐車場に引っ張られてしまった。
どうせならそのままホテルに連れ込んでくれれば良かったのに……残念!
「あと罰ゲームの内容ですけど……アイさんはギャンブル禁止です」
「ええ~! 折角競馬の勉強したのにぃ~」
っと口では驚いてみせたけど……バレないようにやれば良いよね?
「……もし、破ったらアクアの親権を取りに行きますからね?」
ヒカル君から凄みを感じた瞬間だった。
「……わかったギャンブルはやらないって誓います」
流石に子供をほっぽ居てギャンブルに夢中になる事は無いけれど……前回みたいに500万溶かしたら目も当てられないし……これで良かったのかも?
☆☆☆
はぁ~アイがアッパッパーで本当に今日一日は大変だったが……アイに迂闊な事を言った俺が悪いよなぁ~
競馬の知識が無いのに500万溶かしたって聞いた時は正直マジかこいつって思ったけど、身近に居る人間が5000万稼いだ以上……自分もってなるのが人間だし、アイなんか特に根拠のない自信の塊みたいな部分があるのだ。
正直……その自信って言うのは生きて行く上では意外と重要な要素ではあるものの、ギャンブルに置いては唯のカモでしかないのだ。
だからこそ、アイからの罰ゲームの提案があったのは渡りに船だったし、隠れてやった場合は親権を取るって脅しもアイには効果的だから今後はギャンブルをやる事は無いだろう。
しかし、せっかく600万勝ったのに気落ちさせる言い方をしたのはちょっとやり過ぎたか……
「アイさん? お昼には遅いですけどどこかで食べてから帰りますか? 勿論私の奢りです」
「……つまりホテルでヒカル君を食べるって選択肢があるって事?」
何故そんなに俺とヤリたがるのか疑問なんだが……別れた女以前に相手が居る男女の関係に割り込む気は無いぞ。
「その選択肢は無いですけど……近くに美味しいお寿司屋さんがありますからそこに行きましょうか?」
「じゃあお任せするよ~」
こういう時芸能人ってのは中々不便な物で、気兼ねなくマックや牛丼屋などのファーストフードのお店に入るのは難しいので、芸能人御用達のお店になってしまうし……そう言ったお店は高くつくのだ。
この先機会があるか分からないけれど……出来ればアクアをこういったお店に連れて来てあげたいものだ。
車を走らせること10分位で件の回らないお寿司屋さんに到着したので暖簾を潜って中に入った。
「すみませーん2名ですけど大丈夫ですか?」
「空いてるカウンター席どうぞ」
お店を見渡すと客はあんまり居らず、カウンター席は軒並み空いていた。
「アイさんここで良いですか?」
「良いよ~。すみませーん私特上握り」
「あいよ!」
アイはメニューも見ずに注文したけど……ここに来た事あったのかな?
とりあえず、メニューを見ながら特上握りの金額を見ると……結構高いね。
やっぱり回らない寿司ってのは敷居が高いものだけど……それゆえにアクアを連れて来れないのが悔やまれる。
「……じゃあ私は特上握りとマグロ丼お願いします」
「あいよ!」
大将がささっと握り始めていた時だった。
ガラっと門が開く音がした。
「やあ、空いてるかい?」
「ああ、鏑木さん? 空いてる席どうぞ」
振り返るとそこには……鏑木プロデューサーがおり、俺とアイを興味深く見ていた。
「これは奇遇だね……まさかアイ君とカミキ君が一緒に居るなんてね」
魔の悪い事にあんまり見られたくない人物に見つかってしまった。
「やっほー鏑木さん」
「アイ君は元気そうだけど……カミキ君は最近どうだい?」
「……今の所仕事は順調ですね」
「そうなのかい? 最近はララライの後輩達の面倒を見ているようで、以前よりも表舞台に立っていないようだけど?」
「……いえいえ、モデルの仕事もありますからね」
こいつ……まさか厄介な仕事押し付けてくる気か?
「あっ鏑木さんなんかドラマの仕事でもあるの?」
マズイ……アイが餌も貰って無いのに食いついてしまった。
「ん? アイ君はスケジュール空いてるのかい?」
「今週は少しばかりねぇ~」
「なるほど……ちなみにカミキ君はどうなんだい?」
……この場面を見られた以上あんまり選択肢は無いだろう。
「……日にもよりますけど?」
そしてこんな言い方したところで無駄な足掻きなんて事は分かっているんだ。
「そっか……じゃあ二人にお願いしようかな?」
「……ちなみにドラマの内容は?」
「恋愛リアリティショーって知ってるかい?」
鏑木がそう言った瞬間にアイの瞳が強い光を帯びたのを俺はただ黙って見て居る事しか出来なかった。