カミキヒカルアナザールート   作:だめねこ

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第8話

当日ではあるもののホテルも取れたし、大浴場が利用できた事もありサッパリした。

 

「パイセン戻りました~」

「はぁ! はぁ! くぅ……これ……で100回っとぉ~。おっ戻ったのか?」

 

 部屋に戻ると上原パイセンがパンイチで片手腕立て伏せを行っていた。

 少しばかり息が乱れているものの……片手で100回って凄いな!

 

「……それにしても、相変わらず良い身体してますねパイセン」

 

 服を着ていると細く見えるけど……腹なんかバキバキに割れているし、全体的に凄い鍛えられており、物凄く理想的な体系で正直憧れる。

 

「まーな! なんだかんだ言っても人間は体が最後の財産だから、鍛えて置けばいざって時に動けるし、体力は幾らあっても困らないからな! カミキは……肉を食っている割には細いよなぁ~」

 

 それはここ最近ぐらいからの話であって……小学校低学年ぐらいの時はマジで食うに困っていたから、身長は伸びないし筋肉も付きにくいのだ。

 しかし、だからと言って虚弱体質って訳では無いので、体力位はそこそこある。

 

「……無い物ねだりしてもしょうがないです。一応アイが入院している病院は遅い時間まで面会可能みたいなので、パイセンが風呂から出たら行きたいんですけど?」

「分かった……後左で100回やるからちょっと待ってくれ」

 

 そうだね。片腕だけやったらバランスが悪くなるから、もう片方もやらないと行けないよな!

 しかし、両手合わせて200回とは化物過ぎる気がするけど……

 

「それにしても片腕で良く100回も出来ますね」

「うん? ……ああ、今は3セット目の途中だから500だぞ?」

 

 やっぱり化物だわ……

 

 そりゃあ、片腕で成人男性を持ちあげられる訳だ。 

 

 

 

 その後難なく腕立て伏せを終えてパイセンもお風呂に行き戻って来た時には既に18時を回っていた。

 

 

「じゃあ、病院に行くぞ!」

「お願いします」

 

 とりあえず、ホテルの中の売店コーナーで手土産も買った事だし問題無かろう

 

 

 病院に着くと入口にはお腹が大分大きくなっているアイと眼鏡に白衣を着てい男性の医者が居た。……恐らくこの人が雨宮吾郎なのだろう。

 

「あっ! ヒカル君久しぶり~」

「……アイさんお久しぶりです。こちらお土産の物です良かったら食べてくださいね。後こちらの方は……?」

 

 取り合えず、お土産コーナーで買った宮崎ラングドシャをアイに渡した。食った事無いから分からんけれど……多分美味いよ

 初対面なので名前を言い当てる訳には行かないから、アイに尋ねる。

 

「この人は雨宮吾郎で私の担当医なの!」

「アイさんの担当医をやらせて頂いてる雨宮吾郎です。君とそちらの男性の方は?」

「ええ、私はアイさんのお腹の子の父親でカミキヒカルです。よろしくお願いします」

「俺はカミキの付き添いで来た上原清十郎だ」

 

 俺がそう名乗った瞬間雨宮吾郎は一瞬だが……表情が固まったようだ。

 続けてアイを見るとどうやら俺が父親である事は伝えてないかったようで、可愛らしく舌を出しててへっと誤魔化そうとしているけど……俺にとってその笑顔は張った押したいと思えるレベルの物だった。

 実際にそんな事出来ないけど……

 

「……もしかして、伝えてはいなかったんですか?」

「ゴロー先生には内緒って言ったのに~ヒカル君がまさかあっけなくばらすなんて思わなかったよ!」

 

 どちらにせよ感づく事は間違い無いけどな。

 何せ俺とアイの接点なんて……劇団ララライのワークショップ位しか無いけれど……アイの面倒を見に来る男性なんて苺プロの斎藤社長位しかいない訳だし、それ以外の男性がわざわざ東京から宮崎まで着た以上は星野アイとただならぬ関係性があると言っても過言じゃないのだから……

 

「……カミキ君ちょっと後で話したいことがあるんだけど?」

 

 何やらただならぬ気配を醸し出した雨宮吾郎だけど……俺も聞きたい事はあるのだ。

 

「後? ……それは構いませんけど、私は雨宮医師に今聞きたいことがあるんですけど良いですか?」

「な、何かな?」

「ゴムを付けてアフターピルを飲んだ場合でも妊娠ってするものなんでしょうか?」

 

 確率的には0.0075とかだけど、ここまで低いと出来ないと同じなんじゃねーかなと考えてしまうし、実際にアイはその確率を超えて妊娠した訳だし……

 

「つけ方にもよるが……それでも可能性はかなり低くなるね」

 

 つけ方に関しては問題無い以上……やはり……カミキヒカルは絶対にアイを妊娠させるマンだったのか!?

 

 俺がそんな事を考えて居る時だった。

 

「……あ、ごめんヒカル君! 今更だけど言い忘れた事があるの……」

 

 なんだろう? とても聞きたくないけど……俺の思いとは裏腹にアイは語りだした。

 

「アフターピル飲んだは良いけど気持ち悪くて家で吐いちゃった事があるんだ」

 

 あっ! 確かに副作用で吐き気が出る場合もあるとか記載があったかも?

 

「……ちなみにその後は飲みなおしたりしましたか?」

「ううん? めんどくさかったし、ヒカル君がゴム付けていたから大丈夫だと思ったんだよね」

 

 アイはそう言うと自身のお腹を嬉しそうに擦り始めた。

 言葉は相変わらずアレだけど……生まれてくる子供に対して間違いなく愛を抱いてるっぽい気がする。

 

「出産予定日は明日でしたか?」

「そうだけど、早まる場合もあるからゴロー先生には傍に居て欲しいんだけど……」

 

 アイはそう言うと不安そうな目で雨宮吾郎を見ているが……

 

「いや、俺の家ってすぐそこだから連絡さえあればすぐに駆け付けるし!」

「……約束だからね。ゴロー先生以外の人だったら許さないよ!」

 

 なんかイチャイチャし始めたけど、出来ればアイとゴロー先生が一緒になってくれれば、アイの事を任せられるんだけどこの場合子供は托卵扱いになるのか?

 面倒見れないって事なら俺が親権取りに行くけど……それは最終手段で良いかな?

 

「じゃあ、ゴロー先生また明日ね!」

 

 アイはそう言うと病院の中に戻って行った。

 そうなると俺・上原パイセン・雨宮吾郎の3人という事になり……

 

「……えー、雨宮医師? とりあえず移動しませんか? 雨宮医師も俺に聞きたいことがあるんですよね?」

「そ、そうだね……」

「あっ! すいません飲み物買って来るので待ってて下いね」

 

 自販機が近くにあったので、とりあえずコーヒーを4本購入して……

 

「雨宮医師もパイセンも飲みながら歩きませんか?」

「サンキュ!」

「あ~ありがとう」

 

 コーヒーをちびちび飲み歩きながらの会話となってしまった。

 まーこれに関しては俺にとって都合が良いのだ。

 上原パイセンが居る以上雨宮吾郎襲撃をしようものなら、即座に捕まえることが出来るからだ。

 

「いや、あ~、もう聞いたと言うか……何と言うか……カミキ君はそう言う事ちゃんとしているんだな……」

 

 避妊の件か? いや、確かに俺だって出来れば生でしたいけど……この業界は入れ替えが物凄く激しいから、やるとしてもゴムを付けないと病気が怖い

 

「……やるからには責任を取らないといけませんからね」

「……じゃあ、君はアイとこの先結婚するのかい?」

 

 まるで苦虫をすりつぶしたような顔で顔を歪ませているけど……推しのアイドルが誰かの女になるのがそんなに嫌な事なのだろうか?

 嫌なら自分の物にすれば良いのに……

 

「いえ、アイさんにはフラれましたので結婚はしませんよ? なので雨宮医師にもチャンスはあるかと思います」

 

 アイに興味は無いけれど……生まれてくる我が子は心配ってのは中々非人道的な気がする。

 しかし、俺がそう言った瞬間に雨宮医師はかなり動揺してしまい……

 

「いや、流石に未成年の女の子に手を出す訳ないじゃないか! それに俺は30近いから社会的にマズイし、相手はアイドルの……ましてや、自分が推してる一番星のアイなんだぞ! そんな事をしたらファン失格だし……カミキ君だって分かるだろ?」

 

 そんなオタク特有の早口言葉で喋られても困るし!

 

「……誰とも知らない男と結婚したアイドルをそれでも応援出来るってなら良いんじゃないですか? まー私は興味ありませんけど……」

 

 頭あっぱっぱーは困るし、何をやらかすか全く分からないから気が気じゃないのだ。

 

 そんな事を考えて居ると……雨宮医師のケータイが鳴り始めた。

 

「もしもしどうしましたか?……! 分かりましたすぐに戻ります! カミキ君と 上原さん……アイが産気づいたようなので病院戻ります!」

 

 そう言うと、雨宮医師は慌てて今来た道をダッシュで駆け戻って行った。

 こうなると襲撃のチャンスが突如降って湧いた事になる。

 

「パイセン雨宮医師を追いかけてください!」

「……任せろ!」

 

 上原パイセンもすぐさま離れて行ったけど……

 

 リョースケ何某は果たしてどっちに来るのだろうか? 父親である俺か……はたまたアイの担当医である雨宮医師の所か……

 俺だったら2対1は無理だから、もし今この場に居るのであれば……

 

「お前はカミキヒカルか?」

 

 見知らぬ人が背後から声を掛けて来たので振り返ると、黒いパーカーに目深くフードを被っている人物がいた。

 俺が振り向いた時には走り去ろうとしていたので、未開封の缶コーヒーを思いっきり投げた。

 

 それは吸い込まれるように黒パーカーの頭に直撃した。

 ゴンという鈍い音と直後にうめき声がしたと思えば件の人物は地面に倒れた。

 

 とりあえず……もう一人近くに居ないか警戒しつつ、件の黒パーカーに恐る恐る近づく事にした。

 

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