時刻は20:00……
家の女性陣の説得も何とか終わったので、アイ達のとの話合いをする為にインターホンを鳴らすと、「はーい」と声が聞こえてパタパタと足音が聞こえたと思えば、しばらくしてドアが開いた。
すぐさまドアを開いた訳では無いので、ドアスコープでこっちを確認してから開けたと思うけど……
「ヒカル君待ってたよ~。ささ上がって上がって」
「……お邪魔します」
アイに案内されるまま中に入ると、丁度起きた所なのか目をシパシパさせてるゴローさんとアクアに宿題を教わってる転生者のルビーが居た。
「アクア……ここの答え何?」
「ルビー……少しは自分で考えようよ」
アクアの言う通り答えを聞くってどうなのよ……しかも前世含めると年下の子に聞くのは転生者として果たしていかがなものかと思ってしまう。
「私は将来アイドルになる訳だから勉強が出来なくても問題無いもん!」
「……じゃあアイドルに向けて今何かしてるの?」
「ママのライブ映像見たり、踊ったりしてるよ! そう言うアクアだって未だに役者として芽が出ないじゃん!」
「……そうだね。少しづつ仕事は増えてるけど、まだまだ役者として評価は低いからルビーの言う通りだけど……ところで僕の役者としての評価がルビーになんの関係があるの?」
「……それは」
「……関係ないよね?」
アクアが言った事に言い淀んでしまったルビーを見ると、何とも言えない気分になってしまう。
……二度目の人生でちょっと特殊な家庭環境ではあるもののアイドルに固執する理由ってのは一体何なのだろうか?
前世のさりなだった時アイに魅了されてそうなったのか? そう考えるとなんと言うか非常に残念だ。
俺から言わせて貰えば……アイドルだけを見て本人を知った気になっている所詮にわかの戯言だとしか言いようが無いのだ。
まーコレもアイの嘘が完璧なのが原因なんだが……皮肉だよな。
愛して欲しいと叫んでいる本人が本当の自分をさらけ出す事が出来ない以上……愛を感じる事は難しいのだろう。
何故ならそれは嘘の自分を愛してると言われてるのに他ならないのだから、本当の自分を愛して欲しければ自分自身をさらけ出すしか無いけれど……
「アクア……ちょっとルビーに言い過ぎだよ。あとルビーもちゃんと勉強しないと将来困った事になるからしっかりやる様にね♪」
アイはそう言うと喧嘩両成敗って形にしようとしたけれど……果たして言い過ぎたのはどっちなのだろうか?
アクアが未だ子役として目が出て無いのは事実だけどそれでも実績は積んでいるのは俺も聞いてるし知っているが……逆にルビーがアイドルになる為にアイのライブ映像を見たり踊ったりと努力はしているようだが……言っちゃなんだが実績どころかデビューすらしてない唯の素人なのに相手を卑下するのはどういった了見なのか詳しく聞きたいものだ。
「うっ!……だってアクアが……」
案の定アイに注意されたルビーは俯きそう言い淀むけど……アクアはアイを見ると純粋に疑問をぶつけた。
「ねえママ……僕何か悪い事言った? ルビーは勉強出来なくても良い理由がアイドルになるからで、アイドルになる練習をしてるからって僕の役者としての能力を否定してる訳だけど……?」
アクアの頭は俺が思った以上に良さそうだ。
「え、え~っと……それは……そのぉ~」
案の定アクアの質問にアイは窮屈してしまった。
そりゃそうだ。
なんたってアクアが責められる謂れは全く無いし……反対にルビーはアイドルを言い訳に勉強をしたくないのを正当化しようとしているのだ。
この時俺はルビーの父親ではあるものの……関りが薄い事に安堵した。
もし父親として……いや、俺がカミキヒカルじゃなかったら……正直ルビーの事を引っ叩いていたかもしれん。
それは決して……子供にとって良い事では無いし、躾けと正当化して良いものでは無い!
しかし、言っても分からない子は殴ってでも止めないといけないし……親である以上は覚悟を決めないといけない。
甘い言葉は子供の為にならないのだから……
「ほら……アクアは男の子でしょ? 女の子には優しくしないとね」
それで納得できるほどアクアが成熟していれば問題は無いだろうけど……アイに言われたアクアは歯を食いしばって居る以上アイは答えを間違えたようだ。
まー世間一般的にはアイが言った事は正解だと思うけれど……
明らかにルビーのが言い過ぎだしなぁ~
チラッとゴローさんを見るとオロオロしており役に立ちそうに無いし……いや、そもそも争いごとにはアイもゴローさん向いて無いんだろうな。
「……アイさん? その答えで納得出来るのは私みたいな女たらし位なんですよ」
思わず口を挟んでしまったが仕方ない。
「あっパパ!? 何時から居たの?」
そして、今更ながらに俺に気が付いたアクアが驚いて俺を見ているが……アクアは中々良い集中を持っているようだな。
「さっき程来たばかりですね。……では、まずアクアが言った事ですが……」
俺がそう言うと先ほどとは打って変わりアクアは神妙な顔をし始めたが……
「なんら問題ないと思いますよ」
「ほっ」
そう告げた瞬間アクアは一気に安堵したようだ。
そもそもアクアはルビーに対してなんら悪口を吐いて居ないのだから、喧嘩両成敗はおかしいのだ。
「続いてルビーですが……」
「……何ですか?」
ルビーの方を見ると不貞腐れた態度をしているが……今から怒られると思っているのだろうか?
別段怒りはしないさ……
何せ前世含めれば俺が最も年を食った大人なんだから……餓鬼の戯言なんか気にもならない
「……ルビーは頑張っている人に文句言えるほど偉いんですか?」
「……いえ、偉くないです」
「分かってるじゃないですか……後アクアが役者として芽が出て無いと言いましたが、それでもアクアは役者としてお金を稼げて居るんです。ルビーは稼いでますか?」
「……今は稼いでないですけど、私がアイドルになればアクア以上に稼げるもん!」
いや、そう言うことは稼いでから文句言おうね。
「それでは”いつ”から稼ぐんですか? 今日はもう遅いから無理ですけど、明日からですか? それとも一週間後? 一か月後? それとも一年後? ルビーが手をこまねいてる間にアクアはどんどん稼いでいきますけど?」
別段計画があるなら良いけれどさ……稼ぐと言った以上は是非とも行動に移して貰いたいものだけど……
「うぅ~カミキが苛めるよぉ~」
ルビーはアイに泣きながらしがみついてしまった。
「あ~よしよし……ルビーも反省してるからヒカル君もそこまでにしてあげて」
いや、それは構わないけど……慰めるならアクアもちゃんとフォローしないとしまいにはグレちゃうぞ?
しかし、アイがルビーを甘やかす気持ちは良く分かる。
自分の事を色眼鏡で見ているとは言え……好意を寄せてくれる愛する子供なんだから、甘えられたら構ってあげたくもなるのは当然だろうし、ルビーが頑張って築いた信頼関係でもあるのだ。
まーそれが良い結果になるかは分からないけれど……アイやゴローさんは気づいて無いようだけど、俺の方を見るルビーは勝ち誇った笑みを浮かべてる事からこの先アイ達は苦労しそうだな。
「……そうですね。では当初の話合いをしましょうか? ゴローさんにはもう話ましたか?」
「あ~……テヘ♪」
いや、まだならまだ言って無いって言えよ? なんでそこで誤魔化そうとうするかな?
「……話って何かなカミキ君?」
「ええ、実は私とアイさん何ですけど不本意ながら恋愛リアリティショーのドラマに出る事になっちゃいましてね。そこでお互いの振る舞いをどうしようかゴローさんも交えて相談をしようと思い今日来ました」
「……そ、そうか……う~ん個人的にはアイに変な虫が番組中とは言え付くのは嫌だから、そこはカミキ君がフォローしてくれると助かるんだけど……」
あ~そう言う見方もあるのか……しかし、番組中とは言え、アイの面倒を見るのは正直面倒だし……そもそも、それは俺自身に対してのデメリットが非常に多い気がするのだが?
なまじアイがアイドルを卒業していればまだセーフなんだが……トップアイドルの一人である以上はアイのファンからバッシングされるのが目に見えているし……
「そうだねぇ~虫よけ対策にヒカル君と一緒に居れば良いかな~そっちの方が鏑木さんも喜ぶのは間違い無いしね♪」
アイもゴローさんの意見に賛成の様だけど……
「……私としては番組内では初対面なのが一番良いんですよね。……勿論何かあればそれと無くフォローはしますけどね」
「う~んじゃあ困ったら助けてよね。私もヒカル君が困って居たら助けてあげるからさぁ~」
いや、俺は女の子に囲まれて楽しんでるからアイも楽しめば良いんじゃないか? なんて事はゴローさんが居る以上言う訳には行かないからここが妥協点になるのか……
「……基本は自身でどうにかしてくださいね。なんでもかんでもフォローは出来ませんから」
「ま、何とかなるよ何せ私は今をときめく完璧なアイドルだしね♪」
アイは目を輝かせながらそう言ったけど……今はカメラは無いので母親として頑張って欲しいものだ。
「……パパ恋愛リアリティショーって何?」
アクアは純粋な目で俺に聞いて来たけれど……
「ええ、番組主催の合コンみたいなものですかね」
「……つまり知らないママが増えるって事?」
……あながち間違いでは無いかも知れないな
俺はアクアの問いに答えず、にこやかにアクアの頭を撫でた。