カミキヒカルアナザールート   作:だめねこ

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第88話

「……で、アンタこの後どうする訳?」

「もう僕は嫌なんだ。だから僕もここに住む!……そもそもパプリカだって住んでるんだから実子の僕がここに住んでも問題無いだろ」

「誰がパプリカよ! ……全く、まぁーカミキが良いって言えば私がとやかく言うことは何も無いけれど……歩いて1秒の所だからすぐさま補足されるわよ?」

「それは……そうだけど有馬だって知ってるだろう? ……ゴローさんやルビーが母さんの厄介限界オタクなのは……」

 

 僕がそう尋ねると有馬は目頭を抑えて答えた。

 

「……そうね。ルビーなんて暴れん坊将軍張りにサイリウム振り回して踊ってたし、アイさん的には嬉しいかも知れないけれど、ちょっとばかし距離を置きたくなったわね」

「僕は今までずっとその環境だったんだぞ。もう嫌なんだよ! 役者は自分の意志でやってるから何も言う気は無いけれど……仕事も学校も休みで久しぶりにゆっくり出来ると思ったら……いきなり『B小町』のライブに連れて行かれて周りを見ると皆アイを応援してるんだよ? 別段誰を応援するのも自由だし別に良いけれど……アイ以外は誰も応援されて無いホラーライブなんてただの恐怖だからね」

 

 僕がそう巻くし立てると有馬はピザポテトを食べながらも目を閉じて黙って聞いてくれたが……

 

「……まーアクアも今年から中学生になる訳だし……アンタの所の家族にも良い機会かもしれないわね」

「本当に……そろそろこっちの事も考えて欲しい位だよ」

 

 ゴローさんが居ないときはアイもルビーも無防備な姿を晒して部屋の仲をウロウロするし……かと言って、その辺りの事を配慮して欲しいなんていう訳にもいかない!

 そして、一番の問題は……僕が売れてる売れてないにかかわらず、芸能人で有る事から女性とおおっぴらに付き合う事は出来ないし、父さんみたいな関係を構築する事も出来ないから……物凄く困っている。

 

「……アクアも難儀してるわね。……ピザポテト食べる?」

「……食べる」

 

 テーブルに置かれたピザポテトに手を伸ばした時だった。

 

 ピンポーンと部屋のインターホンが鳴り響いた。

 

「……迎えが来たみたいだけどアクアどうする?」

「……ここには居ないって言って欲しい」

「ちなみに何か書置きとかした?」

「『しばらく父さんの家に住みます。来ないでください』って書いたけど?」

「原因は間違いなくそれね」

「だってしょうがないだろう!? 変に心配させる訳にもいかないし、書かない訳には行かないじゃないか!」

「家出する位思い悩んでるのに物凄い真面目な回答が帰って来たわね。……アンタ本当にアイとルビーの家族かしら?」

 

 こっちを訝しんで見てるくるパプリカだけど……親や妹がそんなんだから僕が真面目になるしかないんだよ

 

「僕はアイの子供で有る前にカミキヒカルの子供でもあるからね」

「カミキ自身も頭は良いわけだし……確か東大卒って言ってたから、あんたの家系は男性は頭は良くて、女性はアッパッパーにでもなる宿命なのかもね」

 

 父さんと一緒で頭が良いと言われるのは嬉しいけれど……

 

「……アクアも将来はカミキと同じ女泣かせにならなければ良いけれど」

「なりたくてもなれねーよ!」

「……カミキ譲りの顔面偏差値で良く言えるわね」

 

 ……顔は父さん譲りで良いのは自覚してるけれど、だからと言って有効活用出来るかどうかは別問題だからな

 

「有馬だって……顔は良いじゃないか?」

「性格だって褒められてるわよ!? その証拠に役者の仕事はアクアと違っていっぱいある訳だからね」

「有馬は女性だから分からないだろうけど、姫川大輝が強すぎるんだよ。この間だって帝国最優秀賞取っていたし、僕らかすれば目の上のたんこぶみたいなものだ」

「まー姫川さんはララライの看板役者だからね。じゃあそろそろ出て来るわね」

 

 そんな事を言ってる間もやかましい位にインターホンが鳴っており、有馬もようやく腰を上げて玄関に向かったが……

 

「あ……アクア!? アンタの母親がひ……ひき子さんみたいな事してるわよ!」

 

 血相変えて戻って来た。

 

「いや……そんなバカな?」

 

 とは言いつつ……ドアスコープに目を近づけて外を見ると、振り乱した髪をそのままにドアの前を行ったり来たりしたかと思えば、アイは不意打ちに気味にドアスコープに目を寄せて来た。

 あまりの仕草に思わず僕は……

 

「あ”ーーーー」

「……アクア出て来なさい」

 

 地の底から響くような得体の知れない恐怖が湧き出て思わず尻もちをついてしまった。

 だが……ドアには鍵がかかっているので、入って来る事は出来ない筈なのに……鍵はひとりでに開きドアがゆっくりと開くと……そこにはこの世のものと思えない表情をしたアイが居た。

 

「アクア……帰ろう……」

 

 悪霊と化したアイの手が徐々に僕に迫り……

 

「OKカーット!」

 

 五反田監督の声が響き渡り、撮影は終了した。

 

「お疲れ様です。いやー監督どうだった私の演技?」

「ああ、まぁ大したもんだ……ワンシーンだけで存在感を余す事無く発揮出来るのは本当に凄いもんだ」

「んっふっふ……ほらやっぱり私天才だし?」

 

 鼻をピノキオみたいに伸ばしてるアイは物凄いドヤっているけれど……確かに結果は出してるのは事実だから認めない訳には行かないが……

 この脚本本当に大丈夫なのだろうか?

 

「ふわぁ~それじゃあ私の出番は終わったから帰るわね」

「えぇ~かなちゃん帰っちゃうの~」

「僕も帰るけどね」

「そんなぁ~」

 

 アイは残念そうな声を出してるけれど……

 

「いや、未成年組はそろそろ時間的に不味いからな」

「あっ監督ぅ~私は年齢未公表のアイドルなんですけど?」

「ああ、次のシーンは30分後に撮るからアイもすぐさま準備しろよ」

「軽く流された!」

「じゃあ、五反田監督お先に失礼します」

「五反田監督お疲れ様です」

「おう! 気を付けて帰れよ。よし、次のシーンに向けて準備するからアイもいじけていないで気持ち切り替えろ」

「わかったよ」

 

 五反田監督とアイのやり取りを見つつ僕とかなは帰る事にした。

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