黒いフードの人物は頭を抑えてはいるものの、徐々に立ち上がり始めたが……
「えい!」
膝裏を思いっきり蹴り抜く
「きゃ!」
うめき声を上げて地面に座り込んでしまったが何故か違和感を感じる。
どうやらこいつ……喧嘩慣れしていないようだな。
強い奴には3パターン存在する。
何もしなくても元々強いまさにチートみたいな奴で知っているのはOUTの弦巻良樹や丹沢敦司みたいなタイプ
次に格闘技や筋トレで鍛え上げた強いタイプ……これは喧嘩独学の志村光太だな
最後が元々強い奴が格闘技や筋トレに果ては場数まで踏んでるタイプ……上原パイセンや人生崩壊の赤城佑
ちなみに目の前で地面にお座りしているこいつは唯のもやしだった。
身長だって俺と同じくらいの小柄だし、声も……男にしてはやたらと高い気がするが……ま、痛みを感じた時って若干ではあるものの、声が高くなるものだ。
とりあえず……両腕を両脇で抱えて、片足を踏んで動けない様にして相手の背中を足で押す。
「痛い痛い痛い!!!」
相手は叫んでいるがそれは当然だ。
何せこの技は脱出不可能の固め技なのだ。
両腕をそのまま後ろに引っ張れば肩の関節は外れるし、起き上がろうにも俺が片足を踏んずけているから体勢的にも力が入らない。
そして、一番の利点はこいつが大きな声で叫べば叫ぶ程上原パイセンがすっ飛んでくる。
「……誰の差し金でここに来たんですか? 教えてくれないと両肩外しますよ?」
「言う! 言うから放してよ!」
「ふん!」
バカヤロー放す訳無いだろうが!
お前みたいなもやしには負けなくても、俺自身強い訳じゃ無いから無傷とはいかないんだよ。
「痛い痛い! 話す話しますから辞めてください!」
「じゃあ……話してください!」
「……私の……私のアイがお前に誑かされて孕まされたから! だから、私はは……って痛いってば!」
ここまで相手の声を聞いてもしやと思い、背中を踏んずけている足で相手のフードを取ると……暗いし後ろからだから分かりにくいな。
「ふん!」
「何で力を入れるのよ! 本当に外れる外れるから! お願いしますやめてください! ……リョースケ近くに居るんでしょ! 早く助けてよぉぉ!」
仰け反る形になってようやく分かった……あ、女だ! しかし知らない女だった。
そんな事を考えて居た時だった。
「おい、リョースケってこいつの事か?」
ドサっと地面に投げ捨てられたリョースケらしき人物がいた。
「……ぱ、パイセン変わって貰って良いですか?」
「おっ! カミキお前……良い関節技知ってるな~片足を踏みつけて両腕も脇で極めて残った足で背中を押せば肩の関節が一気に外れるし……こんなの実戦で出来る奴中々いないぜ? どうだカミキ俺と一緒にコマンドサンボとか習ってみないか?」
上原パイセンはそう言うと俺の周りを見て技の完成度を称えてくれているけど……正直片足に力が入り過ぎてそろそろ……
ゴキゴキン……あっ
「~~~~!!」
両肩外れちゃった。
目の前の女の子は声に為らない声を上げてしまい、俺も思わず両腕を離してしまったから顔面から地面に突っ伏してしまった。
「……上原パイセン肩入れられますか?」
俺がそう尋ねると上原パイセンは慣れた手つきで女の子の肩と腕を掴み……
「ふっ」
ゴキン!
「あ”あ”あ”あ”」
山の道で女の子の声が響き渡った瞬間であるものの……入れられたのは片方だけである。
つまり……
ゴキン!
「あ”あ”あ”あ”」
女の子は地面にのたうち回るものの、それで痛みが治まる訳で無くあまりの痛みに涙も流していた。
「あー痛みで泣いてる所悪いけど……それ治った訳じゃ無いから早く病院に行ってみて貰わないと一生両腕使えなくなるぜ?」
上原パイセンはそう言うとリョースケの股関節を外して逃げられなくした。
可哀そうにリョースケは顔面が変形する程ボコボコになっており、意識は全く無いようだけど呼吸は出来てるようで、その証拠に胸のあたりは上下に動いてるので生きてはいるのだろう。
恐らく病院に戻る途中で雨宮吾郎を襲撃しようとしたものの、上原パイセンに即やられたのだろう。
「とりあえず……カミキこいつらどうする? 埋める?」
「パイセン……ナチュラルにそういうのは辞めましょうね」
いや、本当にそういう事上原パイセンはやりかねないのよ
「まーカミキが良いなら俺は構わないけど……俺の場合はこのリョースケって奴がナイフ持っていたから正当防衛が成立するけど……カミキの場合警察沙汰になると多分無理だぞ?」
パイセンの言う通り……このまま警察に捕まれば確実に俺は有罪になる。
「じゃあ……交渉しないといけませんね」
「や、ヤダもう痛いのはいや!」
「じゃあ……最初から説明してくださいね。あなたは一体どこの誰で何の目的でここに来たのか? 何故私を狙ったのかもね」
俺は携帯のボイスレコーダーを起動して質問をした。
「わ、私の名前は新野冬子です。この先にある病院でアイが出産するって言うから……私……許せなくて……だって……アイが……完璧なアイドルのアイが子供を産むなんて有り得ないし! そんな姿を見るくらいなら……子供なんて産ませない! そう思ってここまで来たのと……目の前にアイを孕ませたカミキヒカルが居たから……」
そう言うと新野は大粒の涙を零しながらも切実に訴えって来たけど……そんなどうでもいい理由で殺されちゃ敵わんぜ
しかし、アイドルとしてのアイは凄いかもしれんが……俺にとっては別にそうとは思わないし、唯の可愛い女の子で一回抱ければ良いなぐらいにしか思わない
「……外見の話であれば新野さんもアイさんと同じ位可愛いですけどね?」
「そんなこと無い! 街中の男に聞けば皆アイのが可愛いって言うもん!」
あんなあっぱっぱーなアイに負けると腹が立つのは分かるけど、少なくとも俺からしたら可愛いから新野を抱いて見たいなとは思うけど……
「……質問なんですけど……新野さんは男性経験ってありますか? 」
俺がそう言った瞬間新野は物凄く動揺した。
「わ……私はアイドルだし、まだ中学生だからそんにゃ経験にゃいもん」
うん、滅茶苦茶噛んでるし……文字通り処女なんだろうな。
言うなれば、男を知らないから魅了する事が出来ないのだ。
アイドルなんてそもそも矛盾した職業なのであるのは見れば分かる。
人気を得るには可愛く無ければいけないのだし、そこには処女性も求められる……しかし、それこそが一番の問題点なのだ。
何せアイドルを応援するのは同性よりも異性の方が圧倒的に多いのだから、男を知らない女性が男から人気を得るには言っちゃなんだが、色気が無ければ難しいのだ。
しかし、処女性を求められている以上は清廉潔白で無いといけない以上男性と付き合ったことが無い女性では男のポイントは分からないのだ。
じゃあ……AV女優などが稼げるかと言えば上澄み位しか無いけど……
結局の所……暗い部分を表に出さないのがアイドルで表に出せない暗い部分がAV女優などであるのは確かな話だ。
「新野さんの理想のアイドル像ってそもそもなんですか? お金の為にやっているのか? 自身の承認欲求の為になのか? それともアイさんにだけは舐められたくないのか? どれですか?」
「私は……アイにだけは舐められたくない!」
あんなあっぱっぱーのどこが良いのか全く分からないが……世の中は不思議でいっぱいだ。
そんな事を考えて居たら上原パイセンが聞いて来た。
「カミキ……不思議そうな顔してるけど、お前から見てアイちゃんはどう見えるんだ?」
「アイさんですか? う~ん……新野さんの前で言う事では無いですけど、アイさんって恐らく芸能界に入る前から性的な目で見られていたんじゃないんですかね? その事に自分自身気が付いていたので、そう言った見られ方を見せているんだと思います。何せ世の中の男なんてか弱い女の子が大好きなんですから、俺が守ってあげなくちゃって思わせることが出来れば勝ちですからね」
「うっ!」
「ほぅ」
正直アイドルで成り上がる人間はそれまでの人生が順風満帆な訳が無いのだ。
ステージの上では光輝いて見えるけれど……見えないところの闇は一体どうなっているのかなんて誰にも分からない