アイは斎藤社長に電話をする為ベランダに移動した。
「パパはルビーがアイドルになるのはどう思ってる?」
「あっ俺もそれ気になるけど……カミキ君から見て見込みはあるかな?」
アクアとゴローさんは俺にそう聞いて来たけれど……そんなん言われてもねぇ~
そもそも俺はアイドルオタクじゃ無くて、ただの女たらしだし……
「……う~ん。私の理解不足で申し訳ないですけれどアイドルってそもそも何ですかね?」
「あ……ん~可愛い子が歌って踊るのがアイドル?」
どうやらアクアもアイドルを良く分かっていないようだが……
「カミキ君とアクア……アイドルってのはね……ズバリ一番星の様に輝いて見えて俺達ドルオタに夢と希望と活力を与えてくれるこの世に無くてはならない尊い存在なんだ! 彼女達が居るから俺は今日も生きて居られるし、こうして美味しい物も食べられるし健康だし、いずれは視力だって良くなるに違いない!」
メガネを某名探偵の少年みたいに光らせてゴローさんは物凄い早口で喋り始めたけれど……アイドルに入れ込み過ぎなんじゃないかな?
別に人は夢も希望も活力も無くても、怠惰に惰性であっても生きていける訳だし……そのアイドルが居なくてもなんら支障はないはずだ。
だって……そのアイドルが他の男と関係を持ったら夢は悪夢に希望は絶望に活力は無気力になるだけならまだしも、嫉妬に狂って殺しに来る訳じゃん。
そう考えると……
「……赤の他人に夢や希望を抱かないと生きていけないなんてとても身勝手で傲慢で愚かでにわかですね」
思わず俺は口からそう零してしまった。
「にわかじゃないもん! 私は推しの事ちゃんと理解してるもん! あんなにライブでキラキラ輝かせて見に来てくれたファンに愛を伝えてるんだよ! だから分かった風に言わないでよね!」
ルビーはそう叫ぶように言うけれど、キラキラ輝いてる……ね。
『B小町』のライブを一回見たけれど……俺には”アレ”の何が良いのか理解が出来なかった。
スポットライトが当たるのはアイだけで、キラキラ輝いていたのもアイだけで、応援されて居るのもアイだけで……果たしてグループで売って行く必要があるのか分からないぐらいだった。
「ひと際輝く方法何て幾らでもあります。簡単な話自分以外をおまけとして扱えば良い訳ですからね。私も一回『B小町』ライブを見た事ありますけれど……あそこまで演出にこだわっているとはおもいませんでしたね」
「そんな訳ないじゃない! 私は別に箱推しって訳じゃ無いけれど、ありぴょんやきゅんぱんみたいにダンスが上手くて評価されて子だっているんだし、みんな素敵な笑顔だったもん」
「それは腐ってもプロですからね泣きたくても悲しくても絶望していてもその場では笑顔で居ないといけません。しかし、素敵な笑顔ですか……ニノが聞いたらなんて答えますかね?」
俺がそんな事行った時だった。
「「ただいま~」」
どうやらニノとカナンが丁度帰ってきたところだった。
「あっニノとカナンお帰りなさい。ちょっと二人に聞きたい事があるんですけど良いですか?」
「ん? ニノのスリーサイズなら……」
「ちょっとカナン何で私のスリーサイズ知ってるのよ!?」
「あっニノのスリーサイズは知ってるので間に合ってます」
「ヒカルさんもなんで知ってるの!?」
「勿論カナンのも知ってますからね」
「……カミキのエッチ♪」
「まぁーそれは良いとして……聞きたい事なんですけどルビーがアイドルを目指してるんですけど、ニノとカナンはやってる時って楽しかったですか?」
俺が二人にそう聞くと二人は笑顔で答えた。
「「全然全く楽しくない」」
「え!? だって『B小町』のライブの時あんなに輝いて見えたのに……」
ルビーは驚愕の表情を浮かべて居たけれど……
「それは勿論最初はみんなと和気藹々やってて楽しかったけれどね……ほら、アイって人の心が無いでしょ? アイみたいな天然系の天才は美味しい所は全部自分が持って行って後の要らない部分は私達に押し付けるのよ」
アイに人の心は確かに無いかも知れないし、美味しい所は全部持って行く気質もあるんだよなぁ~
何時だったか……アイと一緒のドラマか何かに出た時、脇役なのに”私が主役です”って顔で出て来るもんだから主役の女の子を喰っちまう演技をしてしまうし……やっぱ人の心が無いかも知れん
「それで他のメンバーが注意するんだけど「あれ~そうだっけ? 気を付けるね~」って言うんだけど、似たような事何度もやって来るから……あのときひっぱいとけばよかったかな?」
ニノの目からハイライトが消えてしまった。
「そんなグループで途中参加した私はねアイが『アイドル辞める』って事あるごとに何度も言って来るから最初こそは我慢していたけれど、次第に腹が立って『うるさいわね! そんなに辞めたければ辞めれば良いじゃない!』って言って実際に引っ叩いたら私がクビになったわね」
「でも気持ちは落ち着いたでしょ?」
「……借金まみれでキャバ嬢になった私に良く言えるわね」
「ごめんなさい」
「うん!」
ニノとカナンのやり取りを聞いてゴローさんは両手で顔を隠してしまい、ルビーは目の前が真っ暗になったようで……
「お待たせー斎藤社長に話付いたよー……ってありゃニノとカナンお帰りー」
「……ところでルビーちゃん大丈夫?」
「物凄い勢いで目を回してるけれど?」
ニノとカナンの話でルビーのキャパがオーバーしたからじゃねーかな?
ソロならまだ喧嘩も何も無いかも知れないけれど……グループなら、ルビーの性格上相手がちゃんと大人で優しい人じゃないと崩壊する可能性が……って言うかその未来しか見えないのは気のせいかな?
「でも……私は……それでも……きゅぅ~」
一体何がルビーをそこまで駆り立てるのだろうか?
「ちなみにニノとカナンはアイドルになった動機ってなんですか?」
「私は……当時はちやほやされたかったの」
ニノは若気の至りみたいな感じで指先をつんつんさせてそう言ったけれど……
「私はお金ね! 家庭環境が最悪だったし、早く出たかったのとアイドルの才能なら誰にも負けない自信もあったから成り上がって生活してやるって思ってたわね」
改めて聞くとカナンの話は大分ヘビーだから話を変える為にチラッと麗民さんから聞いた情報を確認してみた。
「そう言えばカナンは今度国立競技場でソロライブやるんでしたっけ?」
「……今度のフルマラソンで1位が取れたらってのが条件ね」
YouTuberとしては良いかもだけど、過酷すぎやしませんかね?
「ちなみに取れなかったら?」
「……自腹のキャンセルになるわね」
競馬に行かなきゃいけない理由が出来てしまった。