アクアが大泣きしてから数日が経過した。
「ヒカルさん……その……アクア君の一人暮らしなんですけど、大丈夫なんですか?」
ニノはおずおずと聞いて来たけれど……恐らく、これはアイは勿論だけどアクアにも必要な事だと俺は思う。
「……程度にもよりますが、親子喧嘩なんて実際どこの家庭にもあって然るべきことですし、そんなに心配する程のことでもありませんよ」
「……だけど小学生が一人暮らしなんて普通じゃないですよ!」
ニノの言うことはごもっともだけど……
「私は物心ついた時から一人でしたから普通とはかけ離れておりますが……まぁそれは置いといて、今回の件は要するにアクアが今まで居た環境でアイさんからの愛が本当に無かったのかを確認する事が出来ます」
「……と言うと?」
「親が子の面倒を見るのは当然ですが……しかし、親もやっぱり人なんです。常に100%のパフォーマンスを発揮できる訳ではありません。それもトップアイドルであるアイさんなら猶更です。そんな中でアクアに割いてる時間だって少ないながらも有る訳です」
「うーん。確かにルビーちゃんやアクア君の事は大事にしてるっぽいですけど……アイは自分を中心に考えてるますからね」
「だからこそ、アクアが居ない今自分を見つめ直す機会になると思います。また、アクアも一人で暮らして見て、親が居る日常が実は当たり前では無い事を実感するはずです」
自分がどれだけ親に助けられて甘えられて愛されていたのかを知る方法は唯一つ……孤独を知る事に他ならない。
親が子供を愛するのは当たり前? 子供が無条件で親を愛するのは当然? んなわきゃーねぇだろう。
子供の世話を苦労して行うからこそ、その過程で愛着が湧くのだ。
子供だってそうだ。
親が自分の為に頑張っているの見て居るからこそ、何かをしてあげたいと思えるのだ。
アイが決して何もしなかったとは言わないが……大前提として愛されるために行動していたんじゃないかと思う。
それを
ルビーは生まれた時からアイの厄介限界オタクであり、アイの行動が見事に嵌ってしまった以上アイからしてみればアクアも同じ対応でイケルと踏んだ筈だが……アクアは転生者では無く、しかも純粋なアイの子供だった。
世の中マザコンやファザコンは居るだろうけれど……子供が親のファンにはならないだろう。
「……アクア君一人で寂しくないかな?」
「ああ、ちなみにアクアが今住んでるマンションの隣の部屋が上原パイセン達なので大丈夫ですよ」
「なんですと!? 大丈夫なんですかアクア君の貞操は? 私違う意味で心配になってきました」
「……その辺はちゃんと言って来たんで問題ありませんよ」
「心配だなぁ~ヒカルさんがお願いすると上原さん内容も聞かずにいつも『俺に任せろ!』って言うじゃないですか?……本当に大丈夫なんですか?」
ニノは頭を抱えてそう言うけれど……上原パイセンは性癖以外はまともだぞ?
「ニノ……大丈夫です。大体の事は上原パイセンに任せておけば問題ありません。 この間ララライの皆で焼肉食べに行った時だってせっせと焼肉焼いてくれたじゃないですか?」
「それはヒカルさんが『黒川さんばっかりに焼かせて無いで上原パイセンが焼いてください』って言っちゃったからですよね? それ言えるのヒカルさんだけですからね!?」
「いえいえ、そもそも若い子にこそ食べてさせてあげるべきですよ」
「そうですかー?」
「……それに焼き肉を焼きに来た訳じゃ無いんですから、後輩たちに色々な人の話を聞かせるチャンスを作るのも先輩の仕事です。……それでも焼きたいって言うのであれば話は別ですけれどね」
ま、そんな訳で結局の所アイとアクアの問題は時間が解決するはずだと思っていたんだけど……
3か月後にこんな事になるなんて夢にも思わなかった。
「ひ……ヒカル君! 大変だよ! アクアが……アクアが!」
車とバイクを洗っている時にアイがすっとんで来た。
それも尋常では無い位に慌ててるけれど……アクアに何かあったのだろうか?
上原パイセンからは特に何も聞いて無いけれど……一体何があったのだろうか?
「どうかしましたかアイさん?」
「と……とりあえずコレ見て!」
アイは手に持っていたポスターを広げて見せてくれたが……
其処にはあの可愛らしいアクアの顔では無く、触れる物皆傷つける怖さを纏った金髪リーゼントのアクアの姿があった。