アイから教えてもらったポスターだが、どうやら映画の物であった。
映画の公開はまだ大分先だし、何時から取り始めたのか分からないが……
「はーい」
「やあ、アクア元気ですか?」
「あ、父さんどうしたの?」
中学生になった事もあり、パパから父さんに呼び名が変化した。
身長も少しづつ伸びており、今じゃあすっかりアクアの方が高くなっており、子供の成長とは早いものだと実感した。
「これ差し入れです」
「あ! ありがとう」
手には食材が入ったビニール袋を持ちあげてアクアに見せると大層喜んでくれた。
「もう3ヶ月経ちますが一人暮らしに慣れましたか?」
「……うーん、学校に仕事に家事もやらないといけないし中々大変だけど、隣に住んでる上原さんがちょくちょく夕食のおかず分けてくれたりしてくれるから助かってるんだ」
「そうなんですか……では私の方からも後でお礼を言っておきますね」
アクアには俺と上原パイセン達の繋がりは教えていないけれど……上手く面倒を見てくれているようだ。
「あと上原さんも役者やっているみたいで……これ内緒なんだけど映画の仕事を回して貰ったんだよね」
「ほうほう……それは良かったですね。なんて言う映画なんですか?」
「お笑い芸人が監督の
アイが持って来たポスターには映画のタイトルは書かれていなかったけれど……やっぱり
「それで……その上原さんも出演されるんですか?」
「うん、上原さんはアカシ役だよ」
上原パイセンがアカシって嵌り役も良い所だ。
脳内再生で真っ赤に染めた髪を逆上げて相手に手招きしながら『かかって来いよ』って言ってるシーンが目に浮かんだ。
「撮影中もそんなんだけど……上原さん面倒見が物凄く良いんだ」
「……そうなんですね。じゃあアクアも疲れて居るだろうし、今日はもう帰りますね」
「うん」
とりあえず……アクアは元気そうだし、髪型はリーゼントじゃなくなってるから問題は無いだろう。
演技も黒川みたいな憑依型だったら結構大変な事になるし……そう言った不安要素が無いのも良いものだ。
アクアの家を後にしてララライに向かうとするか……上原パイセンも多分居るだろうし
バイクに跨り俺はララライに向かう事にした。
誰かしら居るだろうし、中に入る前に自販機でスポドリでも買ってから、ララライの稽古場に入ると中には案の定黒川がおり台本を読みながら動いている事から稽古中のようだった。
「おはようございます」
「あっカミキさんおはようございます」
俺がそう声をかけると黒川はパタパタとかけて来たが……意外とこの子体育会系なんだよね。
その考え方は好きだけど……黒川も大分経験を積んできたようで、舞台では主役級をやる事も多くなりその結果出演女優賞も受賞しているだが……
「黒川さんも大分実力を上げて来ましたね」
「いえ、私なんてまだまだ未熟ですし……これからも頑張って行きます!」
両手をグッと握りしめてフンスと鼻息を上げたけれど……あんまり謙虚過ぎるのもどうかと思うぞ。
まーそれは兎も角として……
「……では頑張ってる黒川さんにこれ差し入れです」
「えっ!? 良いんですか?」
「勿論です」
「ありがとうございます」
先ほど買ったスポドリを黒川に渡すと喉が渇いていたのかクピクピと飲み始めた。
まー稽古は集中すると結構体力使うし、黒川なんかは特に神経を使う憑依型の演技だしな
そんな事を考えて居た時だった。
「あの……カミキさんに質問があるんですけど良いですか?」
「ええ、答えられるものなら良いんですけど?」
黒川は俺の事をジッと見ながら……口を開いた。
「カミキさんって兄弟かまたは親戚のお子さんが居たりしますか? それもそっくりな子なんですけど?」
黒川は恐らくアクアの事を聞きたいのだろう。
何せ今同じ中学校に通っている訳だし、俺にそっくりでアクアは可愛いのだから話題性は十分にあるので黒川の耳にまで届いたのだろう。
別にアクアの事を黒川にバラしても良いし、世間に晒された所で一生分の金を俺が稼げば良い訳なので責任は取れるが……流石にそれは俺の独断が過ぎるし、アイ達に迷惑をかける訳には行かない
「……そうですね。兄弟か親戚の子に関して言えば居てもおかしくはないかもしれないですね」
「それってどういうことですか?」
「私の両親ってそもそも蒸発しちゃいましたから、その後何処で何をしているのか全く分かりませんし、その両親に親戚が居ないとも限りませんからね」
「す、すみません。知らなかったと言え失礼しました」
黒川は慌てて謝罪したけど、両親が居るのが当たり前の黒川から見れば確かに俺は可哀そうな部類なのかもしれないが……
両親が居ないのがそもそも当たり前の俺には謝罪されるような事じゃないんだよね。
しかし、他の両親が居ない子だったら寂しがってるかもしれないので、俺は例外中の例外かもしれないが……
「気にすることはありませんよ黒川さん。物心ついた時から居ないんで寂しくもありせんからね」
「物心ついた時から……?」
うん、黒川が何やら考えこんだが一体どうしたのだろうか? 俺何か不味い事言ったかな?
「まー私の事情は置いといて……黒川さん私にそっくりな子でも黒川さんが通ってる学校か習い事の場にでもいたんですか?」
「ええ……実はカミキさんそっくりの金髪の美少年が今年入学して来まして、大分盛り上がってましてね」
アクアは俺に似て可愛いし、そりゃモテるよね。
「そうなんですか? ちなみに名前は知ってますか?」
「ええ、名前は
普段アクア、アクア言ってるからアレだけど……改めてフルネームを聞くととんでもねー破壊力だよな。
「……カミキさんはそんなDQネーム子供に付けませんよね?」
「……ええ、勿論付けません」
そんな名前付けないよ? 付けないけれど……
「……一体親は何を考えてこんな名前を付けたんでしょうね?」
「それは本人に聞いて見ない事にはなんとも言えませんけど……」
聞いた所でアイがちゃんと答えるかは別だけど……『愛』って漢字をわざわざ2つも使ってる事から、愛の海に溺れたかったんじゃねーの?