阿慈谷ヒフミは聖杯戦争に参加するようです   作:1じゃんね☆

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はい、を選択した方は以下のデータをご確認下さい。

クラス:聖杯のセイバー→暴食のセイバー
【ステータス】
最大HP/現在HP:666/0
筋力:B(判定値:45)
耐久:B+(判定値:49)
敏捷:A(判定値:56) 
魔力:A(判定値:53)
幸運:D(判定値:21) 
宝具:A(コスト:50)

【宝具】
招き融す黄金劇場(ガステール・ドムス・アウレア)
ランク:A
コスト:50
種別:対人宝具/メイン
威力:500
説明:Gaster Domus Aurea.
己の願望を達成させる絶対皇帝圏。
彼女の場合、それは「食欲を満たす事」。
魔力を用いて、作り出された黄金劇場内部を自身の胃袋と接続・拡張する事で劇場内に閉じ込めた存在を貪り尽くす。
舌で転がし味わうのではなく、あくまでも腹を満たし消化する為だけの宝具。
またその暴食の権能を用いる事で───。
効果:詳細不明。





招かれざる客

 

 淑やかな雨に濡れた火は惜しむように別れを告げる。

戦闘は終わりを迎えた。

その意思と祈りをもって勝利を得たのは聖園ミカ。

敗者は、ただ倒れ伏している。

 

「……馬鹿な。あり得ん。お前如きに。余が……余は……」

 

 周囲に立ち込める焼け焦げた肉の匂い。

周囲を蝕むように展開していたは、ミカの砲撃を受けて完全に瓦解した。

悍ましき臓物の劇場は、泥のように大理石の如き白亜の地面へと落ちては粒子となって消えていく。

 

「……結局、さ」

 

それは女も同じ。

立つ事すら出来ないでいる暴食のセイバー。

誰が見ても決着は着いていた。

 

 

 

「貴女、()だったの?」

 

 

 

 そんな姿を憐れむわけでもなく淡々とミカは問いただす。

暴食のセイバー、その肉体は徐々に崩壊し、腐り落ちた肉は粒子となって消えていく。

その不可思議な死相を前にしてもミカの中に油断も動揺もない。

自ら手を下した。

だがそれを今目の前にして、罪と数える事はない。

そんな余裕はミカにはない。

 

 聖園ミカは天性の実力者だ。

キヴォトス内でも強い生徒は幾人もいるだろう。

誰も彼もが元から生まれ持った才覚は大なり小なり持っているしそれを努力で養って来た。

 

 だが、ミカのセンスはその中でも飛び抜けていた。

戦士としての才覚なのではない。

純粋に生物としての強さ。

 

 ゴリラが何故人類より強いかなど、今更語る必要が果たしてあるだろうか。

否だ。

見れば分かる。

 

 ミカも同じなのだ。

真っ当な学生達とはそもそものスタート地点が違う。

ある種の生物としてのステージが違うのだ。

無論、鍛えればミカと戦える生徒はいるだろう。

だが、ミカはそもそも鍛錬をしているしていないという次元にいない。

生まれ持った筋肉(肉体)

暴力的なまでに内包される神秘。

それらを十全に運用しきるセンス。

鍛えずともハイレベルなサーヴァントとも単独で十分に渡り合えるほどに高い位置にある才能の持ち主。

それが各校の最高戦力に並ぶほど高い戦闘能力を有した令嬢、聖園ミカなのだ。

 

 故にこそ聖園ミカは気づいていた。

野生の本能、第六感。

 

 

 

「その身体さ───()()()でしょ?」

 

 

 

 目の前の敵がサーヴァント云々など関係なく、命を持っていないその事に気づいていた。

聖園ミカはこれまで幾度も先生と共に戦場を潜り抜けてきた。

その中には目の前の女と 似て非なる存在(ミメシス)もいた。

 

 第六感、直感とは本来超能力などではない。

阿慈谷ヒフミの契約継承が齎した恩恵で獲得したスキル『直感』や百合園セイアが嘗て有した未来視の残滓たる『勘』。

それらと、人間本来が持つ直感はそもそもの意味合いが異なる。

 

「余は……余は皇帝……余こそが至高……この世すべては……」

 

 曰く、経験の集合知。

それこそが本来の意味での直感だ。

これまでの経験から近似値を弾き出してその後を反射的に計算する、それが勘であり直感。

その精度とはこれまで生きてきた中で重ねた経験と、それをどれだけ参照できるかどうかで変わる。そして戦いの最中、ミカは確かに直感したのだ。

この女は違う。

この女は。

 

「誰かの皮を被って、誰かがこれまで培った物を我が物顔で振るってる。中身がない……そんな気がするの」

 

絶望的なまでに空っぽなのだと、気づいていた。

 

 ミカはお喋りが好きだ。

アクセサリー集めが好きだ。

化粧をするのが好きだ。

美容にだって気を遣っている。

何故なら飾るのも綺麗になるのも可愛くなるのも好きだから。

瑞々しい、良い意味で十代らしい感性の持ち主。

 

美しい物を人並みに好む少女なのだ。

 

 だからこその違和感だった。

顔の作りはいい。

ドレスのセンスだって自分の好みとは異なるが確かに美しい。

そして自分では選べないセンスだからこそ、それを着こなす姿は羨ましいとさえ思わせる。

容姿も抜群で、その体格も愛らしさを増すほどだ。

 

 なのにどうしようもなく肌が死んでいた。

呻いてしまうほど、美容に気を遣っていないのが初見で見て取れた。

 

 可笑しいのだ。

あり得ないのだ。

ミカであれば、自分ならばあんな立ち振る舞いも見てくれでいるのも我慢ならないと思えるほど。

まるで誰かが大切にしていた服を奪ったから、保管の仕方や手入れの仕方も分からない。

 

 そしてもう一つが聖園ミカという少女の真骨頂。

天賦の肉体と呼ぶべきその完成された肢体。

誰に習うわけでもなく、それを十全に運用する()()()()()()

自分の体を誰よりも上手に動かして思うままに躍動させるミカの才覚。

それがあるからこそ、女の出鱈目な動きや剣技に違和感があった。

力任せに身体を動かす暴食のセイバーの動きが、どこかちぐはぐに見えたのだ。

 

 そんな風にさえ思わせたから。

だから、気づいたのだ。

この女の身体は、()()()()()()()()()()()と。

 

「余は……それをお前如きが……許さぬぞ……間女……よくも余の晩餐を、馳走を……」

 

「……ま、いっか。どうせ答えなんてこの様子じゃ返ってこないだろうし。それにその顔のそんな風な表情なんて、私もう見たくないや」

 

 地に伏せた女が這うようにじりじりと迫り来る。

足の分解も始まっている。

ドレスの裾が解けるように宙に舞って、泡のように弾けて消える。

そんな死に体へとミカは銃口を合わせた。

 

「余の、余の……桐藤、ナギサ……余の愛しい……余の、私の……ナギサ……様……食べようと思ったのに……食べて、あげようと……」

 

 そう言って進む女の意図を理解する。

女は既にミカを見てはいない。

這って進む先は瓦礫に閉ざされた向こう側。

ナギサが横たわる其処へと手を伸ばそうとしているのを見て、ミカは溜息をこぼしてから。

 

「……貴女のじゃないよ。貴女の顔も身体も、それにナギちゃんもね」

 

憐れむように言ってから、その引き金を引いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は、ぁ……はぁ……」

 

 残心。

 暴食のセイバーの頭蓋を吹き飛ばしたその後、女の身体が粒子となって完全に消滅したのを確認。

見届けるや否や、ミカの片膝は地面に着いていた。

 

「……っそ。きっ、ついなぁ……」

 

 肩で息をし、唇を噛み締めるように言うその姿。

破れた白いストッキングが、そしてその星空のようなスカートが紅い水溜まりで染まるのも気にせずにミカは暫しの休息を取る。

 

「……っあ、くっ……はぁ……ぁ……」

 

 当然であった。

ゲヘナでの決戦。

そこからの連戦してのセイバーとの死闘。

移動も加味すれば凡そ5時間近くもの間、ミカは戦い続けた。

 

 相手はどちらもサーヴァント。

片や限りなく源流にあった古き女神。

片や悍ましき怪物と化した古代の皇帝。

いずれも難敵、ましてや後者に至っては一対一での決闘となったのだ。

 

 疲労の色は濃い。

全霊で燃やした闘志によって立ち続け酷使した肉体の限界は近い。

血を流し過ぎた。

未だ激戦の余韻に浸ってか燃え盛る戦場。

その薄い酸素の中で煙も吸い込み過ぎている。

ともすれば肺とて焼けているだろう。

最後に撃ち込んだ全力の砲撃もまた、ミカの体力を奪う最後のダメ押しには十分。

 

 今のミカは目の焦点すらぼやけている。

正に満身創痍。

だが、それでも。

 

「……よし。休ぅ、憩、おっわり……☆」

 

 ミカは悲鳴を上げる全身に喝を入れて立ち上がる。

震える膝を叩く。

羽が抜け落ちた翼で地面を押し返すようにして支える。

 

 そうやってなんとか立ち上がったミカは、後ろを振り向いて瓦礫へとゆっくりと歩いていく。

ふらつくその姿に、傍の愛銃がかちゃりと小さく金属音を鳴らして抗議するがミカには何も聞こえない。

 

「……救護騎士団と話さ、なきゃ。セイアちゃんに明日からの話も……見回り……先生に……」

 

 支離滅裂に、それでもこれからの事を口に出してなんとか途切れそうになる思考を押し留めようとする。

聖園ミカは嘗ての役職を追われた。

既にその立場はあくまでも次の人員が決まるまでの繋ぎでしかない。

実権なぞありはしないのだ。

 

「……角付きと、話し合……主戦派を……黙らせて……またパテ、ルの子達に……」

 

あの聴聞会でミカに降った決定は重い。

その実権は最早存在しない。

ただ名前だけ所属してるに過ぎない。

当代においてパテルの名声は地に落ちた。

 

「それから自警団を一時……ツルギちゃんに……アビド、ス……ホシ……と……はぁ、あっ……アヤネちゃんに……」

 

 だが それでもミカはティーパーティの一員なのだ。

それでも()()パテル派の首長なのだ。

あの聴聞会でミカが議長に返した言葉通り、ミカは今の立場を()()()()()()()だと受け止めている。

故に、己が務めを果たさんと考えを回す。

フィリウスが倒れ、ヨハネは退き、ユスティナの遺児もまた口を閉ざすばかり。

残すはサンクトゥス、そして己が所属するパテルのみ。

嘗て生徒会長の一翼を担ったからこそ、聖杯戦争という未曾有の状況でその役目を全うする、全うしたいという思いがあった。

 

「(せんせ……見て、て……わたし……!)」

 

 なにより。

今ここで意識を失うわけにいかない。

立ち止まる事なんて選べない。

まだ、頑張りたいと心の炉に無理やり火を焚べるのだ。

理由なんて、決まっている。

 

「ナギちゃん……今、行くから、ね……」

 

 肩で息をする。

重たい膝を歯を食いしばって上げる。

全身を苛む痛みを理性で黙らせる。

友が待っているのだから。

そして、ミカはナギサの元へと歩いた。

 

 救護騎士団への要請は済んだ。

とはいえあの戦いは外からも詳細までは分からなくても、危険な事態なのは分かりきった話。

他のティーパーティ所属の生徒も避難誘導を済ませておいた今、戦いが終わったのを知らせ、少しでも早くナギサを引き渡す為にはミカがこの場から連れ出す方が早かった。

だから歩く。

無心で、痛みも疲労も見て見ぬ振りをして。

ゆっくりとした足取りで。

歩いては止まりそうになるのを引きずってでも前に出して。

瓦礫を避けて、壊れた噴水から溢れる水で泥濘む道に足を取られても何度も起きて上がって。

そうして、とうとう最後。

バリケード代わりにした瓦礫まで辿り着いた。

 

やっとだ。そう思ったミカの顔に晴れやかな物が浮かんで───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うむ!よくぞ歩いたな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 絶望がミカの後ろから聞こえてきた。

 

()()()生徒の分際で皇帝たる余を一度殺したのだ……さぞ満足したであろう?」

 

 硬質な音がタイルを叩く。

余韻でしかなかった炎が命を吹き返す。

ミカはそれに、背中に投げ捨てられた言葉に、消えたはずの敵に、反応しようとして。

 

「褒めてやってもいいが、いい加減貴様の顔にも飽きがきた!うむ、というわけで死ぬが良い!」

 

 それでも身体はその殺気に応えられるどころか、まともに振り返る余力すら最早残らず。

 

「(あーあ……もう、ダメっぽいな……じゃあ仕方ない、か……)」

 

 見えはしていない。

だが間違いなくアレがいる。

粘りついた気持ちの悪い、さっきまで相対していた物が背後にいるのがミカには分かった。

 

「(でも、負けられない。少しでも……ちょっとでも……)」

 

 振り返っても無駄だった。

これからどう動こうが、人外染みた聴力が捉えた風切り音で自分のこれからが容易に想像出来た。

 

 それでも翼を犠牲にして、なんとか防げるかもしれないかと考える。

この肉体をまだ酷使すれば時間を稼げるかもしれないという淡い期待に縋りたくなる。

だからもう、形振り構っていられない。

 

 ミカは震える指で背中を向けたまま急いで救護騎士団に突入の指示だけ出して、ポケットに入れる気力すらなくそれを地面に転がした。

 

「(セイアちゃん……あと、よろしくね……せんせい……ごめんね……ナギちゃん……)」

 

処刑刀の一撃、その初太刀をなんとかする。

その後は全身を投げ打って少しでも相手の動きを妨害し、邪魔してやろうと。

たとえこの身体が両断されようと脚にしがみついてでも止めてやると。

 

「(バイバイ……)」

 

この命を賭けてでもナギサの元へはいかせない。

必ず差し違えてでも守ってみせると誓って。

振り向いて。

目の前にはい、い、血の色をしたが───。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 果たして、最悪は訪れなかった。

 

 

 

 

 

 

「……無事ですかな?

 

 

 

 

 

 

炎が悲鳴を上げた。

先ほどまで女に倣うように燃え盛っていたそれは、今やしおらしくなって見る影もない。

当然だ。

たかが見当違いな怨嗟の怪火如きが。

 

「遅参、失礼」

 

その男の魂を燃やす本物の焔を前にして舞台を開け渡さない筈もなし。

 

「主人の命を受け、そして私自身の願いから」

 

思わずへたり込んでしまっていたミカは見た。

その背中を。

その赤い外套を。

偉大なる戦士の威容を。

 

「貴女の戦いに、貴女のその覚悟に」

 

青銅の兜。

緋色の衣。

手には黄金の槍と盾。

 

その出立ちこそ、嘗て少女が願った祈りその物。

トリニティを。

⬛︎⬛︎⬛︎な⬛︎⬛︎を。

⬛︎⬛︎な⬛︎⬛︎を。

不条理に⬛︎つく⬛︎かを⬛︎⬛︎為に。

そんな清廉な祈りに応えんとして、この地に呼ばれた英雄。

 

 

 

「─── 横槍を入れさせて頂く

 

 

 

 トリニティへ土足で踏み込んだ愚かな敵を打ち砕く為に。

大切な誰かを守ろうと命を賭ける覚悟をしたミカを守らんが為に。

槍兵と少女は一度別れを告げた土地で、再び槍を手に取った。

 

「……くなって申し訳ありません。ミカ様」

 

 瓦礫が崩れる音がして、はっとミカが顔を上げる。

其処には見覚えのある少女が見たこともない表情で立っている。

シスター服でもトリニティの制服でもない、喪服に身を包んだ少女は座り込んでいるミカへとそっと手を当てた。

 

「もう、大丈夫です。ナギサ様でしたらこちらで治療を済ませました……私達の戦いに巻き込んでしまい、ごめんなさい」

 

「貴女……シスターフッドの……」

 

「……私が至らぬばかりに、ご無理をさせてしまいました。ですからどうか、せめて暫しの間だけでもお休み下さい。あとは私達が引き受けますので───ランサー

 

「ぁ……待っ……ぅ……」

 

 そう言って治癒の結界を張った少女は、盾によって弾き飛ばされた敵を見据えながら、自身の従者に呼びかける。

 

「此処に」

 

ミカは意識を薄れさせていく中で、その言葉を聞く。

 

 

 

遠慮は不要です───の違いを見せつけなさい

 

 

 

硬く、けれど凄まじいまでに冷たい覚悟。

張り詰めた怒り。

 

「無論。我がマスター、伊落マリー」

 

そして灼熱の炎が如き信頼。

 

 

 

誇りある勝利を貴女に───ッ!

 

 

 

 そうしてミカは、自分が見かけた伊落マリーの印象とは全く異なっていながらも、美しい一組のマスターとサーヴァントの姿を最後に耳にしながら意識を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミカが暴食のセイバーと剣を交えるより少し前。

遠く、アビドスの地でもまた戦火が上がっていた。

 

んッ……のッ!」

 

 夜のアビドス。

探照灯(サーチライト)が照らす戦場でけたたましく銃火の嘶きが響く中、群を抜いて駆け回る姿があった。

 

「繝、繧√※縺上l」

 

「何言ッてんだか……ッ!」

 

「縺阪∩ 繝イ縺阪★縺、繧ア縺溘¥縺ェ繧、」

 

 アビドス高等学校1年生、リカ。

車を廃屋を、蹴っては多角的な機動で翻弄しつつ、暴れ猛る愛銃から乱射し敵を討たんと果敢に攻めている。

 

 対するは()が一人。

否、一騎。

 

「縺ォ縺偵m縺ォ縺偵↑縺輔>」

 

 不定形に揺らめく影そのもので構成される泥土が如き霊基。

それはセリカ達が今敵対する敵が不安定であり不完全である事の証左。

残留汚染霊基を有したサーヴァントのなり損ない。即ち、()()()()()()()()()()

 

「わっ……かんないってのッ!」

 

 シャドウサーヴァントの手に持つは棍棒。

前時代的と侮るなかれ。

成人男性の太腿よりも遥かに太く、シャドウサーヴァントの腰丈程もある長さ。

たかが()()()と侮れば頭蓋を陥没させられても文句は言えぬ兇器(まがきもの)である。

 

「縺吶∪縺ェ繧、縺シ縺上ワ縺セ繧ソ」

 

 シャドウサーヴァントと侮るなかれ。

通常霊基のサーヴァント達と比べれば遥かに脆く、その出力も低いが、今セリカが対峙しているのは()()()()()()とは一線を画す。

言語を解するという事。

つまりは核となった残留思念がそれだけしっかりと()()()()()のである。

それ即ち、英雄と謳われるまでに至った魂を相手取るということ。

 

「撃ち合いじゃ埒が明かない……ッ!」

 

 無論、本人ではない。

サーヴァントとしての格も出力も、どうしても通常霊基より劣るのがシャドウサーヴァントだ。

それでも嘗て偉業を成した男の残留思念が宿っているのだ。

凡百の、それも意思薄弱な自我のない個体とはまるで違う。

故に、セリカの猛撃を確実に致命傷を避けながら防ぎ続け、ついには迫る。

 

「繧医¢縺ヲ縺上l繝ヲ繧ヲ繧ォ繝ウ縺ェ縺励g繧ヲ繧ク繝ァ」

 

 剛槌。

振り下ろされる直線的な一撃はそれこそアスファルトの路面を陥没させる威力。

まともに喰らえば、如何に頑強なキヴォトスの人間であるセリカとて怪我は免れない。

 

 

 

「見えてん……のよォッ!」

 

 

 

 だからこそ、まともに受ける道理はない。

 

「縺翫←繧阪>縺溘↑」

 

往なし(パリィ)

重い一撃をアサルトライフルの曲面でなぞるように受け流し、セリカは()()()

 

「どっ……せいッ!」

 

 天地投げ(サマーソルト)、その応用にて。

相手の放った 振り下ろし(縦軸)の勢いを利用しての後方宙返り。

探照灯に照らされる世界から抜け出し夜闇へと紛れる様はまさに黒猫。

野生を思わせるしなやかな躍動であった。

 

「さぁ!ぶち抜くわ……ッ!

 

猫の如き身熟しで曲芸を成し遂げたセリカはそのまま空中で構える。

言うが早いか、弾いた引鉄に応える セリカの愛銃(シンシアリティ)の銃口からは火花が飛ぶ。

 

「……縺ソ縺斐→」

 

そして宣言通り、10発の弾丸は腕を下ろしたシャドウサーヴァントの胸部へと吸い込まれ、セリカの着地と共に消滅した。

 

 

 

 

 

 

「縺倥c縺ゅ%繧薙←縺ッ繧上◆縺励→縺ゅ◎繧薙〒繧ゅi縺翫≧縺九@繝ゥ」

 

 

 

 

 

 

 だが、地面に降り立ったセリカへと次に迫るは鋭き爪。

明かりを嫌うように廃ビルの影からぬるりと沸き出た影は、翼種類を思わせる禍々しい鉤爪を今まさにセリカの柔肌へ突き立てんとする。

 

「……ッ!もうっ!」

 

万事休す。

迫る兇撃は()()()()()()を求めて今まさにセリカへ触れんとした。

 

 

 

 

 

 

「───、見えてるならこっちも処理するべき

 

 

 

 

 

 

「過保護すぎなんだから……!」

 

 だが、兇手は更なる強襲によって防がれる。

安易にも手を伸ばした影。

それに待ったをかけたのは銀の閃光。

セリカの目に眩い背中が映る。

 

「繧医@縺ヲ縺サ縺励>繝ッ」

 

 セリカに襲いかかった腕を掴み取った少女は肩幅に開いた両脚とその右手に力を籠める。

抜山蓋世。

 

「縺ェ繧薙※縺ー縺九§縺九i」

 

振り抜くは、今。

 

 

 

「───ッ!

 

 

 

 小手投げ(アームロックスロー)

掴んだ相手の腕を捥ぎ取る勢いで敵を()()()

投げる先は決まっている。

ここは土俵ではない。

ならば、答えは一つ。

 

「縺翫※繧薙ヰ繝。」

 

乾いた音に篭って鳴るのに被せて派手な低音が響く。

アスファルトに叩き込まれたシャドウサーヴァントは少女に掴まれた腕をそのまま極められながら突きつけられた冷たい鋼を感じて悟ってなのか、霊基を揺らした。

 

「縺サ繧薙→」

 

「……これで終わり」

 

「縺翫>縺溘′驕弱℃繧九o繝ィ」

 

 恨み言かそれとも別の何かか。

聞き取れない言葉を告げたシャドウサーヴァント。それに対して少女は鉛色の戦意を以て返答とした。

 

()()()()()!」

 

 窮地を脱したセリカが駆け寄るのは、たった今自分を助けてくれた銀髪を揺らす少女の元。

既に先ほど始末を終えたシャドウサーヴァントの霊基消滅を確認し、油断なく銃を構えている。

 

「助かったわ!ありがと……!シロコ先輩!」

 

 アビドス高等学校2年生、ロコ。

セリカに礼を言われた彼女は軽く左手を挙げるとはにかんだ。

 

「ん、どういたしまして。可愛いセリカが怪我したら大変……間に合って良かった」

 

周囲への警戒は怠らないまま、後輩の怪我がないかどうかの確認を済ませたシロコはセリカを連れて歩き出す。

少し積もった砂が哀愁を一層に際立たせる、空き家が並ぶ住宅街。

そこを抜けた先にある大通りへと二人は向かう。

 

「なんか久々にシロコ先輩の白兵戦見たけどやっぱり流石って感じ……ってか、良かったの?()()()()()

 

「問題ないよ。()()()()()()()()()()()()()し、あの喋るやつはセリカが引き受けてくれてたからね……それとセリカ」

 

 久々に披露したホシノ仕込みの体術を褒められてちょっぴり胸を張りつつ答えるシロコだが、じとと流し目でセリカを見る。

 

「うげぇっ……はい」

 

それに心当たりがありますと言わんばかりに肩を揺らしたセリカは心なしか小さくなって返事をする。

シロコも嘆息しつつ口を尖らした。

 

「最後しか見れなかった。けど、とっても良い動きだった。特に最後にした対処は私から見ても百点満点。ホシノ先輩が見てたらきっと褒めてくれたと思う……でも、油断は禁物」

 

 セリカとシャドウサーヴァントの戦闘。

シロコが割って入るちょうど直前に見たセリカの戦い方は基本に忠実かつ、セリカの得意とする機動力を活かした()()()()()()()()()()であった。

シロコとしても後輩の成長振りに誇らしさすら覚える物だったが、だからこそ注意する。

最後の最後、物陰の奇襲。

常のセリカであれば気づいて先手を打てただろうと。

 

「うぅ……反省します……」

 

 シロコの言葉をセリカも素直に受け入れて、肩を落とす。

緊張の続く戦闘。

だが、終わりが見えないとは交代も含めてまだ精神的にも肉体的にも余裕がある状態で強敵を倒した事と自分でも改心の出来と呼ぶべき動き。

高揚から来る油断があったのは否めなかった。

 

 そんなセリカの殊勝な様子にシロコは目を細めつつ笑った。

セリカはまだ一年生。

だというのに、シロコが覚えている限り、去年の自分よりずっとしっかりしていると感じていた。

少々喧嘩っ早く、今のようにまだまだ抜けているところがあるのも事実。

とはいえ、実力も確実についてきた後輩はもうすっかり頼りになる存在になっていた。

 

 後輩の成長。

そしていつの間にか一年前の彼女と同じ立場になったのだという事実。

改めて感じるそれが、シロコはたまらなくその胸の奥を温かくしてくれる。

 

「ん、セリカなら次は大丈夫。ただ、本当に気をつけて。特に……そうだね。セリカはさっきみたいな引っ掻き傷なんて絶対厳禁、だから」

 

 気持ち浮かれそうになる足を諌めつつ、シロコは夜道を進んでいく。

探照灯に照らされ浮き彫りになる人気の無さと遠くから聞こえる銃声は自分がいま戦場に立っていることを想起させるが、隣で訝しむ後輩がいれば。

自分達はなんだって出来るのだと慢心とはまた違う強い自分が胸中を占める。

 

 だからだろう。

本人も自覚しないほど薄っすらと鼻歌混じりに話す先輩にセリカは疑問を投げかけた。

 

「え?なんで?」

 

 それにシロコはきょとんと惚けた顔をする。

うわっうちの先輩顔良すぎでしょ、なんて事をセリカが思っていると。

 

「だってセリカは今度の謝肉祭でアイドルになって歌って踊るでしょ?だから、怪我したら駄目」

 

さも当然と言わんばかりにシロコは引っ掻き傷なんて目立つ怪我をさせられない理由を伝えた。

 

「あー!もぉぉ!だからしないっていたでしょ!?」

 

「ん、私は聞いてない。もうトリニティの子達にも伝えた。ついで申請書類も貰っといた」

 

 飄々と答える先輩の姿に髪を逆立てるセリカ。

ほんの少し歩幅が大きい彼女は気にした様子もなく快活に、そして迷いなく歩いていく物だから力一杯の抗議をしたセリカは僅かに遅れてしまう。

 

 たった半歩分だけ空いた距離。

とはいえここは戦場。

落ち着いたとシロコが言ってるとはいえ急ぐに越した事はない。

だからセリカは駆け出した。

 

 

 

「だぁぁぁ!?なんで勝手に話進めちゃうわけ!?大体アヤネちゃんだっぐぇっ……ッ!?」

 

 

 

 ───()()

セリカが何かを知覚するより早くシロコは動いていた。

突然、目の前で先輩が素早く動いたかと思えばいきなりブレザーの襟首を掴まれ、次に意識した時にはセリカがいたのは空中。

爆ぜるように跳ねたシロコの腕に導かれて、セリカは瞬時に電信柱の上へと引き上がれていた。

理由は二つ。

 

 

 

「謔ェ縺上↑繧、逶ョ繧呈戟縺」縺ヲ繧、繝ォ繝翫Β縺吶a」

 

 

 

一つ目は今さっきまで立っていた場所へと叩き込まれた鎖付きの鉄球、そしてそれを放り投げたシャドウサーヴァントとソレが引き連れた一団からの奇襲をシロコが察知した事。

 

「縺昴l縺ォ……」

 

そしてもう一つは。

 

 

 

 

 

 

「───ナイスですシロコちゃん!」

 

『三時の方向!対象全補足!ノノミ先輩!願いします!」

 

 

 

 

 

 

 

たった今、 シロコ達が立っていたその(シャドウサーヴァントが姿を現した)場所へ。

 

「蠕瑚ゥー繧√b荳頑焔繧、……濶ッ繧、繝「繝弱r隕九&縺帙※繧ゅi縺」縺溽、シ繧偵う繧ヲ」

 

毎分にして6000発という規格外の射撃が叩き込まれるからであった。

 

 

 

 

 

 

「ぐえっ……!?」

 

「あ、ごめんセリカ、つい」

 

 土煙が晴れると共にシャドウサーヴァントの霊基が霧散したのを確認したシロコは後輩の襟首を掴んだまま再び地面へと着地した。

 

「いや……げほっ……良いけどってか……ごほっ……助かりましたけど……えほっ」

 

 セリカを離さなかったのは単純に電信柱の上に二人分のスペースがなかった事。

そして同級生が自分達を救う為に放った一斉掃射でほんの一分足らずで全てが片付いてしまったからだ。

 

 もっとも、シロコの左手で襟首を掴まれ子猫のよつに運ばれたまま宙吊りになったかと思えば、僅か1分弱の間でそのまま急降下したセリカからすると状況はなんとなく理解していても酷い目にあったと思わざる得ないと言ったところだが。

 

「助かった、ノノミ、アヤネ。数が多いからちょっと私達二人だと仕切り直すにしても面倒だなって思ったところ」

 

 あの時、敵影を察知したシロコの視界に映った見慣れた姿の正体。

一人はシロコの同級生。

 

「いえいえ!こういう時こそリトルマシンガンV(うちの子)の出番ですから♧」

 

 アビドス高等学校2年生、六夜ノミ。

そしてもう一人、いや。

 

『お役に立てて何よりです、シロコ先輩。それからええっと……大丈夫?セリカちゃん』

 

もう一機のドローンの通信越しに聞こえてくる声はシロコの後輩、ヤネの物だった。

 

「げっほ……こほっ……なんとかね。来てくれてありがと、アヤネちゃん、ノノミ先輩。あとシロコ先輩も……」

 

咳き込みながらそう言うセリカにサムズアップを返すシロコと器用にドローンを操作して頷き返すセリカ。

続くようにノノミも満月のような笑みを浮かべた。

 

「はい、セリカちゃんもお疲れ様でした!……あ、先ほどの話でしたら安心してくださいね!」

 

 一瞬、ノノミの言葉に疑問符が浮かびつつも呼吸を整えると共にセリカは合点がいく。

俄かに沸き立つ安堵から、セリカはやっとの思いで見つけた仲間へ縋るようにしてノノミを見た。

 

 

 

「え……あ!もしかしてさっきの話ってアイドルの!じゃ、じゃあ!安心してってことはもしか「衣装と楽曲のアイデアはたぁくさんっ!用意してあります♧」しなかったかぁぁぁぁ!

 

 

 

 無念、黒見セリカ。

自身もアイドル活動を不定期でしているノノミ主導で虎視眈々と画策されている後輩アイドル化計画は止まる事を知らなかった。

 

「なんで!先輩達は!そんなに!私達に!アイドル!を!させたいんですかっ!」

 

「えー☆アヤネちゃんは乗り気でしたよぉ?」

 

『あっ、あれは!正義実現委員会の皆さんがいらっしゃる前でしたから……!』

 

 慌てて弁明するアヤネだが、思わぬ援護射撃が後方から来る。

もっとも、それはアヤネにではなかったというか、アヤネの背中を押す(撃つ)物だったが。

 

『こちら第一班!アヤネさん!?謝肉祭で踊ってくれないんですか!?』

 

『しーきゅーしーきゅー。こっちはだい五はーん。楽しみにしてたのになーってこっちの子達が落ち込んでるよー』

 

『第八班です!セリカさんが踊らないと聞いてご老人方が肩を落としています!』

 

「だぁーッ!もうッ!うるさい!やるなんて一回も言ってないのッ!あと第五班!あんたんとこの生徒なんだからちゃんと言っといて」

 

『えー、のーせんくー』

 

「おばか!というかこんな話してる暇じゃなくて……」

 

 三人娘が揃えば姦しいとはよく言った物。

戦場と化しているのが嘘のように賑やかな声が夜に響く。

 

 だが、それでも此処は戦場。

未曾有の大事件『聖杯戦争』の余波を受け、今まさに侵攻の最中にある。

故に、セリカの思考に飛び込むのは()の話題。

 

 

 

「アヤネとノノミが来たって事は()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 引き継ぐように意を汲んだシロコの言葉にアヤネは意識を切り替えて固い言葉を紡ぐ。

 

『はい、ほとんど終わりで後は連絡待ちです。だからお二人を迎えに来ました』

 

「不安そうにしてたし、もうちょっとかかるかと思ったけど案外手早くすんだわね」

 

「大丈夫でしたよー。なにせ皆さん、もうすっかり()()()()ですからね☆」

 

 ノノミは変わらず微笑みながらも()()()()()()を脳裏に思い浮かべる。

来た当初こそどうなるかと思っていた彼女達の存在も今では馴染んでいる。

 

 それこそ同じ釜の飯を、というやつなのだろうと奇しくもノノミとセリカは同じ言葉を思い浮かべながらそれぞれの銃器を手に取った。

 

『というわけで皆さん。そろそろ時間です……行きましょう』

 

 アヤネも察して切り替えを促す。

数時間振りの楽しい談笑(休憩)は終わり。

此処から先は、ただの女子高生ではなくキヴォトスの生徒に戻る時間なのだから。

 

「あーもう、本当世話が焼けるんだから」

 

「ふふっ、帰ってきたらお疲れ様会ですねー☆」

 

 三人の前に先立つアヤネのドローン。

その管制灯火が淡く道筋を照らす。

ぼんやりとした光はこれから死地へと向かう道標。

 

「ん……でも、きっと大丈夫」

 

 だが、と。

この場にいる誰もが恐れを抱く事はない。

それは実力。

怠る事なく磨き培ってきた自分達の力量。

それは経験。

幾多もの困難を仲間と、そして信頼できる()と共に乗り越えた自分達への自負。

そして、信頼。

自分へではない。

それぞれに、それぞれが向ける信頼を。

仲間達が自分を想う気持ちを信じている。

 

 だからこそ、恐れはなく、歩みは真っ直ぐに彼女達は進んでいくのだ。

そしてそれは、()もまた同じ。

シロコ達の数キロ先で到着を待ち侘びる者もまた、その足取りに高揚と期待に胸を踊らせている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

では、力比べといこうか。古き神秘の残り香達

 

蠢くは百を超える影。

従え、その奥に座して待つは。

 

 

 

 

 

 

どうか我らに魅せてくれ───輝き

 

 

 

 

 

 

 

アビドスにも縁深き異邦の王。

 

今宵、キヴォトスで開かれた戦線において最大規模となる戦場へとシロコ達は歩を進める。

向かう先は、アビドス砂漠。

敵の銘は───()()()()()()()()

 

 

 

 





1じゃんね☆
遅くなってごめんなさい……なんとか進んだじゃんね☆
色々あったけどこれでミカちゃんのお話はおしまい!
元々ミカちゃんのお話は全部で五つの戦闘イベントからどれか一つを選んでもらった結果、実際にみんなに遊んでもらった安価を元にして書いてるじゃんね☆
残り四つに関してはミレニアムのみ、SSって形で本スレに投稿して残りは書くの時間的に余裕ないです……ってお話したやつだったじゃんね☆

というわけで次回からは『Part6スレで約束した通り』、ミレニアムも含めて残り四つの安価で選ばれなかった戦闘の様子を書いていくじゃんね☆
次の話からはアビドス防衛戦、爽やかにいくじゃん☆

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