阿慈谷ヒフミは聖杯戦争に参加するようです   作:1じゃんね☆

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へいへーい、そこのおねーさん

お急ぎみたいじゃん?私達と相乗りなんて、どう?
今なら乗り賃は……へぇ、いいね

おっけーおっけー、じゃあ決まり



───お代は身体(働き)で払ってもらうとしよっか





アビドス防衛戦(3)

 

 対策委員会、正義実現委員会、そしてティーパーティの砲兵。

このアビドスの地に集った誰もが全力を出し切った防衛戦。

 

 そこにあるのは強い意思。

折れず、曲がらず、挫けんと己が心に誓いを立て走り続ける青い輝き。

意思なき亡者達では到底届かない貴き若さ。

たとえ数の不利を覆す事は出来ずとも、彼女達は確かに拮抗し、見事に時間を稼いだ。

 

 そう、彼女達の誰もが逃げ出さずに戦い抜いたからこそ。

現在のアビドス防衛戦において、両者の戦力は拮抗し。

 

 

 

「……こいつは驚いた()

 

 

 

砂狼シロコは敵の本陣へと辿り着いた。

 

「……貴方が、敵の親玉?」

 

 月明かりの下、砂塵が幾多もの丘陵を描くその場所。

見上げて尋ねるシロコの視線の先には、一人の男が立っている。

 

「応とも!……と言っても、あくまでこのアビドス攻めの、という枕詞が着いちまうがナ」

 

 ソレは焼けた素肌が砂漠に似合う男だった。

からりと乾いた深みのある声は南風を思わせる。

鈍色の鎧と群青の外套。

そしてその手に持った円盾と槍がなければ。

その身を這うようにして全身を黒ずませる影さえなければ、とてもではないが敵には見えない。

 

「(ちょっと……やり辛いな、こういう相手)」

 

 如何にも悪役めいた敵が出てきてくれたのならシロコとしてもありがたかった。

さも()()()然としていてくれれば、此方としても何に厭う事なく殴れるというもの。

だが、目の前の男から快活さはあれど邪なモノをシロコは感じ取れなかった。

 

「……どうしてアビドスを攻めて来たの?」

 

故に、開いたシロコの口から意図せず飛び出したのは疑問であった。

如何にしてか。

理由を問う。

何故目の前の男はアビドスを()()()()()()()のか、と。

 

()()()()()()。戦争にそれ以上の理由がいるか?」

 

 そう───破壊だ。

男の言うように戦争であろう。

今宵行われているのは侵略で、侵攻で、だが破壊でしかない。

 

 土地が欲しい、金が欲しい、人が欲しい、利権が欲しい、平穏が欲しい。

時代が進み、社会の高度化に伴って戦争という物は複雑怪奇な様相を成すのが慣わしだが、その根幹にあるのはいつの時代も変わらない。

 

()()()()()()()()()()()()、その一点。

 

「答えになってない。私はど「何故必要なのか、その理由か」……そう」

 

 シロコの習った限り、戦争とはそういう物であるからこそ今宵の侵攻は理解できない。

機械的に、そして徹底的に破壊し尽くさんとする彼らの真意は何か。

 

「悪いナ。他ならぬ侵略を受けたお前からの質問だ、どうせなら真摯な解を出してやりたい。だが此方にもちと厄介な制限がある」

 

 しかし返答は首を横に振るだけ。

男は口惜しいと皮肉げに唇の端を歪めた。

その仕草にシロコは息を吐く。

 

「……ん、分かった」

 

 溜め息一つ。

それからシロコは改めて銃を構え直す。

走り続けた数十分。

既に呼吸は整っていた。

 

 

 

 

 

 

「じゃあ─── ()ろうか

 

 

 

 

 

 

 剥き出しとなる戦意。

シロコの四肢に力が漲る。

 

「疾───ッ!」

 

駆け出す。

面食らったようにしている男を無視して、シロコは引鉄を弾きながら吶喊した。

 

「(悔しいけど……時間がない)」

 

 目の前の敵戦力がどの程度の物なのか。

シロコ達に測る術はない。

だが、それを悠長に測っていられる猶予もない。

 

 少女達の奮闘によって数という戦力差を覆して戦局は拮抗状態に持ち込まれている。

だがそれはあくまで現時点での話。

相手は魔力さえあれば疲れ知らずの亡者の軍勢(シャドウサーヴァント)で、対して自分達は生身の人間。

疲れも息切れもすれば、物資の供給とて必要。

いつまでも拮抗状態が続くわけがなく、シロコはいち早く敵の首魁を打ち取って戦争を終わりへと傾ける必要があった。

 

「(でも時間が()())」

 

 眼前に見据える敵影を睨みつける。

少なくとも言語を解するレベルの知性が許された霊基。

邂逅から今まで感じる、圧倒的な強者としての風格。

のらりくらりと話す自然な立ち姿に存在しない隙。

そのどれもが、これまでシロコが出会ってきたシャドウサーヴァントとは格が違うのだと肌で感じさせるには十分。

 

「(ノノミ達を待っても良いけど、今は時間が惜しい。それにここで一当てしておけば)」

 

余裕はない。

故に、

そう考えて間合いを詰めるシロコに対して男も槍を振るう。

 

「おいおい、いきなりか?ったく今時の若い娘ってのは」

 

咎めるような言葉。

裏腹に矛先に乗せられているのは───紛れもない殺意。

 

「(ノノミ達が来てからもっと動きやすくなる)」

 

喉、眼球、心臓、頭蓋、肺。

何も人体の急所を狙うのはシロコを殺す為に。

 

「───ちとお転婆が過ぎるナ」

 

風を斬る連撃はほんの僅かでも触れれば肉どころか骨すら断つ死の嵐。

シロコが放つ銃弾すら細切りにして叩き落としては、隙あらば首を刎ねんと矛先は迫る。

 

「甘い……ッ……!?」

 

宛らそれは蛇。

寸で躱し懐へと飛び込むシロコの足元から飛び掛かるは石突。

 

「槍持ちを相手取るなら間合いはしっかり読んでおけ。槍ってのは」

 

かと思えば右に左にと矛先が飛び出し、果ては掌で滑らしては持ち直した柄によって間合い(リーチ)が変化する。

 

「───()()()()()()

 

 変幻自在。

四角四面な動きではなく、姿を捉えられぬ南風の業風が如き。

ついにはその矛先がシロコの心臓を捉え。

 

 

 

 

 

 

「ん、勉強になった」

 

 

 

 

 

 

弾く。

同時に撃つ。

 

「お!素直ってのはいい事だ!それに」

 

数を捌けぬならばどうするか。

数多くの武芸者がその考えに至ってはついぞ実戦では無理だと判断した技術。

 

「判断も悪かないナ」

 

 即ち二刀流。

飛び退いたシロコが銃を握る反対の手。

掴んでいるのは先ほど男の矛先を弾いた妙手。

空になった弾倉。

シロコは咄嗟の判断で弾薬を全て撃ち切ると共に向かってくる槍を空になった弾倉を抜き取りざまに弾いたのだ。

 

「……しっかし……お前達について理解はしているつもりだったが、少しばかり血気盛ん過ぎやせんか?」

 

 両者共に間合いを見計らう中、男は呆れたような顔をして言う。

 

「もう少しこう……黒幕云々についてだとか、或いはそもの目的だとか、はたまた聖杯戦争を通して何を企んでいるだの、ある程度()()()()()()()そういう話の一つや二つ……とはいかんか」

 

肩をすくめて、まるで諭すように。

けれど申し訳なさすら滲ませる男へ気にした様子はなくシロコは淡々と返答する。

 

「戦わないに越した事はない。暴力も不信も、それだけを押し通せば良いなんて事はない。話して分かる物、聞いて知る物があるなら……そういう風に私は習った」

 

「うむ。戦う者であるからこその善き教えだ。良い師に当たっ「けど」……お、おうサ」

 

 男の言葉を遮ってシロコは告げる。

その手に握った愛銃からは小気味良い金属音が鳴いた。

 

 

 

「今は無意味な問答をするより弾丸を叩き込んだ方が多分良い筈」

 

 

 

 きっぱりと言い切るシロコ。

それに対して、男は槍を地面に突き刺してから顎を摩る。

 

「……ふむ、この語らいはお前達にとって()()()か?」

 

 あまりにも無防備な仕草。

 

「ん?無意味でしょ?」

 

しかしそれに騙されて踏み込もうならば、槍が咎める事をシロコは理解している。

 

「だって()()()()()ぐらいは貴方との会話で察しがついたし、貴方達が契約に縛られた存在だって事ぐらいは聞いてる。本意かどうかは別として貴方は私達を殺さないといけない、それだけの話のはず。違う?」

 

そして、目の前の男が何故こうも話したがるのかも、検討がついていた。

 

「……思っていたよりもずっと聡明な娘だナ、お前は」

 

邪気のない男だった。

無論、ひしと感じる悪寒は止まらない。

強い、そうも感じている。

だが、悪人ではないとシロコは何故か直感しているのだ。

 

「そうでもない……それに令呪(レイジュ)って奴なのか、それとも霊基(レイキ)っていう物の都合なのか……私には分からないけど」

 

サーヴァントというのが一見して生身のようでいて、その実は契約と魔術によって縛られた随分とシステマチックな存在だという事は先の非常対策会議で共有済み。

前提としての知識があれば、敵である男がやけに戦う素振りを見せたがらない今の状況も頷けるという物。

 

 

 

()()()()()()()()()()なら、倒してしまう方が私も貴方もずっと良い」

 

 

 

 不本意。

男の意思かそれとも願いからか。

何れにせよ、シロコと対峙するその男は伝えたくても全てを明かせず、戦争なぞしたくなくてもせざるを得ない事情がある。

ならば、やるべき事は一つ。

 

「……娘子が見ず知らずの男なぞに優しさを見せるんじゃない。そういうのは気心知れた友か惚れた男にだけするといいサ」

 

「ん、これでも人を見る目には自信がある」

 

「やれやれ。我らに限っては人を見る目よりも心の持ち様だと云うに」

 

この場でこの男を───斃す。

シロコが今すべきと感ずるのはただそれ一つであった。

 

「いやしかし、本当に今宵は驚く事が多い事だ……小鳥遊ホシノにしろあの娘にしろ、聖園ミカにしろ……そしてお前が今此処に立っているのも、ナ」

 

「……私達、そんなに弱いと思われてたの?」

 

 男の言葉にシロコは顔を顰める。

甘く見られるというのは戦闘においては有利に事を進める。

だからと言って気持ちの良い話ではない。

 

 そんなシロコの憤り(若さ)を感じてか、男は苦笑いを浮かべる。

 

「まぁ有り体にはナ。国攻めなぞ、何度も熟してきた記録がある。ましてや 枯れ果てた地(アビドス) 今更泥土で洗い流す(大軍率いて蹂躙する)程度、大した仕事でもあるまいとたかを括っていた」

 

「なら残念。私達もホシノ先輩も……」

 

 老人が血気盛んな若者を諌めるような物言いに、シロコはあっけらかんと答える。

 

 

 

「ヒフミだって貴方なんかに負けない」

 

 

 

 その言葉に、男は再び虚をつかれたような顔をする。

まるで想像もしていなかった、そうとでも言いたげに。

それから肩を震わせて、目頭を拭った。

 

「……嗚呼、全くだ。記憶と記録は違うのだと、仮にもサーヴァントの身であろうに理解すら及んでおらんかったと改めて情けなくもなる。しかし全く、どうした物か」

 

 シロコが口にしたその名前にどんな意図があったかは男には予測はできれど決め打ちはできない。

だが、男にとってどうにも無視できないほど、痛快な答えであった。

だから。

 

「正直に言えば、お前が此処に来るというのは予想こそすれ当たってほしくないと願っていた」

 

男はもう一歩踏み込むのを良しとした。

 

「……アビドスを攻めたら対策委員会(私達)は出てくる。でも、そういう意味じゃないんだ?」

 

「嗚呼、正解だ(それは違う)

 

 地面に刺した槍を手に持ち、丘陵を再び降りながら男は語り始める。

最初もそうであったように、古めかしい物言いは若々しい姿に反してあたかも老いた巨木のよう。

 

「此度課せられた仕事は該当する自治区の蹂躙と破壊だ。無論、それぞれの自治区を選定したのには理由(わけ)がある」

 

 語れぬ、そう先ほど言った筈。

であれば今から話すのは制限に掛からない限界、その瀬戸際だろうとシロコは当たりをつける。

事実、男の胸中もまた同じであった。

 

「トリニティ、ゲヘナ、ミレニアム、D.U.、百鬼夜行、そしてアビドス」

 

 指折り数えられるのは六つの地区。

つまりは今挙げられた名前こそ。

 

「いずれも此度の侵攻、そして()()()()()()()()()()において大きな障害となるであろう突出した戦力を有している、或いは」

 

 今宵、侵略を受ける対象となった土地であり、そして彼らが。

 

「潜在的な脅威が存在すると判断された自治区だ。聖杯戦争はまだ()()。これより先は長く、だというのに面倒ごとは山積みだ。故にナ」

 

 純然たる脅威として見做す()が存在しているという示唆。

故にこそ、彼らはこの夜に槍を手にした。

 

「ここいらで、ある程度削りを入れる必要があった」

 

 敵戦力を削ぐ。

そうしなくては今後の動きに不都合がある、ただそれだけの話。

それこそが今宵、何一つ攻められる謂れのない彼女達の平穏が脅かされた理由に他ならなかった。

 

 

 

「だがナ、砂狼シロコ。お前はその中でも一等()()だ」

 

 

 

 そしてその中にあって、シロコはまた別だと男は告げる。

言葉は全てを語らず。

 けれど視線は、いっそ憐れむような余韻すら湛えている。

 

()()()()、シャーレの御仁ならソレを理解している筈だ。故、お前だけでも遠ざけていると思ったが……聖人、いや聖職者の在り方を読み違えたか。うむ、我が事ながらまだまだ人読みは()に遠く及ばんと言ったところで」

 

冷笑混じりの言葉にすら、どことない悔いが残る。

男の話す口調は随分と重々しい。

 

どうしようもなく終わる物語を偲ぶように。

どうにもならない終着を憎むように。

 

「しかしこの調子だとトリニティどころかゲヘナもか?我らとしては都合が良くとも、個人的にはあまり嬉しくはないナ。お前が此処にいるのがその証左なら同じようにあの娘達も保護はされておらんだろう。そうなると、百合園セイアはまだしも」

 

どう足掻いても死んでしまう幼い我が子を悼むように。

 

 

 

 

 

 

「───丹花イブキは殺す(死ぬ)だろうサ

 

 

 

 

 

 

 

男はただ、荼毘に伏して憐憫を焚べる。

 

「偶然か、はたまたそれすら読んでかは分からんが、どうやらシャーレの御仁も備えてはいる……とはいえ()()()()はそういう加減はするつもりがないしナ。何よりアレは嫉妬ともまた別口で女子供を毛嫌いしておるし」

 

───()()

アレと最悪(もう一人)はこのキヴォトスでの聖杯戦争において致命的に駄目だったと聖杯自ら召喚に制限を設けた存在。

アビドス侵攻を男が担当に名乗り出た理由も正しくそれ。

二⬛︎の存在はキヴォトスの人間ではどう足掻いても致命傷となり得て、最悪の場合。

 

「……私が……私がいるから、アビドスを襲った……?」

 

 男の前で目を見開いて狼狽える少女を確実に殺してしまうか、聖杯戦争すら結末に迎えてしまう危険性があったから。

 

 

 

「───いいや?それも違う」

 

 

 

 だが、同時にそれだけが理由というわけではなかった。

 

「過度な罪悪感は驕り……と言っても、さもお前のせいだと言われればそうも捉えようか。すまんナ」

 

男にしてみれば何を優先するか、ただそれだけの話。

砂狼シロコがいるからアビドスを襲う、なんて複雑な事情は何処にもない。

 

「確かに取り分けお前は危険サ、死の神(アヌビス)。だが、そうでなくとも()()()()()()()()()()。先に言った通り削っておく必要があると判断した。下手に動かれて足掛かりにされては困る。だから早々に潰しておきたかったというだけの話だ」

 

 どんな理由であれ、アビドスを潰さなくてはいけなかった。

その一点に尽きるのだと。

 

「要はそうさナ。お前を討つのはあくまで()()()よ」

 

 シロコはその過程で邪魔だった、だから殺す。

それだけなのだと男はそう言い切ってから、頬を引き攣らせるようにして唇を歪めた。

笑顔はまるで毒でも煽ったように苦味切っている。

 

「それに特定の個人を、という話ならばそれこそ何もお前だけではない」

 

 男は丘陵を降り切って漸く立ち止まる。

もう、砂を踏む音は聞こえない。

あるのは風に乗せられて微かに遠方より届く銃声と、男の声だけだ。

 

「お前の場合は所謂、潜在的な脅威という奴だ。些か()()()()()()()()()()お前は、少しばかり特殊な事例になるがナ。他にもトリニティの桐藤ナギサやミレニアムの早瀬ユウカのように仕留めるなりしておけば後々が楽になる、というのもある」

 

開いた立ち位置。

距離にして10メートル。

既に、互いは間合いにある。

 

「だからそうさ、あまり気にするナ。間が悪かった、とでも思っておけ」

 

「ん、わかった」

 

「あー……うん、なんだ。善き返事だナ」

 

 双方、片手に己の武器を構える。

高鳴る戦意(アイドリング)は、肢体を温め終えた。

前口上はもう十分という様子のシロコ。

対して、最後にと言わんばかりに男は口を開いた。

 

「ああ、それから。()()()()()()()()()()()()だが、連絡ならやめておけ。事前にうちの阿呆が各自治区に術を仕掛けてナ。アサシンやライダーであれば喰い潰せるだろうし、お主らでもそのうちころっと破壊してしまうであろうが……まあすぐにはどうもにサ」

 

「ん、そうする……謝る気は、ないよ?」

 

「構わんサ。それが勤め、好むと好まざるに関わらずというやつだ。事実、お前がそうであるように」

 

肩をすくめてから今度こそ男は嗤う。

語らいはこれにてお仕舞い。

ここから先は。

 

 

 

 

 

 

 

()も是はしなくてはならん

 

 

 

 

 

 

命の奪り合いなのだから。

アビドス廃校対策委員会、砂狼シロコ。

対するは汎人類史において比類なき功績を打ち立てた賢王。

両者、その四肢に緊張を走らせ。

開戦の号砲は───唐突に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手に一人で突っ込む気なのはいいけど……

 

その前にに避けて下さい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シロコの後方より鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

Bullet , and Youth

EXTRA BATTLE 1/3

 

 

 

 

 

 

 

  雷汞(パーカッション)は地鳴りが如く。

後輩の声と耳にした刹那、()()()()()()右に跳んだシロコの耳と目に突き刺さるのは炸裂する閃光。

数瞬前までいたその位置を突き刺すように奔った弾丸は男の頭蓋目掛けて襲い掛からんと奔る。

間際、落ちてきた朱色の小型コンテナへと突き刺さり。

 

「はんっ!どんなもんよッ!」

 

夜空を彩るような暴力的な爆発を生み出していた。

 

『タイミングばっちりだね、セリカちゃん!』

 

「ったり前!アヤネちゃんのフォローがあればざっとこんなもんってとこ!」

 

 後方よりの狙撃。

合わせる形でアヤネのドローンから投下されたコンテナ(爆薬)

それらによって回避行動を取ろうとしていた男の動きすら阻害して爆撃を与えたセリカは、たった今シロコの隣に急停車したジープから素早く降り立つ。

 

「とにかく始まる前に間に合って良かったですね〜☆」

 

 後部座席からはもう一人。

 

「遅くなってごめんなさい、シロコちゃん」

 

愛銃を片手に十六夜ノノミが申し訳なさげに降りてくる。

 

「ううん、三人ともナイスタイミング。こっちこそ先走り過ぎたかも、ごめん」

 

「いえいえ、早いに越した事はありませんから」

 

『はい……実際、状況は依然として悪いまま……侵攻は止まっていません』

 

「ってわけで、さっさとそこの敵の指揮官(コスプレ野郎)をブッ飛ばすつもり……だったんだけど」

 

 シロコ達の眼前。

セリカが銃を構えたまま見やるその向こうは爆撃の余波で高く砂埃を巻き上げている。

 

「ザンシン、だったか?慢心のないお前達の振る舞いは側から見ている側であれば心地良いナ。もっとも」

 

 依然として見通せない砂のカーテンの向こう。

届くのは痛快だと嗤う声と立ち昇る戦意。

 

「ッ!散ってッ!」

 

「槍を交わそうという吾にしてみれば堪ったものではない……ナッ!」

 

 シロコの鋭い声に被せるようにして後方より聞こえてきた風切り音()

なりふり構わず回避した彼女達が数瞬前までいたその場所に振り下ろされるのは。

 

「(背後を取られた……ッ!)」

 

「(どうせこの手のお約束だと思ってたけどッ!)

 

断頭刃(長槍)

 

「やっぱりこいつ、さっきまでのアイツらとは全然違う……ッ!」

 

 飛び退いては散開しつつ、セリカは内心で安堵する。

シロコ一人で対峙させなくて良かったと。

先輩の強さは肌身に染みて理解していても。

 

「当然。所詮はこの地が再現したに過ぎない彼奴ら(シャドウサーヴァント)と」

 

 瞬時に距離を詰めて矛先を向けてきた敵が、そこらの不良とは勿論。

 

「吾を含む七騎を同じに見てくれるナ。我らとしては過小評価は望む話だが」

 

先ほどまで相手にしていたシャドウサーヴァントの軍勢ともまるで格が違うのだから。

 

「吾個人としては少々困る話というやつって、ナァッ!」

 

 刺突。

槍という骨董品(武器)における脅威たる間合い(リーチ)を最大限に活かす一撃。

翻るようにタップを踏んで躱したセリカへと、()()姿()()()()()()()から声が掛かる。

 

「セリカッ!」

 

「任せてッ!」

 

 後退(バックステップ)

応答は二つ返事。

すぐさま男の間合いから離れたセリカは気焔猛々しく愛銃をがなり立てさせる。

 

「(おぉ、立て直しが早いな)」

 

 間合いに近づけさせんとする抵抗。

男を包囲する形で放たれるは四方を囲む弾丸の嵐。

まともに取り合えば、盾と槍で防ぐのがやっとの猛攻であった。

 

「(吾が想定していたより、ずっとよく動く。直近なら小鳥遊ホシノ……それと)」

 

 だが、男もまたその身を英霊の影法師とする者。

たかが四方を取り囲まれて銃撃を受ける程度の攻勢。

 

「(例のカイザーとの一件で、シャーレの御仁と共に過ごした時間が……ってところか。いいね、そういうあれこれは嫌いじゃないサ。それに流石と言っちゃなんだが、砂漠での戦い方も分かっている。練度も良い。だが)」

 

掻い潜れぬ筈もなし。

 

「悪くはない……が」

 

弾丸が肌に触れるその刹那。

男の姿は溶けるようにその場から消える。

 

()()()()()()()。特にサーヴァントを相手取るとなるんならサ」

 

霊体化、否。

純粋な速度。

それのみで弾丸の雨を掻い潜る妙技。

 

「……ノノミ先輩───ッ!」

 

「ほれ、足を止めんなよ。じゃないと」

 

 狙うは、重火器持ち(脚が重い兵)から。

奔る勢いそのままに跳躍した男は、ノノミの頭上から槍を薙ぐ為、振りかぶる。

 

「すぐに素っ首落としに行っちまからナッ!」

 

向かう先はノノミの細い首。

 

「ッ!させないッ!」

 

 瞬時に反応をするのはシロコ、そして狙われた当の本人であるノノミ。

 

「ぐっ……ごめんなさいッ、シロコちゃん……ッ!」

 

 跳び蹴り(ドロップキック)

男が槍を薙ぐより先に横方向に対して受身の姿勢を取ったノノミを蹴り飛ばし、自身もまた反動でその場から離脱。

 

「上手いナ!だが、この程度で一々動揺していては」

 

空振り。

だが、文字通り空を切り裂く一撃。

頸部という人体でも特に脆い場所に当たれば、どうなっていたかなど言わずともまざまざとシロコ達に想起させるには十分。

 

「ほれ、次第に陣が崩れるぞ?」

 

 男に着地の隙はない。

矛先を翻した認識した時にはシロコに向かって駆けている。

 

「個で動くなら今の策は棄てろ、持ち場を離れるなら陣を維持して動け。策というのは受けた水と同じだ。揺れても崩れても受け止めながら元の形を維持し続けるか……」

 

 包囲して殲滅。

分かりやすい数の暴力で確実に個を潰さんとする攻勢。

自動小銃(アサルトライフル)が、重機関銃(マシンガン)が、航空機関砲(オートキャノン)が。

迫る男へと再び絶え間なく銃火を挙げる。

だが、それすらも。

 

 

 

濁ったならいっそ棄てて新しい()に切り替える気概でやれ

 

 

 

───届かず。

一度、崩れた陣形と動揺の孔を男は見破り、シロコへと迫る。

だとすれば。

 

「……あまり自分勝手に喋られる男性は」

 

当然のように対策委員会(彼女達)も動きを変える。

 

「嫌われるんですよ〜……ッ!」

 

シロコを庇い立てるように前に立つのは、十六夜ノノミ。

18kgの鉄塊がシロコへと向けられた長槍の刺突を見事に弾く。

 

「(おっ、もい……ですね……ッ)」

 

 強烈な質量(重さ)

砂を踏むスニーカーが僅かに沈み込む。

シロコ達の援護射撃、その弾道を予測して回避しつつ邪魔立てするノノミへと振るわれる連符は死の調べ。

甲高い金属音は悲鳴が如く。

 

「老人の長話は嫌いか?十六夜ノノミ!」

 

 脚を動かすどころか、息する事すらも忘れる必至の防戦。

そもそも銃器、それも車載用重機関銃での白兵戦なぞ慮外。

成立させているのもノノミの身体能力と高い体幹あってのもの。

それすら掌を通して伝わる振動に全身が少しずつ。

 

「んー、私はぁ……ッ」

 

悲鳴を上げ始める。

引鉄を弾く暇すら与えられない。

矛先を受けるだけで精一杯。

 

「一緒にお話してッ!同じ時間を共有できるッ!そんは男性の方がッ……好き、ですねぇッ☆」

 

 だが、無視。

斃さなくてはいけない。

今こうしている間にも、命懸けでアビドスを守ろうとしてくれている友がいる。

泣き言を吐いている暇なぞ、ありはしない。

 

「ははっ!いい趣味だ!なら脚を動かせ!腹に力を入れろッ!恋も戦も同じサ!遠くから礫を投げてりゃ将の首が取れるなんざ夢物語ってもんよ!だからナ」

 

 懸命に己の攻撃を防ぎながら闘志漲る視線を絶やさぬ娘に男は何を想うか。

喜色を隠さず、笑みを溢す。

 

 

 

「真正面からぶつかりに来いッ!」

 

 

 

 

 

 

るっさい───ッ

 

 

 

 

 

 

 横槍。

我慢なぞとうに切らしている。

 

「ひっどい挑発ッ……下手くそなのよッ!」

 

ノノミに向けられた長槍を横から蹴り飛ばして参陣するは、アビドスが誇る新進気鋭。

 

「チェンジよ!先輩!ちょっとでも休んでて!」

 

「っ……は、ぁ……助かりました、セリカちゃん……んっ……でもっ「大丈夫だから!……シロコ先輩()とお願い」……分かりました」

 

 一年、黒見セリカ。

じりりと間合いを見計らいながら、ノノミが返事と共に一時離脱を果たしたのを確認。

すぐさま、セリカは飛び出した。

 

「まずはお前が先駆けか?黒見セリカ」

 

 当初予定していた陣形は崩れた。

周囲を囲んでの一斉掃射は意味をなさないと言わずとも、致命には至らなかった。

故にセリカは、そして対策委員会は次の手に移る。

 

「だから何だってわけッ!?」

 

その為の一対一(タイマン)

その為の近接白兵戦(インファイト)

両者ともに砂塵を撒き散らしながら、夜の砂漠に太刀傷を刻まれていく。

 

「吾はお前をどちらかと言えば中衛と見ていた。だから前に出てくるのは」

 

 常は両手で構える小銃を片手で構えるセリカは、すぐさま懐に飛び込んでくる矛先を四肢の全てを使って防いでは距離を詰めて格闘戦を挑む。

蛮勇、などではない。

 

「お前ではなく砂狼シロコだと思ったのだが、ナッ!」

 

 槍の恐ろしさとは一つに間合い。

容易く数メートルの距離を詰める足を持つ男が放つ一撃は地面に深々と亀裂を走らせ、丘に風穴を開ける、正に重機が如く。

陣が崩れた以上、下手に中距離で戦うより拳で殴り合いながら隙を読んで弾丸を叩き込む方が却って安全。

何より、セリカとてアビドス廃校対策委員会の一員。

 

「はんッ!それならお生憎様ッ……こちとら年がら年中人員不足のアビドス生まれッ!前衛(フロント)中衛(ミドル)もッ」

 

得手不得手関係なく、格闘戦は慣れっこだ。

 

「熟せるように叩き込まれてんのよッ!」

 

 乱打(ラッシュ)

空気の壁ごと男を殴り、蹴り飛ばす。

男の槍捌きに負けじと一撃ごとに荒々しい衝突音を鳴らし余波で地面の砂を巻き上げる。

 

「そりゃあ結構ッ!だが」

 

生唾を呑み込む隙すら与えぬ攻防は、長柄武器の弱点である連撃の行間を殺すが為に。

 

 

 

「───数の利はどうした?」

 

 

 

 それを理解しセリカの攻勢を受ける男は、嗤った。

 

「が……ッ!?」

 

 針の穴に糸を通すとは正にこの事。

体術と銃撃を連続する際に生じる僅かな隙をついて男もまた、放つは横蹴り。

足刀がセリカの腹部に突き刺さった。

 

「馬鹿正直に一対一でお行儀良く、なんて阿呆な出し惜しみはやめておけ。吾の霊基(身体)はそれでも英雄。下手なその場凌ぎは」

 

 数メートル先の柔らかな砂地へと投げ飛ばされるセリカ。

言わば死に体。

蹴り、そして地面との衝突。

二重の衝撃は肺を押し潰すようにセリカの口から空気を全て絞り出し、全身の骨を軋ませる。

 

 

 

「───容易く食い千切るぞ」

 

 

 

 瞬間、全ての攻撃が手を止めてしまう。

どう見ても絶体絶命、どう見ても詰み。

未だ動けぬセリカはこのままいけば槍に貫かれる。

死と縁遠いキヴォトスの生徒達は、愛する友が今まさに死に直面するであろう限界的な状況に指も足も止める。

 

「……っあ……ごっ、忠告……どうも……けどねッ!」

 

そんな甘い幻想を男は抱いてしまった。

 

「最初からこっちは」

 

響くは轟音。

 

『セリカちゃんッ!』

 

強欲にも抱いてしまった男の慢心を紂す如く。

 

 

 

 

 

その場凌ぎなんてするつもりないのよ

 

 

 

 

 

瞬間。

男の意識は並々ならぬ()()()()と共に暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





1じゃんね☆
……はい、本当に遅くなってごめんなさい……
いつもの加筆修正と違って久々に1から考えて書くのがあんまりにも大変だったのととんでもなく普通にリアルがバタついてたりでまっっっったく書けませんでした……
今後はもうちょっと更新ペースがんばります……

と、というわけで!なんか予想外に長丁場になり出したアビドス戦じゃんね☆
本当だったら今回更新分で宝具まで出す予定だったけど全カットじゃんね☆
とりあえずスレで未出だった情報も出せたし強欲のアーチャーも出せて満足じゃんね☆
槍vs近代兵器とか書いた事なかったからあったま痛くなりそうだったじゃんね☆

ちなみにアーチャーがやたら喋ったり様子が変なのは仕様じゃんね☆
まぁぶっちゃけ残りの難易度調整ミスった面子じゃまともにお話してくれそうにない……っていうメタ的な都合はちょっぴりあるじゃんね☆ミーカミカミカミカミカミカミカミカ

しっかし謎の褐色アーチャー……なにものじゃんね?


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