助けて。
助けて下さい。
お願い、嫌だ、こんなの駄目です。
嗚呼神様、どうか貴方がおわしますなら。
この罪深い私にどうか罰を。
トリニティ大聖堂。
トリニティ総合学園において最も大きな建物で、まさにトリニティを象徴する場所。
「まあサクラコさん。それはまた一体どうして?私達はただ、マリーちゃんに会いにきただけですけれど」
同時に、今ハナコちゃんが話されている歌住サクラコさんが代表を務める、そして昨日私達に物資を届けて融通して下さったマリーちゃんが所属する「シスターフッド」の本部でもあります。
「『本日は』マリーと会う事は叶いません。御用件があるのでしたら、私が『お話』を伺いますけれど」
大聖堂という名に恥じないロマネスク建築。
その外来入り口の前。
入館手続きをいつものように行おうとして、マリーちゃんへのお礼と情報収集を兼ねて、そこへ立ち寄った私達は今こうして、入館をお断りされてしまっていました。
「あらあら、うふふ……では明日になれば、お会いできますか?」
「それはマリー『次第』でしょう。『必要』と判断すれば、此方から『連絡』を致しますので」
「まぁ酷い……私達はただマリーちゃんへ少しばかりのお礼を持ってきたというだけだというのに……こんなハリのある艶やかなうら若き乙女達を、乱暴に拒絶されるんですね」
そう言うハナコちゃんは、いつの間に買っていたのかある程度日持ちするだろう洋菓子の詰め合わせが入った紙袋をちらりと見せる。
それへのサクラコ様の反応は意外な物だった。
「くっ……!それはあのミレニアムの人気店だったパティシエが独立してトリニティ内で開業したと噂になった物の店舗がどこにあるか分からないうえ、地図アプリに登録されている位置情報も間違ってるのに何故か修正されないまま1ヶ月が経過して今では実しやかに語られる幻の洋菓子店───「Hatcha」の紙袋!」
「え、あ、はい」
思いの外、すごいお店だった事が今更知り、つい数時間前に知り合ったばかりのナツちゃんへの感謝*1が募る。
「まさかハナコさん、貴女がソレを……。私はソレを得る為の『用意』と『幸運』が足りなかったというのに」
「えぇ……まぁ……はい」
出鼻を挫かれる、というのは本来入館を断られた時点で使うべきなのでしょうが。
明らかに今のハナコちゃんの様子はそれがぴったりという雰囲気でした。
「あ、あの!サクラコ様!」
「?……貴女は、確か補習授業部の……」
「はいっ!補習授業部の2年生!阿慈谷ヒフミですっ」
遠巻きに、礼拝の時間に説法される御姿やそれこそ以前のアリウス分校との一件の際にお会いしたぐらい。
その前身組織である『ユスティナ聖徒会』*2も含めれば、ティーパーティーと共に語られるほど古い歴史、そして今も貴き地位をを持つ組織、その長。
そんな彼女に疑問を投げかける。
「あ、あのっ!私達ほんとにマリーちゃんに会いに来ただけでっ!……どうして会う事が出来ないんでしょうか?」
「……申し訳ありま「ヒフミ、さん……?」っ!マリーっ!」
その問いが返るより先。
「どうして出てきたのですか、マリー。あれほど『外』へその姿を『晒してはいけない』と……それにヒナタまでっ」
扉の向こう、遠く廊下の先よりか細い声が響く。
「申し訳、ありません……サクラコ様。けほっ……ヒフミさ、ん達……補習授業部の皆さんが来られたと聞いて、けほっ……シスターヒナタにも無理を、言ってお願いを……」
力ない足音と共に現れたのは、昨日見た時とは打って変わった姿のマリーちゃん。
「申し訳ありません……サクラコ様。ですがお辛そうにするマリーさんを見ていて我慢できず、つい……」
狼狽えるように、悲しむように。
サクラコさんは答えた。
「マリー、あれほど『伝えた』ではありませんか……今日の受診でミネ団長から絶対安静だと言われたと!」
「マリー、貴女は夏風邪なんですからっ、無理をしてはいけないのですっ!」
『マリー、無理をしてはいけませんよ』
『貴女一人の身体ではないのですから……』
『シスターヒナタ、私はこの場を離れますがどうかくれぐれも……よろしくお願いしますね』
そう言って綺麗な一礼をしてからサクラコ様が立ち去られ、残された私達は彼女を見る。
いつもと違い、少し呆けた立ち姿。
熱さを感じる頬*3。
とろんとした瞳*4。
シスター服、ではなく寒気もあるのか夏だというのにダークグレーのカーディガンを羽織ったその下に、白いコットン地の楚々としたワンピースタイプのルームウェア。
そして、こちらを気遣ってなのかそれとも咳で喉を痛めているからなのか、使い捨てのマスク。
その姿から見て取れるのは、彼女が体調を崩しているという事実だった。
「ごめんなさい、けほっ、皆さん……どうやら昨日から少し熱っぽくて。皆さんに移したりするような……けほっ……風邪ではないのです、が……」
「わわわっ、ごめんなさいマリーちゃんっ……私達が急に来たから……」
「いえ……事の他、サクラコ様や皆さんを心配させてしまったようで……携帯を触る暇もなく布団の中で絶対安静と言われてしまった物ですから……」
入学してから久しく体調を崩していなかったので一層心配させてしまった、そう言ってその色白な五枚の花弁に昏い青をほんの一滴垂らされた肌をした彼女はお恥ずかしいと力なく両手を頬に当てる。
いつも見ている所作すら今はただ労しい。
「この前はありがとうございました、マリーちゃん……ご無理を、させてしまいました」
「いいえ、ハナコさん……自己管理できなかった、私の落ち度なんですから。どうか、そんな悲しいお顔をしないで下さい……」
「あ、あのっ!昨日、ありがとっ!ご飯とかたくさん持ってきてくれて……またお見舞いくるから!今度はちゃんと……ま、マリー」
「ふふ……ありがとうございます……けほっ……コハルさん」
やはり身体がだるいのだしょう。
その姿を誤魔化す元気もなくて、けれどそんな体調の悪さが見て取れても。
胸の前でいつものように手を握り、彼女の優しい雰囲気で、嬉しそうに笑っているのがマスクで見えなくても分かりました。
「昨日はありがとうございましたっマリーちゃん!また、今度!次は元気になったら一緒にたくさんっお話しましょっ……今日はゆっくり休んで下さいねっ」
「ヒフミの言う通りだ。夏風邪なら咽頭も辛いだろう。もう喋らず、部屋に戻ってくれて構わな……ううん、無理をせず休んでほしい。今さっきティーパーティーにも出した物と同じ店の菓子をハナコがサクラコに渡した。記憶違いがなければゼリー*5の詰め合わせの筈だ。あれならきっと食べやすい」
かなり大きな紙袋だったのを思い出す。
きっとマリーちゃんが療養中に食べる分も十分にあるだろう。
あのサクラコ様の心配よう、そして今も心配そうに遠巻きに見守るヒナタさんの姿を見るに少し多めに購入して正解でした。
「まあティーパーティーに……そんなナギサ様達も喜ばれたお店のお菓子を、私なんかが……けほっ……いいのでしょうか?」
「あはは……今日はミカ様達はお忙しかったようでナギサ様だけだったんですよ……」
ミカ様は……パテル分派と午前中に訪れたブリッジ工廠の皆さんとの話し合い*6に向かわれていた、とナギサ様は教えてくれました。
たぶん、午前中の話でもハンドルがどうこうと仰っていたから、きっと勝手に動き出したぞ何をしたとかそっちが整備したんでしょうが*7とか言い争ってるのを仲裁されたのだと思います。
ミカ様は政治への関心は元々強くなくて、実は派閥内でもそういう立ち回りがとかく上手だった……そう以前、聞いた事がありましたから*8。
「ぅぅ……早とちりしてしまいました、私も良くなればぜひ皆さんとお茶会を……ね、ハナコさん」
「えぇ、是非。その時はまたあの猫ちゃんを呼んであげましょうか」
猫ちゃんと呼ばれるナギサ様を想像すれば、頭の中で上品に口元だけ綻ばせて目が笑っていない御姿と……いけませんっ。猫耳をつけられたナギサ様を想像するなんて、うぅ、はしたない私を許して下さいナギサ様ぁ……*9。
「もうっ……またハナコさんったら、ナギサ様に不敬ですよっ……けほっ……猫なんて呼んだら怒られてすぐ追い出されてしまいますよ?」
「は、はははハナコ!?あんたナギサ様にそんな事言ってたの!?も、もしかて今日も失礼な事言ってたんじゃないわよね!?*10ずっとガーデニングの話とかお化けとかナギサ様のお仕事の話してたと思ったのに!?*11」
「なんだと、コハル、それは本当か?……くっ、読みを外したか……私もまだまだ、だな」
可愛らしく叱るマリーちゃんと、怒るコハルちゃん、そして何故か悔しそうにしているアズサちゃん。
行きの時と同じで賑やか雰囲気。
けれど、いつまでもそれを楽しんでいては無理をさせてしまいます。
だからちらりとヒナタさんを見ると、意図を察してくれたようで声を掛けてくれた。
「マリーさん。そろそろお部屋に戻りましょう……また体調がよくなられてから、たくさんお話すればいいんですから」
「シスターヒナタ……でも……けほっ」
「大丈夫ですよ、皆さんお優しい方ですから。きっとまた来てくださいます。だから楽しいお話も、次、元気な時にしましょう、ね?」
そっと背中を摩り、ゆっくりと支えながら身体を中へと促す。
「折角来て頂いたのに……ごめんなさい、皆さん。マリーさんの体調が戻ったらまたご連絡しますね。……サクラコ様から話は伺っています。もし、物資が必要でしたら、次からは私へ」
「ありがとうございます、ヒナタさん」
「お気になさらないで下さい、また今度、次はゆっくりこの前の海の時のようにお話させて下さい。ハナコさん」
「えぇ、是非♡」
「はいっ、ウイさんにもよろしくお伝え下さい」
その言葉を合図にして、マリーちゃんが咳き込みながらも挨拶を交わそうとする。
「皆さん、今日は来てくださってありがとうございました。……こうして、お顔が見れて本当に良かったです」
「今日というには……けほっ……もう、遅い時間になってしまいましたが……」
「けほっ……これから過ごす清き夜に、平和と案内がみなさんとありますように……けほっ」
そう言ってからぺこりと頭を下げて、彼女達は教会の中へと去っていきました。
「と、いうわけで!アズサちゃんの退院祝いを祝しまして!」
「もちろんヒフミちゃんの分もですよー」
「あ、ありがとうございますっハナコちゃん!……それでは改めまして」
「退院お祝いパーティを開始します!」
「ハナコっ!これはもう食べてもいいのか!?」
「うふふ、もう少ししてからの方がいいですよ♡あっ、こっちはもう焼けましたからね、はいどうぞ」
「ありがとうハナコ!見ろコハル、ヒフミ!こんな大っきいお肉だ!!」
帰ってきてからの急ピッチの作業。
冷蔵庫にしまっておいたヒレ肉は焼き目をつけてからジップロックにローリエごと入れてそのまま低温調理器で湯煎。
肉ブーケの中身のモモやロースはそのまま、タンは切り分けて、ハナコちゃんが用意してくれている野菜やフルーツの盛り合わせ、それから買っておいたジュース類もまとめて一緒に外へ持ち出し。
外で炭がちょうどいい熾火になるまで火の番をしてくれたアズサちゃん、コハルちゃん*12、そしてテーブルの組み立てや食器を出すのを手伝ってくれていたセイバーさん達と合流して。
「アズサったら……子どもみたいにはしゃいじゃって」
「あ、コハル。このお肉食べないなら貰っても「はいはいセイバーの分はこっちに取り分けた『ヒフミちゃん特製♡ローストビーフ』がありますから人のを狙いませんよ〜」は、ハナコ!?……ありがたいけどそんなトングごと口に向けられてというか普通ローストビーフは薄切りにしtむぐぅぅぅっ!?」
私達の退院お祝いパーティを兼ねた補習授業部のBBQ大会は始まりました。
「いかがですかセイバーさん?ヒフミちゃんが用意した、たっぷり♡お汁♡も中に溜め込んだしっとり♡したローストビーフは?」
無言です、明らかに口の限界を攻めたサイズを咥え込んでちょっと涙目に*13なりながらも私の作った、そのローストビーフを食べてくれる。
「んぐっ……あ、ああ、大変美味しかったよ。ありがとうヒフミ、それにハナコも」
「あはは……すみません、セイバーさん。でも……美味しく召し上がってもらえてよかったです!」
「よかったですね、ヒフミちゃん♡……セイバーさん『も』、今日は『丸焼き』、ではなくてこういった『素材の味を活かした』ローストビーフのようなお食事は『食べ慣れて口に合う物』のようでよかったですね♡」
む、ハナコちゃん。
ローストビーフは確かに作るだけならそれほど難しくありませんけど調味料や入れるハーブなんかでも各家庭の色が出ますし、綺麗な焼き目をつけるのなんかや抜群の火入れもあって結構複雑なお料理なんですよ!
丸焼きとは違うんです!
「は、はは……ハナコ、ハナコ?も、もうちょっとその手心を……」
「もちろん♡あとでしっかり♡」
「ははは……」
何故か
普段と変わらない微笑みなのに、獲物を前にした猫さんというか、ハナコちゃんはとても楽しそうな雰囲気を出している。
「そうやってすぐセイバーさんからかって!しかもトングごと……その……それっ!これじゃあ、洗ってこなきゃじゃないハナコ!」
「ふふっ。ほんとですねコハルちゃん♡セイバーさんのお口に大きなお肉を掴んだ棒を無理矢理ねじ込んで♡しまいましたから……これでは間接き・す♡になっちゃいますね♡」
「間接キス!?恵方巻き!?!トロ顔男子!?!?エッチ!!!駄目!駄目!駄目!!!」
叫びながらもハナコちゃんお手製のポテトサラダや野菜スティックもしっかり食べるコハルちゃんに葉野菜で肉をくるんで味変という新たな概念にたどり着き目を輝かせるアズサちゃん。
その手が止まって首を傾げながら疑問の中心にいた人物へと尋ねる。
「もっもっ……んぐっ……セイバー、コハルは何を言っているのか分かるか?」
「……アズサ、君に愛する人が出来てもう少し大人になれば理解……出来る日がっ……く、くるかもしれないね」
「そうなのか。私には愛する人はいるし、後は大人になればいいだけだな。うん、先生に相談しよう」
「アズサちゃん!?!!?……アズサちゃん!?!?*14」
愛する人の一言に場は、というより私とハナコちゃんが反応してしまう。
さながら胡瓜に驚く猫の如く、私達の警戒心はきっと今日一日で一番と言えるほどに高まったのかもしれません。
「……あ、あら?アズサちゃん?いつの間に、『愛する人』なんて素敵な方とお知り合いに?私にもぜひ教えてくださいね」
「ハナコ、あとヒフミ。顔、顔。あんた達、目が笑ってないわよ」
「む、なんだそんな事か」
努めて、冷静を装い尋ねたハナコちゃんは流石の一言に尽きます。
コハルちゃんは何かを言っているようですが私は気にしません。
今は私達の表情なんかより遥かに大事な事があるんです。
そして、返ってきたアズサちゃんからの答えは、
「私には大好きな補習授業部の友も、今は離れて暮らしている大切な家族も……そして私をこんな素敵な場所にまで連れてきてくれた恩人もいる。だからもう、私の愛する人達はたくさんいるんだ」
私の大好き彼女らしい、どこまでも無垢で真っ直ぐな、そんな素敵な愛でした。
「素敵な在り方だね、アズサ。どうかその清き心で君の周りの愛している人達、そして君を愛する人達とこれからも過ごしていってほしい」
「ん?……ああ、セイバーもちゃんと補習授業部の仲間だぞ?今日初めて会ったけど、お前はいいやつだし、ヒフミだってちゃんと守ってくれたから」
「……ありがとう。この地で出来た、小さな、新しい友よ」
「さて、まずは食事も始まって皆んなのお皿にも肉が行き渡ったところだし───そろそろ作戦会議を始めようか」
厳かに、そうセイバーさんが告げた言葉に私達は頷きを返しました。
聖杯戦争の作戦会議。
今日一日で得られた情報は決して少なくありません。
それらを元に、これ以上傷つく人がいないように。
この戦争を終わらせる方法を探さなくちゃいけないんです。
「今回得られた情報は「ヒフミ?その手のは?」あ、これスカルマン様のお菓子ですよ!あとでご一緒しましょうね!!「ほんとにっ!?嬉しいみんなありがとう!!」はいっ!」
それはそれとしてアズサちゃんが喜んで下さったので、午前中のお買い物は大成功でした。
「……こほん、さて今回得られた情報ですね、午前中にチンピラさん達から聞いた夜の街に出没する『怪人』の噂話」
「午後にウイさんから聞いたランサー、アサシン両クラスについての情報、そして『噂』に対する考え方と『ティーパーティ』への警告、がありましたかね?」
「あ、あとはあれでしょ?ナツから聞いた、えぇっと……「噂の詳細、かな?コハル」そうそれ!……ありがと、セイバー、さん」
かなりの情報があるので、少し書き出した方がいいかと思い、私は簡単にですがまとめを作ってみました。
それを五人で囲みながら気になる箇所をピックアップしていきます。
「ヒフミちゃんが作ってくれたメモを見ましたけど、やはり……『才羽モモイ』さんは気になりますね」
「だがこれだけあからさま、というのは妙だ。何か考えがあるか、才羽モモイまたはそのサーヴァントがよほどの実力者か……」
「見慣れないロボット……ミレニアム製のロボットを増産してるならその子も私達みたいな味方とかいるのかな……もしかしたらミレニアムの生徒会もバックアップしてるとかっ」
「とはいえクラスこそ分からないがマスターであるかもしれない有力な手がかりだね。僕としては『近いうちに彼女と接触を行う』という方針を勧めたいかな」
セイバーさん達がモモイちゃんの話を進める中、私は以前とある一件から知り合ったあの子達の事を思い出しました。
「実は、そのモモイちゃんって子と同じ部活のアリスちゃんと知り合いなんです。もしかすると、会えるかもしれません!」
アリスちゃんは以前同じアイドルグループで短期間ですがご一緒した事があるお友達です。
幸い、連絡先もちゃんとあります。
それを経由すれば聖杯戦争についてマスター間での話し合いという直接的な形を避けて、まずはお友達として会う約束だって取り付けられます。
「でも会ってどうするの?その、マスター同士って戦わなきゃいけないんでしょ?」
「あぁ、最終的な勝者は一人。それが聖杯戦争のルール、だけど一人になるまで同盟を組んだりするのはそれぞれのマスターの戦略や裁量に任せられるんだよ」
コハルちゃんの疑問はもっともです。
もし会えたとしても一体何を話すべきか。
まず相手がマスターかどうかの判断をできるかどうか。
未知数な事が多すぎます。
「なるほど……となればそれこそ穴熊を決め込んで『拠点から動かない』……そんな選択肢もあり得ますね」
「籠城となると、食料等の物資はどうする?それこそある程度そういう事に融通の効く第三者の協力か、潤沢な物資の準備が必要になる」
「魔術師なら使い魔という形で他の陣営の動きは脱落者の状況をある程度観測できるけど、君達の場合は使い魔以外でそれを観測しないといけないね」
籠城の手段自体は難しくも、『決して不可能』ではありません。
けどその為にいるものがある。そして『同盟』といった選択肢もあります。
その関係性を今回知れたのも籠城と同じくらい大切な事でした。交渉の際の妥協点、そのすり合わせや着地点で大きなポイントになります。
「と、いうか!昼間から会いに行って大丈夫なの!?い、いきなり攻撃してきたりとか!?!」
「難しいね、僕の知る限り聖杯戦争は夜間に行われる。だけどそれは『魔術』や『神秘』を一般社会から秘匿したい、そういう魔術師側の理屈で生まれたルールだ。この聖杯戦争自体にそれが適用されるかは……分からないというのが正直だ。それを説明できるのは、現状彼『一人』だけだろうね」
「考えるべきは今回得た情報を元に、明日以降の中長期的目標、そして実際明日どういう動きをするかの二つかと思うけど、どうかな?」
「まぁセイバーさん!……まるで会議の指揮を取られるのがとってもお上手ですね?もしかして、部隊の指揮経験が?『それとも』政に携わってたり?」
「む!セイバーは部隊を率いていたのか?よかったらぜひまた話を聞かせて欲しい」
うきうきした声を隠すこともないアズサちゃんの頭をあやすというか軽く受け流すように撫でるセイバーさんはどこか『誤魔化しているような』そんな感じがしました。
「私は、ミレニアムに敵がいるって分かってるならもう少し……情報を集めた方がいい気がする」
「コハルちゃん……」
「もしっ!もしよっ!いきなり襲ってきてまたヒフミやアズサに何かあったら……わたしいやだもん……」
「そういう事でしたら私は反対意見を。たくさんの意見、たくさんの角度から考えればきっと皆んなの不安や心配は取り除けますからね」
「『明日の午前中』に接触する。トリニティからミレニアムに行くのは時間がかかりますが、D.U.地区であれば移動しても『少し』ぐらいは話せます。カフェでそのまま食事もすれば帰ってきてからの『午後も少しぐらい』は動けますしね」
「なるほど。なら私は『ミレニアム自治区』に行くのを提案する」
「偵察という形で、接触するかどうかは……みんなに任せたい」
「それじゃあ僕も折角だし意見を。個人的には他自治区に行くなら『ゲヘナ』へ。度々話に上がって気になってね」
「それと、どの意見を採用するにしても『情報は多い方がいい』。一度その、アリスという子には連絡した方が良いだろうね」
「アリスちゃんと、それから……」
この決断はきっと大きい。
コハルちゃんが痛いほど心配してくれてる。
ハナコちゃんが皆んな不安を解消しようと考えてくれてる。
アズサちゃんがそれに倣って新しい選択肢をくれた。
セイバーさんも協力してくれている。
だから、私も……『先生』がいつだってそうしているように。
その背中でずっと教えてきてくれたように。
「モモイちゃんにも会いに行こうと、思うんです」
『決める』事を、恐れない───。
「コハルちゃんの言うように、もし何かあったらって思うのは怖いです。でもそれはきっと、他のマスターさん達も『同じだから』。だから場所はアリスちゃん達に決めてもらいます」
それはコハルちゃんの言葉から。
怖いという気持ちを嫌だという気持ちを、その口から言ってもらえたから気づけた事。
だからこそ選択肢は彼女達に。
少しでも誠意を見せて、ハナコちゃんやアズサちゃんがそうしてくれたように心配を取り除く……そんな協力する姿勢を。
「場所は、D.U.地区のカフェ。百鬼夜行の百夜堂。それから、少し離れてますけど話に聞く山海経の玄武商会」
「この中から選んでもらって、モモイちゃんと話をしてみたいんです。どんな話をするとかまだ分からないけど、それでもしっかりお話したいんです」
「だからみなさん……着いてきてくれますか?」
返事は。
「はぁ……ほんと仕方ないんだから!いいわよ、なにかあってもこの正義実現委員会のエリートな私がヒフミもアズサもハナコも守ってあげるんだから!」
「ふふっ、たくさん考えてくれたんですね。ありがとうございます、ヒフミちゃん。それならその動きでいきましょう。大丈夫ですよ、きっと上手くいきますから」
「うん、コハルもハナコもセイバーもいる。皆んなで行けばきっと私達はどんな事だって乗り越えられる」
「それなら早速連絡をしないとね、ヒフミ。……僕にも君のその勇気ある決断を、心から尊重させてほしい」
ただただ、力強く背中を支えてくれるものでした。
「───はい、もしもし」
「あっ!ヒフミっ!……はい、お久しぶりです」
「明日会おう、ですか?」
「……」
「はいっ!アリスも、モモイも、ゲーム開発部の皆も!」
「アリス達は大丈夫です!」
「場所ですか?うぅん、それなら場所は……百夜堂にしましょう!」
「はいっ!アリスは大丈夫です!」
「明日会えるのを───楽しみにしてますね!」
「……」
「こんどこそ」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」
「アリスはもう間違えません」
「今度こそアリスは……」
「勇者になりますから」
「その為なら」
「アリスは……」
1じゃんね☆
ようやく聖杯戦争らしくなってくるじゃんね☆
だからタグに曇らせ追加じゃんね☆
曇らせたなら晴らすのも勿論大事……じゃんね☆
まぁどうなるかは安価とか次第じゃんね☆
次回は少しというかかなり短めのを投稿予定じゃんね☆
本作の内容は
-
①Part6スレまで読んでる
-
②あにまんの過去ログまで読んでる
-
③ハーメルン版のみ読んでる