ナギちゃーん、そろそろ起きようよー
私ちょっと飽きちゃったよー
……はぁ、本当……
私、どうしたら良いんだろうね、せんせい……
クー・フーリン、さん。
ウイさんの口からするりと転がってきた言葉、やっぱりどこか聞き覚えがなくて不思議な響きのお名前でした。
「光の御子、クー・フーリン。大いなる神聖から与えられた矢避けの加護を持ち、一度放たれれば五十とも五百とも伝えられる棘となって敵を射抜く魔槍の担い手。エリンと呼ばれる地の大英雄であり、あのアサシンの愛弟子に当たる存在です」
ただ、思わぬ形での繋がりはありました。
もしかすると今日時間があれば
「古書館の大賢者よ!アサシンについても我に
「……ごめんなさい、アリスさん。絞り切れません……というより今回事前に配られた資料を元にある程度調べられたのは3騎だけです」
「徹夜仕事をさせてしまってごめんなさい、古関先輩」
「いえまぁその、こういうのは、なんといいますか、慣れてますから……そもそも、ヒフミさん。貴女やモモイさん、ミノリさんと違ってサーヴァントのいない私は実働に関しては元からそこまで大した役には立ちませんから。こういった形で力になれるなら……まぁ、一日二日ぐらい大したことないですよ」
思わずみんなで揃って首を横に振ってしまいます。
トリニティにいた頃から今日までウイさんにはお世話になりっぱなしの私達ですから、役に立たないだなんて欠片だって思いません。
「本当に、その!いつもありがとうございます、古関先輩っ!」
「……まあ、先輩、ですから……これぐらいは」
照れたようにそっぽを向く彼女を見て、やっぱり拠点に来ていただけて良かったと改めてそう思います。
『その件のクー・フーリンについてだけど、資料にも載せたように……ごめんなさい、私の勘違いね。とにかく宝具である槍が危険ね』
「ランサーの槍には必中の呪詛が込められている。まともに回避するのが難しいのは勿論、君達生徒に使われる状況だけは避けたいね」
「スキルも問題だな。お前達にとって銃撃戦こそが主だった戦術となる以上、ランサーを相手取っても有効打どころか支援面も難しくなる」
放てば必ず誰かを殺してしまう宝具、銃も含めた飛び道具が効かないスキル*1。
どちらも強力かつこのキヴォトスとは致命的なぐらい相性が悪い組み合わせの持ち主。
そのランサーさんと実際に戦ったキャスターさんとモモイちゃんへと私達の目は向かいました。
「実際のところ、どうだったんだ?モモイ、キャスター?」
彼女をじっと見つめてからキャスターは徐に、そして重々しく口を開かれました。
「……次は負けるやもしれんな」
そんなつぶやきがキャスターさんの口から漏れました。
分厚い雲のような呟きでした。
勝てないかもしれない、キャスターさんのその言葉に肩が強張る気がします。
「宝具、令呪こそ使わずではあったが十分に渡り合う事が出来た。それが奴、怠惰を名乗るランサーと我との戦いであった」
「じゃっ、じゃあ!次はそれこそホウグとかってやつを使ったら!」
「……難しいだろうな。奴の正体、即ち真名という度外視出来ん値を我らは見つけた。それ故、尚更にそう計算せざるを得ん」
立ち上がるように言うコハルちゃんを制してキャスターさんは緩々と首を振った。
その仕草に滲み出る悔しさを共有するように、モモイちゃんも目を伏せた。
『……それほどなのかい、ミスター?件の大英雄とやらは』
キャスターさんとの付き合いは私達補習授業部もだいぶ長くなりました。
少し気難しいけれど私達を温かく見守ってくれる聡明な老紳士、そんな風に彼のことを私は思っています。
これまで何度もその明哲さと智慧で私達に助言してきてくれた信頼できる大人の方なんです。
「……クー・フーリンは古代ケルトにおける最大にして最強の戦士だ。僕も寝物語に何度も聞かされて育った偉大な英雄であり、同時に前に戦場で対峙した時もその槍捌きに幾度も苦汁を嘗めさせられた」
「我の生前は数学者だ。その生に心残りはなかったかと問われたならば否と言うが、その生き方を貫いた己を責めるかと言われたのならばそれもまた否と言おう。だが、それでも我は数理に挑む学者であって戦士ではない」
そんな彼の、そしてセイバーさんのくぐもった声にいつもならある頼りになる自負と自信が、どうしてか欠けている。
「その我がだ……ああも容易く優勢に立っていた、立つことが出来た。言うに口悔しいが、奴が真に我らが幼き日に伝え聞いた英雄ならば……あんな様ではない筈だ。あんな、無様な男である筈がないのだ」
何となく、察してしまう。
セイバーさんやキャスターさん、彼らにとってクー・フーリンという方がどのような人なのかを。
何というか、お二人にとっては子どもの頃に聞いていたおとぎ話のヒーローなのでしょう、クー・フーリンさんは。
戦闘の記録を私達も見ました。
けれどそこに映っていたのはどこまでも怠そうに、そしてつまらなそうに人を殺そうとするサーヴァントの姿。
とてもセイバーさんが仰る偉大な戦士、そんな風には
だからこそ、なお一層なのかもしれません。
「……その、みなさんには馴染みがない事だとは思いますが……というか私も別に外の生まれとかそういう特殊な出生でもないので馴染みは薄いですが。その、なんというか……一つの神話体系において最強と謳われる意味は『重い』んです」
鈍る会議の中、静かに雫を落としたのウイさんでした。
彼女は小さくぼそりと前置きをしてから神話、そしてその中で語られる彼らの立場について話を始められました。
「外だけでなくサーヴァント達の出身である世界では、神話とはその民族にとっての根幹、一種のイデオロギーとも言えるでしょう。幾星霜と語り継がれてきたその神話の中で、そして神話が成立するまで気の遠くなる年月の中にあって、その地に暮らす人々の強さの象徴として君臨する……それが英雄であり……彼らがいた星、その人類の歴史に刻まれた英霊です」
『ましてやその中でも最強とまでされたのならば、サーヴァントとしてはトップランカー。だからこそ、底を見せていない可能性がある、ということですね?』
アヤネさんの補足にウイさんだけでなく、キャスターさん達も深く頷かれました。
一神話における『最強』。
その名を背負うことはきっと私では想像できないほどに重い意味を持つのでしょう。
ならセイバーさんは、彼が生きた時代、そしてその後に読み、語り継がれた中でも。
そんな風に思われた方がいるのだろうかと思考が逸れそうになった私の耳にキャスターさんとモモイちゃんの会話が聞こえてきました。
「うむ。故、あの場でランサーは全霊での果たし合いをしたとは思い切れん。重ね重ね、あそこで倒しきれんかったのが悔やまずにはおれんよ。油断をしていたうちに倒し切れば後の憂いはなかった」
「戦闘続行さえなかったら……勝ちきれたんだけどなぁ。宝具と第三スキルの指示出せなかった私のせいだよ……」
モモイちゃんの悔しそうな声にキャスターさんはゆるゆると首を振る。
「責めるな。スキルを計算に入れなんだは我の失策だ、すまぬ。お前のサーヴァントとして……」
「……ううん。そんな事、ないよ!そもそもあの場で二騎相手に勝ち星拾えたんだから!それにとにかく生き残った!……ユウカもネル先輩もアスナ先輩も、なんならコユキだって助けに入れて今も生きてる。それだけでお釣りがくるぐらいだよ!」
「……そうか」
キャスターは全身に硬い鎧を着込んでおられます。
だから表情なんて分かりっこありませんけど、その一言にはどことこなく柔らかかったんです。
そんなお二人の会話を聞き届けてから調月会長は報告を終えられます。
『……ランサーについては以上ね。アサシンについてもこちらから断言できる情報は多くないから、次に行ってちょうだい』
『ではトリニティの話といこうか。と言ってもこちらもあまり良い話ではないのが残念だけどね』
調月会長の言葉に続いて、白が眩しい肩*2をすくめながらセイア様も静かに口を開かれました。
『我が校の被害自体はミレニアムやD.U.と比べたらかなり小規模になる。大掛かりな作戦だった先の二つに関しては前者は君達同盟陣営からの妨害を避ける為に、後者は確実にD.U.……より正確にはサンクトゥムタワーを本拠地とする連邦生徒会へ確実な打撃を与える為にだろう。そして私達トリニティは』
一度言葉を区切ったセイア様はモニター越しに私を見られました。
その反応に私も頷きを返します。
でもだからと言って知らないままでもいられない、知らないでいたくなんかありません。
大切な人の身に起こってしまった事だから、そして今はまだ生きていてくれているのだから。
だからまだ、大丈夫。
そう言い聞かせるように振った首は思いの外、力強い頷きになってしまいました。
それにセイア様は一度、目を瞑られてから。
『私とナギサのみに目的を絞っていたと考えるべきだね』
昨晩あった出来事について話し始めました。
『再度にあるが話しておこう。実質的な被害者は避難が間に合った私を除いて、ナギサ、ミカ、ツルギ
……そしてティーパーティの行政官や一般生徒の中にも意識不明の生徒がいる。ただ最後の生徒に関しては昨晩の一件との直接的な関わりがあるとは断定しかねるがね』
「断定は避ける、だがこの場で話すというのなら何かしらそう考える理由はあるんだな?」
『ミノリ、君の見解通りだよ。だが、それを今このタイミングで私が話すには少しばかり順序が早い。先に済ませておくべき話があるね』
そう言って続きをと口を開きかけたセイア様に私の隣から待ったの声が控えめに送られました。
見ればコハルちゃんが緊張した様子で、けれど机の下で固く両手を握りしめています。
「セイア様、その……行方不明の子、っていうのは……?」
『……問題ないよ。今回の襲撃を受けて少し心因的な方向で家に閉じこもってしまった子がいるのさ。連絡がつかない、だから行方不明。そういう風に処理してるだけだよ』
「そっ、そうですか……!」
思わず、私とアズサちゃん、そしてモモイちゃん達もコハルちゃんと顔を見合わせて胸を撫で下ろします*3。
聞くべきかどうか悩んで、でも本当はすごく聞きたかった事だったのでこのタイミングでコハルちゃんから切り出してもらえて助かりました。
行方不明の生徒は
心の傷がある事実はこうなる前に戦争を終わらせられなかった己の至らなさと申し訳なさでじくじくと胸に刺さる痛みの自覚はあります。
それでも行方不明と聞いて最悪の場合を想定していましたから。
今はただその生徒さんが生きていることにホッとしました。
『……話を戻すついでに話してなかった各人の怪我の具合も改めて伝えておこう。と言っても全員大きな怪我やその後遺症なんて物も負わずに済んでいる。一番重かったナギサに関しても明日には退院だ』
「……あの……えと、でも二日……わ、私達キヴォトスの人間が二日も入院するぐらい……その、酷い怪我、だったんですよね……?」
『そうだね。ミカやツルギは戦闘での負傷だったが、ナギサに関しては何と言ったらいいか。私も別に特別医学に明るいわけじゃない、語弊があるかもしれないが……神経に対して過剰な負担がかかったという話だよ』
「……神経ですか。アズサちゃん」
「いや、流石に回復が早すぎる。何より後遺症がないのも考えると類似した何かなのか、それとも単純に症状が同じなだけじゃないか?」
ユズちゃんやハナコちゃんはお三方の入院に思う事もあってか質問をされたり、アズサちゃんと話し合ったりしておられますが、それをセイア様は宥めるように制止された。
『君達の心配は分かるが負傷者云々は本題じゃない、こんな事を言うのは何とも心苦しいけれどね。だが事実、私達が優先しなくてはならない議題は雲霞の如くだ。無事に退院の目処も立っている怪我人についてではなく、話すべき事を済ませるべきだろう。違うかな?ハナコ、ユズ』
「……そうですか、セイアちゃん。なら私から今話すべき事はありませんね」
「ぁ、ぇと……ぁ……ぅぅ……ハナコちゃんが
二人の言葉に何か妙な
『さて改めて今回の襲撃についてだが非常に痛ましい結果ではある。けれど私達ティーパーティに限っては幸運、という面もあった。10日前、ヒフミ、君が強襲を受けた時点で我々ティーパーティとアビドス廃校対策委員会、そしてシャーレが独自に動き出したというのは聞いているね?』
「あ、はい、あの……ええっと、確か先生から譲って頂いた報告書だったり、ナギサ様からそう言ったお話を以前に」
『結構。君がアサシン、今回確認された方じゃない元からいた彼女だが、そのアサシンによって襲われた一件。その時は聖杯戦争の名前こそ知らなかったが誰も彼もがあの夜を起点に動き出した。正しくキヴォトスにとって運命の夜だったわけだ』
そう語れた言葉に私は改めて自分の認識がまだまだ甘かったのだと気がつく。
あの夜、アサシンさんに襲われてアズサちゃんが怪我をして、そしてセイバーさんを召喚して私は聖杯戦争のマスターになりました。
『その時点で我々は情報収集と警邏活動の強化を強めた。敵の動きで情報の交換は妨害される事になったが影のような生徒やシャドウサーヴァントとの交戦経験も含め彼らの存在自体は確認していた。ただ本当に霞を掴むような話でね、敵の存在は分かっていたがその影が何なのか、何故存在するのか、どう対処するのが正しいのか……発生原因から何まで分からなかった』
私の中であの晩のことは、悲しい事と怖かった事と嬉しかった事がごちゃ混ぜになってる、けれどあくまでも『私にとってのきっかけ』であった夜という認識です。
でも以前のナギサ様との喧嘩。
それに昨日のホシノさんの言葉。
そして今のセイア様のお話を聞いて、思っていた以上にあの夜あった出来事はこのキヴォトスにとって決して無視できない影響を与えて、多くの方が動き出す『始まり』になっていた事を再認識します。
『だからこそ私は幸運と言ったんだ、今回の襲撃でようやく敵の尻尾を掴めたからね。それに我々ティーパーティは前回の経験、そして私の勘から私達が狙われる可能性を常に検討していた。まあ当時は謎でしかなかった敵の存在であれ、残る四つの陣営に対しても同盟陣営と秘密裏とはいえ協力関係を結んでいる私達の存在は邪魔なのは分かりきった話でしかないといのも今更かな』
「あー、まぁ言われてみたらそうなるのかぁ……同盟って難しいね……」
「モモイちゃん……」
モモイちゃん、ミノリさんと結んだ同盟関係。
そしてトリニティやミレニアムの方達と繋いだ協力関係。
聖杯戦争を止める為に、犠牲なく終わらせる為に、そう思って少しずつ大きくなってきた私達の陣営の在り方こそに問題があったのかと。
そしてそれを初めに結んだ私達自身の選択に誤りがあったのかと今更ながら後悔が滲みかけたところにミノリさん達が首を横に振りました。
「いいや、モモイ、ヒフミ。勘違いしてはいけない、敵の数は最初から変わっていないんだ。聖杯戦争は自陣以外は基本的に敵だ。だが同盟を結べば味方の数は変動する。味方を増やす、その選択は間違いなく正しいんだよ。だから同盟を結んだその選択とその誘いをしてくれた勇気ある決断を私は決して間違ってないと思う」
『そうそう。気にしなくていーいんだよ、モモイちゃん。そっちの会長ちゃんにしろ私達にしろ、友達がこんなのに巻き込まれて黙ったまま、なぁんて事したくないし。それに……どっちにせよこんな事になるんだ、是が非だろうと生徒会もシャーレも何かしら動かざる得ないよ』
『小鳥遊委員長の言う通りよ、モモイ。確かに聖杯戦争に私達生徒会が与するというのは大きなデメリットがあるわ。殺し合いの祭典に手を貸した、その事実が公になればその自治区の社会的な地位や信用は確実に下がるでしょう。場合によっては連邦生徒会からの自治政治への大きな介入も起こる。けれど、だからと言って無視出来る問題でもない。なら複数の自治区で協定を結んで問題解決に足並みを揃えられる同盟関係は我々の立場からしてもありがたいのよ───下手な隠し事とかがなければね』
「……ふぅん、そっか。なら……よかった!安心したよ!」
「はい!なんだかちょっぴり、ホッとしちゃいましたね!」
モモイちゃんと顔を合わせる。
彼女は『笑って』いました。
『そう、リオ会長やホシノ対策委員長の言う通り、いずれにせよ我が校の生徒が参加してしまったなら何かしら手を打つのは道義だよ。無論、助けを求められたなら、だけどね。そして幸いだったのはティーパーティが三頭制だった事だ。今回の一件のように、私達三人の誰かが一時的に離席する形となってもある程度学園の運営には問題が少ない、それがトリニティが代々継いできた三頭制のメリットの一つ。だから策を講じたんだ……シャーレと協力してね』
私達とはまた別に、独自で築かれていた協力関係。
今までは断片的にナギサ様から聞いていただけのそれをセイア様は詳らかにされていく。
『私達三人の中で、そして学園内でも単体として飛び抜けた戦力を有する筋肉で脳み……おっと失礼。とにかくゴリ*4、ではなく一定水準以上の戦闘能力を持つミカをシャーレに派遣し外部からの情報収集を図ると共に彼女を最も安全な先生の傍に派遣した。にやけ顔をしつつ*5最後まで渋りはしたがね、まあ納得させたさ』
「あれでミカさんも心配性と言いますか、しっかりしてる所がありますからね」
「しっかりしてる所
とはいえミカの奉仕活動を兼ねるという名目もあったしね、と言うセイア様は困った顔をしつつ嬉しそうに目を細められる。
先生の傍にいられるのは嬉しいけれどお二人の隣を、それも聖杯戦争期間という時期に離れる事に難しく思われるミカ様の姿が容易に想像できました。
『実際ミカを実働とするのはシャーレとしても喜んで受け入れてくれてね。今回の騒動含め、聖杯戦争に関して彼は極秘裏という形で部隊を編成し独自に動いていた。見知った相手、そうだよ。アリウススクワッド、そして廃校となったSRTの生徒、そして』
「───美食研究会」
静かな声はまるで切れ味の良い包丁のように、会話の中に振り下ろされた。
『良い勘だね、鬼怒川部長』
「勘違いだな、百合園会長。知っていたからさ』
『……やはり彼女達か』
「ゲヘナ切っての武闘派テロリスト、かのエデン条約時に大立ち回りをしたアリウス、そして連邦生徒会長の子飼い。いずれも少人数ながら名が知れた戦力かつ先生との付き合いも長いメンバーというわけだ。いやはや、そうかね。彼が最初に便利屋68に声をかけようとしていた当たり、かなり力を入れて聖杯戦争という問題に取り組んでいたようだね?」
『……なるほど。先生が最初に言っていた連絡がつかなかった相手はやはり便利屋の生徒だったというわけか』
カスミさんの言葉にセイア様は紅茶が入っているのだろうティーカップを傾けながら納得したように息を吐きました。
『っと、すまないね。少し気になっていた答えが聞けたものだからつい脱線してしまった。では話を戻そうか。ミカとは打って変わって体力にも強さにも自信はない代わりに私は賢く頭脳労働がメインな人間だ。何より敵が私の勘、或いはかつて有した予知をまだ持っていると誤認でもした場合真っ先に狙われる自信がある、甚だ不本意極まりないが』
背もたれにだらりと身体を預けながら喋るその姿は、いつも穏やかな品を纏われているセイア様にしては珍しくて*6、なんだか疲れが顔を覗かせておられます。
『というわけで私は日中こそ学内にいたが日暮からは正義実現委員会に警護をされた上でスクエアから少し離れた場所にあるセーフハウスを日に2回、転々としていた。ああ、私の口がそれを言うには大変上品な事が残念だがその生活に関してははっきり言おうか。主が見ているといけないから言葉は控えるが最初にクがついて最後にソがつくような生活だったよ』*7
そう言ってセイア様は深々とため息を吐かれました。
少しばかりの休憩。
紅茶とエッグタルトを食べ終えた私達にセイア様は話の続きを始められました。
『ナギサは元々私のホスト権を代行してくれた実績があるからね。そのまま表だった学園の運営を頼む形となった。無理をさせる形となったが責任感の強さは彼女の美徳さ。それから一週間以上、休みなく懸命に職務をまっとうしてくれたよ……そしてそれが私達を使った釣り餌さ』
釣り餌。
そう言い切ったセイア様の顔色はあまり優れているようには見えませんでした。
『万一に備えて先生のもとに一人、もう一人は敢えて姿を現す頻度を減らしている状態を見せつけ、最後の一人は今まで通り政務を行う。どこにアクションがあっても必ず対処できて、かつその後の運営に問題がないように、という形を取った。なにせ当初想定していた相手は殺意を持った大人だ。最悪の事態すら考慮に入れなくてはね……もっとも先生には後半部分は伏せたとも』
「懸命だな。あの人相手にそんな事を一言でも喋ったら確実に止められる」
「私は言えないなぁ」
「絶対怒られる……」
『ええ、正しい判断でしょうね。私が同じ立場でもそうするわ』
『またまた〜。そんな事言ってみんなちゃんと先生に相談してから動くでしょ〜?私だったら『……ホシノ先輩?』……か、顔が怖くなってるよアヤネちゃん……』
なんて、ホシノさんの引き攣った声と顔に笑いが漏れつつ、セイア様はまた一口、カップへと唇を落として喉を潤わされた。
『ん……ミカはあれで外面がいいからね。意外と粗野だとは知られても、自分が前線に出る武闘派だなんて一面はごく一部しか知らない。だから政治能力も低いただのお嬢様と見られがちな彼女がシャーレに行ったとなればまず知らない人間からはただの奉仕作業か将又疎開か。いずれにせよ残るのはミカと違って頭脳明晰な私と顔役のナギサになるわけだ……敵も狙いやすいだろう』
ミカ様は強い。
補習授業部に入る前、ナギサ様から幾度となく教えて頂いたお話でしたがあまり実感はありませんでしたし、普段のご様子を知っているだけにちょっとした冗談ぐらいに受け止めていました。
でも今にして思い返してみればきっとあの話は本気だったのでしょう。
そしてだからこそ、ミカ様が席を外されて残ったお二人を見て刃を向けようとする理屈は決してしたくありませんが、理解出来なくもありません。
『そうして案の定、昨晩狙われた。そういう話なわけだ……だからなんだ、そのだね』
そう言ってからセイア様は困ったようにそわそわとされて、それから少しだけ頬を赤らめてから照れるように、けれど安心させるように仰ってくださいました。
『ナギサが入院した事や私達の命が狙われた事を必要以上に君達が負担に思う必要はない。たとえヒフミ、君がマスターでなかったとしてもティーパーティは私達の学校を守る為にそういう風に動いていた……それだけの話さ』
優しい言葉に乗せられているのはたった一つの気遣い。
どうか傷つかないで、どうか自分を責めないで。
───だから泣かないで、ヒフミさん。
セイア様からの言葉越しにお二人からのメッセージまでもが聞こえてくる気がする。
ティーパーティの、本当なら私みたいな平凡な生徒じゃ在学中にお話しすることすらないような御三方から贈られる心から心配して慰撫する優しさに、目頭がじんとする。
「ありがとう……ございますっ!セイア様!」
『何のことやら。言っただろう?私達の事について、君達はなんの関係もないと。私達は自分達の務めを果たした、これまでも、これからも……それだけの事さ』
ニヒルに笑う彼女は日差しを受ける穂麦畑のように眩しい。
そんな彼女にハナコちゃんも
「ふふっ♡とってもながーい♡お話でしたからどうしたかと思ったら……♡」
『言わないでくれたまえ。柄にもない事を話している自覚はあるさ』
「───でもそういう『配慮』をされるセイアちゃん、私は『嫌いじゃありません』よ」
『っ!?……はぁ、敵わないな』
咳払いを一つ。
それに私を下を向いて急いで目を拭ってから前を見る。
もう一度、私達の間にはぴりりとした空気が流れ始めました。
『とにかく我々は狙われた。そしてその悪辣な企みは防ぐに至った。無論のこと、無事とは言い切れなかったけどね』
セイア様が資料を手に取られたのに合わせて私達も手元のそれに目を向ける。
『我が校で直接サーヴァントと戦闘を行ったのは二名。うちの暴力担当こと聖園ミカ、そして正義実現委員会現委員長剣先ツルギ。ミカの方はナギサを襲った暴食のセイバーと名乗る女を、ツルギの方は……残念ながら一切喋らなかったようでね。推測にはなるが恐らくはバーサーカー、ということで当面は考えてほしい』
ミレニアムと違って映像での記録が何も残っていない夜中の死闘。
それでもミカ様、そしてツルギさんの証言を元に、私達の中で一番外の世界やセイバーさん達の世界の神話や英雄、そして魔術について詳しいウイさんが書き上げてくれた資料。
そこに書かれているのは二騎。
『ミカと戦ったセイバーについては宝具、真名も割れた。だが見てわかる通り二つ、大きな問題点は残っている。そしてバーサーカーについても分からない事だらけなのが現状だ』
深紅のドレスを纏った『暴食のセイバー』、ネロ・クラウディウス。
そして全身を黒い靄に覆われていて細部こそ確認できなかった全身甲冑に身を包んだ『銃を使うバーサーカー』。
『細部については後々詰めたいね。だから私としてはこんな所でトリニティの話は終えてバトンを渡したいところだが、どうかな?』
少しずつ見え出してきた聖杯戦争の裏側に潜む『敵』の姿。
ミレニアムに現れたランサー、アサシン。トリニティに現れたセイバー、バーサーカー。
そして。
『んー、じゃあおじさん達の話にいこっか?って言ってもおじさん達はアイツから聞いた話はちょっと特殊だったしねー』
アビドスに現れた『強欲のアーチャー』の話を始める為に、ホシノさんはゆっくりと。
『アイツ、強欲のアーチャーはね……自分だけが六騎の中で唯一、まともな自我を持ってる聖杯のサーヴァントだって名乗ったよ』
思い出すように話し始められました。
1じゃんね☆
何とは言わないけどセイアちゃんの言葉に違和感覚えている子はいるしほぼ正解な子もいるよって話じゃんね☆
ヒフミちゃん?
今、折るつもりは1にはないじゃんね☆
アンケートは今日のお昼までじゃんね☆
よかったら気軽に押してってやって下さいな!じゃんね☆
123話記念?短編で読んでもいいよーっていうのを選んで下さいな、じゃんね☆
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①最新話までの内容でプチ一問一答
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②聖杯戦争終結後の日常(if)
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③ヒフミちゃんinカルデア(if)
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④ウイちゃんの聖杯戦線日記(続き)
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⑤おいでませ!エクストラクラス!(if)
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⑥アサシン師匠の気ままな1日
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⑦召喚されたのが○○だったら(if)
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⑧ある日のカヨコちゃんとムツキちゃん
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⑨ヒフミちゃんのお茶会(相手はアンケ)
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⑩アーチャー陣営の昼下がり