阿慈谷ヒフミは聖杯戦争に参加するようです   作:1じゃんね☆

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……来たんだ。
ううん……だいじょうぶ
私は、大丈夫だから……ばか、なんでそんな泣きそうな顔してんのよ
ほら、こっち来て
多分、その方が喜ぶから

……なんで、お見舞いに牛乳持ってくるのよ、ばか
でも、ありがとう
きっと……うん、喜ぶよ





さよならは言わない

 砂塵が月明かりを舐めながら空を舞う。

キヴォトス全域が分厚い雲に覆われたその夜、アビドス自治区にだけは渇いた風が吹いていた。

倒れ伏す者。

盾を構えて肩で息をする者。

手に持つ銃を油断なく構えるままでいる者。

5人の少女は英雄ならざる英霊と対峙している。

 

「お前達も理解している事だろうが、()を形作る霊基は通常の聖杯戦争で与えられる物とも、抑止力……ああ、そういうケースもあるんだが、とにかく常のソレとは毛色が異なる。まあなんだ、聖杯に与するサーヴァント達はいずれも皆イレギュラーというやつサ」

 

 アビドス廃校対策委員会。

委員長『小鳥遊ホシノ』の合流から早くも30分が経過して尚、決着は未だ遠く。

呼吸が覚束ないほど、息を荒げて片膝を震わせる。

満身創痍、酷い有様であった。

粘り強く組み上げた戦術が、個々が磨き続けてきた技術が、高い壁に阻まれ続けた結果。

彼女達はまだ勝ちきれていなかった。

 

「そしてその最もたる物こそが───罪咎(ギフト)だ」

 

 吾などという古めかしい言葉遣いの男はその一人称通りに古風な様相だった。

浅く焼けた肌、砂漠に広がる夜空の端から糸を紡いだような群青のストール、その下に纏うは燻んだ鉄色の甲冑。神秘はあれど科学全盛というべきキヴォトスにおいてまず見ない遥か古代の戦衣装。当然、手に持つ兇器もまた近代兵器に駆逐されて久しい過去の産物。

 

「吾の核たる罪咎は『強欲』!セイバーがこの世すべてを喰らう『暴食』ならば如何なる物も欲するが吾が定め!……が吾は少々特殊でナ」

 

 だが、無傷ではなかった。

千切れかけた腕がゆっくりと再生を進めているが、遅々として傷口は塞がらない。

右の頬肉は削げ、歯すら見えている。

()()のも面倒だと放置している火傷に爛れた皮膚は腐れた泥を滲ませる。

幾つか肉に打ち込まれた銃弾は、再生との瀬戸際にあって鉛を砕きながら皮膚を伸ばして、また破片で血を流す。

 

 ホシノが到着してから30分。

ホシノが辿り着く前にもう1時間。

アビドスへの侵攻をする際にホシノを足止めした時に30分。

都合2時間、少女達の健闘によって男の身体は確かに傷ついた。

負けない戦いを、次に繋がる一手を常に打ち続けてきた少女達の成果であった。

酷い、あまりにも酷い傷であった。

 

「吾達はそれぞれが七つある罪咎に準えた小権能とその入れ物として誂えた霊基がある。そして我ら聖杯のサーヴァントは、誰も彼もがその罪を稼働目的(原理)として動いている」

 

 だというのに槍をくるりと回し、男は笑った。

傷口の痛みなど堪えていない、それどころかその戦い振りにこそ応えてやらんと。

本人も自覚しないまま。

男は心底、()()()()()笑っていた。

 

「もっとも、名前こそ知れど誰がどんな形で各々の罪咎を持つのかまでは知らん。推測は出来んことはないが、たとえばライダーのソレは分かりやすいが、アサシンのは話にもならん。後はバーサーカー、アレも特殊な部類か。というわけでだ、吾の話にするとしよう」

 

 言葉を区切り、一呼吸を置く。

『よく聞いておけ』、そう言わんばかりに分かりやすく重要なのだと教える話し方はとても敵として対峙しているとは思えない物だった。

 

「たとえば吾の場合は『強欲』、定められた方向性(性質)は支配権の簒奪。如何なる契約であれ吾が望み、その戦いに勝利すれば、有機無機を問わずその『死体の支配権』を奪い取れる。要は殺した相手を使役できる……まあ、『7つ』ある権能からすると間違いなく最弱の部類だナ」

 

 元より睨みつけ決して目を逸らしていなかった5人。

その中で目を見開くほどの反応を示したの2人であった。

少女達、その中でもサーヴァントについてある程度の知識を託された小鳥遊ホシノと奥空アヤネが一際大きく反応する。

それが意味する事が真実ならば、と。何よりそんな大それた物がまだ5つもあるのかと。

 

「お、いい反応を見せる。うむ、権能は全部で7つ、それぞれにクラススキルとして割り振られて与えられた」

 

 それにアーチャーは鷹揚と頷きを返しつつ、目の前な少女達に向かって分かりやすく指折り数え始める。

 

「暴食、怠惰、憤怒、嫉妬、色欲、吾の強欲の全6種類……記録に残るかは知らんが言っておくぞ。これを聞くサーヴァント、安心しろ。最後の一席、その椅子に座る筈だった七番目のキャスターは()()()()()()()

 

 肩をすくめつつもその眼光は夜天を舞う猛禽の如く。

酩酊に似た混濁を霞ませながらも、隠しきれない鋭利な理性から強欲のアーチャーは警戒を口にする。

 

「偶然か、それとも吾に干渉したナニモノかがいたのかその正体は分からんし吾はそれについて()()()()()()()()()。仮に干渉したならば少なくとも吾はどちらかの抑止力かそれともあの娘辺りかと検討を付けている……吾はそうは思わんがな」

 

 だがそれは、この言葉を聞く人間に送られた警鐘ではなかった。

あり得ない可能性だからこそ。

わずかな警戒をする事はあってそうであるなら、少なくとも聖杯と対峙する事になるサーヴァントとマスターにとっては()()()()()()()()()()()でしかないのだから。

 

「この地の抑止力はあまりにも脆弱だ。翻って星の意思もどうかと問われれば、これもまた揺籠の如く穏やかに過ぎる。そしてあの娘を狙って今宵吾は動くが、まあ無理だろうナ……いいか?キャスターの席を潰したのは偶然が噛み合った結果、もっと言えば恐らく『盤面外の人間』の手による物だ。無様だが、因果応報だったか?そういうもんサ」

 

 憐憫とも憧憬とも呆れとも言えない表情で男は笑う。

何をどうやったらそんな結果が転がり混んで、おまけに自分達に悟られずに済んだのかと。

そうであるなら偶然以外の何者でもない筈だと、確かな答えを己の中に持って。

 

「吾はそれに気取られん。どうせ次の聖杯戦争が始まれば補充が出来る、そう判断するだろうからナ。そうなったら極東の大妖なり血濡れた復讐者あたりを引っ張り出すだろうとも。いや、次を見据えて夜半の語り手なんてのもあり得るか?」

 

 一人ごちるようにする男に少女達は渋面を作る。

耳に飛び込んでくる物騒な名前のそれがどんな存在かまでは分からなくともキヴォトスにとって甚大な被害を齎す事だけは理解出来たからだ。

 

「おっとすまんな、考え込んだ。どうにもいかんな、この手の事を考え出すと止まらん。好きか嫌いかではなく、吾であればどうこのキヴォトスを切り崩すか。その為に、どんなサーヴァントであれこの都市の秩序への()()なり得るか……つい、考えちまうのは厄介な性質サ」

 

 少女達は理解する。

つまり今、強欲のアーチャーが挙げた3騎を指した言葉はキヴォトスに 著しい不利益を招く存在(危険なサーヴァント)なのだと。

そしてそんなサーヴァントを次以降の聖杯戦争で男の主人は呼び出すつもりなのだと。

 

「ええっと、あゝ、そうだ。だからお前達もキャスターの召喚に失敗した原因を躍起になって探すならやめておけ。この手のは精々、頭の片隅に留める程度にしておけば十分だ。偶然か必然か、シャーレの聖人に対するカウンターとして用意されつもりだった傲慢を潰したほどの存在が今の状況で顔を出すつもりがないというなら、()()()()()()()()()()()というやつなのだろうよ」

 

 そんな話題を男は手を振ってさっさと流してしまう。

気にする必要はない余談だと、つまらなそうに語り終えてしまった。

 

「さて、話を戻すぞ!今の吾は知識欲、そしてたった一つへの希求に()()()()()から霊基の関係もあって権能は使えん!使えたとしてもこんな物は使わんがナ」

 

 明らかに重要な話をしているだろうにからからと笑う呑気なその姿に、少女達は疲れたように肩を落とす。

とはいえ少女達にとって今宵の戦いで嫌でも目にした男振り。

なにせこの男ときたら、影の生徒を打破した少女達と初めて会って一発触発となった時ですら喜び勇むようにして接してきたのだから。

 

 あまりにも快活。

毒気を抜かれるほどに明瞭。

からりとしたその気風は、つい数瞬前まで影の如く全身を真黒に塗りつぶされた顔無き生徒と対峙していた少女達の意表をつくほどだった。

だから、()()()()()と思ったのも、また事実であった。

 

「まず前提としてだが。定められた権能を絞れるか否か。答えは単純にして明快───普通は絞れん、というより他の奴にはほぼ不可能だ、()()、ナ」

 

 その姿勢、その言葉に、少女達はなんの返事もしない。

なんの言葉も返さない。

男は、聖杯という第三の陣営に与すると言ってのけた『強欲のアーチャー』を名乗るサーヴァントは明確な殺意を持っている。

強欲のアーチャーは間違いなく自分達を殺そうとしている。

 

───砂狼シロコを、確実に殺そうとしている。

 

 他の4名の少女達もまた、コレを生かしておけばいずれ自分達の喉笛を掻き切られる事を肌身で、その本能で理解している。

 

「お前達は睡眠の代わりを食事で補えるか?その逆でもいい……そういう事だ。吾達はそれぞれの罪が本能であり基準であり本質その物。そしてそれもまた吾が持つ権能とは違う形で課されキヴォトスに対して行使される『権能』、つまるところルールだ」

 

 だが、動けない。

否、動こうと思えば動けるのだ。

少女達は知らない事だが、桐藤ナギサが暴食のセイバーと相対した時とは事情が違う。

『権能』でも本能からの警鐘でも、ましてや怪我を負ったからでもない。

 

 片膝を着き、目線を合わせてゆっくりと話すその話振りはどこまでも真摯だった。

殺意はある、だが敵意がないのだ。

チグハグなその在り方、それを曝け出した上で強欲のアーチャーは少女達に伝え続けんとする。

情報を少しでも開け渡そうとする。

 

 ましてや()()()()だ。

既に一時間以上を経過した戦闘、その最中にこうして休憩まで設けて、距離こそ開けているが共に水を飲みながら雑談にまで興じんと歩み寄ろうとする。

あまりにも異質で、だからこそ少女達は話だけは聞こうとしていた。

 

「罪咎こそが吾であり、吾の存在自体がキヴォトスに課された罪咎……まあなんだ、サーヴァント以上にこの地の聖杯に属するサーヴァントというのは人間という生物と相容れん。つまり吾は見目こそ通常のサーヴァントと変わらんが実態は人喰いの化け物と天災の合いの子とでも思えばいい。それこそ」

 

そして男は言うのだ。聖杯どころか魔術すら知らない少女達にはその言葉の真価を計れない真実を。

 

 

 

 

 

 

「───冠位が現れようとこのキヴォトスで吾を完全に打倒するのはそう容易な話ではない

 

 

 

 

 

 

 冠位。

男が苦い顔をして告げた単語は恐ろしいほど重かった。

 

「とはいえそれは互いが比武してどうこうという話じゃない。つまりは『相性』、霊基の出力でどうにか出来る話でもなし、何よりこの地は抑止の外だ。たとえ高位の英霊が冠位として呼ばれたとしても、キヴォトスでは()()()()()()()その力を十全には使えず、マスターを必要とすればそれは一個人への肩入れとなって冠位を返さねばならんのサ」

 

 その言葉は強烈だった。

サーヴァントについて、そしてあちらの世界の仕組みについて理解している者であるならば絶句せざるを得ない音であったのだ。

だが、仕組みを知らない人間からすればなんの話か一つだって見えてこない。

はっきり言おう。

この戦場にいるこのアビドス廃校対策委員会の少女達にとって理解の範疇に及びはしない。

何故なら、彼女達の知らない世界の、文字通り異なる星の法則の話なのだから。

 

「要は手詰まりだナ。無論、伝え聞く()()()()()()()()()なら吾を完全に殺し切るのは可能だが……まあどちらをぶつけたとしてもキヴォトスは滅ぶか。殺しきれても、格が駄目だ。重すぎちまって禍根を遺す」

 

 だから、男がそれをこの場で伝える理由は一つ。

少女達が自分から生き延びて、その事実を確実に活かしてくれると信じているからに他ならない。

 

「つまるところ、聖杯のサーヴァントというのは時限爆弾のような物だ。正しい手順、つまりはお前達生徒かその生徒と契約したサーヴァントで倒さなくてはかなり暴発する厄介極まりない代物と考えておけ」

 

 少女達が分かるように。

そしてこの先を旅するマスター達へと繋がるように。

造り上げられた6騎のうち、誰もが歪められた『あの始まり』から、異常な思考を保ち続けた唯一として。

アーチャーは藁に縋るようにして、己に課されたルールに触れない形で言葉を尽くし続ける。

 

「話を戻すが、聖杯のサーヴァントに宿る罪咎、その抑制。吾がそれを可能としたのはたまたまこのサーヴァントが重複する二つの霊基を有している特殊な存在であったこと、かつてこの男が参加した聖杯戦争の経緯が特殊であり聖杯を打倒した記録があること、そして極めて特異なスキルを二つ持っていたこと。その条件が揃っていたから今も吾が表に出ている間にもう一人が吾の中で必死に演算して吾を制御してなんとかお前達の価値観に擦り合わせて話が出来るというわけだ」

 

 全力を尽くし合いながら、まるで鍛錬のように休憩時間を設けるのも含めてただひたすらに男が望むのは一つの未来だけ。

それに至る筋書きがないからこそ、その解へと至りたいが故に。

 

「吾も含めた聖杯のサーヴァントの中でお前達の思考に近いのは、知識欲という形で罪咎を実行している吾だけだ。それでもお前達の脳の一片まで微細に記録した上で皮を剥いで装丁した本にしてやりたい程度の考えは吾も常にしている……そうだ、この吾ですらだ」

 

サーヴァント、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎。

戦士として、そして王としての偉大な功績を人類史に刻んだ大英雄。

 

「すべてのスキルを十全に使ってなお吾ですら本来の姿からは程遠い。ましてや吾は誰も彼もが()()()だ」

 

故に彼は己が生涯において二つの全盛期を()()()()と定義された稀有な存在。

 

「七騎の吾が完成してしまえば、そうなれば、シャーレの聖人であっても打倒は困難だろう。無論そうなり果てたとしても例の娘がいればかの聖人は十二分に勝機を見出すだろうが、いない女に固執するばかりでもな。或いはそれこそ天文台の……いや、それこそ本当に詮無いことだナ。忘れてくれ」

 

そして穴蔵に潜む巨人達、未だ神代に生きる石の柩、大陸は東方の峻厳に根ざす神仙。

彼等と関わり魔術すら掌中に納め一つの神話を造り上げた魔術世界における一つの指標。

そんな偉大なる蔵智の王、その影法師は語り続ける。

 

「なにはともあれだ!お前達に吾はとても期待している!なにせ、完成前だろうと完成後であろうと吾を倒してもらわねばならん。なによりお前達生徒の力だけで吾という邪悪を打倒出来なくてはならん!

いいか?よく聞いておけ、娘子達。ああ、ちゃんと記録しているか?要り用なら羊皮紙程度なら出してやるし書く時間も待つが……よし、なら話を続けるぞ」

 

聞いているなと辺りを見ましてからの咳払いに少女達は溜息を吐く。短時間の関わりだが、自分達の愛する街を壊さないように砂漠まで移動を提案した上で戦闘中もアドバイスをしてくる始末。なぞっているだけなどと嘯くこの老人に愛嬌のような物を感じる中で告げられた言葉は、先ほどの冠位云々以上に少女達へ衝撃を与える。

 

 

 

 

 

 

「───聖人の役割を固定する事だけはやめておけ」

 

 

 

 

 

 

 聖人。

それが誰を指すのかは既に話されていた。

それが意味する事を理解する必要はないと断言された上で、ただ誰を指すのかだけは教えられた単語。

シャーレの聖人、即ち───『先生』その人。

 

「これは聖杯戦争の話ではない。取らぬ狸の皮算用だったか?そういう話だナ。確かに次の聖杯戦争がどうなるかは分からん。だが間違いなくあの男は切り札として未来に持っていけ」

 

その目が語る。

 

「───たとえ阿慈谷ヒフミが敗北し、どんな末路になったとしても。たとえ聖杯大戦が始まったとしてもだ」

 

これだけは忘れてくれるな、と。

これだけは必ず届けろ、と。

その目を見て少女達の手にも力が籠る。

 

「第一、既に吾という存在が独立してしまったのだ、次に呼ばれるサーヴァントが今回以上に狂った結果になっても何ら不思議でない……シャーレの聖人は本当に最後の最後まで頼ってはならん。お前達がこの先の未来でまだあの男を先生と呼びたいならば、万一の可能性も捨て置くな」

 

 それを言い終えたアーチャーは立ち上がり膝についた砂を払って落とす。乾いたその音はまるで合図のように夜の砂漠に響いた。

 

「さて───息は整ったな?

 

 音が止まる、風が息を沈める。

快活さは鳴りを顰めて、粛々とした殺意が地を支配する。

それは権能などではない。生物としてキヴォトスへ傷をつける為だけの存在であるからこその当たり前の特性。

 

「話は終いだ。吾の罪は強欲。吾は悪徳を為す物だ。たとえ好々爺気取りの今でもそれは変わらん。吾はお前達の敵として造られ、乗り越えるべくして産み落とされた筈なのだから」

 

 打って変わったその雰囲気に少女達も立ち上がる。

緩やかな時間が終わり、これより再びこの地は戦場となるのを理解してその手に銃を強く握る。

この男のことをしかと理解したというわけではない。

為人だって今一つ掴めてはいないし、そもそもが敵。これまでの話だって嘘かもしれない。

けれど、それでも。

 

「だからこそ知りたい。今も未来も勝機の一つすらないこの『重なり腐り落ちんとする交差点』で、お前達が吾に勝利する結末を、その未知なる果実を吾は知りたい、手にしたい。大国を築き、友を殺し、血で大地を染め上げ全てを掌中に納めた男がそれでもまだ見つけられない、可能性(希望)を吾は見たい」

 

短い時間ながらも刃を、弾丸を重ね合って僅かな真意を少女達は見たのだ。

この男は真実、『強欲』なのだと。

 

 たった一つ、ただ一度の勝利。

呼ばれ、砕かれ、造られ、捻じ曲げられ己の宿命。

叶う事のなかった超えるべき結末、その一助となる事で運命に勝利したいと。

そう願って、己が手の届く限りに、声が届く限りに叫び、その腕を伸ばしているのだと。

 

「故にこそ」

 

 だから少女達は立ち上がり、立ち向かう。

目の前の男の戦いに、自らも助力するために。だってそうだろう。

 

 

 

「─── お前達がその小さな手で捥ぎ奪って魅せろ

 

 

 

必死に頑張っている誰かを見捨てろだなんて、アビドスの生徒が、シャーレの先生の元で学んできた彼女達が出来るはずがないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……とまぁ、そんな感じで戦ったってとこかな』

 

 映像は、ホシノさんの言葉を最後に音もなく終わってしまいました。

ここから先はもう、見終えた部分ですから。

 

『ただ、アーチャーは自分の名前もスキルとかも詳しい事は教えなかった。そういう風に霊基が出来ているから教えたくても教えられないし喋ったところで伝える言葉がジュソ?ってやつに成りかねないから意味がないんだって……ま、だから私達がヒフミちゃんに伝えられるのはこれぐらいになるかな』

 

 そう言って話し終えたホシノさんはちらりと調月会長を見て、それに彼女も少し言い淀みながら口を開く。

 

『……エリドゥについては襲撃を無事に切り抜けたようね。少なくとも陥落した感じはない、恐らく全員無事でしょうね』

 

「D.U.はそもそもスケバンの娘まで雇った連邦生徒会がほぼ対処したからな。私もスパルタクスも構築されていた防衛戦の支援をするぐらいで細かな現状は分からない。ただ少なくともエリドゥと同じで別のサーヴァントは現れなかったよ」

 

 情報が今一つ集まりきらないエリドゥ、D.U.の話はそこで終わってしまう。

そうなれば後に残るのは一つしかありません。

 

「んん?やっと私の出番かい?」

 

「お待たせしました、カスミさん。では、ゲヘナの現状や貴女がここに来た理由……私達に伝えてくださる伝言について。そして『取引』について聞かせてもらえますか?」

 

トリニティ、ミレニアム、アビドス、D.U.、エリドゥ。

今回被害に遭った各自治区の報告は終わり、残りはゲヘナ自治区。

情報封鎖されているのと人員不足で調べにいけない現時点では突然お越しになった鬼怒川カスミさんが持ってきた情報だけが頼みの綱となります。

そんな私の思いを見透かしてか、彼女は薄く笑って。

 

 

 

 

 

 

「では結論から言おうか───二割だ」

 

 

 

 

 

 

『……は?』

 

 ただ、彼女は数字を口にした。

一体それが何を示すのか、全く見えてこないっていうのに。

嫌な予感だけは煩いぐらいに警鐘を鳴らしていました。

 

 だって私達は自分達の口から言いましたから。

今回の襲撃の被害は、予想したよりもずっと小さかったって。

敵の戦力に対しての被害は、思ったよりもずっと少なかったって。

それならです、()()()()()()なんです。

 

「昨晩のライダー二騎とシャーレが率いた合同部隊との戦闘でゲヘナの中心区画のおよそ二割が()()()()()()()()()()()()。当然、風紀委員会を始めに多くの学生が復旧を急いでいるが……まぁどうなる事かな。少なくとも現状のゲヘナは身動き取れない事実上の壊滅状態、というやつだよ」

 

 そして、その予想すら。

私達が考えていた事すら甘かったのだと、実感が沸くよりもずっと早く事実は差し迫ってきました。

他ならぬ、カスミさんの話によって。

 

「私がここに来たのはそういう事さ。言っただろう、お使いだと。言っただろう、君達に呼ばれたのだと。つまりだね、諸君」

 

想像し得る限りの。

そしてこれまで一度だって想像なんてしてこなかったこと。

黒服さんからの忠告もあったから、だからきっとそれもあって意図的に思考から外していたこと。

今のキヴォトスで、一番最悪の事態。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は美食研究会含めたシャーレが率いた合同作戦部隊の代理で此処に来てるんだよ、なにせ彼女達のチームは壊滅してしまったからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先生の敗北、という事実でした。

 

 

 

 

 

 





1じゃんね☆
原作主人公勢力が弱いわけないじゃんね☆
今の話が終わったら昨晩のゲヘナ周りの様子も投稿するじゃんね☆

ちなみに強欲のアーチャーさんの出番はこれでほぼしゅーりょーじゃんね☆
喋る気0な他の子達と違ってよくお話してくれたじゃんね☆
……描きたかったこともこれで全部、1はホッとしたじゃんね☆

さてさて!アンケートへのご協力ありがとうございましたじゃんね☆
結果は↓の感じになったじゃんね☆
とりあえず今週中には進捗報告しつつ書き上げます、じゃんね☆
改めて、活動報告の方でアンケート案を出してくださった方、アンケートにご協力してくださった方、ありがとうございました!……じゃんね☆

123話記念?短編で読んでもいいよーっていうのを選んで下さいな、じゃんね☆

  • ①最新話までの内容でプチ一問一答
  • ②聖杯戦争終結後の日常(if)
  • ③ヒフミちゃんinカルデア(if)
  • ④ウイちゃんの聖杯戦線日記(続き)
  • ⑤おいでませ!エクストラクラス!(if)
  • ⑥アサシン師匠の気ままな1日
  • ⑦召喚されたのが○○だったら(if)
  • ⑧ある日のカヨコちゃんとムツキちゃん
  • ⑨ヒフミちゃんのお茶会(相手はアンケ)
  • ⑩アーチャー陣営の昼下がり
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