そう、今はそれで良いですけどねぇ?
でもですよ、けれどですよヒフミちゃん。
その前提が狂っちまったら、ねえ?
そぉんなくっだらない決意表明じゃあ届かない絶望を前にしちまったら。
手前様は一体全体、どうなっちまうんでしょうねぇ?
『まず貴女達が気になっているだろう事から話をしておきましょうか』
会議のスタートはリオ会長からでした。
私達全員に共通して気になる事、となると話す内容は一つになるでしょう。
私達の先生、彼のことについてです。
先生は昨晩のゲヘナでの戦いの後から行方がわかりません。
手元にある手掛かりは彼からのメッセージが入っていると思われるSSD端末だけ。
それもまだ解析作業に入っていませんから、残すところは。
『昨晩の襲撃はミレニアムやトリニティ、ゲヘナやアビドスの他にもD.U.で確認されたのは、実際に現地へバーサーカーとミノリさんを派遣した貴女達なら把握済みね』
シャーレの先生が不在、という今この現状そのものについての話になります。
連邦生徒会。
キヴォトス全体を運営管理する行政機関*1です。
シャーレと同様、D.U.に本拠地があるので昨晩の襲撃に関しては先生と連邦生徒会のどちらを狙ってか自体は私たちにも判断できません。
そしてその襲撃を、ミノリさんが到着するまでの間も
『その上でD.U.への襲撃を対処した連邦生徒会が今朝発表した声明は、大規模な暴動が発生したが未明には終息、直ちにD.U.やキヴォトス全体の運営への支障が出る恐れはない。また本件に関して他自治区との関連がある可能性は極めて低い、と言っている。同様にクロノススクールも一言一句同じ見解ね。先生が行方不明だなんて情報はどこにも流れていないわ』
クロノススクールはキヴォトスの報道機関系専門学校です。
色々なニュースをテレビ、ラジオ、ネット、アプリ、雑誌等で発信していてキヴォトス全体でマスメディアと言えば、という立ち位置にあります。
そんな彼女達*3も連邦生徒会と全く同じ見解を伝えているとなれば。
『間違いなく言えるのは情報に圧力をかけているということ。少なくとも私が知り得る限り、連邦生徒会は聖杯戦争を公的に把握し発表するつもりは現段階でも恐らくないわね。徹底的に情報統制してでも社会的な混乱を避けたい、というのが彼女達の意思よ』
マスターである私としてはありがたいところです。D.U.でも決して小さくない被害が出たと聞いています。
それでもまだ、彼女達は
どんな思惑があってなのかは分かりませんが、今はそれに感謝して恩恵に預かる他ありません。
『当然、先生が作戦中に行方不明になった件についても同様ね。無駄に知らせた所で不必要な混乱を招くなら少なくともすぐにどうこうという事はないわ』
先生の不在も含めて、D.U.は勿論キヴォトス全体でも大きな混乱は起きていません。
もちろん連邦生徒会の方達の働きかけも、そしてきっとそうなるように事前に取り計らってくれていただろう頼れる
でもそれだけじゃなくて。
『いつまでも、とはいかないがそれでも残る五日間。混乱は抑えてみせるさ。もっとも君達が考えなしに行軍でもしようものなら、その限りではないけどね』
『情報の漏出については問題ないわ。可能な限り……いいえ、私に出来得る
『まあアビドスは人少ないしねぇ……来てくれてた子達もどの子も良い子だったから、きっと大丈夫。混乱なんて起きないよ』
こうして実際に被害に遭ったというのにそれでも味方でい続けてくださる各自治区の代表者の方が。自治区にいて私達を助けてくれる人達がいるからこそ、大きな社会的混乱を現状は心配しないで済むんです。
「だから私達が考えるべきは今できる事、というわけさ。先生の行方は分からないけど……おや、来たみたいだね」
ウタハ先輩の声に私達が吊られて振り向くと、そこにいらっしゃったのは昨日振りに見る姿。
「どっかのおばかの所為でね。来て早々だけどとりあえずデータの解析を先に進めとくから、私は気にしないであんた達は好きに話をしてて」
さっきの今で早速来てくださったチヒロ先輩は、ウタハ先輩からSSDと端末機を受け取るとそのまま解析作業に没入されました。
『解析についてはチヒロがいれば問題ないわ。話を続けていきましょう』
『なら個々の話は後回しにしちゃって、まずは大きいところから話してこっか?たとえば……さっきの話にも出てたみんなが気になる、数の弱点とかさ』
ホシノさんが口にしたのはミノリ先輩も言っていた問題です。
私達は強くなって仲間も増えました。
その分、出来ることは増えましたし、単純な戦力強化という面でも新しい敵勢力が出現した今はありがたい。
ですが数が増えた分だけ、強くなった分だけ増えてしまった弱点がある。
たとえば他の陣営からは厄介な存在として見られようになるとか、仲間の数だけ身内やお友達の母数が増えますからそれだけ危険に晒される可能性が増えたとかです。
そして、もう一つ。
「全戦力をぶつけるとなれば当然被害が大きくなる。だから戦える場所は……限られる、のかな……?」
ヒビキちゃんの言う通り、これが問題です。
私達は大っぴらに戦うことは出来ません*5。
強みの数を最大限活かすとなれば、そして今後数と数をぶつけ合う戦いをするなら、被害が出ない場所での戦闘や立ち回りが必要になります。
「で、でもそれって……あ、あぅぅ……」
ヘルタースケルター119機*6に私も合わせて前線で戦闘可能なのは10名以上*7。
ここから30名以上の工務部部員さん達が明日には合流されますし*8、何より私達と一緒に戦ってくださるサーヴァントの方は所持する宝具が強力な分小回りが効きにくい。
全力で戦う必要がある場合、昨日の先生のように周囲に誰もいなくて建物とかの被害を考えなくて済む場所で戦いたいところです*9。
そうなるとどこが良いのか、そう思って私達がそれぞれ思い当たる場所を言い合おうとした時に聞こえてきたのは、言い淀むユズちゃんからの疑問でした。
「そ、その……わたし達がその……能動的にソコを選ばなきゃですよね……だからあの……主導権のその……」
初対面のセイア様だったりアヤネさんもいたりの中、顔を赤くして恥ずかしがりながらでも何とか言葉にしようとしているユズちゃん。
「……それってどっちが先に殴ってきたか、とかの話?」
そんな彼女の後を引き受けるように聞こえてきたのは一人言のように小さな声。
助け舟は緊張したようにちょっとだけ唇*10を尖らせた*11コハルちゃんからでした。
「な、なによ!別に
「う、うん!わたしが言いたかったの、それだよ……!ありがとう、コハルちゃん」
「ほら見なさい!合ってるじゃない!」
「あはは……はい!コハルちゃんはやっぱりすごいです!私はここらへん、ちっともですから。よかったらこのまま教えて下さい!」
意外でもなんでもなく*13、コハルちゃんは正義実現委員会の一員です。
言われてみればこうやって部隊の運用だったり戦術だったりっていうのも馴染みがあるんでしょう。
「任せて!……じゃ、じゃあ話すけど、相手が昨日の夜みたいに市街地に部隊を展開されたら、もう誘導なんて無理よ。前にユウカ先輩が言ってたみたいなその……『少数、つまり聖杯陣営以外であれば避難と保安部の攻撃である程度は誘導できるわ』そう!それ!……です」
リオ会長の補足につい意気込んでしまって敬語を忘れてしまいましたが、構わないの一言でホッとしているコハルちゃん。
礼儀正しいところが彼女の素敵な点ですね*14
「とにかく!……昨日と同じでたくさんの敵が市街地に入り込んだら、もう人がいない場所に誘導なんて無理よ。昨日みたく避難勧告して被害を抑えれたなんてのはいっそ奇跡みたいな……それだけすごい話なの」
昨晩と同じなんだとコハルちゃんは言います、事前予告もなくいきなり現れた敵に対してはどうしても後手に回ってしまうのだと。
「だから被害を抑えたい、戦う場所に誘導できるようにしたいっていうなら、待ってるだけじゃダメ。私達が先に相手の居場所を特定して、作戦を組み立てて、それが出来てやっと戦う場所を選べるの」
言われてなるほどと、私達は頷くばかりです。
「幼くも賢きコハルよ。君の意見に私も賛同しよう。迎え撃つとなれば強靭な砦や広い荒野が必要になる。だがそれは敵が攻め落とすべきこちらの城が一つの場合だ。大部隊を展開し、一斉に奇襲を仕掛けてくるとなれば、全ての戦場に対応できる数が必要」
『前の空が赤くなった時みたいに各自治区の全戦力を投入して防衛戦と敵の攻略戦を同時に進められるのなら話は別ですが……』
「だが、現実としてそれは不可能だ」
『ええ、ミノリ先輩の仰る通りです。ですから聖杯戦争を周知出来ない以上、守る側は後手にならざる得ません。そしてサーヴァントという通常の補給が不要な存在が相手となるなら、私達は敵の本拠地を一刻も早く特定して叩く事が求められます』
スパルタクスさん、アヤネさんのお二人もどうしても後手になりがちだという事から求められるのは守勢ではないと言われます。
被害が出てからそこに向かう、ではいけない。
後手ではなく、先手で主導権を掴むことを意識するのがここからは大切になる、そんな直感が私もします。
『そうなった際、敵がどの自治区に拠点を置いているかで話は変わるが、こちらに関しては我々生徒会の仕事だろう。昨晩の先生達と同じさ。迅速な避難体制を構築し、避難を最小限に抑えてみせよう……ただし、これはあくまで我々が主導権を握っている戦いの場合だ』
「リオの話にあった聖杯陣営以外というのがこの話の肝だな。エリドゥにしろ教会の跡地にしろ数を並べて戦う事はできるし被害も目撃者も抑えられるだろう。マリー達についても目的がマスター狙いだというのならある程度主導権は握れる。だから被害面を考えると」
「問題は聖杯陣営との戦い、ですね」
他の陣営は戦力の多さという意味でアルさん達については懸念点がありますが、彼女達の拠点でとなれば話は別。
結局のところ、ここでも問題になってくるのはまだちっとも情報がまとまっていなくて、相手の拠点も分からない聖杯陣営です。
「……昨日ような、散発的な遭遇戦になった場合……どうしてもわたし達は後手に回っちゃいます……」
「エネミーのランダムポップですね!」
「うん、合ってるよアリス。そうなった時、人気のない場所の近くとか時間帯で遭遇した場合なら誘導できる。ミレニアム内ならユウカが約束してくれたようにオペレートと避難誘導もしてもらえる。けどそれが難しい場合、たとえば街中で急に、それも昼間とかになると……」
「被害を拡大せんように宝具の使用やヘルタースケルターの部隊展開が著しく制限される。だが同時にヘルタースケルターの増産を止めれば、昨晩のような多方面に陣を敷かれた場合やライダー共の雑兵に遅れを取る。数を増やす事自体が必要不可欠だというのに、それが足を引っ張るとは……頭を悩ませてくれるものだ」
腕を組んで唸るキャスターさん*15に頷きながらホシノさんも両手を上げつつ眉を下げられました。
『どっちにしても、早く敵を見つけて倒さない事にはどんどん被害が大きくなる。だけど見つけるたびに、戦うたびに全戦力を投入したら大変なことになっちゃう。だから見極めが大事だね』
『人がいない場所に誘導できる戦いが出来る状況は限られます。夜間で、避難する対象の数と移動距離が少ない地域でかつ相手の狙いが明確で誘導できる場合。そしてミレニアム、トリニティ、アビドスといった自治区運営サイドと協力体制を構築済みの自治区でのみです』
今アヤネさんが挙げてくれた自治区名はアビドスを除けば私達同盟陣営とマリーちゃん達ランサー陣営、トキさん達アーチャー陣営、そして黒服さん達アサシン陣営が拠点を置いている自治区です。
逆に言えば、ゲヘナやD.U.といった他の自治区で戦闘になった場合は基本的には今のままだとサポートは全く受けられませんから、被害の予測も立てられません*16。
「相手の動きが読めない以上、理想的な戦場で一切の被害を出さずにというのは私達が主導権を握れる戦いじゃないと不可能だ。もし市街地で戦うような状況や被害の拡大を防ぎたいとなると、そもそもそれが発生する可能性自体を減らすしかない。つまり」
「迅速な聖杯陣営の拠点把握と討伐しかない」
ミノリ先輩が話をまとめたところで次に手を挙げられたのはここまで静かに資料を確認されていた方。
「……話がひと段落したようですから。確認、良いでしょうか?」
古関ウイ先輩でした。
古関先輩は疲れたように眉間を細い指で揉んでから、重たそうに口を開かれました。
「……はぁ。こんな事、言うのは話すのも面倒、だけど……はぁ、本当に……私は先輩ですから、仕方ありません」
溜め息一つ。
「……トリニティ総合学園図書委員会委員長古関ウイが同学園生徒会ティーパーティと、ミレニアムサイエンススクール生徒会セミナー及びアビドス廃校対策委員会に解答を要求します」
そこから飛び出たのは想像よりずっと固い口調。
『……ああ、今かい。そうか、なら聞こうとも、ウイ』
『ええ。貴女からの質疑を受けましょう、古関委員長』
『うへー、生徒会長ちゃん達だけじゃなくておじさんもぉ?……まぁ、答えれる範囲で、ね』
何より次に飛び出してきたのは、考えてもみない、いいえ。
「自治区の運営サイドは、今回の聖杯戦争で被害が出た場合は……いえ、明確な死亡者やマスター側が一線を越えた場合はどうなさるつもりですか?」
きっとこの場にいる誰もが考えないようにしていた事について尋ねるものでした。
「っ!……うふふ。ウイさん?急にびっくりしちゃいますよ。別に今それは「今だからでしょ。甘やかさないで」っ……ウイ先輩……」
「ウイ……何も君が話さなくても……」
古関先輩とは思えないぐらい鋭い声が、ハナコちゃんのやんわりとした言葉をぴしゃりと跳ね除けてしまう。
さっきまでとはまた違う緊張感が私達の中で走りました。喧嘩とかそういうのではなく。
「……私だって叶うならこんな事聞きたくない。この質問は貴女達マスターに対するある種の侮辱でもある。お前達の頑張りは信用出来ない、犠牲者が出るに違いない。この質問は、私がした発言は……そう言ってると捉える人がいてもおかしくない」
きちんと聞いておかなきゃいけない、大切な事なんだとひしひしと伝わってくるんです。
「だけど……それでも。聞いて、はっきりさせておかなきゃいけない。どんなリスクがあって、それが生じた際にどうなるのかを知って、納得する。だってそれは戦うと決めた人間に課せられる義務だから」
だって、違うんです。
古関先輩の声が、瞳の色が。
いつもの大人びたそれとも、理知的に何かを考察され時のそれともまるで違う。
そう、まるで。
「───マスターである人間の……聖杯戦争に携わる人間の責務だから」
先生や、セイバーさんみたいな酷く重い何かを両肩に背負ってきた人のような、そんな姿に見えたんです。
「解答をお願いします。百合園生徒会長、調月生徒会長、小鳥遊委員長。貴女方は聖杯戦争で
息を呑んでから深呼吸。
それからウイさんはいつも静かさに包まれてる瞳が嘘みたいに力強く、モニターの向こうにいる三人の長へ解答を要求されました。
毅然とした態度に思わず呑まれてしまうんじゃないかと思っていたのは果たして数秒のことなのか、数分のことなのか。
暫く沈黙が続いてから目をつぶったまま、セイア様はゆっくりと口を開かれました。
『……君の想像通りだ、ウイ。最悪の事態が起きた場合、少なくともティーパーティは聖杯戦争で起きた痛ましい事件の全てを……ああ、そうだ。全て、事故として処理する』
『……我々も残念ながら同じね。聖杯戦争への関与を公に出来ない以上、私達は泣き寝入りするしかない。説明という責任を果たす事すら自治区の存続を揺るがしかねない以上……私達は何も言えない。そうなった時はきっと……百合園生徒会長の言うように淡々と事故として処理するのでしょうね』
同じように、普段とはずっと違う苦い物を噛み締めてしまったような顔をしてリオ会長も仰います。
お二人の様子とその内容に、私達は言葉を失ってしまいました。
だってそうなんです。
甚大かつ取り返しのつかない人的被害。
つまりそれは、誰かの命が聖杯戦争によって喪われた時のこと、ハッピーエンドに辿り着けなかった時のこと。
その結末が起きた時にどうするのかに対するアンサー。
お二人が言った言葉の意味、そしてそれを言ってしまった彼女達の気持ちを考えるとあまりにも。
「ありがとうございます……では、アビドスはどうですか?」
そして古関先輩の視線は一点に、まだ解答をしていないホシノさんへと向きました。
サーヴァントの方についてや伝承についてお話ししてくださる時の叡智溢れる姿とは違う、毅然とした態度の古関先輩。
対するホシノさんは。
『あー……そうだなぁ。うちはどうしよっか?アヤネちゃん』
柔和な笑みとふにゃっとした返事でした。
『っちょ!……ふぅ、はぁ……ちょ、ほ、ホシノ先輩!?ま、真面目に考えて下さい!』
『うへー、やだなぁ。おじさん、ちゃんと考えてるってばぁ……まあ、うちはこの様子だし、とりあえずは保留かな?』
のらり、くらり。
必死なぐらい思わず、と言った様子で隣にいるホシノさんを問い詰めるアヤネさんに対して、笑みを崩さないままでいたホシノさん。
「では質問を変えます」
『おっ!おじさん、今の話題、ちょぉっと苦手だからありがたいかなぁ。いいよいいよ、おじさんが受け止めたげるから、どーんときなぁ』
「アビドス自治区内で、そして
古関先輩の態度やセイア様達の苦々しげな姿と比べてしまうと、いっそのこと不真面目にも見えてしまう対応。
「───ご自身はどうされるつもりですか?」
それに古関先輩は、さらりと急所を刺しにいきました。
自分でもどうしてそんな風に思ったのかは分かりません。
『……へぇ、顔に似合わずってやつ?あんまりシャーレで組んだ事なかったけど……ほんっと、聖園ちゃんといい正実ちゃんといい、トリニティってすごいねぇ。層が厚いなぁ』
けど、古関先輩が言った一言はあまりにも鮮やかな形で話題を避けようとしたホシノさんの笑顔に亀裂を入れたのは間違いありませんでした
『まあ、それこそだよ。その時になったら決める。ああ、けど。ここまで図書委員長ちゃんや会長ちゃん達に言わせて、私だけ明言しとかないのは流石に卑怯だから言っておくよ』
そして割れた笑顔のまま、彼女ははっきりと私達に宣言しました。
『もしもアヤネちゃんや対策委員会のみんなが、私の大切な物が……誰か一人でもそうなってしまったら、多分……ううん、必ず』
朝日のような濃いオレンジと青空のようなブルーの瞳に剣呑な色と硬く凍てついた決意を染み込ませて。
『───私は、
ホシノさんは、はっきりとそう仰ったんです。
『なっ!?ホシノ先輩っ!またそ『アヤネちゃん』……っ!』
けれどアヤネさんの動揺の声は今度は途中で遮られてしまいました。
他ならぬ、ホシノさんの温度なんてない静かな声で。
『聖杯戦争は殺し合いだよね?キヴォトスって社会の枠組みの中では絶対に受け入れられない、受け入れちゃいけない。これは不文律で、だけど間違いなく存在するルールだよ。そしてマスターにはヒフミちゃん達も……私や私の後輩達の友達がいる。私達を助けてくれたあの子達の中にも、きっと友達な子がいる。だからどんな事があって自治区として聖杯戦争の事実は公表できない、したくない』
セイア様もリオ会長も小さく頷いていました。神秘の秘匿なんてルールがないキヴォトス。だというのにこの地でも聖杯戦争は絶対に公にしてはいけない、したくない物でした。
『ヒフミちゃんが殺し合いに参加してる事実も、私達が聖杯戦争に携わった事で殺し合いに関与していた事実も公には出来ない。それは多分、先生にも出来なかった。出来なかったからこそ、生徒会と関わりの薄い子を集めて特殊部隊を作ったり、私達生徒が自分達で助け合えるよう働きかけてくれた。それぐらい、この問題は根深くて取り扱いが難しい』
どうあっても自分の願いの為に誰かと殺し合いをする、異なる世界から呼び出した人を使って殺し合いをする。そんな陰惨な戦いを、私達は受け入れられないから。だから生徒会の皆さんもこっそりと協力してくださって、先生も大々的には決して動かなかった。
『だから最悪の事態が起きた時、私はアビドスという自治区の枠組みの外に出て、私という個人で聖杯戦争に対してケリをつけなきゃいけなくなる……無責任、なんだけどね。でもきっと、そういう責任の取り方をするよ』
そういう状況で、恐らくホシノさんのような立場の方が、彼女が考えている方法で責任を取るのならば。
自治区も立場も捨てて身一つにならないといけないのだと、そうするのだとホシノさんはちょっとだけ寂しそうに言いました。
『そんなのはッ!……そんなの、また……っ!』
あんまりな話でした。噛み付くような勢いで、溢れるような怒りと哀しみと、そして僅かな納得すら滲ませて。アヤネさんは出てこない言葉の代わりに吐息だけを吐き出している。
『そう、だからこれはさ……そうならないようにしてほしいなぁって話』
ウィンクを一つして、座っておられる正面の机に持たれ掛かるホシノさん。
そのすぐ後に通信が切られました*17。
「理解して。私達は、是が非でもこの戦争を終わらせなきゃいけない」
それを見て、今度は静かに古関先輩が喋り始められました。
「個々の生徒会の立場からではどうあがいても聖杯戦争にはこれ以上関われない。このキヴォトスを守れるのは事情を知っている私達しかいない。何故なら聖杯戦争は公的に存在しない。誰も聖杯戦争に対して社会的な責任を果たせないし背負えない」
それから古関先輩は私とモモイちゃんとミノリさんの三人の目を見られました。
タンザナイトはハッとするほど力強くて、仄暗い夜の渚のように静かでした。
「私達が戦っているのはそういう物よ。ヒフミさん、ミノリさん、モモイさん。貴女達当事者以外は誰も皆、泣き寝入りするか、立場を捨てて私人として責任を果たす他なくなる」
覚悟しなさい。
「このキヴォトスにおいて、
言葉の裡が、私たちを見つめるその瞳が。そう言っているように、私には感じました。
今までだって覚悟はしてるつもりでした。
でも今改めて、私の背中に、私達の背中にはとてもたくさんの大切な責任と命を背負っているのだと確認する気分でした。
背中が痛むぐらい冷えるのは汗が伝うから、いつの間にか口の中まで渇いてしまって、呼吸するのも忘れてしまう。目には見えません。だけどそれぐらい重たい物が私の背中にあるのを感じるんです。
「……だから……これ以上の被害を食い止める為に少しでも早くこの戦争を終わらせる……ですね?う、ウイ先輩」
ウイさんと二人だけになったような錯覚すら覚えていた時間は、ふいに掛けられた控えめな声で終わりました。
「……はぁ、そう。それが当事者の……いえ、マスターの責務よ。戦って勝つ。そして終わらせる。そうしなきゃ、全部終わった時に誰も報われないし浮かばれないんです」
ユズちゃんの言葉に、鼻から可愛らしい息を吐き出してからウイさんは目線を逸らしてしまいました。重々しい空気も一緒に払拭されました。
「ならさ、だったらさ!やるっきゃないね!……いつも通り、私達に今出来ることを全力で!」
けど、確かに感じた重さに私もモモイちゃんもミノリさんも頷き合います。
「私がよくウジウジ考えて……って言うのとはさ、全然違う。こうやってしっかり考えてくれるウイ先輩達がいてくれるから、私達のやるべき事はハッキリした。ありがとう、ウイ先輩!」
今こうやってたくさんの人達が一堂に介して会議をする機会だったからこそ、ミノリさんがこれから起きるかもしれない被害や私達の弱みを話されたように。
古関先輩も、最悪の事態を見据えた上で、それを起こさない責任について今一度考えれる時間と答えをいっぺんにくれました。
ほんの少しでも余裕がある今だからこそ受け止められる、大事な責任です。
今話してもらえて、リオ会長達から聞くことが出来て本当に良かったと、心から思いました。
「どういたしまして……嫌味の一つでも言ってくくれば良いものを。まあでも、その前向きさはこれからの戦いで必要でしょうから忘れずに。もしかして、なんていうくだらない空想は幾らでも私が考えます、それしか出来ませんから」
「その分、私達は前だけ見てられます。悲劇的な現実が待ってるかもしれない。だったら私たちはそれご起きないようにその現実と戦うだけです!」
「暗い話はこれでお仕舞いだな。ここから先は勝ち方を考えていくとしよう」
にやりと笑うミノリさんに古関先輩は暑苦しそうに顔を顰めます。
でもそれがまたちょっと不器用で、可愛いくて頼りになる先輩だと一層私達は感じたんです。
「私達がハッピーエンドを目指す以上、重要になってくるのはおそらくは三つです!残る四つ陣営との交渉、そして明確な脅威となっている聖杯陣営の撃破!そして勝利条件についての調査となります!特に最後の一つについては私も気になっています!強欲のアーチャー!彼の発言を振り返るに……恐らくこちらは聖杯戦争そのものを恒久的に終わらせる方法になるのではないでしょうか!」
コトリちゃんの言葉に続く形でセイバーさんも補足をしてくれます。
強欲のアーチャーさん。
シロコさんとホシノさんから聞いた、彼が最後の時に彼女達へと託してくれたメッセージ。
「片方が大聖杯の破壊となれば自ずともう片方の予備システムについても達成する事で大きな恩恵を僕達側が受けられる物だろうね。ただし通常の聖杯戦争の勝利条件じゃない点は注意が必要だ。この件について詳しいというのは……少なくとも僕の知る限りでは一人しか思いつかないな」
今回の聖杯戦争における二つの勝利条件。少なくともこれまでどの陣営からも聞かなかったその言葉。けれど私達の頭の中には一人の姿が思い浮かんでいたんです。
1じゃんね☆
ウイちゃんの話してた内容についての安価貰った時はまじでどう処理するか頭を抱えたもんだったじゃんね☆
結果としてこんな風になったけど、1としては大満足じゃんね☆
気づいてる人もいるけど本作はちょいちょいフライング登場してる要素やキャラがいるじゃんね☆
アビドス防衛戦に緊急参戦してくれてたシュポちゃん達なんかがそうじゃんね☆
……泣く泣くハイランダー関連の描写は限界まで削ったけど、今ならあの子も出したかったじゃんね☆
1、ああいう子がだいぶ刺さるじゃんね☆
……とかなんとか考えてたらなんかまったく前兆とかなく3D化して1はひっくり返ったじゃんね☆
それはそれとして、だからホシノちゃんの発言もそういうこと、じゃんね☆
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ハーリングのセイバー
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フィレンツェのアーチャー
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楽劇のランサー
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維新のライダー
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白備えのキャスター
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キラキラのアサシン
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民話のバーサーカー