阿慈谷ヒフミは聖杯戦争に参加するようです   作:1じゃんね☆

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アルなら寝ていますよ。
何か御用でしたら私が聞きましょう。
だから、貴女はそこにいて下さい。
……ハルカ。





遺された言葉

 

 少しだけ、ええ、ほんの少しだけですけれど。

私達の中に行き場もなく漂った不穏だった空気が霧散します。

 

 スパルタクスさんは狂化というスキルの影響を確かに受けている。

けれどスキルによって固定されているとはいえ、そうやって出力される彼の想いと思想に歪みはなくて、彼個人の大事な価値観。

彼はきっと誰かに強いるのが嫌なんです。

その誰かは、自分自身であり、私達でもあり、ミノリさんなんでしょう。

 

「(だから、なんですね……)」

 

 そんな彼にとって、いいえ。

彼と気持ちを同じくするミノリさんにとっても。

私達が予備システムという誰かを犠牲にするやり方について話し合う事すら嫌なんです。

そんな話を、ミノリさんの仲間になった私達がするのを聞かせるのもきっと嫌なのでしょう。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そして彼は優しいから。

私達が犠牲をなくそうと必死になっている努力を、無駄にするやり方を認めるなんて出来ないんです*1

 

 それでも彼は、少しでも可能性を探そうとする私達のやり方を尊重してくれました。

それにホッとして、セイバーさんやミノリさん、そしてスパルタクスさんに感謝を伝えようとして。

 

「ならば、我も口を挟むとするか───朗報だ。予備システムがもし仮に強欲のアーチャーなる男の言うものであった場合、我らが目指すべき解はそこにあるやも知れん」

 

キャスターさんが満を辞して、そう言われたんです。

 

「ホシノよ、強欲のアーチャーは予備システムについて話した時何と言っていた?」

 

『んえぇっと確か……過半数以上の同意が必要で、聖杯戦争が継続する形になるから聖杯陣営は邪魔しない……だったよ』

 

「そう、奴は過半数が同意すれば稼働できると言った。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、だ」

 

 最後の言葉で私達も顔を見合わせてしまいました。

だってもし強欲のアーチャーさんが遺された言葉が正しいなら、スパルタクスさんの言っていた予備システムと大きな違いが一つあるんです*2

 

「つまり半数を揃えれば起動できると言う事はだ、恐らく()()()()()()。このキヴォトスで用意された大聖杯の予備システムは、我らが任意で稼働させられる物である可能性が高いのだ。即ち、聖杯自体に搭載されているシステムへの干渉を、サーヴァントが脱落しているか否の関係なく、過半数の陣営を揃えさえすれば我らは行える」

 

「なるほど、大聖杯は顕現していない状態でも接触出来る余地があるわけだね」

 

 そう、私達は昨日の時点で大聖杯の破壊という形での聖杯戦争の終わらせ方は知っていました。

問題は大聖杯の存在が確認できていなかった点と、それが何処にあるのか、そもそもちゃんとサーヴァントの方を倒さずに大聖杯に干渉できるか*3

これらが大きな躓きだったんです。

それが今、一挙に解決してしまう可能性が見えてきました。

 

「うむ。とはいえ通常、大聖杯と呼ばれるものは超抜級の術式だ。おいそれと触れたところで稼働を停止させられん。業腹だが、我であってもこの短時間では不可能だ……だが、それを可能にするサーヴァントが此度の聖杯戦争にはいる」

 

「っ!そうです、神代の魔術師!原初のルーンの使い手、フィニアンサイクルよりずっと前にいた古き戦女神!彼女なら……っ!」

 

「……随分と勉強したのだな、ウイよ。そうだ、アサシン、真名をスカサハと目される奴であれば、神代より語り継がれた魔術師が窓口となるのであれば」

 

 その言葉はまさに私達にとっての福音でした。

求めて止まなかった、突破口だったんです。

 

 

 

「───聖杯に干渉し、あまつさえ機能を停止させられるやもしれん」

 

 

 

 ウイさんが身を乗り出しながら話す答えにキャスターさんは頷きながら正解と仰られます。

それを聞いて、同じように激しい声が一人。

 

『そうなったらっ、それならっ……!……ごめんなさい、少し、その……気持ちが、高揚してしまって……』

 

『……話には聞いているよ。気持ちは分かるさ、調月会長』

 

 リオ会長の長い髪がモニター越しに大きく振られ、見たこともないほど狼狽されておられます。

でもセイア様の言う通り、気持ちは痛いぐらいに分かります。

だって……。

 

「そうだよ、リオ会長!キャスターの言ってるやり方が出来るなら!そうなったら!トキを!トキが自分を犠牲にするなんて選ばなくて良くなるんだもん!これでちゃんと……ちゃんと!説得できる!」

 

 モモイちゃんの言うように、キャスターさんのやり方ならあと一つ陣営を仲間に出来たのなら誰も傷つかずに聖杯戦争を確実に終わらせられる。

 

「もう……無理をさせなくて良いんですね。やっと、アリス達は……!」

 

 聖杯戦争が開催される大元の大聖杯を停止させられるんですから。

勝ち残ったトキさんが自分を大聖杯の管理システムに組み込むだなんて事、しなくてよくなるんです。

 

『……ええ、そう、ね……ごめんなさい、少し……席を外すわ』

 

『ああ、ゆっくりとしておいで。こっちは我々で話をしておこう』

 

『……ありがとう』

 

 だからリオ会長が席を外される理由も分かります。

だって私達も同じなんです。

 

「……よかった、やっぱり……やっぱりちゃんとあるんです……!」

 

思わず、気持ちを抑えられないぐらい嬉しいんですから。

あった、あったんです。

私達が誰も犠牲にしないで済む道が、確かに。

 

「とはいえ、あくまで仮説だ。確証もなく、何よりアサシンとの協力を取り付けられるかも分からん」

 

「だけど道が出来ました。予備システムで新しいマスターやサーヴァントを増やすのでも、大聖杯を顕現させて壊すのでもない……第三の選択肢が」

 

「となると後考えるべきは……!」

 

 ウタハ先輩の言葉に促されるようにミノリさんも続けられます。

 

「各陣営との交渉について、だな。特にアサシン陣営と取引をするとなれば我々が要求したい物も定まった……協力関係を構築とアサシンの魔術による聖杯の停止だ」

 

落ち着いた声ですけど、少し上擦っているところから、彼女も同じように隠しきれない興奮と喜びがあるのを感じさせます。

 

 もう、みなさん全員から笑顔が溢れてしまうのを止められません。

ここに来てやっと明確に道筋が見えてきたんですもん。

 

『相手が持ち掛けてくる取引から求められるのは私達の戦力の可能性があります。そして私達の要求が決まった以上、今度は私達の要求を確実に通せれるよう、これからの五日間でしっかり古聖堂で話し合いの場を持つべきですね……問題は残りの陣営について』

 

 そう、強欲のアーチャーさんが遺して下さったメッセージのお陰で、大きな問題が解決の兆しが見えました。

 

 となれば今度は次の問題へ。

ですが、こちらに関しては実はやる事って結構決まってるんです。

 

『次の議題の前に、確認しておきたい事はありますか?』

 

「そういえば、ハナコちゃんが聞いた時に黒服さんが前に言ってた《戦闘を除くサーヴァントの私的な運用》ってなんだろう?」

 

 その前にアヤネさんが質問を取りまとめて下さると、ミドリちゃんが手を挙げられました。

内容は以前カフェで会った時の会話について。

それについては、セイア様とセイバーさんから答えがありました。

 

『恐らくサーヴァントを自治区自体が保有して軍事力として扱う、もしくは実際に使って聖杯戦争とは無関係の争いごとを引き起こす。あたりではないかな?』

 

「それからサーヴァントのスキルや宝具はなにも直接的に武力と関わる物だけではないからね。中には社会に対して大きな影響力を持つもの……たとえば莫大な資産を生み出せる物もあるんだ」

 

「ゆ、夢がありますね……!」

 

「……ヒフミが想像している件についてはさておき、だ。そういったものを使ってキヴォトスに混乱を齎す、というのも彼の口振りから察するにルール違反になるんじゃないかな」

 

 なるほど確かに、と頷いてしまいます。

セイア様の言う通り、セイバーさん達を軍事利用するとなればそれは自治区同士のパワーバランスが大きく崩れかねません。

大人で、一応*4令呪によって命令を聞かせる事も出来て、しかも宝具なんて凄い力もあるんです。

 

 そしてセイバーさんの話も理解できます。

そんな凄いスキルや宝具があったら、私だったらたくさんペロロ様グッズを集めてモモフレンズ専門ファンシーショップのフランチャイズ経営を始めちゃいますもん*5*6

 

「そうだとしたら、その件について考えるのはハッピーエンドを迎えてから、ですね♡今は問題ないわけですから……また全部終わってから考えましょう」

 

 ()()()()()()

その言葉が、実感を伴ってしっかりと耳に届いてくれます。

終わらせられるかもしれない、誰も犠牲にしない方法をやっと見つけられたかもしれない。

だから、終わってからの話も出来る。

そう思うと、胸が一杯になります。

 

『……ハナコさんの言う通り、終わらせてからも問題はありますから今は目の前のことに集中しましょう。ですから次は、他陣営との交渉についての議題に移ります。まずは───聖杯陣営について』

 

『こちらの陣営についても分かっている事はそう多くはありません』

 

「……かなり大味ではあるけど、私達は今後の方針も決めました。そしてここの陣営については恐らく話し合いの余地なんてない。だったら今話すことは一つ」

 

「───聖杯陣営の倒し方ですね」

 

 だからもう、止まっていられない。

新しく出てきた人達なんかに負けていられないんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 倒さなくてはいけない。

それをサーヴァントの方に対して感じるというのはどこか不思議な認識でした。

 

 アサシンさんに殺されかけた時も。

ランサーさんやライダーさんとの戦いでも。

私は恐怖を感じていました。

強くて明確な殺意を向けられる体験。

鋭いナイフを喉元に突きつけられてちょっとでも動いたら死んでしまう、そんな感触をいつの戦場でも体感してきました。

 

「なんていうかさ、変な感じだよね」

 

「私も同じ気持ちです、でも……」

 

「私やヒフミ達は直接相対したわけじゃない。あくまでシャドウサーヴァントやあの黒塗りの生徒達とだけだ。それでも感じる物があった。なら」

 

 けれど、それとは全くの別種。

彼らと私達の知るサーヴァントのみなさんとは全然違うものを見ているような。

 

「うん。怠惰のランサー……あいつと会った時、すごく怖かった」

 

 ()()()()()()()()()()()()、そんな怖さだったんです。

たとえば天敵のような、そういう印象を持ったんです。

頭痛混じりの警告が直感を通して訴えかける、倒さなくては私達の居場所が奪われてしまう。

まるであの赤い空みたいな、そんな感じだったんです。

 

「我らは死人だ。嘗て人類史に刻まれた、今は既に亡き在りし日の影に過ぎん。だがこの身の霊基はそれでも脈打ち、血肉はエーテルの粒子となろうと、過日の姿を可能な限り再現している。だが、彼奴らのそれはまるで……腐乱死体のようであった」

 

 直接、怠惰のランサーと相対したキャスターさんも同じ。

彼ら聖杯のサーヴァント達は自分達とは違っていると仰られます。

 

「何故我がそんな思考に至ったのか、それを上手く言語化出来ん。少なくとも我の知る霊基構築から著しく外れた物であるが故だろう……奴らは真っ当な霊基でもなければ、思考自体も汚染されているだろう。魔力ではない、もっと抽象的な何かを詰めて模った姿……最早、サーヴァントとして扱ってやる事すら元になった英霊は望まんほどに───奴らは腐っていた」

 

 どうしよもなく、終わってしまっている。

それが彼らに対する私達の認識なんです。

言葉で説明がちゃんとは出来ません。

もちろん、彼らの行動を考えれば正当化は出来るんです。

でも、それだけじゃない。

 

「どっちにしても、戦わなくちゃいけないと思う。ユウカ先輩とか他にも、そういうの考えると……下手にその、交渉とかって無理っぽいし……」

 

「ヒビキの言うように、他の陣営と違って話が出来る手合いじゃない。明確に生徒を殺そうとして、自治区全体を攻めてきた相手だ。目的や本意を探る必要もあるが、やはり単純にどう戦うか、それを考えるべきだね」

 

 ウタハ先輩が渋い顔をして提示されるのはやはり今後の対応と対策について。

彼らに対して私達が何をどう感じるかは、ひとまず置いておくことにしましょう。

 

「そうなると、残っているサーヴァントは四騎。復活したセイバー、ランサー、アサシン、バーサーカー。取り分け危険なのが……放てば心臓を貫く宝具を持つランサーですね」

 

「アサシンも同様の宝具を持っているけど、あれは因果逆転の魔槍。足が速いでは回避できない文字通り必殺の一撃だ」

 

 残るサーヴァントの中でも取り分け危険視すべきなのが怠惰のランサー、真名をクー・フーリンだと予測される相手です。

セイバーさんが言うには因果逆転という特殊な力があるようですね。

 

 ところで、因果逆転ってなんなんでしょう。

 

「そのさ、いんざきゃぷてん?とかいうのって結局どういうやつなの?とりあえず即死持ちっていうのは分かったけどさ」

 

「因果逆転だよ、お姉ちゃん……」

 

 ざっくり、となら知っています。

真名解放すると必ず心臓に刺さるというのは聞いていましたが、今一つ分かっていない能力。

それについては顎っぽい部分に手を当てたキャスターさんから説明がありました。

 

「ふむ……モモイよ、そこにある茶を飲んでみろ」

 

「ふぇ?いいけど……」

 

 澄んだ色のハーブティー*7が入った桃色のマグカップ*8に口をつけるモモイちゃんは、二口ほど飲んでから不思議そうにキャスターさんを見つめ返しました。

 

「良いか?お前は今、カップを手に持って液体を口に運んだという行動の結果、茶を飲んだという結果が生まれた。それは分かるな?」

 

「そりゃそうでしょ?当たり前じゃん!」

 

「そうだ。カップを手に持って口につけ中の茶を口へと流し、だから飲んで、飲み終えた。そしてこれが世の常であり、あらゆる現象に適応される絶対的な法則だ。物事の始まりには必ず結果に繋がる為の原因がある。だが因果の逆転はその反対だ」

 

 私達が当たり前にしていることを例にしてその反対を想像してみろ、と言われても中々上手くいきません。

 

「ええっと……わっかなーい!つまりどういうこと!?」

 

「飲み終えた、という結果が先に来るのだ。もしも今のお前に因果逆転を適用するならば、カップを持って口をつけたその時点で、お前はもう中身を味わい飲み終えている……そういう風になる」

 

「……なにそれ?」

 

言葉では出来るんですが、映像として思い浮かばないんです。

そしてそれこそが因果の逆転と呼ばれる物なのだとか。

 

「無理に理解せよと言わんが、そういう物なのだと心得よ。奴の槍も同様よ、宝具を撃ったから心臓に刺さるのではない。心臓に刺さった結果が最初から既定され、その後に宝具が放たれるのが怠惰のランサーやアサシンが持つ宝具の正体だ」

 

「違和感や不思議に感じるだろうけど、それが正常な反応なんだ。因果逆転は半ば権能の領域、つまり神々の御技に等しい。要するに僕らの生きるこの世界の法則では説明するのも理解するのもそもそも出来ないラインの術理なんだよ」

 

「テストで言えば受けたら100点満点なのが最初から決まっているのよ。勉強してたからとか山張りが上手くいったからじゃない、最初に100点を取ってから白紙の問題文を埋めていくような物なんです」

 

 キャスターさんやセイバーさん、古関先輩がそれぞれ説明してくださいますけど、ふわっとしか理解が出来ません。

だってセイバーさんの言う通り、違和感しかないんですから。

 

「え?それズルじゃない……?」

 

「ズルだろうね。だから必殺なのさ。怠惰のランサーが放つ槍よりどんなに足が速くても撃たれてしまえば、『相手は足が速かったけど当たっていた』っていう結果が初めからあるんだ。避けようがない」

 

 正しくズルでしょう。

最初から結果が決まってるから、何をどうしてもそれ以外の結果には過程が繋がらない。

聞く限り、対策なんて宝具を撃たせないことぐらいなのではと思ってしまいます。

 

「対策は勿論あるよ。一つ目に運命力。僕らの持つ幸運がそれだけど、ランサーの宝具が結果を決める力よりも相手の幸運が高ければ致命傷に届かない。もう一つはもっと単純に背中を向けて範囲外に逃れれば良い。どんなに槍が当たる結果はあっても、射程外に逃れれば届かないという当たり前が優先されるんだ」

 

「とはいえ、相手は腐ってもケルトのクー・フーリン、そしてあのスカサハ。真っ当な手段での目の前からの逃走は困難を極めるでしょうし、何より伝承によればあの槍には治癒阻害の呪詛もあります。総じて、相手にするのは得策とは言えません」

 

 おまけにあの宝具はやたら魔力の消費も少ないんだよね、とセイバーさんが愚痴られますからいよいよもって怠惰のランサーの脅威が身に染みます。

真名だと思われるクー・フーリンという方が大英雄と呼ばれるのも頷けるぐらい破格の宝具です*9

 

「でも戦わなきゃいけませんし……それなのに、怠惰のランサーだけじゃなくてアサシンさんまで同じような宝具を持ってるんじゃ……」

 

 それが今回の聖杯戦争で同質の宝具を持っている方がもう一人。

戦うとなるとかなり厄介な状況だとみなさんと頭を悩ませていると、おずおずと一人の方が声を上げられました。

 

「アサシンさんは……あの、協力関係になれば……対策とか考えなくて良くなるし……それに……そうなったら怠惰のランサーについては……お、お願いしちゃう、っていうのは……どうかな?」

 

 ユズちゃんの提案に膝を打ってしまいます。

確かに私達だと中々対策の妙案は思いつきませんけど、いずれにしてもアサシンさんとは協力関係を結ぶ予定です。

となれば、怠惰のランサーとの戦いその物も協力や対策を教えてもらうというのは良い案かもしれません。

 

「自分の得物と同じ性質の宝具で、しかも使うのは彼女自身の愛弟子だからね。戦い方も熟知しているだろうし、優位に運べるかどうかは分からないけど少なくとも僕らが戦うよりはずっと安全だろうね。ただ……」

 

 実際セイバーさんもユズちゃんの提案に頷いてくれました、けど。

 

 

 

 

 

「彼女、見るからに我が強そうな御婦人なんだよね……」

 

 

 

 

 

「あー……」

 

 思い返すと黒服さんを振り回しているような言動があちこちに見えていた気がします。

今考えると病院でランサーさんと戦ってた時も宝具を使用する時の決定権が彼女の方にある振る舞いでしたし。

 

「あの手のタイプはかなりこう、気難しいからさ。とりあえず頼んでみるのには賛成だけど、上手い事彼女の気持ちと闘志を擽る言い方をしないと……ね?」*10*11

 

 どうなるか、ちょっと想像していましょうか。

 

 

 

 

 

 

イマジナリー師匠「───ほぉ、自分達には無理だから馬鹿弟子の対処を私に任せたいと?随分なご挨拶だな?……だがお前達の気持ちも分からんでもない、そこでだ。お前達がそんな軟弱な申し出が出来んように儂手ずからちと鍛えてやろう。そうすれば私に頼る必要もないだろう?ん?違うか?いいや、違わないな?違うわけがなかろうて。何故ならこの私がそうだと決めたのだからな。ああ、安心しろ。お前達にも時間がなかろう、それに合わせてやる。魔槍の対策が分からんと言うのならば私に良い考えがある。やり方は簡単だ、今から儂が放つ宝具を避ければ良い、実践形式というやつだな。準備はいいな?習うより慣れろ、ではいくぞー!げい・ぼるく・おるたなてぃぶー!

 

 

 

 

 

 

 あ、ダメかもしれませんね。

少なくとも丁寧に交渉しないと難しい気がします。

 

「と、とりあえず黒服さんとの交渉をする時に頼んでみるだけ頼んでみましょう!上手くいったら御の字って事で!」

 

「そうだね。最悪、力が借りられなくても……なんとか相手を追い込んで被害が抑えられるような状況を作ったところで僕が遠距離から宝具を撃っても良い」

 

 当たりさえすれば確実に倒してみせるよ、と意気込むセイバーさんはとても頼り甲斐があります。

 

 ただ気になることも一点。

ずっと前に聞いたのとビームが出せるという話は伺ってましたけど、実際のところセイバーさんの宝具威力はどのぐらいなのか。

 

『……ちなみにその際の宝具による被害はどの程度かしら?』

 

 リオ会長からの質問に、セイバーさんはちょっと考えてから爽やかに答えてくださいました。

見るからに穏やかな笑顔にこれなら安心、そう思えました。

 

 

 

「そうだな……もしこの拠点からミレニアムに向かって撃つとちょっとこう……射程10kmの射線上が全部焼け野原、みたいな……?」

 

 

 

 訂正です。

爽やかなのは笑顔だけで説明はかなり言い淀んでますし、内容はとんでもない爆弾でした。

 

「却下です」『却下よ』「ねぇ、やっぱりセイバーさんの宝具使いにくくない?」「被害が甚大過ぎるな」「サーヴァントの方を相手にするにしても使い所が難しすぎますね」「それ言うとキャスターの宝具は使い勝手良いよねー、あんまり被害出ないし」「使用後の損耗が著しいがな」「スパルタクスのはカウンターだから威力調整はタイミング次第だからまあ」「過剰火力……あれなのかな、セイバーさんって意外と火力ロマンビルドみたいな」「アリスのスーパーノヴァも負けていられません!」「や、やめとこうね、アリスちゃん……」「ほお!強化プランですか!大した物ですね!」「そういうことなら私たちも……」「それはナイスだね。実は既に私達の方で光の剣を強化する案は幾つか検討していてね。その中でも火力となれば『予算減額』……リオ、私達は話し合う必要がある。そうだろ?」『うへー……セイバーさんはアビドスに来る時は必ず一度連絡してね?』『ヒフミさん同伴でお願いします』『やれやれ、君達。この話を聞いて一番困惑して胃薬を頼るのが誰か分かるかい?そう、私の代わりに現ホストを代行していて聖杯戦争が終わった後にセイバーが住むだろうトリニティ自治区の代表であるナギサだよ』*12「圧制者ぁ……」「お労しやナギサ様……」『失礼な、友情だよ』「それスケープゴートって言うんですよ、セイアちゃん」

 

 

 実際そんな宝具を自由に使うとなったら自治区の方に頼み込んでおくか、それこそ撃った先が水平線でもないと危なくて仕方ありません。

それだってオデュッセイアの船とかもありますから、そうポンポン撃てませんし。

 

「ま、まあ!ほら、ね?アサシン達との交渉が上手くいけば、ね?はい、この話は終わりとしよう!いいね?」

 

『……とりあえず、アサシン陣営との交渉については怠惰のランサーへの対処と聖杯へのシステム干渉を要求する形でいきましょうか?』

 

 セイバーさんが念押ししたところで話は次の話題へ。

どちらにせよ、アサシンさんと黒服さんにお願いする事が固まったわけですしひとまずは次に進んでも大丈夫でしょう。

 

「そうですね。特に前者であれば最悪、アサシン陣営への要望ではなく監督役への要求という形であれば通せるでしょうし」

 

「そっか……監督役の仕事だから対処してってお願いするのもありだもんね」

 

『残る聖杯陣営のサーヴァントについてもそうね。対処も含めて私達だけで対処する必要は出てくるでしょうけど、監督役なんて役職持ちを利用しない手はないわ……それを見越して、ヒフミさん達に招集をかけていないというのも考えられるけれど』

 

 よくよく考えてみると、監督役という立場である以上は私達のような通常の陣営に関してはルール違反をしない限りは干渉なさらないでしょうけど。

聖杯陣営、新しく出てきて自治区そのものへ攻撃してきた彼らを相手にするとなれば話は別です。

少なくともその一点に関してはほぼ間違いなく協力関係が築けると思います。

 

『とはいえどこまで強気に出るか、は難しいけどね。お互いがと互いの喉元に刃を突きつけられる、そういう交渉になるというのは覚えておいた方がいい。過剰な要求に応えかねないと彼方が判断した時、刃を振り下ろす先が我々へ向く事は言わずともさ……なにせ人の心はままならない物だからね』

 

 交渉には最大限の注意を払う必要があります。

なにせ相手は何を考えているのかまだ分からない黒服さんとあのアサシンさんです。

強気に出るのでも、下手に譲る姿勢を見せるのでもなく、まずはしっかり情報を探りつつ毅然と私達の立場と意思を示すのが肝心ですね。

 

 ミノリさんの時や、恐らくサクラコ様を相手にする時に必要になってくる『理屈じゃない感情の部分で殴っていく』交渉。

黒服さん相手の場合は、そういった形で私の想いを伝えるかどうかも見極めなきゃいけません。

 

 敢えてロジックを重要視する、つまり両者のメリット・デメリットをはっきりさせる本当の意味での取引が必要になるのかもしれません。

 

「ひとまずの結論としては、そんな所でしょうか。では、残りの陣営についても話をしていきませんか?」

 

 聖杯陣営に関してはとりあえずこれ以上についてはお手上げです。

戦力的な規模感とかは多少分かりますけど、目的も敵のマスターにあたる人も何も分かってません。

各個のサーヴァントへの対処、というよりいち早く相手の拠点を見つける事が肝心になってくる気がします。

 

「聖杯陣営の他のサーヴァントとかの話はいいわけ?」

 

 とはいえかなりざっくりした内容でしたからね。

コハルちゃんの疑問も最もです。

 

「宝具の真名から読み取れる部分は確かにあるんだけどね。たとえば暴食のセイバーなら……恐らくはローマのネロ帝だろう」

 

 ネロ帝、ネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス。

ネロ。

不思議と聞き覚えがあるようなお名前です。

郷土史かそれとも歴史の授業、それか古典文学か何かで聞いた事があるのかもしれませんね。

 

「アサシンは……こればかりは情報が少ないな。負の感情とは言え女子どもへの関心が強い、故に立ち合うならばお前達も注意しろとしか言えん」

 

「バーサーカーに至っては映像記録にも情報がほぼ残っていない。あれは多分そういう情報を秘匿する宝具持ちだろうね」

 

 嫉妬のアサシンは一之瀬アスナさんと対峙した時の発言から、そしてバーサーカーの方はツルギさんを相手に勝ち越したその戦闘能力と映像越しにも詳細が分からなかった点から。

それぞれ警戒すべき部分が大きいです。

とはいえ、これらの話については。

 

「結構話すことあるじゃない!」

 

「コハルちゃん、これ全部報告書の内容なんです……」

 

「う、うそ……!?」

 

 嘘じゃないです。

なんなら今コハルちゃんが捲りかえしてる資料の後ろの方に書いてあります。

 

「改めて話し合える内容がない訳ではない。たとえば権能なる物を含めた特殊な霊基、奴らの宝具と思われる黒い生徒について、そして《未完成》と言っていた意味と冠位について触れていた部分。だが、話すべき事柄もそれに対して分かっていない内容も多過ぎる」

 

「今ここで考えて、よりは拠点も分かっていてマスターの顔が割れている陣営について先に話をまとめて片付けるのを優先しようという話というわけだ。コハルも今は大丈夫だし、まだ目を通しきれてないメンバーもいるだろうけど、また後でゆっくり読んでくれたら良い」

 

 ミノリさんがフォローを入れてくださったところで、私も今の話題を外して新しい空気にする為に、次に話したかった事を口にしました。

 

 

 

 

 

 

*1
それが英霊スパルタクスの在り方。叛逆の道を歩く人々の背を押す、過去からの贈り物

*2
そう、確かに大きな矛盾が存在した

*3
形而上に存在する大聖杯は確たる物質ではない。大聖杯が物質として影を落とすには、存在の位階を落とすには贄という名の引鉄が必要なのだ

*4
ヒフミが言うように令呪は確かに絶対的な命令権ではある。だが反面、正しく効力を働かせようとするならば、命じ方が重要となるのだ。具体性に欠ける命令に力は宿らない事を私達は忘れてはいけない

*5
イマジナリーᓀ‸ᓂ「その時は私も隣で支えるぞ!いや……その時だけじゃないな。私はいつだって……」

*6
もんじゃない、勘弁してくれ

*7
モモイは気づいていないが割と臭いがキツい。飲んでいる時に近くに寄らないと気が付かないほどだが

*8
この場にナギサがいたら卒倒するだろう。マグカップで茶を飲むなんて、と

*9
当然である。彼の人はフィニアンサイクルが連なるエリンの伝承において最も偉大な赤枝の騎士と謳われた英雄。精強なる黄金の土地において最強と呼ばれ信仰を集めた、数多くの騎士達がその背を目指して走った、そんな先人なのだ……気高きエリンの騎士が、誇りに憶う先達なのですから

*10
セイバーは精一杯に遠回しな言い方をした。如何に相手は戦士といえど、騎士として女性に非礼があってはいけないからだ。だから、「いや、ほら彼女って頭バーサーカーな女王様な気質だからさ。おまけに気分屋ですごい面倒くさそうな感じの情念を千年単位で抱えている気がするし、多分」、なんて直感から得た印象は決して言わなかった。賢い

*11
……ほう。なるほど、な

*12
イマジナリー(u‿u໒꒱「助けてヒフミさん……」





1じゃんね☆
自分で文にしてて思ったけどやっぱり因果逆転の槍、強すぎるじゃんね☆
スレでも師匠の槍やばない……?とか怠惰のランサーの宝具は即死が……みたいな話出てたけど、1もそう思うじゃんね☆
だから本当は出禁枠じゃんね☆
というか矢避けの加護もまずいじゃんね☆
困ったもんじゃんね☆ミーカミカミカミカミカミカミカミカ

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