阿慈谷ヒフミは聖杯戦争に参加するようです   作:1じゃんね☆

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んむぅ……おい、黒服。
その雑誌はあとで読むからそこに置いておけ。
いいや、違う、そっちではない……ああ、それだ。
あと、人が折角優雅な朝の読書を軽食と共に楽しんでおるのだ。
掃除機なぞかけるでない、喧しくて敵わん。
大体だな、人が葡萄酒を飲んでピザの箱を開いているというのに埃が立つような……おい!そのピザはこの後私が食べる分だ。
違う、そっちは後でアケミ達にくれてやる分……なんだ、何か文句があるのか?
……まったく、これだから……。

ああ、そうそう。
黒服、言っておくが掃除機はかけるだけ無駄だぞ。
どうせすぐ散らかるのだ、無駄なことはやめておけ。
それ───客人だ






【10日目・午前】
Unwelcome Guest


 

 昨日とは打って変わって良いお天気。

心地良い風が木々を撫ぜて通り過ぎていく。

というのを私達はぼんやりとですけど()()()()()()()()()

 

『ミッションを確認するわ』

 

 先生からの最後のメッセージ。

彼が消息不明になる直前に撮られたと思われる敵との邂逅の映像を見た後の私達同盟陣営はもう拠点にはいませんでした。

各々がやれる事を、全力で。

何がどうなっているのかはまだまだ分かりませんけど、その中でやるべき事をする為に、私達はトリニティ自治区へ向かって出発したんです。

 

そうしてナギサ様からお借りしている大型輸送ヘリ『ヨークシャー』*1に揺られること、30分。

慌ただしく出立した私達は今回の行動を殆どお任せしたリオ会長とブリーフィングを行っていました。

 

『現在、当航空機はD.U.上空を飛行中。乗員はセイバー陣営、天童アリスと花岡ユズを除くキャスター陣営、古関ウイ、バーサーカー陣営、そして合計71機のヘルタースケルターよ』*2

 

「おお、大人数ぅ……!」

 

『相手のホームよ、今回に限っては数も強みになるわ。話を戻すけれど、あと十分もしないで通功の古聖堂に到着するわね。なお、時間が足りないから()()()()()()()使()()()()()

 

「え?あ、あの『質問は受け付けないわ。後にして』あはい」

 

 なんかすごい聞き捨てならない事がさらっと付け加えられた気がしたので聞き返そうと思ったのですが、質問は却下です。

でも多分、私の聞き間違いですね*3

 

『(ヒフミ、何か気になる事が?)』

 

『(ぅ……た、大した事じゃないんですけどね?ヘリコプターって基本的に自治区が制定して管理する発着場以外には着陸できないんですよぉ……)』*4

 

『(……なるほど。まあ、そういうこともあるかな)』

 

 それっきり操縦中のセイバーさんから念話はぷつりと切れてしまいました。

それに嫌な気配を感じて、私は周囲を見渡します。

アズサちゃんがテキパキと柔軟を始めて、ハナコちゃんが顔を真っ青にして天を仰いでいます*5

なんでしょう、物凄く嫌な気がします*6

 

『交渉部隊は通功の古聖堂で対象名《黒服》との接触を図って頂戴。相手は随分とキレる大人のようね。足元を見られず、けれど論理的に。感情はなるべく抑えて相手の情報を探る、を徹底するように』

 

 そんな嫌な直感なんて知らないリオ会長は淡々と今回班分けした部隊についてお話して下さいます。

 

 まず黒服さんとの交渉部隊。

メンバーは私達補習授業部とヘルタースケルターさんが5機。

目標は私達の聖杯戦争における目的を伝えること。

そして今朝入手した聖杯陣営についての情報の提供、そして今後を見据えて黒服さんについての情報を入手することです。

 

 可能であればその他にも聖杯戦争自体についてや、聖杯陣営についての情報交換。

もしくは、協力関係の構築を踏まえた取引の情報も引き出したいところです。

個人的には黒服さんの願い、なんてのも知りたいですね。

 

『次に古書館部隊は古書館及び中央図書館へ。必要な資料をヘルタースケルターと確保した後に、百合園生徒会長が手配した車で発着場で向かって頂戴』*7

 

 こちらは聖杯陣営、とくに奪われたナツちゃんの魂を取り戻す事に関しての情報を探してもらう形になっています。

良い資料があって欲しい、と強く思います。

 

『古書指定を受けた書類は本来館外への持ち出しが禁止よ。手続きも今回は間に合わない以上、何も起きていなかった形が望ましいわ。よろしく頼むわね』

 

 メンバーは拠点防衛を任されたアリスちゃんとユズちゃん以外のゲーム開発部のみなさんと古関先輩です。

モモイちゃんはお茶をすすり、ミドリちゃんはお菓子を食べて緊張を和らげています。

ちなみに古関先輩はハナコちゃんと一緒になって死んだ目です*8

たった今、それを見て何故か今日のトリニティに()()()()()()()がしたんですけど何故でしょうか*9

それとキャスターさんは念入りにヘルタースケルターさん達を確認しています。

 

『最後にゲヘナ先遣部隊。ミノリ、バーサーカー。貴方達二名には無理をさせるわ。最大限のサポートはするけれど、最後に物を言うのはマスターの腕とサーヴァントの実力。期待しているわ』

 

()()()()()()()()()()()()分、こっちはこっちで上手くやるさ」

 

「これぞまさに叛逆の輝き!愛!きゃん!フラァ「うるさい」……ぬぉぉ」

 

 作戦は事前に聞いていますけど、中々のギャンブルになります。

ですが、それをするだけの()()がある、そして()()が証明している、というのが私達の出した結論です。

それは何も時間だけじゃなく、もっと大きな理由が。

 

『今回のミッションはあくまでも調査と物資の回収。万一の聖杯陣営及びランサー陣営との交戦に備えて、護衛用にヘルタースケルターを搭載している。けれどそれはあくまでも護衛用。凡ゆる交渉を含めて示威行為は控えて』

 

 今回ヨークシャーちゃんこと大型ヘリに乗り込んで貰ったヘルタースケルターさんは71機。

私達がこれまでに建造してきてもらった内の大体六割が乗員しています。

 

 おまけにサーヴァントの方も三騎。

正直、戦争しに来ましたって言われても言い逃れが出来ない大戦力です。

それを考えたら極力、示威行為と少しでも受け取られるような行動は控えなくてはいけません。

 

『以上、質問はあるかしら』

 

 さて、問題はここからですね。

 

「はい!はい!はい!質問、質問あります!」

 

もう口から勝手に音が飛び出していく気分ですけど、ヘリの中って事で大きな声じゃないと聞こえませんからね。

仕方ない、そう思って頂きましょう。

 

『元気が良いわね、ヒフミさん。どうしたのかしら?』

 

 小さく驚いた顔をするリオ会長に私は努めて明るい調子で尋ねました。

だって仕方ないんです。

見て下さい、もう完全にハナコちゃんはグロッキーな顔になっちゃってコハルちゃんモモイちゃんに心配されてます。

しかもミドリちゃんも()()()()みたいで涙目になってきちゃってますもん*10

 

「あはは……あのぉ、発着場に行かないでどうやって、あの、私達それぞれ古聖堂と古書館に行くのかなぁって!ほら、結構距離離れてますし!」

 

 そう、たった今聞いたブリーフィングの中で明らかに不自然な点。

発着場を利用しない。普通はあり得ません。

 

 だって、連邦法でヘリコプターの発着場は厳格に定められているんです。

降りるのも発つのも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

じゃあどこに降りるのかとなってもヨークシャーちゃん*11はかなり大型の輸送ヘリ。

さっき目立ってはいけないと言われたばかりなのに、下手な場所に降りたら逆効果です。

 

『ふふっ、もうヒフミさんったら。緊張してるのかしら?降り方なんて決まってるでしょ?』

 

 じゃあどうするかなんて、私には最悪のイメージしか思い浮かびませんでした。

けど、やっぱり杞憂だったんでしょう。

だってリオ会長はあんなに可愛いらしい笑顔でわらっていますからね!

 

 

 

 

 

 

「あはは……いや、そうですよね!私ちょっと緊張しちゃって!な、なんだか変な事を『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』……あは、あはは……」

 

 

 

 

 

 

あ、駄目みたいです。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()*12

 

任セテ!任セテ!』『ヤッテヤンヨー!ヤッテヤンヨー!』『オリチャウゾー!オリチャウゾー!』『飛ビ降リは任セロー!バリバリー!

 

私達、このまま空から直通されるみたいですね。

 

「やっぱり!?やっぱりそうなんですかっ!?」

 

「うわ、ヒフミ達はパラシュートで降り「私達もだよ、お姉ちゃん」はぁぁぁぁぁぁあ!?」

 

 聖杯戦争開始から10日目。

私達の活動は上空3000mからのダイブで始まりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナギサ様。

お身体の調子は如何でしょうか。ナツちゃんの事や、アイリちゃんの事もあります。

出来るなら、色々片付けてお見舞いに伺えたらと思っていました。

 

 話したい事、お伝えしたい事、たくさんあるんです。

怪我をされた貴女に会って、ちゃんと生きている事を確かめたいって気持ちもあるんです。

でもそれは今、我慢しなきゃいけません。

何故なら。

 

「あぅ……ど、どうしてこんな事に……」

 

今私達はトリニティの上空3000mにいて、これからスカイダイビングをしなきゃいけないからです。

 

『仕方ないよ、ヒフミ。私物の大型輸送ヘリを毎回臨時離着陸やってたら目立つなんて話じゃないし……』

 

 そう言いつつもすごく申し訳なさそうな顔をしているヒビキさんの隣で慌てるユズちゃんの顔もモニターに映りました。

 

『そ、そそっ!それに!あの……一応、都市部の航空制限に引っかからないさ、3000mの高度からのヘリボーンなら……逆に見られても、ほら、なんかスカイダイビングっぽく、あの……ね?』

 

「ね?……じゃないよぉ、ユズぅ……」

 

「どうして……どうしてまた飛び降りるなんて事に……たすけてひなたさん……」

 

 私の隣で項垂れるモモイちゃんや古関先輩の気持ちがよくわかります。

今回、私達はトリニティに輸送ヘリで向かっているわけですがやる事と行く場所が単純に多いんです。ヘリポートに降りて移動して、となると足が欲しくなるんですが。

 

 ですがそうなると今度は、ヘルタースケルターさん達を71機乗せてる関係でクルセイダーちゃんを運ぶ事が難しいかったんです。

次回、というか今日の午後にはミレニアム側からもう一台ヘリを用意して頂ける形になってはいます。

ですが、現状私達が動かせるヘリが今乗っているヨークシャーちゃんしかいないんです。

 

「ウイさん。今からでも古書の持ち出し申請とか工面出来ませんか……」

 

「分かってて聞かないで……最悪芋蔓式で貴女達の事全部表に出すリスクがあるんですよ……どんな形であれ記録には残せません、なんならヘリの発着もです……」

 

「助けてコハルちゃん……」

 

「だ、大丈夫!初めは怖いかもだけど!ね、アズサ!慣れればすぐ降りれるわよね!」

 

「うん。ヒフミもハナコもウイもそんなに心配しなくても大丈夫だ。アリウスで私達も訓練した事があったけど落下傘が開かないなんていうのはたまにしか起きなかった」*13

 

「あったんですか……」

 

 なんでそれ今言うのよぉと半泣きになって怒ってるコハルちゃんの泣き声を聞きつつ、私達は遠い目をします。

キヴォトスに住んでるからって、流石に高度3000メートルから飛び降りる機会なんて滅多にないんですから*14

 

『むぅ!アリスも空からのヒーロー着地がしかったです!』

 

 通信に混ざって来られたのは両手に大きな荷物、いえ本当に大きいですね。

両手にぶら下げているスーツケースとは別に中型ぐらいのコンテナを抱え持っているアリスちゃんでした。

 

 現在、拠点は対聖杯陣営を想定しつつ朝から色々あって爆破されてしまった隔壁なんかの修繕と改修作業を並行して行なってます。

アリスちゃんの手荷物はそういった諸々の工具や材料、なのでしょう。

 

「替われるなら、って言いたいけど流石に私じゃちょっとね……ヘルタースケルターがいるって言っても1時間は丸々拠点を開けちゃうから、今みたいにアリスちゃんには拠点にいて欲しいし。それに、この後もあるからね」

 

『うぅ……そういう事なら』

 

 残念そうにしつつも頷いてくれるアリスちゃんの姿に緊張気味な私の顔にも笑顔が戻ってきてくれます。

実際のところ、今の拠点はチヒロ先輩とエンジニア部のみなさん、そして作業指揮兼通信担当のユズちゃんと防衛戦力担当のアリスちゃん。

それから残り50機近いヘルタースケルターさん達だけ。

 

 今回、サーヴァントの方達には私達の交渉や古書回収に同行して頂いています。

拠点を守るという面から誰か一人は戦闘に強いメンバーを、という事で今回はアリスちゃんに白羽の矢が立ちました。

 

 勿論、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

本当に助けてもらいっぱなしです。

 

「は、ハナコ大丈夫?お水飲む?」

 

「ごめんなさい、空の上で戻したくないです……」

 

 とはいえ、です。

頭ではわかっていても正直代わってもらいたいなぁなんて気持ちがないわけじゃないんです。

私もハナコちゃんも古関先輩もモモイちゃんも完全にグロッキー。

ミドリちゃんだって落ち着こうとしてくれてますけど、やっぱりいつもより緊張気味。

完全に余裕のある様子なのはサーヴァントの御三方とミノリさん、それから訓練済みという話のアズサちゃん。

 

『さ、流石のハナコ先輩もガチトーンですね……っと!そういえばコハルさんはあまり不安がってませんね?もしかしてスカイダイビングのご経験やご趣味が!?」

 

そして意外、と言って良いか分かりませんけど元気なのがコハルちゃんでした。

高い所が特別好きとかって話はあまり聞いたことがありませんから驚きです。

 

「もうっコトリ!私が正義実現委員会の、良い?エリートっ!……っていうの、忘れたわけ?」

 

 でも言われてみればそれはそうだと頷く他ありませんでした。

コハルちゃんは正義実現委員会の一員。

空挺訓練も受けておられるみたいです*15

 

 高高度降下低高度開傘方式。

今回するスカイダイビングみたいに上空から飛び降りて自由落下してから地上まで残りの一割でパラシュートを開く通称ヘイロー方式、というやつです*16

こんな高度からするのは普通はない、という話ですがそこはヘルタースケルターさん達にお任せしましょう。

私は別ですが……。

 

「と、とりあえずスカイダイビングをするのは分かりましたし一応この後の流れも理解しました……しましたけど……」

 

「不安かい?大丈夫さ、僕がついてるからね」

 

「あはは……それが不安なんですよ」

 

「え、えぇ……」

 

 そう私、というかマスターは別なんです。

他のみなさんはそれぞれヘルタースケルターに抱えてもらってそちらのパラシュートで降りてくる話になっています。

ただマスター(私達)は、そもそもから違うんです。

 

「……お聞きしますけどサーヴァントのみなさん。どうやって高度3000mからパラシュートなしでの着陸の衝撃を和らげられるんですか?」

 

そうなんです。

私達マスターとサーヴァントはその方が確実で安全だし、先に降りて着地地点の安全を確保できるか、という点から。

 

 

 

魔力出かな」「だな」「己の肉である!

 

 

 

各サーヴァントの方に抱えられてパラシュートなしのフリーフォールをする予定なんです。

 

「……リオ会長ぉぉ!」

 

『だって出来るってこの人達が言ったんですもの』*17

 

 思わず振り返ってセイバーさん達を見ますけど御三方とも目を逸らしていました。

全員夕飯のおかず減らしちゃいます*18

 

「ほら、ヒフミ、それにモモイも。あまり騒いだって仕方ないさ。腹を括ろう。見てみろ、アズサとコハルを。もう準備万端だぞ」

 

 とはいえ、ミノリさんの言うことも尤もな話です。実際問題として空のお散歩なんて悠長な事を言ってられないところはあります。

可能な限り時間を圧縮する事。

もう一つはさっき言った安全の確保が必要な事。

 

 特に古書館のあるスクエアは、昨日の襲撃もあって立ち入り規制がありますからかなり安全には違いありません。

ですが、私達がこれからほぼ直接と言って良い形で向かうのは古聖堂。

一応は中立地帯と言えど何が起こるか分かりません。

 

 一足早い安全確保が必須です。

何より、サーヴァントとマスターは特に、最悪の場合狙われる可能性が上空でもあります。

いち早く降りるというのが求められるんです。

 

 だからってパラシュートなしで3000m下にある地上まで自由落下するなんて、さっき聞くまで知りませんでしたし、知ってたら絶対反対してた自信があります。

いえ、一番早く、少しでも多くの結果を得るために色んな行動がしたいってみなさんに伝えたのは私ですけど。

うぅ、どうしてこんな事に*19

 

「なんでそんなにミノリ先輩は余裕なのさぁ……」

 

「そりゃ私は仕事柄、高い所に登るなんてしょっちゅうだからな」

 

「高い所と!高い所!からっ!落ちるのはっ!別でしょぉぉ!?」

 

 モモイちゃんの迫真の叫びが光りますね。

私も同じ思いですけど、本当にミノリさんは落ち着いておられます。

やっぱり上級生はすごいです。

ナギサ様やミカ様、セイア様もきっとこういう事態でも動揺されないのでしょうけど*20*21*22、私にはまだまだ難しいです。

 

「まあ似たような物だ。問題ないさ、サーヴァント達にしろキャスターの使い『ヘルタースケルターダヨー』……ヘルタースケルター達にしろ、信じて身を任せておけば良い。ここまで来て、駄目ならそれでおじゃんさ」

 

「さっぱりし過ぎてる……というか、大体なんで私達マスターだけ『時間よ、補習授業部』……無事に帰ってきたらジュース奢るね、ヒフミ」

 

「あはは……楽しみにしてます……」

 

 とはいえミノリさんの言う通り。ここまで来たならやるべき事は一つ。

ちょうど降下合図のランプも灯りました。

装具点検も済んでいます。

 

「それじゃあ、みなさん。準備は良いですか?」

 

 それぞれヘルタースケルターさん達とハーネスが接続されたアズサちゃん、ハナコちゃん、コハルちゃん。

そしてスパルタクスさんに横抱きにされてるミノリさんの顔を見ます。

私自身横抱きにされてるわけですけど、なんか締まりませんね。

 

『(よろしくお願いしますね、セイバーさん!)』

 

『(おや?不安なんじゃなかったのかい?)』

 

『(もうっ!すぐそうやって……もー!)』

 

 抗議の気持ちを込めて鎧の胸当てを一叩きしたのがちょうど良い合図になりました。

既に扉は開いて風が流れ込んできます。

私は深呼吸して、みなさんの顔をもう一度見てから最後の説明を。

 

 

 

「それじゃあみなさん!カウントをしたらそれぞれ順々にお願いします!私達は今から先に5秒数え「るのは燃料が勿体無いから僕たちは行こうか」はぁぁぁあ───ぁぁあああああああ!?

 

 

 

してたのにイイ笑顔のアーサーさんのせいでなんの心の準備もないまま私と彼は空に飛び出していきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という次第なんです……」

 

 結論だけ言います。

着地は無事に成功しました。

 

 通功の古聖堂の周辺自体、エデン条約の一件もあってまだまだ完全に工事が済んでなかったりで人の目も少ないです。

だからアズサちゃん達がパラシュートで着陸したのだって問題ありませんでした。

ハナコちゃんが半泣きになってたのは不謹慎ながら可愛かったです*23

ええ、本当に*24*25

みなさんは無事に、スパルタクスさんとミノリさんが誘導した安全な場所に降り立たれました。

 

 

 

 

 

 

なるほど、なるほど……それが阿慈谷ヒフミさん。貴女とセイバーが古聖堂の天井を突き破って降りて来られた経緯だったわけなんですね?」

 

 

 

 

 

 

「……はいぃ」

 

 ええ、そうなんです。

あろう事かセイバーさんは『折角だし直接お邪魔しようか』『ほら安全確保するんだったら敵の居場所に乗り込んで抑えるのが一番確実だしね』『バーサーカー!そっちは頼んだよー!』『はんぎゃくー!』とかなんとか言ってそのまま魔力放出のスキルを使って空気の抵抗を増やして減速。

そのまままだ修復途中で手付かずになってる()()()()()()()()()()()()()()

教会の奥から現れた黒服さんと対面して事の次第を説明して今に至ります。

 

「朝っぱらから喧嘩を売りに来るとはどこの命知らずかと思って間抜け面を見に来てやったら、なぁ?しょぼくれたお前がいるものだから笑ったぞセイバー」

 

「ははは……いやぁ、今日も元気そうだねアサシン。あとで君が持ってるその手の串カツを分けてくれるかい?ついでにヒフミに言ってこの正座を「何か言いましたか?」……いえなにも」

 

 私今日交渉というか()()()()()()()()に来たんです。

間違いなく、ええ、その為に来たんですよ。

 

「大方の事情は理解できました。どうやら随分とサーヴァントの方とイイ関係を構築されているようで。いやいや、監督役として安心しましたよ、阿慈谷ヒフミさん」

 

「あはは……泣いていいですか?」

 

「クックックッ……お互い、苦労していますね。ハンカチでしたらまたお貸ししますよ」

 

「あ、以前お借りしたの今日持ってきました!あの、ちゃんと一応、洗濯も……」

 

「それはそれは、ご丁寧に」

 

 なんで、どうしてこんなことに。

どうして教会の長椅子に座って、相向かいの黒服さんに慰められてるんでしょうか。

 

「今日のご用件というのも察しは幾つかつきました。監督役としてお話しすべきこともあるでしょうし……」

 

 そう言って分かりにくい顔で微笑んで下さる黒服さん。

ですけど本題に入るより前に気になるというか、一応ちゃんとしとかなきゃいけない問題があるんです。

誰かさんのせいで。

 

『(待ってほしい!今回の件は別にヒフミを揶揄う意図はなくてね!これはれっきとした戦略上、かなり重要な……!)』

 

 無視です。

()()()()()()()()()()()()()()、そうじゃないんです。

 

「あ、あのぉ……天井の件はぁ……」

 

「クックックッ……そんな事は構いませんよ。此処はキヴォトス、こういった事も起こり得るでしょう」

 

「あぅ……く、黒服さん……!」

 

「ましてや悪意もなければ、第一この古聖堂は私の仮住まいに過ぎません。壊れた所で、というやつですよ。気になさらないように、それらの補填も含めて私の役割です」

 

 見て下さい。

本物、本物の大人がいます。

これが大人の余裕ですよ、セイバーさん。

 

「ほんとにぃごめんなさい……ありがとぉごさいます……」

 

「……ええ、本当に。もう慣れてしまいましたから……」

 

 遠い目をされている黒服さん*26が座られた長椅子、その背凭れに腰を下ろしてマイペースに串カツを頬張ってるアサシンさん。

 

 彼女の様子を見れば、お二人の関係にも察しがつきます。

端的に言って大変そうです*27

そんな風にお二人を見ていると、黒服さんは静かに私を見つめてから口を開かれました。

 

「さて、本来でしたら折角やって来て下さった皆さんにお茶でも勧めたい所ですが……私が出した物では警戒も一入でしょう。ですから、如何でしょう?」

 

 ぴんと、真っ黒な肌に青白い亀裂の入った人差し指を立てた彼の右手には相変わらず令呪がありません。

それに気を取られてしまった私に、少しばかり目を開いてから彼は小さく笑って。

 

 

 

少しばかりのアイスブレイク、なんていうのは

 

 

 

一つの提案をされました。

 

「幾ら見知った仲とはいえ、まずはお互い心を開かねば腹の探り合いもスムーズにとはいきません。たとえば簡単なゲームをしてみませんか?」

 

 ゲーム。

そう楽しげに喉を鳴らす彼はこれからする事を語り始められました。

 

「議題はそう───昨晩我々が何をしていたか」

 

 ゆっくりと手の甲を返すようにして掲げられる指の本数は、5本。

 

「貴方方から5回まで、質問を受け付けましょう。その五回で私達が昨晩の襲撃時にどこで何をしていたか」

 

それがこのゲームで私達が使える残数なのだと彼は笑う。

 

「それを貴方方に当てて頂く、そんな単純なゲームですよ」

 

「アイス、ブレイク……ですか」

 

 さて、どうしましょうか。

とにかくひどい状況をから始まる交渉になりそうだったところです。

具体的に言うと相手の拠点の天井を突き破って突入するところからスタートでしたからね。

 

 それなのにありがたい事に黒服さんはアイスブレイクの提案をしてくれました。

しかも、別段気負う必要もないし断ってくれても構わないとまで付け加えてくれるんです。

 

「おや、そういうのは嫌いですか?」

 

ぞくりと、背中が粟立った気がしました。

寒気にも似た感覚に背筋から脳髄にかけてを逆撫でされます。

 

「あはは……()()()()()()()()()()()

 

 思わず、口元から歯を剥き出して笑ってしまいたくなりました。

そう、事もあろうかこの人はご親切にも、こう言われるんです。

 

「折角のお誘いですから、是非楽しませて下さいね」

 

 交渉をするなら今から手解きしてやるぞ、って。

大人の高さからわざとらしく見下ろすポーズまでやってのけて。

よちよち歩きの赤ちゃんを手招きするみたいに。

 

 

 

───今から交渉のイロハを教えてやると。

 

 

 

この人はそんな事を仰るんです。

 

「それは勿論。あのバス停の時のように素敵な時間になる事を約束しますよ」

 

 背中がひりつきます。

つむじの上が痺れます。

喉の奥が渇きます。

良いですよ、構いませんよ。

そっちがその気なら、リベンジです。

 

「あぅ……お手柔らかに、お願いしますね?」

 

質問が5回、ですか?

いいえ、必要な回数は3回です。

アイスブレイク程度の遊び、3回で蹴りをつけます。

3回の質問で昨晩、どこで何をしていたか。

その全てを明るみにしてみせます。

 

「───黒服さん

 

 笑みは淑女らしく柔らかく。

挑発的な粗野な仕草は隠しましょう。

嫋やかに可愛らしく、トリニティ生らしく。

微笑みの下にナイフを隠して、さあ。

 

それは勿論。では、始めましょう。まずは───」

 

前哨戦です。

 

 

 

 

 

 

*1
正式名称チヌークHC.1『ヨークシャー』。あくまで桐藤家名義での所有なのでトリニティとは無関係、という建前で使える型落ち品。とはいえそうは言っても治安維持部隊で使われるような一級品。これが原因でゲーム開発部の面々は『やっぱり補習授業部ってトリニティの秘密部隊かなにかなんじゃ……』という誤解が加速した。ちなみにヒフミは気づいてないが必要ならナギサはプレゼントする気まんまんである

*2
大型輸送ヘリだからこその収容人数である。ナギサ様々であった

*3
残念、現実は非情である

*4
なぜこんな事をヒフミが知っているのかセイバーは気になったが深く追及するのはやめた。多分ペロロ関係だと直感したのだ。男の推理は正しかった

*5
ハナコはこの後の展開に思い至って絶望中だった

*6
正解である

*7
秘密裏の作戦の為に手を回すのはなんかワクワクするなぁと思うセイアであった

*8
ウイはなんかもう色々とキャパオーバーだった

*9
今日もヒフミの直感スキルは冴え渡っていた

*10
一方、リオはキョトンとした顔をしていた

*11
ちなみに桐藤ナギサ命名。ミカはあんまりにも安易な理由にゲラ笑いした

*12
分かるか

*13
最悪である

*14
あってたまるか

*15
ちなみに訓練で降りれるようになるまで時間がかかったのは内緒である

*16
高高度からパラシュートなしでの自由落下によって急速に降り、限界地点でパラシュートを開いて着陸、迅速に部隊を展開する……というとにかく早さに長けた方式である。ちなみに通常はもっと低い位置からの落下を想定する

*17
だってじゃない。頬を膨らませても可愛いだけだからやめなさい

*18
キッチン担当は強かった。もう一人のキッチン担当ことハナコも強く決意した。絶対に減らしてやる、と

*19
残念ながら時間がない中で最高効率かつ合理的に動くとなるとこうなるのだ

*20
……まぁミカさんなら

*21
まあ……ミカなら

*22
ねぇ?私の扱い酷くない?ねぇってば☆

*23
やめてあげてほしい

*24
案の定アズサはジェラった

*25
ハナコは満更でもなかった

*26
黒服は学んだのだ。具体的に言うと某アサシンによって振り回された10日間で得た新たな知見、時には諦めが肝心だということを

*27
ヒフミの推測は正しかった





1じゃんね☆
というわけで今回から黒服とのお話会じゃんね☆
結構長めだから今週も基本的には1日3回投稿じゃんね☆……キッツ♡
というのはさておき、明日というか4/30の1:23更新分は諸事情から時間がずれて同日の3:21になりますじゃんね☆
ご理解のほどよろしくお願いします、じゃんね☆

⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎の同行者を選択して下さい(〜4/30.1:23)

  • ハーリングのセイバー
  • フィレンツェのアーチャー
  • 楽劇のランサー
  • 維新のライダー
  • 白備えのキャスター
  • キラキラのアサシン
  • 民話のバーサーカー
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