あら、今朝はアサシンさんは来られてないんですの?
……まあ、来客がいらして遅くなる、と。
そうでしたか、では少しばかり自重トレーニングをば。
お茶会まで優雅に時間を潰しましょうか。
「……答え合わせは必要ですか?」
ゆっくりと口を開かれた黒服さんの言葉には揶揄うような響きが乗せられていました。
嫌味とか毒気とかのない、シンプルなその意図に思わず私まで釣られそうになります。
「それはもう!だって、折角お誘い頂いたアイスブレイクですから」
「クックックッ……ええ、そうでした」
惚けたような事を言ってから、彼の青白い靄が焚かれた眼光は私を真っ直ぐに見つめられました。
視線が交差する私達の口元はまったく同じ形をしている。
「楽しんで頂けましたか?名探偵」
「それはもう、しっかりと」
あの日の意趣返し、とまではいきませんでした。
それでも三手。
彼が用意していた五回の質問のうち、三回目の質問できっちり勝ち切る事が出来ました。
口も頭も心もすっなり快調。
しっかり調子を整える事が出来たことに関して、黒服さんの配慮はありがたい限りでした。
とはいえ、その配慮をさせてしまったことには恥ずかしさと引け目を。
「─── 話が済んだのなら、ヒフミは返してもらうぞ」
感じたところで私の思考は柔らかな体温に攫われました。
シトラスが爽やかさにラベンダーの背中を軽やかに押す香りが良く似合う彼女の温もり。
静かな羽撃きが古聖堂の空気を軽く弾いたかと思えば、一瞬のうちに私はさっきまで座っていた場所から少し離れたところへ。
「あ、アズサちゃん!?」
そうです、アズサちゃんの胸の中にいました。
『(流石アズサだ、手早いね。僕が出る幕もなかったよ)』
『(あぅ……ど、どうして急にアズサちゃんが!?お、お喋りが長過ぎましたかね!?というか息が!?)』*1
『(ははは……良い事を教えてあげよう、ヒフミ。そういうのは僕に聞かず、直接女性に尋ねるものさ)』*2
相変わらずセイバーはこういう時にキメ顔するばかりで役に立ちません*3。
意地悪です。
文句を言いたいところですけど、アズサちゃんが中々離してくれません。
「……むぅ。どこ行くの、ヒフミ」
視界が真っ白で柔らかいのと良い香りがすることしか分かりません。
セイバーさんへの抗議どころか、直接アズサちゃんと話をするのだって無理です。
というか、なんなら呼吸も危ういです*4
『(ま、まままままずいです!このままじゃ、息が!あと意識も!昨日寝不足だから余計に酸欠で!)』*5
『(ははは……そうなったら暫くそのまま休んだらどうだい?昨日は遅かったしね)』
『(せ、セイバーさんのおにー!あうぅ……他人事だと思ってー!)』
「これは白洲アズサさん。カフェでは御挨拶出来ていませんでしたが、怪我の経過は如何ですか?必要でしたら、一応は私も彼女のマスター。誠意をお見せしたいと考えておりますが」
「……いらない。それより気に入らないのは、無駄話が長い方。これ以上ヒフミと話したいなら───
「クックックッ……これは失礼を。てっきり今日は阿慈谷ヒフミさんだけがお話しされのかと思っていましたので。何せ、あなた方の敵意と警戒に溢れた様子を見るにどうやら話よりも、
困りました。
ますますアズサちゃんの力が強くなってます。
なんなら多分今羽根で包まれちゃってます。
もうなんかおはなばたけにいるみたいです*6。
『(ほらヒフミ、意識を強く持つんだよ)』
うるひゃいです。
「あらあら。言葉を交わさずに判断する、というのはあまりよくないのでは?」
「目は口ほどに物を言う。態度が透けてしまえばポーカーフェイスに意味はありません。ビジネスの基本はいつでも笑顔、相手を萎縮させる態度で席に座っても望む結果は得られませんよ?浦和ハナコさん」
「まあ!うふふ……とっても勉強になりました」
「ええ、帰ってからよく復習なさるのをお勧めします」
「……どうでしょう。私達は生憎、忙しいですから。あとアズサちゃん?そろそろヒフミちゃんが多分酸欠でイって♡しまうので、その辺で、ね?」*7
「アズサ、アズサ。ちょっとあんた、そこら辺でやめとかないとヒフミ本当に気絶するわよ」
「む……そうか。ありがとう、ハナコ、コハル」
ふわっとしてていままでかんじてたあったかいのがはなれていって。
それでわたしのしかいは。
「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……っ!」
「あーヒフミ?大丈夫?」
思いっきり深呼吸。
コハルちゃんが大丈夫か聞いてきてくれますけど、色んな意味でそれに応える余裕が今の私にはありません。
「しかし随分と警戒なさっているご様子。此処、
先ほど天井に穴が開いて風通しも良くなりましたしね、なんて冗談まで付け加えて下さいました。
もっともそれについては全面的にこちらに非があるので笑えませんし、なんとも言えません*8。
「そも警戒されるような胡散臭い貴様が悪いな、黒服よ」
そう思っているとアイスを食べ終わったのか、今度はその棒を火もつけずに炭化させつつ、アサシンが苦言を口にされました。
どうでも良いかもなんですけど、一体全体、さっきからどうやって燃やしたり焦がしたりしてるんでしょう*9
「……警戒される原因を作ったのは貴女だったかと思いますが?アサシン」
「ふむ、どうだったかな?それから、その話を今したいなら儂は構わんがお前はどうだ?」
「……はぁ」
対してそれに心なしか睨むように文句を言う黒服さんへ、鼻を鳴らしてアサシンさんは返事をされます。
そうするとやはりと言いますか、黒服さんはこれ見よがしに重たいため息を吐かれました。
これが演技でないのなら、多分今の溜め息が彼なりの精一杯の抵抗なんでしょう*10。
「それに考えてもみよ。お前の軽薄なその態度とこの娘達の殺気染みた瞳。どちらが心地良いかなぞ言うまでもなかろう?」
そんな黒服さんの無言の抗議を無視したまま、アサシンさんの目線は私達、もっと言えば私の後ろや隣にいるみなさんの方へ向かう。
殺気染みた、と言っておられますけど全然そんな目をみなさんがしてるなんて気付きませんでした。
というか怖くて確認できません。
「それにだ、見目というのは肝心だぞ」
膝に手を当てて息を整えている真っ最中の私としてはこのまま前だけ向いていようかなぁ、なんて考えていたところで。
『(さて───ちょっと動こうかな)』
私達から少し離れた場所に立っていたアサシンは言葉を区切られてから、笑みを深めたのが一瞬だけ私達の視界に映りました。
「ほれ───お前と違ってこの娘はこうも愛らしい」
瞬き一つの間、だったのだと思います。
少なくとも私にはその動きは捉えることなんて出来ませんでした。
「ッ!触るなッ!」
だから気づいたのはいつの間にか私の
そんなアサシンさんの行動を激しく咎めるアズサちゃんの声を聞いて初めてでした。
「おっと。いやしかし……くくっ。良い動きだな勇敢な娘。やはり私がこの地で出会った娘の中でもお前は一等良いぞ、
「……私はお前が嫌いだ……っ!」
唸るようなアズサちゃんの声にびっくりして中々状況が掴めず、コハルちゃんと一緒に目を白黒させる中、アサシンさんは気にした様子もなく笑い声をあげます。
「そうかそうか、愛い奴め」
幼い子を見て笑いかけるような、大人の女性の笑い方。
老成してるのに艶やかさちっとも損なわれていない、上品なのに野趣に溢れた笑い声。
その声と態度に。
「ッぅ!……ヒフミぃ!」
アズサちゃんが今度を私の腕を抱きしめて組んでくれました。
ええ、嬉しいですよ。
お友達とくっつくの、私は大好きです。
嬉しいんですけど、でもちょっといたいかなぁって。
なんなら腕に爪が、ちょっと、アズサちゃん?
アズサちゃん、グイグイ刺さってますよ!
「いやはや随分と嫌われたものですね、アサシン。これを機にもう少し人に優しくするという文化的なコミュニケーションを学ばれては?」
「ふん。誰に向かって言うか。私はこう見えて何百と子を育ててきたのだ。お前とて知っているだろう?……それからそこの
「ははは……あと
「可能なら下げて頂きたいところですが……あと、アサシン。言っておきますが、貴方の
目の前で黒服さんに向かってアサシンさんが手を振ったかと思ったら、次の瞬間に鈍い金属音。
見れば黒服さんが立たれている数ミリ横の床に突き刺さっていました。
確信が持てます。
間違いなくこのお二人の力関係はアサシンさんが上なんでしょう。
そんな姿を見て戯れ合うぐらいには仲が良い、と私は感じました。
ですが、なんといえば良いのでしょう。
いえ、だからこそなのでしょうか。
このお二人のやり取りを見ているとどうしても違和感があります。
仲も良くて、怪しさは満点ですけどでも監督役としてはきちんと働いておられる黒服さん。
何より、先生と聖杯戦争限定でかつ、恐らく消極的だと思われますけど協力関係を築いていられた大人。
そんな人がどうして───。
「痴話喧嘩は構わないが、時間がないのはお互い様の筈だ───話をしたい」
ぴしゃんと空気を叩くような力強い声が私の思考と、黒服さん達の会話を止めました。
石造りの教会の床を硬く叩く靴音は硬質なゴムのそれ。
声の主は振り向かなくても分かりました。
「これはこれは、お久しぶりですね。第五のマスター、安守ミノリさん」
アズサちゃんとは反対側に立って、けれど私よりほんの少し前に立った彼女の横顔は拠点にいた時とは違って少し、厳しい。
「才羽モモイさんの時も驚きましたが、まさか他ならぬ貴方が阿慈谷ヒフミさんと同盟を組まれたとは……嘗て貴女が口にされた賭けというのは良かったので?」
「ああ、
「……それはおめでとうございます。監督役として貴女というマスターとサーヴァントが聖杯戦争への参加表明を新たに掲げられた事を喜ばしく思いますよ」
賭け、というのは昨日ミノリさんとお話をした時に少しだけ伺いました。
詳しい内容までは聞けてませんけど、確かスパルタクスさんとの賭けで、口振から察するに聖杯戦争に関係あるものみたいです。
また帰ったら伺いたいですね。
とはいえ、今はそれを考えている余裕も時間もないのは。
「さて、時間がないというのを今更確認する事はないでしょう。その様子ですと、既に聖杯からの魔力供給とそれによる肉体への負荷については知っていらっしゃるようですから」
話し出した黒服さんの雰囲気を見れば一目で分かりました。
先ほどと同じ、少し意地の悪い質問です。
意図して此方の感情を逆撫でするような、そうやって自分にとって都合の良いペースに持ち込む為のテクニック。
だったら、私も
「あはは……知っておられたんじゃないですか?」
それに久々に心が痛むことなく探り合いなんてのをして調子も良いところですからね。
「まさか、私は監督役ですから。初めから知っていましたとも」
「あはは……ごめんなさい、そっちじゃないです」
「……クックッ……と言いますと?」
折角あんなアイスブレイクまで用意して頂きましたから、お礼の一つでもしたいところ。
「多分ですけど黒服さん、私が倒れた日にお見舞いに来ようとしてくれてませんでしたか?」
ですから、出鼻を挫かせてもらいましょう。
「さて、どうでしょうか。後学の為に、どうしてそう思われたのか伺っても?」
「あはは……なんとなく、なんです。私が退院した日も貴方はわざわざ会いに来て下さいましたから、ならあの日も実は来ようとしてくれてたんじゃないかなぁって」
勿論、理由はそれだけじゃありません。
幸いな事に、あの日ちょうど私のところにお見舞いに来てくれた子もいましたしね。
それになんとなくっていうのも、直感でそんな風に感じたわけですし。
これも立派な理由です。
違ったら違ったで、| お見舞いに来てくれないだなんて《貴方から事前に説明がなかった結果、入院までしている》って文句を言えばいいだけですし。
「……なるほど。では一つ、あの時と同じように忠告を。あまり見せびらかすのは肝心出来ませんね、サーヴァントとの契約によって共有したスキルを連想させるような不可思議な発言は」
「ご忠告ありがとうございます。でも、どうでしょうか?本当にただなんとなくそう思っただけかもしれませんよ」
「クックックッ……では、口煩い大人からの助言という事で一つ」
「ええ、ありがたく受け取らせひゃんっ!?」
格好つけて薄ら微笑んで見せようかと思ったんですけど、脇腹の感触にびっくりして恥ずかしい声が出ちゃいました。
「あ、アズサちゃん?急にお腹に手を回されるとびっくりしちゃいますよ……?」
「……むぅ」*11
「あは、あはは……」
駄目です。
むくれてほっぺを膨らませてます。
いえ、大丈夫ですけどね。
この前入院したというか倒れたからかちょっと体重減り気味な感じですし、別に脇腹のお肉とか気になってませんけどね。
「さて、こうして楽しくお話を続けるというのも私自身は然程嫌いではありません。ですが時間というものは幾らあっても足りる事はない」
こほんと黒服さんがされた咳払いで現実に意識が向きます。
調子は勿論、まだまだバッチリです。
「ましてや私も含めてマスターには、そして次の聖杯戦争を見据えるならばこのキヴォトスにも、猶予というものはそう多くは残されていません」
時間がないなんて、百も承知なんです。
「話をされに来たのでしょう?勿論、構いませんとも」
だからちょっと無理のあるスケジュールを、目立たないギリギリの範疇で行える空挺降下までして組んだんです。
「第一のマスターとして、そしてキヴォトスで発生した今次聖杯戦争という大事件の監督役として」
全てはこれからの布石を打つ為に。
今後、黒服さんとの間で行われる交渉、そして取引を円滑に行えるように。
「─── あなた方の話を伺いましょう」
今日この場で黒服さんの為人と目的、そして彼の本当のスタンスをしっかり見定めなきゃいけないんですから。
何から話すかとなれば、やはり私達側の情報。
「私達はセイバー、キャスター、バーサーカーの三陣営が聖杯戦争の同盟です」
もっと言えば目的についてというのがスムーズな流れになるでしょう。
とはいえ、黒服さんについての情報が乏しいから交渉兼調査で来ました、と正直に言ってしまうのも黒服さんからしても困ってしまうでしょう。
「同盟の目的は聖杯戦争に参加する全マスターと全サーヴァントを誰一人失う事なく、今次聖杯戦争をもってキヴォトスで行われる聖杯戦争を終わらせる事です」
なので今回はまず、私達の一番大きな目的の方から。
つまり
実際、行動の軸になっているのはこの部分ですし、譲る事が出来ない私達の一線です。
それを最初に提示しておけば、お互いやりやすい部分もあります。
「それはそれは……御立派な志だ」
僅かに言い淀まれた言葉にはほんの少しだけ苦い笑いが忍ばせられていました。
嘲るのとは違う、
「あはは……ありがとうございます。でも私達からすると当たり前の事ですから」
「ええ、確かにそれはそうでしょう。あなた方にとって、いえ。キヴォトスに住まう者にとって命の奪い合いは度し難い禁忌なのですから」
正直褒めて頂いてもあまり良い気持ちは当然しません。
だって明らかに含みがありますから。
けど、そんな事は一々気にしていたって仕方ありません。
まずは私達の目的を伝えた。
それへの共感の度合い、そして興味と関心をどの程度惹くことが出来たか。
それを測るのが大切です。
「……黒服さんはそうじゃないと?」
「御冗談を。以前にもお話した通り、こんな見た目ですし出身こそ違いますが、私もまたこの地の人間です。敷かれた世界に足をつけて生きていますよ」
そして黒服さんもまた私達と同じ価値観を、少なくとも最低限のラインは共有していることも確認できました。
この人は、誰かを殺したくて聖杯戦争の監督役をしているわけでは恐らくありません。
自分の願いの為に人の命を奪う行為を明確に禁忌だと考える価値観を持って生きている。
どの程度なのかはさておき、そこの理解を一致できたのは正直ホッとします。
「黒服。私達同盟陣営はお前の言うルールに反する事はない。だが反面だ、聖杯戦争の推移を観察したいと言っていたお前からすると、私達のような聖杯戦争自体を止めようとする存在は───敵か?」
「いいえ、安守ミノリさん。我々監督役にとって重要視するのは始まった聖杯戦争の推移という過程のみになります。極論を言えば、誰が聖杯戦争を止めようが、今後二度と聖杯戦争が起きなかろうが私共としては問題がないんです」
ミノリさんからの質問からは黒服さんのスタンスというのが見えてきますね。
彼ら監督役にとって重要なのは始まってしまった聖杯戦争がどんな風に進んでいくのか、という一点なのでしょう。
「一度生まれた物ですから。司祭でもない私に祝福をするというのは無理ですが、せめて研究者として見守る程度の務めは果たすべき。そう自認していますので」
なんだか実験の経過を観察しているみたいです。
さて、目的については話すことが出来ました。
黒服さんからの質問であったり深い部分をついて解答を要求されるなんていうのはまだありません。
当然です、だって今のは
だからここからはそれより向こう側へ。
もう少し、私達側からのアクションをしてもう一歩踏み込んだ話をしていきましょうか。
踏み込んだ内容となると大体大きく分けて二つ程度になります。
一つは聖杯陣営という新しい脅威について。
もう一つは予備システム周りについてでしょう。
特に後者についてはセイバーさん達も知らなかった大聖杯そのものと密接に関わりのあるシステムです。
正直な話、これを私達のようなただの参加者が知っているという状況自体が本来の聖杯戦争ではあり得ない物なんでしょう。
「まず、聖杯陣営について伺ってもいいですか?」
だからこそ、ここぞってタイミングで上手く切り出さなきゃいけません。
特に黒服さんは大聖杯や聖杯戦争そのものの関心は薄そうだと感じます。
私達の方の情報なしで予備システムについて聞けば、もしかすると戦火を広げると勘違いされかねません。
現状予備システムとそれを使った大聖杯の停止については、手持ちの情報の中では切り札ですね。
「昨晩の襲撃犯、ですか。実に分かりやすい名前ですね。どうぞなんなりと。あなた方もきっと気になっていることでしょうから」
余裕な笑みの裏側にあるのは察せれません。
少なくとも表情や雰囲気から読み取って戦う、というのはやはり黒服さん相手だと難しいですね。
意表をつく、となったらそれこそ彼の思考の外からになるでしょう。
「昨晩の襲撃は大きな被害が生まれました。私達の知る限りでも複数の自治区で、そして黒服さんご自身もそれへの対処に赴かれています。だからこそ、聞かせてください」
となるとまずは小出しに、そして着実に。
意表をつく必要があるなら序盤はある程度彼が予測できる範囲内の質問から攻める。
そうやってある程度落ち着いたところで、一気に牙城を崩していくのが効果的。
「このキヴォトスで行われている聖杯戦争で彼らの存在はイレギュラーな物なんでしょうか?」
当事者からすれば気になるのは当たり前の質問です。
何せ七騎のサーヴァントさん達が戦うという触れ込みを聞いていたのに、いきなり六騎も増えたんですから。
ましてや
彼女についてはそれこそ私達も名前ぐらいしか分かっていません。
聖杯陣営という存在自体が最初から仕組まれていた物なのかどうか、まずはそこから聞いていきましょう。
「さて、それについては私の方からはなんとも。少なくとも
聞いていた話、という言葉から察するに前任者、或いはセイバーさん達から教えて頂いた聖堂教会のような上位組織があるのでしょうか。
確か黒服さんはゲマトリアっていう組織の方でしたし。
ただ彼は以前、『この聖杯戦争で用意されたルールと聖杯について、我々の組織、ゲマトリアの人間はそのシステム構築に一切関与していない。謂わば自然発生した『事故』の副産物』とまで言い切っていました。
私はこの言葉そのものは嘘じゃないと思っています。でも、
「イレギュラー、あなた方監督役はそういう風に認識しておられるという事でよろしかったでしょうか?私達に聞けど言わんばかりの口振りでしたけど♡」
「ええ、浦和ハナコさん。恥ずかしながら私もあくまで与えられた役職を全うするので精一杯です。いやはや、あんなモノが現れるだなんて聞いていませんでしたとも」
「……あんなモノ、ですか。監督役に就かれておられるだけに彼らがまともなサーヴァントでない事は把握済み、でしょうか?そちらには随分と魔術に精通した方がいらっしゃいますし」
「大量のシャドウサーヴァントの軍勢を召喚し、あまつさえ宝具を使用しての大規模な従属物を数時間にわたって展開し続けられる。少なくとも通常の霊基ではないと判断するのは、ごく自然なことかと」
ハナコちゃんからの追及はひらりと躱されてしまいます。
ただ、言及を控えたという事は何かしら知っている可能性もありますね。
「イレギュラーなのは分かった。だが、お前達監督役はアレに対してどういう風に対処するつもりだ?間違いなくキヴォトスに混乱を招く存在だろう」
ミノリさんもそれを分かってか深掘りをしてくれます。
実際のところ、黒服さん達がこれからどんな風に彼らへの対処をしていくのかは気になるところです。その点が分かっていれば私達も協力を依頼するハードルがグッと下がる。
「───いいえ、何も」
そう考えていたのを、彼はたった一言で覆す。
甘さも嘲りも、それどころか色もない。
「我々が彼らに対して自発的に干渉を行うつもりは現状を踏まえてもありません」
淡々と彼はそう言い切られたんです。
「んなっ!?そんなのおかしいっ!……です……」
唖然とする私達が意識を立て直す事ができたのは、真っ先にコハルちゃんが大きな声で叫んでくれたからでした。
思わずといった様子で飛び出てしまったその言葉に彼女は赤面して恥ずかしそうにしていますけど、正直私としては助かりました。
聖杯陣営に対して監督役は何もしない。
そんなことを言われるだなんて思ってもいませんでしたから。
「いけませんよ、下江コハルさん。こうして話をする席では感情的になっては己の未熟さを曝け出すばかり。相手からの情報を受け取ったなら一度考えをまとめてから口に出してみましょう」
そして叫ばれた当人である黒服さんは気にした様子もありません。
それどころか、コハルちゃんへ諭すような事を言われておられます。
「……あ、ぅ……ご、ごめんなさい……」
以前のバス停でもそうでしたがどうにもこの人は、
違和感というのもまた違いますけど、あまりにも受ける印象とは違います。
なんというか、まるで先生が言いそうな言葉なんです。
だから、ちょっと虚をつかれてしまいます。
「なぜ?怒ってなどいません、注意でもありません。貴女は所詮子供です。子供らしく失態をしたならば学べば良いのでは?貴女にとって必要なのは私に対する謝罪ではありません」
「……ぅぅ」
こうやって追求するのを見るに別に私達に対して特段の思い入れとかがあるわけではない。
親切でやっているわけでもなさそうです。
むしろなんていうのでしょう。
あまり良い言い方じゃないですけど、彼と私達とには絶対に埋まることのない溝があるんです。
なのにどうしてか、時折先生のような事を仰るんです。
不思議な感じですが、ただ今はそれを深く考える場面じゃありません。
「……あまり、
「そうですよ、黒服さん。コハルちゃんはとっても優しい子なんです!グイグイ来られたらびっくりしちゃいます!」
「コハル、大丈夫?携行用にグミを持ってきたけど食べる?」
「ほらコハル、落ち着いて深呼吸だ。私もスパルタクスも着いているからな」
「だ、大丈夫だから!子供扱いしないでよね!……ありがと、みんな」
コハルちゃんの前に立ちつつ、みんなで涙目になってるコハルちゃんを慰めてると、正面から忍び笑いが聞こえてきました。
「クックックッ……これは失礼。若者への教示というのは大人の特権ですので、つい」
肩をすくめる彼にそうじゃなくてと唇を尖らせたところで、それより早く。
「年長者たらんとするのならば子へ情を抱くが良い、諦観を気取る半端者よ」
低い声が私達の後ろから聞こえてきました。
振り返るとこれまで静かにされていた、
「……半端者、ですか。これはこれは、かの名高い解放者にそう言われては手痛いばかりです。狂化を受けながらも、いいえ。狂気に身を浸らせるからこそ見える物があるのでしょうか?」
睨んでいるわけでも、憤っているわけでもないです。
「言うに能わず。貴様は興行師になれず、さりとて幼子達の盾にもなれず。その立場にありながら圧制を強いる事も叛逆を選ぶ事も出来ず、しないでいる。」
ただ真っ直ぐに、じっと見つめて
「日和見も出来ず、けれど剣を摂らず。ならば貴様は半端者である」
「上手い事を言うな、バーサーカー。お前の言う通り、この男は底抜けの阿呆よ。まあ、情けなくとも 一端の根性だけはあるがな」
首を何度も深々と横に振りつつ溜め息を吐くアサシンさん。
今度は彼女へとスパルタクスさんは視線を送ります。
「おお、古き女神にして今も若々しき戦乙女よ!であるならば何故汝はその男を導かないかッ!この者に叛逆の道を!何故教えぬかッ!」
「阿呆。物を知らん童でもないのに何故私が一々そんな面倒なことをせねばならん。監督役などという厄介ごとを引き受けてやって首を落とされないだけ、温情だろうて」
心底気怠げにしつつ、肘で隣に座る黒服さんの肩をぐりぐり押しているのは仲が良いのか悪いのか。
ですが気になる言葉がありました。
同じように気づいたハナコちゃんが私達を見て頷いてからアサシンさんへ尋ねます。
「厄介ごと、ですか?アサシンさん、少し私も口を挟ませて頂いても?」
その言葉にアサシンさんは一呼吸置いてから。
「ふむ……
本当に不思議そうな顔をしてハナコちゃんに聞き返されました。
1じゃんね☆
めーちゃくちゃ長くなるから一旦ここで切るじゃんね☆
続きは師匠とハナコちゃんのお喋りから、じゃんね☆
次回更新はいつもと時間が違くて4/30の3:21ですじゃんね☆
良かったらまた読んでやって下さいな!……じゃんね☆
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎の同行者を選択して下さい(〜4/30.1:23)
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ハーリングのセイバー
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フィレンツェのアーチャー
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楽劇のランサー
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維新のライダー
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白備えのキャスター
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キラキラのアサシン
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民話のバーサーカー