そういう道を選んじまうんですねぇ。
いやぁ健気、健気。
可愛いですねぇヒフミちゃん。
なぁんにも、知らないまま。
まぁ手前も?観客とはいえ、これでも脚本には一家言ありすし?
すこぉし、かき混ぜったって構いはしませんよね?
コクリコ様?
「とうちゃーく!どう?どう?ここが私達ゲーム開発部の部室だよー!」
「パンパカパーン!アリス達は拠点に戻ってきました!セーブしますか?」
ゲーム開発部の部室として通された部屋。
たくさんのゲーム機やそのソフト、開発用のPCやタブレットが
そんな素敵なお部室を紹介するモモイちゃんの後ろで、
「あはは……ではお願いしますね、アリスちゃん」
「はいっ!アリスはこれまでの冒険の旅路……そしてヒフミ達新しい仲間の事をデータに記録しました!」
アリスちゃんの楽しそうな声を聞きつつも、つい部屋を見渡して百夜堂からミレニアムに着くまでの時間に思いを馳せてしまう。
壁に立てかけてある掃除道具、明らかに詰め込まれたと思われて締め切られてないロッカー達。よく見るとパッケージが上下逆になっているゲームソフトが収められた棚。
換気が足りず少しだけ鼻で感じるこの洗剤臭。
この感じだと二部屋分ですか。
モモイちゃんは全く気づいてないですが、彼女をジト目で睨むミドリちゃんの大変な数時間を思い、あとで何か美味しい物を彼女達に贈らないと決心する*1。
ミドリちゃん、ユズちゃん……ごめんなさい、ありがとうございました。
「さてと、それじゃあ改めて紹介するね!部長のユズとミドリ、それから……」
ユズちゃんとミドリちゃんがその言葉にぺこりと頭を下げてくれて慌ててお辞儀をしつつ、彼女の言葉の続きが気になってしまう。恐らくこの先、彼女達が信頼するキャスターさんと……
「うむ、挨拶が遅れてしまい申し訳ない。我がこのミレニ「ゲーム開発部!!」……ゲーム開発部のキャスターである……」
そう名乗って現れた人は。
「これから宜しく頼む。若き淑女達よ」
大きなロボットでした。
「お、おっきい方ですね」
ぶしつけな言い方になってしまいますが、そうとうしか言いようがありませんでした。
「うん。まるでペロロジラみたいだ……!」
「あはは……と、とにかく改めてこちらこそ、至らない私ですがよろしくお願いしますキャスターさん」
身長は、私より1メートル近く高く*2。
そして真鍮色の彫刻がアクセントになった黒っぽい鉄色の装甲を纏った、分厚く大きな甲冑というロボというか。
キヴォトスにはロボット系の方も、もちろん住んでいますし、その中には大柄な方も当然います。
オートマタまで含めればその大きさもある程度は迫る物もあるでしょうが、ここまで存在感のある方とお会いしたのは初めてでした。
「こちらこそだ、若き乙女、清き決断を成したセイバーのマスターとその仲間達よ。モモイは未だ幼く未熟だが、良き友となるのは間違いない。どうかこの娘達と仲良くしてやってほしい」
「はいっ!もちろんです!」
最初こそ大きな姿に驚きましたが、その声に込められた想いですぐに驚愕はどこかに消えた。
桃屋堂で聞こえてきたとても落ち着いた声の通り、その言葉と赤い視線に山高帽の似合う老紳士な方……という最初のイメージに違わない優しさがありました。
そして、こうやって紹介して頂いたのなら、私達にもすべき事があります。
『(ヒフミ。僕もいいかな?)』
『(もちろんです!よろしくお願いします!)』
キャスターさん同様、霊体化を解いて何もない空間からセイバーさんが現れる。
そういえばセイバーさんはセイバーさんで私達よりずっと高身長です。
それこそ、先生と同じぐらいでしょうか。
「僕も挨拶をさせて欲しい。初めまして、キャスターのマスター、そしてその友人達。僕はセイバー。彼に倣って言うなら。トリニティ、そして補習授業部のセイバー……かな」
自分で言うのはなんとも照れ臭いものだねとはにかみつつ自己紹介をしてくれるセイバーさんの半日振りに見た姿になんとなく懐かしさすら感じてしまう。
そして、補習授業部と名乗ってくれた彼に嬉しさが込み上げる。
お喋りをしながら少しずつ距離を縮めて、色んな場所を歩いて回って。
四人の補習授業部に新たに加わった彼は、気づけばそれが当たり前みたいに馴染み始めてきて。
それが私は、すごく嬉しかった。
とはいえ、モモイちゃん達にとってはそれは違ったようで。
「キャスター!?み、みみみ見た目!?」
モモイちゃんは目を白黒させつつキャスターさんとセイバーさんをそれぞれ指差しながら説明を要求していた。
考えてみれば、私達が初めて会ったサーヴァントはセイバーさんやアサシンさんだったのに対して彼女達が初めて会ったのはキャスターさん。
逆の立場なら同じように思ったかもしれません。
とはいえ。
「モモイ、モモイよ……我は言った筈だ。聖杯戦争は決して『キヴォトスロボット大戦』なる作品ではない、と……サーヴァントの見た目というのは全員が全員、我のような姿をしているわけではないのだ。覚えておくのだ、人の話を聞かないモモイよ」
どうやら流石はキャスターさん、ちゃんと説明済みだったようです。
対するモモイちゃんは目を逸らしていて、明らかに覚えていない様子。
分かりますよモモイちゃん、私も正直この数日間で色々教えられた事が多すぎて正直色々忘れてそうですから!
「……言ったっけ?」
「うむ、言ったぞ。というよりも、お前は昨日も見たではないか」
「いやぁ……あれは戦ってる中でだったし。でも、セイバーっていうぐらいなら赤くて戦闘機に変形するかのなぁって……」
赤くて速くてでも何故かあまり活躍しなさそうなロボットのイメージがふんわりと浮かんできましたが、ミドリちゃん達の会話が始まってその幻影は消えてしまいました。
「おじ様、初日に言ってましたもんね。なんなら今朝も」
「……はい、キャスターは確かに言いました!モモイは寝ぼけてたんですね!」
「アリスちゃん……モモイと喋りつつキャスターさんの背中のバルブを無断で回すのやめようね……」
頭を後ろ手にかきつつ惚けるモモイちゃんの姿を見て思わず吹き出してしまう。
笑いが伝播したのかハナコちゃん達も口を抑えたり、額を抑えたり。
そんな穏やかな雰囲気が流れる中、誤魔化すようにモモイちゃんから告げられた提案は。
「とりあえず、ご飯食べる?」
友達の家でするには最高のイベントに違いない物でした。
「いやぁ!やっぱりインスタントもいいけど折角だしこういう時はミレニアム名物!箱玄武だよね!」
並べられたのはみんなでどれにするか決めた宅配料理。
トリニティではあまり馴染みがないけれど、ミレニアムや山海経ではよく見るらしいデフォルメされた亀が描かれた「Shanhaijing-Cartons」と呼ばれるテイクアウト用の四角い箱。
その中には炒飯や海老チリ、エッグロール*3やオレンジチキン*4やシャンハイジェンポーク*5、それからワンタンスープと人数分のサラダボウルまで。
種類を問わず、とにかく
「そもそもミレニアムなのになんで山海経なの?」
「……ぁの……ぇぇっと。み、ミレニアム自治区が出来てすぐの頃、研究者ばかりの街で。だからその、全然料理とか無頓着で……ぁの……それを見かねた山海経の玄武商会*6の人が宅配とか炊き出しをしてくれたらしくて……ぃまでもその名残りでミレニアムにはたくさん、あるんです、玄武商会系列のデリバリーフード店……」
あまり知らなかったミレニアム自治区の始まりの話。
以前どこかで習った話ならミレニアムサイエンススクールの現生徒会に当たる『セミナー』の前身団体は元々研究者集団だったとか。
研究者である彼女達には当然ある程度の投資があって、トリニティもミレニアム黎明期の頃はある程度補助していたと聞きましたけど、山海経はそういった形で投資されていたんですね。
「へぇ……詳しいんだ、ですね。花岡部長、さん」
「!えへへ……お、同じ学年なんだし、ぃ、いいよ……その、ゆ、ユズで」
「じゃ、じゃあ!私の事もコハルでいいいから!……ゆ、ユズ!」
ユズちゃんとコハルちゃんが少しずつ距離を縮めていく様子をハナコちゃんが何故か腕組みと満面の笑みで見守っています*7。
私は気にしない事にして、私にとってはあまり見慣れない料理に目を輝かせているアズサちゃんの方を向く事にする。
「ヒフミ、ザリガニだ!?ザリガニがあるぞ!!」
「わっほんとですね、アズサちゃん」
「懐かしいな、よくサオリ達と泥出ししてから食べたんだ」
こう何日か生かしておいて、たまに共食いしたりするから気をつけなきゃいけないんだ!生食してヒヨリが当たった時*8はそれは大変で!と身振り手振りで語るアズサちゃんの思い出話に耳を傾けているとミドリちゃんから鋭い質問が飛んでくる。
「へぇ、トリニティでもザリガニ食べたりとかあるんですね。最近、ミレニアムでも取り扱い増えてきたんですよ」
……まずいです。
多分なんとなしに聞いた質問なのは間違いないでしょう。
ただその質問は、いくらミレニアムとはいえいまだエデン条約時の記憶が新しい今はまだまずいです。
何せ、ここには純真無垢なアズサちゃんがいますから!!
「いやミドリ、私はアリ「ニティでたまぁに食べたりするんですよーあはは……」むぅぅぅ……ちゅぅ……」
「あ、アリニティ?いや、別にいいんですけど口塞がれているアズサさんの顔赤くありません?」
何故か聞こえるリップ音は無視します。
こういう時のアドバイスは今まで何度か頂いてきました。
───いいかい、ヒフミ。御婦人との関係に悩んだ時は笑って流してしまう。彼女達の心は空に浮かぶ雲のような物さ……決して、決してだよ。勘違いさせるような、関係性を定義してしまう言葉には気をつけようね。あ、僕の話じゃないよ?うちの穀潰しとかはね、しょっちゅう老若男女問わず引っ掛けては王城まで苦情が来たりさ、親友は本人にその気はないのに酒場で人妻相手に歯の浮く口説き文句を垂れ流して翌日刃傷沙汰になったり*9、僕の甥っ子*10なんか若い巨乳は最高!とか叫んで口説いた挙句に奥方にしばかれるのが基本でね。とにかく関係性を確定させかねない血迷った言動だけは気をつけなきゃいけないよ。下手に勘違いが発生してしまう言葉や態度はナイフという名の愛憎となって返ってくるんだ。火遊びには気をつけようね。あ、僕は関係ないよ、本当さ。特に他意はないし主に誓えないけど、僕は女性関係については清廉潔白だよ。こう見えて僕は一途なんだ。
───“ヒフミ。今から大切な話をするよ。これだけは大人として伝えておかなきゃいけないんだ。いいかい、責任を取れる年齢までは決して恋愛関係で無責任な発言をしてはいけない。もちろん君たちは沢山失敗していい。何度間違えても立ち上がって大丈夫。だけどねヒフミ。人生の墓場まっしぐらな勘違いさせる言葉だけはしてはいけない。たとえ親しい仲であっても相手との距離感というか関係値は自分が思った半歩前ぐらいで踏み込むのをやめておくのが、懸命なんだ。勿論時にはその半歩分を踏み込む勇気がいる時もある。そういう時はヒフミが思うように飛び込んでごらん、きっと良い結果に繋がるよ。けれどね、いいかい?こと色恋沙汰の時は慎重にね。こっちが迂闊にブレーキを踏まずにまだ行ける、そう自分の思いだけで判断してしまうというのはとても危険……センセードコッスカー、ワタシハウサギデハナイノデ、ギヤフベロハギャベバブジョハ、ソウケッサンノジカンヨ、イッショニサボリマセンカ?、センセイハダマサレタンダヨ……ごめんねヒフミ。ちょっと席を離すよ……アロナ!プラナ!!タスケテ‼︎コノママジャクワレル‼︎シツドケイ‼︎シツドケイコワレタ‼︎エ、ナニ?ゼンブアゲマス?チョットナニイッテルカワカラナイ”
ありがとうございます、先生、セイバーさん。
今でもどういう話だったのかなんだかよく分かりませんれど、お二人の言葉でこの窮地をスルーするという選択を私は取れたんだと思うんです。
「あはは……とりあえず、食べましょうか?」
「はいっ!アリスもお腹ぺこぺこです!このままではスタミナ不足で動けなくなってしまいます!」
「ふふっアリスちゃんもこう言ってますし、お食事しながら作戦会議しましょう?」
「「「「「「「「おー!!!」」」」」」」」
「それじゃあモモイちゃん達もアサシンさんと?」
初めてのお食事会は自己紹介から始まって、同じ学年の子も多いということで少し人見知りなコハルちゃんもすっかり意気投合してユズちゃんやモモイちゃんの隣に座るアリスちゃんとのお話に夢中に。セイバーさんとキャスターさんはなんとお知り合い*11の方*12があったようで懐かしそうにお二人で話しておられます。時々頭を抱えているのは何故でしょう*13。
そんなお話の中で出たのが昨晩の事。
昨日の夜、モモイちゃん達はあのアサシンさんに襲われたのだという。
「昨日ねー、少しセミナーの予算を
「ウタハ先輩達*14にお願いして用意してもらった製造拠点ごと潰されちゃったもんね……」
私とユズちゃんはその時いなかったんですけどというミドリちゃんの表情は曇っています。それに続き、キャスターさんも蒸気を吐き出しながら*15、重い口取りで現状を話して下さいました。
「うむ、由々しき問題である。今では、あぁアリスよ口の周りを拭いてから次の物を食べなさい。日に生産できる数も、これユズもう少し野菜を食べるように……違うポテトフライは野菜だがそうではないのだ葉物を食べなくてはいかん、最大稼働しても7機が限界であろう。ミドリよ、苦手な野菜をこっそり我の器に装うのはよすのだグリーンピースは栄養豊富だお前が仮にだが意中の男を射とめんと願うならば体の内から栄養を蓄えん為にしっかり食べよ。同盟を組んだ以上恥を偲んで教えるが復旧の目処は、モモイよあれもこれもと皿に取るでない食べられる分だけにせよ淑女ともあろう者がはしたない、未だ立っておらん」
「やはり拠点の破壊に使ったのは宝具かな?キャスター。あぁアズサ、僕の分も食べていいからザリガニを殻ごと食べてはいけないよ、口を怪我するからね。彼女の宝具やスキルについてはこちらでも少しではあるけれど情報を得ていてね。一対多は、ハナコ君もよそってばかりいないで気にせず食べていいんだからね僕が給仕をするから、流石ケルトの女王といったところだ。想定される魔力消費で恐ろしい成果を、食べにくければ手掴みでいいんだよコハル気心の知れた友との食事なんだ恥じらいは美徳だけれど食事は楽しんでだよ、あげられる宝具と魔術、なにより高い白兵戦の技量には僕も頭を痛めるばかりだよ」
「うむ、何ともはや。恐ろしい女傑であった」
いえ、訂正ですね。
現状についてはお話ししてくださいましたが、話が全く入って来ません。
とりあえずわかったのは昨日の夜、モモイちゃん達はアサシンさんと戦って拠点にあった工場を破壊されて残っている戦力はモモイちゃん達とヘルタースケルターという名前のロボットが8機という事ぐらいです。
「私達も知っている他のサーヴァントについても共有しておいたほうがいいな。確か一昨日、ランサーとは戦闘しているんだったか……」
話が一応一区切りついたということだからか、アズサちゃんは鶏肉を齧りつつ話を振ってくれました。口の端っこにソースがついてるのに気づかず食べてる姿が本当に美味しいと感じられてるのが私にも伝わってきて微笑ましいです*16。
「なんだっけ……?れ、レオデグランス?」*17
「レオニダス三世ですよ、コハルちゃん♡」
「わ、わかってたから!それぐらい!……ありがと、ハナコ」
「うふふ♡はぁい♡」
ランサーさんの真名をお伝えしたところで、キャスターさんから呻くような感嘆の声が上がりました。
それと同時にさっきまで以上に蒸気の立ち昇り具合も激しいです。
「なんと、ランサーはかの高名なレオニダス王であったか……」
「キャスター、キャスター。レオニダス王は有名なのですか?アリスの情報アーカイブにその名前は
「……そうか。うむ。ならばよし。後日共に図書館で彼についての本を探すとしよう。いやしかし、まさか彼ほどの男が呼ばれようとは」
唸るキャスターさんに、何故か咳き込んでいたセイバーさんも胸を叩いて呼吸を落ち着けてからあの夜の戦いを思い返すようにして言われました。
「ああ、驚くべき技量の持ち主だった。こと守りに関しては僕の戦友にも勝るとも劣らない。何ともやら、随分と気持ちの良い男だったよ」
「気持ちいい!?オスプレイ!?ところてん!?エッチなのは駄目!死刑!!」
「こ、コハルちゃんどうしたの……?」
「うふふ、いつもの事ですからユズちゃんも慣れてくださいね♡」
「……僕の言葉選びにミスがあったと認めるよ」
「苦労しているな、セイバー」
「それも含めて悪くない物さ……君もそうなんだろ?キャスター」
「うむ……してだ」
そう言ってキャスターさんは困ったような顔、と思われる雰囲気をだして言葉を続けられた。
「ランサーの情報に対して出せる情報は、我らにはもうないな」
「そうですねおじ様、私達が知っているのは後はクロノスの中継に映ってたセイバーさんについてと……」
「アビドスで起きたことについてか」
その言葉の先にあったのは私達もまだ知らない情報でした。
「パンパカパーン!やせいのアリスとモモイが現れた!先生!ちょっとお時間頂きます!」
“やぁ、二人とも。いらっしゃい”
「おっ邪魔しまーすって……うわぁ。先生またカップ麺食べてるし、もしかしてまた徹夜したの?」
“はははっ、手厳しいねモモイ”
「またうちの冷酷な算術妖怪に叱られるよぉ?……あ、そういや私ちょっとトーク入ってたんだった!ちょっと電話してくるね!」
アリスはヒフミ達に会う前にシャーレに来ていました。
どこかの自治区へ移動する時は中心地にあるシャーレに訪れる事がスムーズに可能なのもあって、こうして他の自治区に遊びに行くついでに用はなくてもちょっとだけ先生の顔を見に寄るというのはみなさんよくしておられます。
特にミドリは『単純接触効果っていうのがあってね……』とかなんとか言ってましモガッ!?
“アリス、今日はどうしたの?”
「……はいっ!アリス達は今日、ヒフミとそのお友達に会いに百夜堂へ行きます!特殊フラグが確認されました!」
それはともかくです。
先生から質問された時、アリスは少し、言葉に詰まりました。
アリスはその時の自分の思考を正確に表現できません。
ただ仮にその気持ちを該当する単語を当てはめるなら、不安、だったのだと思います。
そして先生は、それに気づいてくれて敢えて何も言わずにいてくれました。
“……そう、気をつけて行っておいで。それからよく
「……はいっ!アリス、ちゃんと二人の話を聞きます!」
“良い子だね、アリス。それからモモイにもちゃんと伝えておいて”
モモイと、それからヒフミ。二人の話を聞けば大丈夫、友達を信じて。
そう話してくれた先生はそれから、アリスにこんな事をお話ししてくれました。
“2日前にアビドス自治区で大きなクレーターが発生するほどの戦闘が起きてるんだ。同じ日にアコからも連絡があってね。ゲヘナでも大きな爆発事件が起きたらしい”
“この前の列車事故の件もある。幸い、どちらの件でも命に別状のあるような怪我はなかったけれど”
“くれぐれも夜に出歩いたり、人通りのない道を行ってはいけないよ”
“約束してくれるかな?アリス”
その時の先生の表情は。
すごく、真剣だったとアリスは記録しています。
「ゲヘナ、それにアビドスですか……」
「どちらも先生がわざわざアリスちゃんに伝えたほどですから……重要と考えていいでしょうね」
「大規模な爆発がどういった手段や経緯で起きてしまったかまでは判断できないけれど、もしサーヴァントだとしたら相当な
セイバーさんからの疑問にキャスターを腕を組んで悩みながらモモイちゃんへと尋ねました。
「我の情報についてか……モモイ、どの程度明かす?」
「うぉぉ……ここで私に振るんだね。んー正直さ、全部言っちゃうっていうのは?」
あっけらかんとそう言う彼女に、ミドリちゃんは渋面を作られました。
「ダメでしょお姉ちゃん。こっちが全部明かすっていうのは相手に『お前の情報も全部出せ』って言ってるのと一緒だよ」
「それもそっか……なら、スキルは1個、ステータスは1個、それぞれお互いに開示するっていうのは?残りについてとか宝具とかは……それは実戦でのお楽しみ!とかどう!?」
「あはは……私は大丈夫ですし、セイバーさんは?」
「そうだね、お互い全て明かすだけが信頼の築き方じゃない。思い遣れる方法をミドリが提案してくれたのだし、その案に任せてみようか」
「ならお互い文句なし!おんなじ数の霊基情報を交換だー!」
宴も酣。ふと話題に上がったのは私達が調べてきた中で見え隠れしていたとある話について。
「噂……?」
「確か、セミナーから夜間に出歩かないでなるべく早く寮に戻るようにって……変質者が『他自治区』で見られてるから……」
「やはりミレニアムではそういう話は?」
「あまり聞きませんね、ハナコさん達のところではそういう噂というかサーヴァントに繋がりそうな情報が?」
お皿や食べ終わった容器を少しずつ集め出していたミドリちゃんが小首を傾げたのに、ハナコちゃんはにんまりという言葉が似合う笑みを浮かべると、うっとりといった感じで話出しました。
「えぇ♡なんでも……」
「夜な夜な全身タイツのマッチョな方がロボット軍団を指揮しながら徘徊してるとか♡見たら追いかけられて、どれだけ逃げても四つん這いになって襲い掛かられて……捕まったら最後、脚から全身舐めつくされて干からびて死んでしまう……。そんな恐ろしい戦車乗りの大人だとか♡」
頭を抱えそうになります。
誰がどこからどう聞いたって変人の一言でまとめるしかない怪人の噂でした。
「……何度聞いてもヤバすぎるでしょ、そいつ」
「ぇと、ロボ軍団はキャスターさんの事で……戦車は中継されてたバスジャックの話に尾鰭がついたセイバーさんの事か、な?……ぁ、あれ?私変なこと言いましたか?」
「良いんだ、ユズ。あれは悲しい事件だった……互いがすれ違っただけなんだよ……」
「えー!?もしかしてセイバーさんバスだけじゃなくて戦車も「お姉ちゃん、かわいそうだからやめてあげよう……」……そうだね」
背中が煤けるセイバーさんにかける言葉が見つからず、私は乾いた笑いを出すしかない。
でも仕方なかったんです。
ちょっとお借りしただけなんですから。
「でもそういう噂なら、専門家に聞いてみてもいいかもね!」
「……なるほど、ミレニアムには情報処理のエキスパートがいらっしゃると伺った事がありますが」
「そう!その名も『ヴェリタス』!!こう見えて、実はそのメンバーとのパイプもあってね!連絡したら他の自治区……は分かんないけどD.U.とかミレニアムの街頭カメラからちょちょい!って!」
「確かにそれを確認出来ればある程度噂の真相を見えてくるかもしれない、ん?どうしたヒフミ」
「あはは……ちょっとシュロちゃんが言ってたのが気になって」
───嗚呼でも一つだけ。
───夜道を歩く時は『怪物』に、ご注意を。
あの言葉。
敢えて『怪物』と言ったのには意味があるような気がしてならない。
他自治区の私たちのことをかなり調べられる情報網を持つ彼女なら『怪人』の噂は知っている筈。
ならどうして……。
「あまり、気にしすぎなくても大丈夫かもしれませよ、ヒフミちゃん」
「彼女とのやり取りで得た情報の精度は高いでしょう。恐らく『嘘』はつかない人柄なんでしょうね。けれど」
「敢えてぼかす、そうして真実から遠ざけている。或いは抽象的な言葉の裏には、今知ったとしても価値がまだない物なのかもしれません」
「今はとにかく、それ以外の事を考えましょう」
心配だと。
ハナコちゃんの目と言葉がそう語っている。
直接対峙した時にあった刃物のような言葉でまた私が傷つくのを恐れているのだと、切実に伝わってきて。
「そう、ですね!今はそれは考えず、とにかく分かってる事を共有しないと!」
今はハナコちゃんの言葉通り、『怪物』については考えないようにしました。
本作の内容は
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①Part6スレまで読んでる
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②あにまんの過去ログまで読んでる
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③ハーメルン版のみ読んでる