阿慈谷ヒフミは聖杯戦争に参加するようです   作:1じゃんね☆

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Prunus persica。
古来より不老長寿や魔除けとして珍重された植物。
花言葉はチャーミング、気立ての良さ、そして。
───私は貴女の虜。


someday, sometime

 

「というわけでハレ先輩!よろしく!」

 

 ひとまず食事を終えた私達が訪ねたのは、最先端科学を謳うミレニアム内でもきっての情報処理のエキスパート集団だというヴェリタス*1の部室でした。

光や熱に弱い精密な電子機器を扱うからか薄暗く、青白いモニターの輝きだけが室内を怪しげに照らす部室*2。そこで私達を出迎えてくれたのは一人。

 

「別にいいけど……その前にどの自治区の街頭カメラ見たいかとかの指示出して」

 

 小鈎ハレと名乗った月白の髪色をした彼女はモニターから目を離さず気だるげに告げました。

 

「まぁ言われてみれば確かにだね。ヒフミさんはどこの自治区が気になるの?」

 

「あれあれー?ミドリ、変だなー?そういう時って私にも聞くんじゃないかな?んー?お姉ちゃん、さっびしーぞー!」

 

「あはは……個人的にはやっぱりゲヘナ自治区と……それからアビドス自治区ですかね」

 

 ゲヘナ自治区で起きた爆発事件。

それからアビドス自治区で起きたクレーター事件。先生はどちらも大きな怪我人は出なかったと言っていたという話ですが、やはり気になりはじす。

その二つの事件が起きた自治区には私達の知り合いもいますし、何よりサーヴァントがそのどちらかを拠点としているなら……。

 

「私はトリニティも気になる。ナギサが話してくれた例の幽霊騒動、あの情報についてはまだ全く分かってない」

 

「ハスミ先輩に聞いてみるのも手だけど……幽霊って言ってるぐらいだから先輩が現場に着いた時はもういなかったのかも」

 

「そ、その……こ、こここ!コハルちゃん!……の言う通り……かも……幽霊って言うぐらいだから全然、その……手掛かりとかも……少ないかも……調べても損は、ないんじゃないかな?……と、その思います……はぃぃ」

 

ナギサ様も言っていた幽霊騒動も解決していません。

こちらは2日前の夜に起きたとはっきりしているし、情報を得るのは容易かもしれません。

 

「あと私は……昨日のミレニアムからD.U.にかけての情報が気になります。モモイ達が戦った後、行方が分からなくなったアサ「アサコちゃんですね?」……ぁりがとございます、ハナコさん……!そのアサコ、さんの足取りが辿れるかもしれませんから……」

 

 危うくアサシンという名前を出しそうになったところでハナコちゃんがフォローを入れてくださり、寸手のところで事情を知らないハレさんの前で聖杯戦争のことを話さずに済みました。

 

 とはいえ彼女について、なにか手掛かりとなる情報を掴みたいという気持ちはそれこそ藁にもすがる思いです。

ユズちゃんの言う昨日の戦いの後、行方がキャスターさん達でも追いきれなかったアサシンさんがその後どういう行動をしたのか。

せめて方角だけでも分かれば、もしかすると彼女のマスターに近づけるかもしれません。

 

「えっと……よく分かんないけど、どこを調べてほしいか決まった?今、()()()()()()()()()()()もあるから明日の朝までに調べられる自治区は1つぐらいだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では……そうですね。アビドス自治区の監視カメラの映像を、今夜の分から合わせて3日分お願いできますか……?」

 

 どこを調べるべきか、改めて少し話し合ってから出した結論は今日から遡って3日分のアビドスの記録を調べてもらう事。

 

 先生の言うクレーター事件。

確かに私達でも大規模な爆弾やそれこそ大型の戦車あたりをいくつもも引っ張ってくればクレーターの一つや二つ作れない事はないでしょう。

けれどそれは先生だって知っている話です。

だというのに、シャーレの先生が()()だと認識し対応している。

まだ詳細こそ分かりませんが、恐らく普段とは明確に違う()()()が起きた、そういうことなのではないかと思うんです。

なにより、アビドス自治区には大切なお友達*3がいらっしゃいます。

できれば調べておきたいんです。

 

 ですから、ハレさんに三日分の映像を、そう伝えると彼女の端正な顔は少しだけ引き攣ってしまいました。

 

「んー、結構多いね……別にいいけど。言ってたみたく、不審者情報調べればいいんだよね?」

 

細い喉を微かに鳴らしながら、エナジードリンクの缶を飲みつつ問う彼女へモモイちゃんから返事をしてもらう。

 

「そうそう!とにかく怪しそうな事件とか人とか……あとは出来たらアビドスのクレーター事件についても調べて欲しいかなぁって!」

 

「クレーター?てああ、副部長がなんかそんな事言ってたっけ」

 

タイピングの音を鳴らしながら一人ごちつつ、彼女は軽く手を振る。

 

「とりあえず情報、集めとくから。ヒフミさん、だっけ?明日の朝また来て」

 

 ひらひらと軽く手を振ったかと思えばそのまま正面のモニターに齧り付きになるハレさんへお礼を言って部室から退室しようとしたその時。

ふと思い出したように、ミドリちゃんから質問が投げられた。

 

「そういえば、ハレ先輩。今日、マキとかコタマ先輩とかは?チヒロ先輩……はいっつも忙しそうだからいないのもなんとなく分かるけど……」

 

滑らかだったタイピング音が止まり、空調と電子機器が稼働している音だけが僅かに響く時間が流れた。

 

「んー、さっき言った別件にかかりっきり。……まぁ別に隠すことでもないし、言ってもいいか」

 

伸びをしながら、くるりと椅子を回し、彼女はなんて事のないように。

それを告げたのだった。

 

 

 

「うちの部長。今、行方不明なんだよね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───まぁ言ってもいつもの事だけど。

 

───いなくなった日?あー、3日前。列車事故について調べてくるって言ってからだっけ?

 

───一応バイタルデータも定時連絡も来てるからミレニアム内にいるのは分かってるんだけどさ。

 

───そんなわけでセミナーからの依頼で消えた部長を探しつつ、部長からの連絡で送られてくる指示を熟すので人手持ってかれてるんだよね。

 

───私?今休憩がてら通常業務中。他にもやんなきゃいけない案件は山ほどあるから。

 

 ゲーム開発部の部室に戻って、食事の後片付けをしながら、さっきまでの話を思い返す。

3日前の列車事故といえば、いくらキヴォトス内でたくさんの事件や事故が起きているとはいえ、恐らくは私がセイバーさん召喚したあの時の事に違いなくて。

 

 だからこそ、考えてしまう。

明星ヒマリさん。ヴェリタスの部長だという彼女の失踪には聖杯戦争が関わっているのではないかと。

そしてそれはもしかすると……。

 

「ひーふーみ!」

 

「わぷっ!?……も、モモイちゃん?」

 

 優しく両手で頬を挟まれて、上を向く。

いつの間にか考えに耽りすぎて視線が下に落ち込んでいた事に、気がつく。

 

 顔を上げれば笑顔のモモイちゃんが並んで畳んである服を指差していた。

 

「考え事しすぎー!ほら、ミドリ達がパジャマ用意してくれたし選んで選んで!」

 

「あ、はは……すみません、モモイちゃん……」

 

「いいのいいの!決めたら次は片付け後回し……っていうか残りはセイバーさんに頼んでシャワー行こ?」

 

 セイバーさんの快い返事を待たずに、モモイちゃんは私から食器や食べ終わって中身の入っていない箱を取り上げてしまう。

反応が遅れて、躓くように。

 私はモモイちゃんに手を引かれて立ち上がる。

 

「びっくり、したよね」

 

どれにするなんて聞かれながら、15着も用意してくれたパジャマの中からを今日の分を選んでいた私へ唐突にモモイちゃんが切り出した。

 

「え、あ……はい」

 

 目線は合わない。

変わらず、これなんてどうかなと言わんばかりに服を見せてくれながら。

彼女は訥々と自然体で話し始めた。

 

「もしかすると、ヒマリ先輩もマスターなんじゃ……なんて思っちゃった」

 

「……っ。それは……はい」

 

そうだ、この状況での行方不明。

ましてやヴェリタスという情報戦の専門家とも連携を取っていて。

もし、そうだったのなら。

私は、私は。

今度()ちゃんと頑張れるのでしょうか。

 私は。

 

 

 

 

 

 

───みんなを守れるのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 頭を過ぎるのはずっとあの夜のこと。

初めてセイバーさんと出会った、彼を呼び出すきっかけ。

ナギサ様曰く『脱線事故』として報道されたという、数日前、アサシンさんに襲われたあの夜の事件。

あの時はセイバーさんが召喚できた(来てくれた)から助かったけど、彼が来なかったら強がって見せても私一人でアサシンさんに勝てる見込みなんてどこにもありませんでした。

あのままいけばきっと何もできないまま私は殺されていた。

 

 いいえ、私だけじゃありません。

フラッシュバックし続けて、脳裏に焼きついた記憶。

いつも綺麗にしていて、『大事な人達に飾り付けてもらったから』とはにかんで教えてくれたお花の羽飾りを施された眩しいぐらい真っ白で大きくて温かな翼。

それを折られ、真っ赤に染めたアズサちゃんの姿がずっと目の裏に刻み込まれている。

 

 聖杯戦争というのは()()()()()なのだと、銃を撃っても重篤な怪我なんてしない世界で生きてきた私に叩きつけられた出来事。

武器を持った戦いとは、そういう(結果)しかないのだと言外に嘲笑われ突きつけられて、そうして私もマスターになった(その舞台に立つ)、その立場になって時間が経てば経つほど竦むような不安に襲われます。

 

もし、アズサちゃんがまた怪我をしたらどうしよう。

もし、次は別のお友達が怪我をしたらどうしよう。

もし、私の指示で誰か別の方を怪我させてしまったらどうしよう。

もし、私のお友達が敵のマスターだったらどうしよう。

もし、もしも。

 

 今度こそアズサちゃんが死んでしまったら、どうしよう、と。

 

 私はちゃんと、守れるのか。

ちゃんと戦う事ができるのか。

大して強くも賢くもない、ただの平凡な自分に、最後まで走り抜ける事が出来るのか。

不安で身体が凍る気分になります。

そしてそんな風に、気づけばいつも足が止まりそうになる自分にも情けなくなる。

 

 私は本当に最後まで、頑張れるのでしょうか───。

 

 

 

「ヒフミはさ」

 

 

 

 ふいに、モモイちゃんから声がかかりました。

パジャマ選ぶ手が、思わず止まります。

お互い服を見ていた筈の目と目がいつの間にか合っていて、私はつい彼女の視線から外れるように下を向いてしまった。

 だって彼女の目は、あまりにも真っ直ぐだったから。

 

「難しく考えすぎなんだよ、きっと。……私も突然マスターになってすごく不安。誰が味方だろうとか、ヒフミみたいにこれから仲間になってくれるマスターいるのかなぁとか。私なんかで、本当に戦い抜けるのかなとか」

 

同じ事、同じ想いがモモイちゃんの口からするすると語られていく。

 

「ヒフミと一緒で不安なんだ。初めて尽くしで分かんないことだらけで、それにもしかしたら私この戦いで……って昨日初めてサーヴァントと戦ってからすごく感じたんだ」

 

 あの日、アサシンさんと戦ったあの夜から。

ずっと私は───。

 

「私はさ、アリスみたいに力も強くない。ミドリみたいに賢くない。ユズみたいに誰かの居場所を作れない……そしてヒフミみたい責任感も強くないから」

 

その言葉に、反発染みた。

けれど愚痴のような、弱音のような。

そんな言葉が漏れてしまう。

 

「責任感だなんて……私には。私はそんなすごい物ないですよ。普通の……本当に普通の女子高生なんですから」

 

 そうだ、私は巻き込まれて、ただ今日まで一生懸命やれる事をやってきただけ。

よくよく考えなくたってアズサちゃんが傷ついたのも私を庇ってくれたからで。

結局どこまでいっても私は弱くて、情けない。

自分が悲しい哀しいと心の中で喚いてることだって、全部自分のせいなのだから。

 

 こんな私のどこに責任感があるというのでしょう。

こんな私のどこが強いと言えるでしょう。

 

「ううん。だってヒフミは今日の話の中で、ずっと一番考えてくれてた。どうしたらいいかって、ずっと難しい顔をしながら考え続けてくれてた。百夜堂から、うちの部室に来てからもずっと」

 

 だってそれは、私にできる事だから。

 

ハナコちゃんみたいに頭が良くて、みんなを支えて笑顔にできる力もない。

アズサちゃんみたいにアサシンさん相手に一人で揺れる電車の屋根の上で戦い続ける力も知識もない。

コハルちゃんみたいにどんな時でも強い自分でいようとできる克己心も、苦しんでる誰かを守ろうとする正義感もない。

私には、私なんて───。

 

でも。

だけど。

それでも。

 

なんにもできない私でも考えて選ぶ事ぐらいはできたから。

だから、ちっぽけなそれぐらいだけは、この数日頑張ってみた。

でも出来たのはそれぐらい、それしか出来ていないんです。

 

 なのに、モモイちゃんは。

そんな風にいじいじと情けなくする私を微笑ってくれました。

 

()()()()()()()。だから、ミドリもヴェリタスに依頼する時、他の誰でもなくヒフミを真っ先に頼ったんじゃないかな?あの子そういうの敏感というかよく見てるし」

 

顔は似てるけど、あの子私なんかよりずっとすごい繊細なんだと笑いかけてくれる。

 

「今のヒフミはさ、なんとなく先生に似てるよ。だけど、似てるけど()()()()。なんていうか歯車というかカセットが絶妙に対応してない……みたいな?ほら、先生はさ、責任を負うっていうやつを正面から受け止めてる。どんな失敗も、誰かの間違いも、全部背負って歩いていくって()()()()。だけどヒフミはちょっと違って……うーん、なんて言ったらいいのかな?」

 

いやそれよりダウンロードしたゲームが微妙に古くて今のOSだと対応してない感じみたいな……なんてTVゲームに例えつつなんとか私に説明しようとしてくれている。

眉根を寄せて、目を瞑って。

一生懸命に、必死に考えてくれるモモイちゃんを、気がつけば手を止めて、逸らしてしまった顔を向け直して見ている私がいた。

 

「まぁ……いっか!」

 

パチリと彼女と目が合って。

今度は何故か逸せなかった。

 

「ねぇヒフミ。今のヒフミは先生に似てる。責任を背負って、みんなを守ってくれて支えてくれる。私達の大好きなあの人に。でも、私たちはさ、先生と違ってまだ大人じゃないんだ」

 

 似ている、そう言われて思い返すのはアビドスで、補習授業部で、シャーレで。

これまで一緒に過ごしてきて、その背を通して見てきた彼の姿。

そんな頭に浮かんだ姿に合わせて、モモイちゃんが語る彼の言葉が、耳元で実際にそう言われている気がしてきた。

 

「いつも言ってるよ、先生。“何度間違えてもいいんだよ。その度に君達はやり直せるんだから”って」

 

 間違えていい。

失敗していい。

大丈夫、私がいるから。

いつだって先生はそう言ってくれて。

だから私達は青春の日々を謳歌して。

だから、私はそんな彼が特別で。

そしてきっといつの間にか。

 

そんな人に似ていると言われて嬉しい。

だけれどそれじゃあ足りないんです。

憧れたあの人のように、どんな失敗もリカバーして必ずハッピーエンドに繋げてくれるあの人みたいに。

 

だって、そうじゃないと。

だって、そうしないと。

 

「ヒフミの不安を私一人じゃ取り除けないけど、ここにはゲーム開発部も補習授業部のみんなもいる。ハレ先輩だって力になってくれる」

 

だって。

だって……っ。

だって……っ!

 

だって、私が頑張らなきゃいけないんです。

私のせいでアズサちゃんが傷ついたんです。

私が弱いせいで、ハナコちゃんもコハルちゃんも巻き込むことを選んじゃって。

今も本当は、遠くで誰かが傷ついてるかもしれないって不安で。

アビドスの皆さんに怪我がないか怖くて。

正義実現委員会のみなさんにもずっと迷惑かけていて。

アルさん達やイズミさんは爆発に巻き込まれたりしてないか不安で。

ナギサ様から幽霊騒動を聞いた時もほんとはすごくすごくこわくて、まもれなくて、くやしくて、つらくて。

 

今度はナギサ様が、ハナコちゃんが、コハルちゃんが。

先生が。

 

またアズサちゃん傷つくんじゃないかって怖くて、ずっとずっと、だから。

わたしが、もっとがんばらないと。

まただれかがきずつく前に。

だから私が───

 

「不安でいっぱいで色んな事があって、どれが正しいか分からなくなるけど……でもね、聞いてヒフミ」

 

温かい手が、いつの間にか流してしまっていた涙と弱音をそっとぬぐってくれていた。

 

「ここにはみんながいるから」

 

 そっと、暖かい誰かに包まれる。

私がいるよと言葉もなく、教えてくれる。

だって。だって。だって───。

 

「だって……私マスターになっちゃったから。……私にはセイバーさんだっていてくれる、だから私は安全だけど他の子はそうじゃない、からぁ」

 

「うん、うん」

 

弱音がぽろぽろと漏れていく。

ずっと我慢していた本音が、出てきてしまう。

 

「他の誰かがアズサちゃんみたいに傷つくかもしれないから!私の大好きなみんなも……他の誰かの大切な人もぉ!だ、だから!私が頑張らないといけなくて……!!」

 

「ありがとう、ヒフミ。みんなの事、考えてくれて」

 

 怖かった。

ずっと誰かを疑い続けて、戦わなきゃ、勝ち残らなきゃ、守らなきゃって。

楽しかったのは嘘じゃない。

セイバーさんが来てくれて、5人での補習授業部は毎日新鮮で。

でも、苦しかった。

疑うのも、もしかしたら今この瞬間に誰かがと思うのを。

胸が焼けるような焦燥感に駆られて何をするわけでもなく走りそうになるのを。

誰かを、みんなを守らなきゃって思って。

 

「大丈夫、大丈夫だよ。ここには、私もみんなもいるから。もう大丈夫なんだよ、ヒフミ」

 

そういうモモイちゃんの言葉でかちりと頭の中で何かが嵌る。

そうだ。

そうだった。

守らなきゃいけないって思ってるのに。

だったらどうして私は、補習授業部のみんなを巻き込んで……?

 

 

 

───私は一人で考えて正解に辿り着けるほど強くもありません、賢くもありません。

 

 

 

「ぁ……」

 

 

 

───でもそんな私でも困った時、みんなで一緒に考えて沢山の難しい問題を乗り越えて来ました。

 

 

 

それはあの日の夜。

セイバーさんに、伝えた言葉。

君はどうしたい、そう尋ねられて自然と出た答え。

そうだ、私はずっと

 

 

 

 

 

 

 

───私一人では出来なくてもきっと皆一緒なら必ず最高のハッピーエンドに辿り着けるから。

 

 

 

 

 

 

 

「みんなと、いっしょ、なら……?」

 

「そうだよ、ヒフミ。ここにはみんないる。マスターだってほら2人になった!……だからもう考えすぎなくたっていい。2人で、ううん」

 

 いつの間にか、今日まで走ってきて見失っていた。

どうしてみんなで一緒に聖杯戦争に参加したのか。

殺し合いなんて嫌だから。

認めたくなんかないから。

もう誰かに傷ついてほしくない、だから私一人ではなく『いつものように』みんなで大好きなハッピーエンドを目指すんだって。

 

「みんなで一緒に、『ハッピーエンド』を目指せばいいんだよ」

 

そう、あの時決めたのを、思い出した。

 

「一人じゃ出来なくても、みんなでなら出来るから。だから一人で抱えないで、頑張りすぎないでいいんだ。私達にはこんなにたくさん、頼れる仲間がいるんだからさ」

 

そう言って笑うモモイちゃんに声が、出なくて。

喘ぐように呼吸が荒れてしまって、でも涙は止まらなくて。

気づけば彼女の膝の上で私は、眠っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒフミ、寝た?」

 

「みたいですね……やはり無理をさせてしまっていましたか……」

 

「たった一人のマスターというのは重い重責だからね……僕もどうするべきか悩んでいたから助かったよ()()

 

部室の灯りが消えて、隣の部屋で彼女達が眠りに落ちたのを見守って。

囁くように彼女達は話し始めた。

 

「ぃえ……その……えと、なんだか、ヴェリタスを出てからヒフミさん、あの、暗かったですから……だから、ぁの、モモイは同じマスターだし……」

 

「そうだね、同じ境遇だからこそ通じ合う物もきっとある筈だから」

 

セイバーの言葉に皆一様に反応を示す。

それは痛みを堪えるようで、決意するようで。

 

「その、ミドリ。モモイの方は大丈夫なのか?」

 

「うん。心配してくれてありがとうアズサちゃん。でもお姉ちゃんなら、きっと大丈夫。だってさっきの言葉はきっと───」

 

自分に言い聞かせる意味もあったから。

 

そう告げて、隣の部屋を見つめる彼女の目は普段通りのようで、どこか寂しさと不安が宿っているのを。

 

 

 

 

 

 

「ところでキャスターのおじ様、隣の部室繋げて勝手にドア付けちゃいましたけどこれセミナーに話通しました?」

 

「……ミドリ、ミドリよ。我は、言い訳を好まん」

 

「……バレたら一緒に謝ってあげますね」

 

「わ、私も……部長ですから……」

 

「すまぬ……」

 

 そうして、4日目の夜は更けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───同時刻、アビドス自治区にて。

 

()()()に怪我させたんだって?困るなぁ、嫌だなぁ。おじさんさぁ、そういうの良くないと思うんだ」

 

「おまけにうちの子達にまで粉かけようとしちゃって。いやぁ昨日のセリカちゃんといいうちの子、大人気!わかるよ〜可愛いもんねぇ」

 

「おじさんも大好きでさぁ、とってもあの子達のことが()、大事なんだ……()()()ほんっと、()()()()()()()さぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───ふざけるのも大概にしろよ

 

 

 

 

 

 

 

 神話が再演される。

*1
Veritas。古代語で「真理」を意味する名前を意味するミレニアムサイエンススクールの非公認部活であり、その筋では名の通ったホワイトハッカー集団。ミレニアム自治区内の各企業は勿論、連邦生徒会やヴァルキューレ警察学校の電子セキュリティについてもコンサルタントという立ち位置でアドバイスを送っている

*2
空調は最適な温度で室内にいる人間を歓迎し、清掃ドローンが定期的な掃除を行っている為、実は大変居心地が良い。エナジードリンクの空き缶が転がっているのが玉に瑕

*3
アビドス廃校対策委員会のメンバー。彼女達とヒフミはとある一件から知り合い、今では休日に遊びに出かけたりする仲。ちなみにその一件について尋ねると本人は「あはは……」と黙して語らず、桐藤ナギサは頭を抱える





1じゃんね☆
ご無沙汰……ご無沙汰しておりますじゃんね……
なんだかんだ色々バタバタしつつスレの更新は頑張ってPart6スレも800レスを越えてそろそろ物語も佳境でいよいよPart7スレにいくし、その前にウイ先輩短編書いて、アサシン師匠の短編書いて、11/27用のif短編用意して……そんな風に思ってたじゃんね☆

なんかPart6スレ丸ごと消えたじゃんね☆
詳細は活動報告に書いたじゃんね☆
安価カテ?巻き込まれ規制が厳しすぎてなぁんにも書き込めないじゃんね☆ミーカミカミカミカ

というわけで良い機会だし整理もしたかったしで、最新話までこっちを更新する事にしたじゃんね☆
基本的に1日1回、ストックがある時は複数回って感じじゃんね☆
遅筆な1だけどまたお付き合いして頂けたら幸いです、じゃんね☆

本作の内容は

  • ①Part6スレまで読んでる
  • ②あにまんの過去ログまで読んでる
  • ③ハーメルン版のみ読んでる
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