阿慈谷ヒフミは聖杯戦争に参加するようです   作:1じゃんね☆

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「先生」
“はい……”
「私はお伝えしましたね?今日のお昼に各種提出書類と先日の一件の報告書受け取りに参ります、と」
“……はい、リンちゃ「七神首席行政官」な、七神首席行政官はそう言いました……”
「そうです。直近の物なら一昨日〆切だった物も含めて提出を今日まで延ばして、わざわざスケジュールを組み直して急いで午前中の仕事を前倒しにして呼び出しをされないように終わらせて、昼休憩にシャーレまで来て先生に会いに来ました」
“はい……ありがとうございます……”
「さて、先生?貴方の可愛い生徒がそこまで努力してまで締め切りを延ばして貴方に会いに来た理由は何故だったでしょうか?」
“私が書類を受け取ってもらうついでにお昼だしって事で一昨日食事を誘ってたからです……”
「それで?今私が怒っている理由は?」
“報告書が出来てなくてランチの予約に間に合いそうにないからです……”

「はぁぁぁ……分かっているならもう正座は結構です……ほら立って下さい。予約については私がそうなるだろうと思って時間をずらしてますから。早く作ってしまいましょう?」
“り、リンちゃん!!”
「まったく、誰がリンちゃんですか……本当に困った人なんですから」


赤毛の探偵と白衣の天使

 

 D.U.から電車に揺られること小一時間。

私たちはトリニティ・スクエアから少し外れた場所にある救護騎士団の第二本部までやってきました。

駅のホームから出てくると出迎えてくれるのはまだまだ暑い陽射しと蝉が騒ぐ声に街を行き交う生徒の方や自治区住民の方の喧騒。

そして。

 

「つーいーたーぞー!!」

 

閑静な住宅街に響くモモイちゃんの元気いっぱいな声。一番乗りでホームから飛び出した彼女は勢い余ったのか「あわわわ!?あぶ、あぶなっ!?」とふらつく様によろけています。

それを見て慌てて彼女の思ったよりも細い腕を掴んで支えていれば後ろからこれまた元気な声が聞こえてきました。

 

「パンパカパーン!アリス達はトリニティに到着しました!これより救護騎士団への潜入ミッションを開始します!」

「そういうことなら、アリス。潜入となれば私にも覚えがある。むしろ得意分野だ」

「なんと!?アズサはステルスゲームの熟練者だったのですね!?ソリッドアズサです!」

「むっ、そのソリッドなんちゃらというのはよく分からないけど……私の知る限りの知識を教える───ついて来れるか?*1

「───ついて来れるか、じゃありません」

「───アズサの方こそ、アリスの学習能力についてきてみやがって下さい!*2

「はいはい、バカやってないでさっさと行くわよ」

 

アリスちゃんとアズサちゃんを止めつつコハルちゃんが呆れた顔をしつつ手を叩きながらホームから出てくるのに合わせて他のみなさんも、周りを珍しげに見ながら歩いて来られました。

 

「あんまり来た事なかったけど……綺麗な自治区だね……」

「スクエアにある美術館でゲームの原画展やる時ぐらいしか来た事なかったから……私もこういう住宅街を見たりっていうのは初めてかな」

「うふふ♡今日はあまり見て回れませんけど……今度謝肉祭もする予定ですから、その時またぜひ遊びに来てみて下さいね」

『へぇ、謝肉祭。素晴らしいね、ぜひ僕も一度ご相伴に預かりたいところかな』

『……此処がトリニティ、か。そうか、しかし、うむ……また、なんとも()()な』

 

 トリニティに初めて来るモモイちゃん達のはしゃぐ様子を横目で見つつ、駅を出てすぐ、目の前に佇む校舎を見上げる。

 

先日行った百貨店「Hello's」からもほど近いトリニティ中心区画から西部にある別校舎*3

学生アパートや自治区の人達が住む高級住宅街が広がるこの場所に立つのが、トリニティ総合学園が誇る最新医療や看護を専門的に学ぶ学生達が通い、救護騎士団が第二本部とするこの別校舎でした。

救護騎士団に用がある時は大抵病院の方や近くの詰め所にお邪魔するか、本校舎にある保険関係の窓口の方へ行く為、私もあまり来た事のない場所です。

さすがはトリニティで最も歴史ある部活*4

正義実現委員会に並ぶその規模は部室会館に収まらないほどです。

 

「っていうか、どうして今更救護騎士団なのよ」

 

「幽霊騒動を調べる為じゃないのか?確か被害者五人は入院中だろう?」

 

「その子達は面会謝絶で話聞けないじゃない!……ってそうじゃなくてどうして第一発見者のハスミ先輩*5に聞きにいかないの!?」

 

 改めて言われてみると確かにコハルちゃんの言う通りだと思わず感じてしまう。

 

D.U.に行くのはアリスちゃんがきっかけでしたが、トリニティに訪れたのはハナコちゃんの発案です。実際荷物の件もありますし、入院して被害にあった子達を看病されているだろうというのもあって救護騎士団へ行く事を決めました。

ですがなぜ、第一発見者のハスミさんの元へではなくこちらに来たのでしょう。

 

「うふふ♡それじゃあみなさんに今回どうして救護騎士団に来る必要があったか、その秘密のヴェールを一枚ずつ剥ぎ取って丸裸にしちゃいましょうね♡それはもうゆっくり♡丁寧に♡焦らしながら♡」

 

その疑問に答えましょう、というか待ってましたと言わんばかりの様子でハナコちゃんが小さなホワイトボードを出しました。

それほど大きくはない手持ちサイズの物ですが、一体どこに持っていたのでしょう*6

 

「もぉぉっ!なんで脱ごうとするの!!わー!ばかばか!ちょっと!?ほんっとに脱いじゃだめなんだから!アリスが見てるでしょ!?」

 

「わっ!見ましたかユズ!ハナコは服を脱いで水着で説明しようとしています!……はっ!アリス、分かりました!ハナコはきっと脱ぐ事で特殊なスキルを発動させるんです!ユズ!ユズも一緒に脱ぎましょう!」

 

「ぃえぇっ……な、なんでぇ……!?だ、だめだよアリスちゃん……!人前だから……!?」

「人前!?も、もしかしてだけど……人前じゃなかったら良いってこと!?」

「こ、こはるちゃん!?」

 

 私たちからするともうそろそろお馴染みになりつつありますが、やはりアリスちゃんには刺激が強すぎるかもしれません。

その証拠にミドリちゃんがなんとか脱がせまいと攻防を繰り広げてくれています*7

 

「ほらアリスちゃん、お話始まるから脱ぐのやめて静かに待と……って力つよっ!……お姉ちゃん手伝って!」

 

「そういえばキャス、じゃなかったベンジャミン。貴方はあの鎧を脱げるのか?」

 

アズサちゃんはといえばキャスターさんことベンジャミンさん*8の鎧がどうなっているのかが気になるようでいつものように通話している体でお話しています。どうしましょう、収集はつくのでしょうか。

 

『……アズサよ、この鎧は我の宝具(事情)で脱ぐことは叶わん。そして覚えておきなさい、服を脱いでも知性は変わる事はない』

 

「だが、服を脱いで風呂に入れば物理の成績があがると聞いた」

 

『アズサ、アズサよ。それで見つけられるのは黄金の密度差と流体の質量についてだけだ』

 

「そうなのか……難しいな」

 

 そう言って残念そうにするアズサちゃんに思わず私が物理なんていくらでも教えますと言いたくなりますが、ここは我慢しなくてはいけません。

私まで話に乗っかったら日が暮れるまでお話を始めてしまう、そんな予感すらあります。

それに。

 

「いいえアズサちゃん、ちゃんと痴識*9はつきますよ♡今度またお風呂で洗いっこしましょうね♡」

 

「うん、また色々教えてくれ」

 

「何やってんのよあんたたちはぁっ!!」

 

そんな風に騎士団本部の前で叫んで騒いでいたからでしょう。

 

 

 

 

「ハナエの話を聞いて聞きつけて来てみれば───」

 

 

 

 

声をかけられるのは当然でした。

 

 

 

 

 

 

 

一体何をしているのですか貴女達はっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく。ここは救護を必要とする方が来られる場所でもなければましてや騒ぎ立てる場所でもありません!此方は救護の術を学び修める者が訪れる場です、分かっている……のは当然ですね?ハナコさん、ヒフミさん」

 

 当然、救護騎士団の本部前で騒ぐという事はどこにいようとミネ団長こと、蒼森ミネ*10先輩に見つかってしまうわけでした。

 

第二校舎の正面玄関から出て来られたミネ団長は、真似をして服を脱ごうとするアリスちゃんを小脇に抱え、ハナコちゃんに服を着せ、どこから聞いていたのかそれともハナエちゃんの報告を聞いたのか『あばんぎゃるどくんと学ぼう!たのしい物理』*11というタイトルの本をアズサちゃんに渡して。

 そうして、救護騎士団にその人ありとまで呼ばれるミネ団長は私達を団長室まで案内して下さりました。

 

「す、すみません……ミネ団長ぉ」

 

「別に怒っているわけではありません。それは先ほど門前で済ませましたから。それでヒフミさん、今日は一体どうなさっというのですか。その調子でしたらお身体の方も十全に回復している筈ですが」

 

 淀みのない所作で紅茶を淹れてくれながら彼女はもっともな疑問を口にする。

トリニティ生が自分から救護騎士団に来るのだからその理由は大抵体調を崩した時。

だというのに私は見ての通り、健康体なわけだからそんな風に聞かれても仕方がない。 

 

 とはいえハナコちゃんの説明は結局聞けず仕舞いになってしまいました。

ここに来た理由にしっかり得心してないのに『幽霊騒動』について聞いてもうまく話せないだろう。

だから、まず一つ目の理由、目的から会話を始めてみる事にしました。

 

「はい、えと……実は色々来た理由みたいのはあるんです……でも私個人としてはその……お伝えしたいことがあって!そ、その節は本当にお世話になりました!」

 

「うん、私の羽もしっかり治ったし行動に一切の支障はない。迅速な治療、改めて感謝する。ありがとうミネ」

 

 もちろん退院する時にもお礼は言ったけれど、それでも何度だって助けてくれた人にはお礼が言いたくなるものです。

彼女達の迅速な救護がなくてはもっと長引いたり、入院していた時の検査だってあれだけ手際良くしてもらわなかったら、それこそどんなに無理を言っても午後一番に退院する事だって叶わなかったでしょうから。

そうなれば今こうしてこの場にいることは無理でしょうし、もしかしたら昨日タイミング良くモモイちゃん達と会うことだって出来なかったかもしれません。

 

 だから、心からのお礼を彼女へ。

このトリニティでいつもたくさんの人を救護して私達生徒の健康を守ってくれている*12素敵なこの方へ日頃と、そして数日前の事を織り交ぜた感謝を。

そんな想いを乗せて伝えた言葉への返答はやはりミネ()()()()()簡潔した物だった。

 

「構いません、それが私の職務です」

 

ソファに座っている私達へ用意してくれた紅茶を()()()並べながら、自分のマグカップ*13を持って彼女は事務用の椅子に腰掛ける。

 

「我々のモットーは『救護が必要な場に救護を』。あの時、貴女とアズサさんには「あ、あれ?私の分なんか色違くない!?」茶葉を切らしたので貴女と私は生姜湯です……とにかく貴女達には救護が必要であったのですから、我々のすべき義務を果たしたまでです」

 

そう言われてしまうと、頷く他はありません。

 

「そ、そうですよ「ですが」ね……」

 

 ですが、そう言葉を続けながら彼女は私達に微笑みを向けてくれました。

 

「快癒なさった方からのお礼の言葉ほど我々医療従事者にとって喜ばしい物はありません」

 

それは普段から真剣な顔をなさって忙しそうにされているお仕事中の彼女からは中々見せてもらえない、素の彼女らしい笑顔。

 

「私からもお礼を。元気になられた顔を見せて下さって、感謝の言葉を下さって。お二人ともありがとうございます」

 

 そう言われて、思わずじんとしてしまう。

救護騎士団にお世話にならないトリニティ生なんて一人もいません。

医療の最前線にいつも立って私達を助けてくれる彼女達への感謝する。

私達からすればそれはひどく当たり前の事なのに、その彼女達からこうして贈られるのは無償の愛で。

それがひどく尊く想える。

 だからせめて何か返せるようにと、()()()()()()()()()()()

 

「ミネ団長……ありがとうございます。()()()()、ぜひっ!」

「……それは、楽しみですね。えぇ、シフトがわかり次第また連絡致しますから、ぜひ()()をお願いします」

「もちろん!」

 

この場にいる私達二人だけが通じる約束を交わせば、彼女の手に持つマグカップのウェーブキャットさんも笑ってくれたような気がしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まだ淹れたての紅茶の温度は空調の効いた部屋にいるのもあって心地よく薄く白い息を吐いてしまいます。

 

 ミネ団長が淹れて下さったそれに舌鼓を打つ。

茶菓子として用意して下さった、どっしりとした味わいのクッキーの余韻を雑味のない軽やかな渋みが通り抜ける味わいを7人で楽しみつつ、たまたま生姜湯になってしまったモモイちゃんも美味しいとおかわりしたりして。

 

「それで、まだ別件。いえ、何か重要な案件があるのですね」

 

そんな風に小さな茶会を楽しむ中でミネ団長は話を切り出されました。

 

「うふふ、流石はミネ団長。お見通しですね」

 

「必要以上のおべっかは結構です、ハナコさん。わざわざミレニアムの生徒まで連れて来ているのです。なにかあるのでしょう?」

 

瞳を閉じて紅茶の香りを楽しみながらもぴしゃりと言う姿はやはりお仕事中という事もあって、できる女性、という感じでしょうか。

とはいえ、せっかく話を切り出して頂いた以上は、私からも打ち明けなくてはいけません。

 

「じ、実は教えて頂きたい事がありまして……その、先日の『幽霊騒動』についてなんです」

 

「……それでしたら、私からお話できる事は既に正義実現委員会の方にも伝えていますが」

 

「あはは……そ、そうですよね……あはは……」

 

 にべもありません。

でも仕方ないんです。

正義実現委員会からの報告書以上に幽霊騒動について教えてと聞くという事は、言うなれば面会謝絶後に被害にあった5人から聞いた話を教えてくれというような物。

 

「そのぉ……実は今そのことに調べてて」

 

「……ミレニアムまで巻き込んで、わざわざヒフミさん()ですか?」

 

「そうなんだよぉぉ……じゃなくてですよー!ミネ団長先輩、私達に教えてくれませんか?」

 

「……はぁ。モモイさん、でしたね。我々救護騎士団はその名の通り、救護、つまり医療従事を旨とする部活動団体です。当然守秘義務がありますから患者の方についてのプライバシーに関わるような話をする事は出来ません……私からお話できるのは正義実現委員会の方の報告書にあった物で全てです」

 

 まさに正論*14*15

先生だって遠回しに書き損じたという言い方をして資料を渡してくれたましたけど、あれだってかなりギリギリの一線を綱渡りしたやり方です*16

ましてやミネ団長の場合はそれ以上に被害者の子達の心に踏み込むような話になってしまう以上は、言えることは難しいはず。

恐らく、ハナコちゃんの言っていた『リターンを得られるかは賭けになる』という言葉の意味はそれでしょう。

 

「ぬっぬぬぬ……それを言われちゃうと言い返せないよぉ……どうしよみどりぃ」

 

「どうしようって言われてもこれ無理じゃない?というか直球で会いに来ちゃってろくに相談とか作戦も立てれてないし」

 

 ミドリちゃんの言う通りだ。

この話をミネ団長から、というより救護騎士団の方から聞き出すというのははっきり言って難しいでしょう。

彼女達には医療関係者という立場にあって、守秘義務がある。そうである以上、特に面会謝絶が必要なほど心理的に傷ついた方の事を教えられるわけがありません。

 

でもそれなら。

 

 ハナコちゃんは一体どうして()()()()()()()()()()()()と言ったのでしょうか。

今回の幽霊騒動について私達が調べられた事、持っている情報は少ないです。

監視カメラの映像だってアビドスの記録を優先しちゃいましたから、知っている事と言えば犠牲者の数、第一発見者がハスミさんだということ。

つまりはナギサ様から伺った事だけです。

なのにハナコちゃんはトリニティ、いえ、救護騎士団に来ることが一番情報を獲得する事に繋がると言いました。

 その理由が一体なんなのか、そう考え込みそうになった時。

 

「ぅぅ……で、でも……よ、よしっ……」

 

その答えはハナコちゃんでも、あの時ナギサ様から話を聞いていた私達の誰かでもなく。

 

「ぁ……あのっ!質問!ぁ、違う……そ、そのき、きき聞いても、いい……ですか?」

 

思わぬところから挙がりました。

 

「貴女はミレニアムの……」

 

「ひゃいっ……ミレニアム1年のは、ははは花岡ユズですっ!」

 

 そう言っておずおずと手を挙げながら、ユズちゃんがミネ団長へと声を掛けます。

隣を見れば、どうやらタイミングを考えていたらしいハナコちゃんもユズちゃんが質問するとは思っていなかったのか目をぱちくりとさせていて。

ですがすぐに、表情を、そして居住いを直して聴く姿勢を取っています。

 

「そうですか、質問でしたね。構いませんよ花岡さん。ですが……」

 

「ぁ……ごめんなさい、やっぱりその、わ、私なんかが質も「どうか一口、紅茶を」……ぇ?」

 

 会ったのは昨日でまだまだちゃんとお話もしていませんし、ユズちゃんがどんな人かだって分からないところがあります。

ただなんとなく、彼女が人と話すのをあまり得意としていないのは分かっているつもりでした。

 

 でも、そんな彼女は今、私達の為にと初対面のミネ団長へと声を掛けてくれました。

 

「まだクッキーも紅茶もおかわりはありますから、お嫌いでなければ気にせず好きなだけ召し上がって下さい。温かい物を飲んで口を濡らして、貴女が話したいタイミングで話始めてみてください。私もそうしますから」

 

 私もハナコちゃんも他のみんなも。

そして恐らく今紅茶を勧めたミネ団長も、その勇気を感じたからこそ、彼女が話してくれるのを待つことにしたんです。

だって彼女が振り絞ってくれた勇気がとても心地良くて。

 

「(ありがとうございます、ユズちゃん)」

 

すごくすごく、嬉しかったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 紅茶を口に含んで、またクッキーにも手を伸ばしてみて。

私達もそれに倣いながら関係のない話をして、15分ほど経った頃。

 

「ぁの……えと……ぁりがとう……ございました」

 

「……考えはまとまられましたか?」

 

 ぎゅっと力強く唇を噛み締めて、開いて、閉じて。

そこから言葉を吐き出そうとしている彼女の両手は同じように強く握られていて。

 

「えと、その……ぁ……ぅん」

 

 硬く握られたその手に重ねられた二つの手、その先にももう一人の手が繋がれていて。

斜め前に座っているコハルちゃんも話の邪魔にならないよう無言で首も羽もぶんぶんと振って、聞いてるからと伝えようとしていて。

 

「……ありがと、もう大丈夫」

 

それを受け取ったユズちゃんは、再び疑問の続きを口にしました。

 

「ヒフミちゃん達からその……話を、聞いた時。私、数がおかしいなって思ったんです」

 

「話、それに数ですか。思うにハスミ副委員長かナギサ様からヒフミさんが伺った、という事でしょうか?」

 

それにユズちゃんは小さく頷きつつ、同じように小さく可愛いらしい唇を開きました。

 

「まず、その被害者の子達なんですけど……なんで5人の子は一緒にいたんでしょうか。トリニティは夜間パトロール、を強化してると聞きます。例の事件から、トリニティ全体で自粛期間だというのも聞いてます」

 

「えぇ、トリニティは現在臨時休校が敷かれています。それは事実です」

 

「はい。なのに、彼女達がいた場所に……真っ先に駆けつけたのは偶然近くにいた、()()()()()()()()()()()()さん、お一人です」

 

「それはそれこそ夜間のパトロールを強化しているからでは?」

 

「普通は、トリニティの生徒会長さん直々に夜間パトロールを強化してるなんて言うなら……それこそパトロール中の小隊の子とかが駆けつけるはず。でも実際は、違った」

 

 言われてみれば確かにおかしいとも感じる話です。

私が入院した時からかなり警邏活動には力を入れていると聞いています。

なのに来たのはハスミさん、正義実現委員会の副委員長という要職に就く方です。

 

 

 ですが勿論、たまたまという事はあるでしょう。

思い当たるのは先生から頂いて、行きの電車内でユズちゃんも熱心に読んでいた報告書にあった、アビドスでの出来事。

あの時間も『幽霊事件』実際に時間があったのは確か、二日目の夜。

確か夜中の一時過ぎにシャーレからの要請があって臨時救援部隊を出している筈。

 それなら人手が足りなくても───。

 

「考えられるのは、多分、2つです」

 

ぐいっと、紅茶を呷る勢いのまま、ユズちゃんは話を続けた。

 

 

 

 

 

 

 

「5人の子達が、パトロール対象外の外郭地域にいたか」

 

 

 

「そもそもパトロール対象になっていない場所にいた」

 

 

 

 

 

 

───へ?

 

「そのどちらかです」

 

*1
この時、厨房に立って仕込みをしていた某所の某赤い弓兵は頭を抱えていたとのこと

*2
この時、自室で刀の手入れをしていた某所の某赤い刀鍛冶は無性にむず痒い何かを覚えたとのこと

*3
トリニティ総合学園はキヴォトス三大校に数えられるほどのマンモス校。当然、トリニティ・スクエアにある第一本校舎とは別にいくつかの別校舎が存在する

*4
救護騎士団はトリニティに現存する部活の中でもその創立は最古に位置し、トリニティに住まう人間であれば必ず誰しもが一度は世話になる。その為、自治区内では絶大な認知度があり、一般生徒からはティーパーティの要職に就いている人間よりよほど現騎士団長の名前の方が知っている生徒も多いほど

*5
羽川ハスミ。トリニティ総合学園三年生。正義実現委員会副委員長。長身とそれに見合うグラマラスな体形、そして常に冷静沈着な狙撃手であると共に後進育成にも余念の無い面倒見の良さもあって非常に人望のある正義実現委員会の顔役。コハルも彼女の事をとても慕い心から尊敬し、またハスミも同じようにコハルを可愛がっている。ちなみに紅茶を淹れるのもそれに合う洋菓子を見繕うのも上手い。この前お裾分けしてもらったタルトは大変美味だった

*6
言うまでもない

*7
この時下江コハルはなんの役にも立たなかった。今の彼女は花岡ユズがその上着の下に何を着用してるかまで妄想を膨らませるのに忙しかったからだ

*8
通話越し、という体で霊体化しつつ話す為にキャスターが名乗った偽名。思い入れがある名前という話までは語ったが、それ以上については不明。ただその話をした時、モモイだけはニヤついていたとの事

*9
最低である

*10
蒼森ミネ。トリニティ総合学園三年生。救護騎士団団長兼ヨハネ分派首長。人呼んで「鋼の白衣」「鉄拳」「12ゲージの貴婦人」「救護騎士団の天使」。その呼び名が示す通り、恐らくトリニティ上層部で最も名前が知られている生徒の一人。あまりに苛烈なその救護活動振りは「ミネが壊して騎士団が治療する」という噂が一人歩きするほど

*11
ミレニアムサイエンス図書から発刊されている『あばんぎゃるどくん』シリーズの一冊。著者はつかつきりお。トリニティでもその分かりやすさから図書館での貸し出しも多い。ただし挿絵については不評な模様

*12
その苛烈な言動が悪目立ちするが蒼森ミネは間違いなく善性の人間かつ、事実として自治区内外を問わない人々の怪我や病気の治療、その予防に務め、在学中に多くの実績を残した生徒である。また政治こそ不得手ではある物の、だからこその実直さ、そして普段の聡明さには目を見張る物があり、そんな彼女の本質を知る救護騎士団の生徒からは慕われてい

*13
意外にも可愛い物好きな彼女のマグカップにはモモフレンズのキャラクターがあしらわれていた

*14
ンンンンン!

*15
誰だ今の

*16
先生から受け取った報告書は紛れもなく機密文書。当然、連邦生徒会にバレてしまった場合は言うまでもない為、取り扱いにはくれぐれも注意するべき物





1じゃんね☆
というわけでトリニティでの探索スタートじゃんね☆
今見返すとこの頃から登場する人数の多さに四苦八苦してるじゃんね☆
1の物書き力がじゃこじゃこだからじゃんね☆
でも今考えるとこれぐらいの人数、大した数じゃないじゃんね☆
後からもっと酷くなって1は絶望する事になるじゃんね☆ミーカミカミカミカミカ

あ、次回は当時の1が頭抱えまくったユズちゃんの推理からじゃんね☆

本作の内容は

  • ①Part6スレまで読んでる
  • ②あにまんの過去ログまで読んでる
  • ③ハーメルン版のみ読んでる
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