あの監視カメラの映像からは、ところどころ音声だったりが途切れ途切れになってしまったけど、色々な情報を得られました。
とくにランサーさん、アサシンさん。
お二人が実際に戦闘をしているところを詳細に確認して、その宝具まで見る事が出来たのは大きな収穫と言えます。
そして、最後に聞こえた音声。
───『ラ⬛︎ダ⬛︎、宝具を開帳⬛︎⬛︎い』
聞き間違えがなければ、あれはきっと陸八魔アルさんの声。
あの時現れた黒いスーツ姿の方こそが、恐らくライダーのサーヴァントで、そしてアルさんがそのマスター。
不安は、正直あります。
けれど、また一つ情報が分かったこと。
なにより友達で、そしてとても優しくて素敵なアルさんがマスターであるかもしれないという事実。
それが知れた事は間違いない
アルさんがもしライダーさんのマスターならどうしてホシノさんと、そしてアビドスに攻撃を加えるような行動を取られたのかは今の段階では分かりません。
でも、アルさんがマスターなら。
私の大好きで大切なお友達がマスターだというのなら、なんの問題もありません。
もしかしたらまた不幸な行き違いがあっただけなのかもしれません。
それに今回の映像の中でだって救護騎士団の生徒さん達を守ろうとしてくれた、だからあの場面に割って入ったという形になったのかもしれません。
実際に、アサシンさんと違ってライダーさんは救護騎士団の方達へ危害を加えなかった。
───アルさんなら、きっと大丈夫。
またモモイちゃんの時と同じように分かり合って仲間になれる。
そう思うと、なんだか胸がポカポカしてきます。
まだ詳しくはみなさんと話し合えていませんが、この情報を元にみんなで考えればきっと良い案が浮かぶ筈。
そんな想いをみんなで共有しながら私達はバスに乗って、1日振りに合宿所へと向かい───。
「みなさん、お待たせしました!こちらが補習授業部のクルセイダーちゃんと、強だt*1……お借りした*2センチュリオンちゃんです!」
今まさに、補習授業部最後のメンバーと仮加入メンバーであり、大事な備品の戦車二両をゲーム開発部のみなさんに紹介しているところでした。
合宿所にあるガレージの中にみなさんをご案内した先で待っててくれたのはクルセイダーちゃんとセンチュリオンちゃん。
カーキ色とネイビーに近いグレーの塗装がそれぞれに施されたお二人は今日も惚れ惚れするほどぴかぴか*3、素敵なお姿です。
そんな補習授業部自慢の可愛い車体*4に感動してくれていたのでしょうか、みなさんも声も出ない様子です!
「いかがですかみなさん!これで今後、他の自治区に行く時は戦車で移動できますよ!」
「あ、はい、そうだですね、アジタニセンパイ」
「わぁっ!すごいです!アリスも早く乗ってみたいです!」
何故かモモイちゃんが引き攣った笑顔を見せてくれましたが、アリスちゃんもはしゃいでくれてますし、きっとサプライズ登場した戦車にびっくりしてるだけですね、きっと。
「……あの、ヒフミさん。質問、いいですか?」
「どうしましたか?ミドリちゃん」
「……その……もしかしてなんですけど……トリニティの補習授業部ってC&Cみたいな特殊部隊だったりしますか?」
「あはは……そんな事あるわけないじゃないですか!」
ミドリちゃんはミドリちゃんで不思議な事を聞いてきましたが、流石に私もそれが冗談だと分かりました。
これまで色々としてきましたが、誰が見ても一応私達は普通のトリニティ生*5で補習授業部は普通の部活*6ですからね!
「そうですよね!?じゃあなんで戦車なんてあるんですか!?」
「それは勿論!戦車はトリニティでの青春の象徴ですから!*7」
「ミドリ、諦めなさい。この件について私はもう突っ込まないって決めたから」
コハルちゃんが何やら悲しげにミドリちゃんの肩を叩いているのが私の目の端に見えましたが、今はそれより車体のチェックが最優先です。
「クルセイダーちゃんはともかく、センチュリオンちゃんに至っては正義実現委員会預かりの一応パテル分派所有の車両ですからねぇ*8。正直どうしてうちにあるのか私にも答えられません」
「ミカ様……ツッコミできない私をお赦し下さい……」*9
この前メンテナンスに出したばかりですが、一応オイルや燃料、それから弾薬があるかどうか。
それに車体に積み込める量には限界もありますし、外装にロープで荷物を括り付ける準備や、最悪の場合、霊体化しても乗れなかった時ようにセイバーさん達を牽引する荷台みたいのも必要ですからね!
さぁ、車体の確認を手早く済ませてしまって、着替えや食料、それから予備の銃弾だったりを持ってこないとです。
「というわけで荷物をこの中に詰め込めるだけ詰め込めんでいきましょー!」
数日分の着替えや化粧品類の入ったトランクが4つに個人の愛用品だったり、私ならペロロ様グッズや水着を一応いれておいたカバンがそれぞれ数個。
それからダンボールにはいった予備の弾薬や銃のメンテナンスキット。
手榴弾に、アズサちゃんに頼んで一応必要最低限の物以外は回収してもらった罠類。ちなみに回収した罠の数は合宿所に仕込んでいた全体の65%ぐらいだそうです。
そして最後に冷蔵庫の中にあった食料を入れたクーラーボックスにダンボール。結構な大荷物をみんなで手分けして積み込み始めます。
「食料、意外ともうないわね」
「ああ、歓迎会でかなり食べたからな。あのお肉は美味しかった」
「えー!いいなぁ!私もそれ食べたかった!」
「ヒフミのローストビーフは絶品だったよ。顎が外れかけたけどね」
「何それ怖い……」
しっかり下拵えして柔らかくしましたし、火入れ加減もバッチリでしたから薄切りにすれば顎は外れない筈なんですよ、モモイちゃん。
「ハナコ、ハナコよ。あまり荷物を持ちすぎてはいけない。身体を痛めるであろう。我がそのトランクは運ぼう」
「ありがとうございます、キャスターさん。あら?どうかしましたか?キャスターさん」
「いやなに、まるで旅行の準備をするようにトランクを持って寄宿舎で友と荷造りをするというのは……なんだ、実に懐かしさを覚えてな」
「あらあら、キャスターさんもそういうご経験が?」
「うむ、我とて若き日はこうして友と共に学舎でな。故にだろう、年甲斐のなさに恥ずかしくも心が踊る……それにトリニティ総合学園と言ったか。その名を冠した
「……いいえ、きっとそれは大切な思い出ですよ」
「……そうであろうか」
「ええ、きっと♡」
どうやらキャスターさんは、トリニティ、そして合宿所に何か感じるところがあるようです。
私は彼のマスターではないけれど、もし出来るなら、そういった思い出をなんの含みもなくお話できたらいいなぁと思ってしまいます。
「アリスちゃん……大丈夫?」
「はいっ!アリスは力持ちですからなんでも運べます!ユズ、心配してくれてありがとうございま……あれヒフミのカバンから何かはみ出て……?」
「あ、これ……ひ、ヒフミさんの下着……ぅわぁ……ぃ、意外と派d「ユズ!これは大発見です!ぱんばかぱーん!アリスはふしぎな装備を手に入れた!モモイ達に教えなくては!」こ!ここここれはまだモモイ達には早いから!!」
……というかしっかりしまった筈なのに……どうして……!
もしかして
「そういえばヒフミ。次はどこ行くのさ?この後、まだ時間あるよね?」
「そうですね……私もちょっと迷ってます」
時間自体はかなり余裕があります。
もう一回ぐらいならどこかに立ち寄って調べたり、逆に今から帰ってしまって夜からゆっくりミレニアムで行動する。
私が今パッと思いつく案はその二つ程度です。
それを聞いてきてくれたモモイちゃんへと話せば、彼女も手を叩いて意見を出してくれて。
それをきっかけにみんなからもこの後の行動についての案が寄せられた。
「あっ!もしかして今からミレニアムに帰ればスーパー寄れるしお肉買えるかな?」
「わぁーい!アリス、ポテチとコーラも買いたいです!」
「それなら今夜もパーティだー!あっ!キャスターも仲良いしウタハ先輩とか他のミレニアム生も呼んじゃう?また色々作ってもらったりのお願いできるかもだし!」
「ミレニアムのスーパーって大きいんだっけ?買い物行くならなんかめぼしい物とか見つけられたらいいけど」
モモイちゃんとアリスちゃんからの提案はこのままミレニアムに戻ってその道中にあるスーパーマーケットで買い物をしてからのパーティ。
聖杯戦争と関係があるか、と言われれば困りますが。
『(なに、士気を高めるのもまた大事な事さ。それにこれからミレニアムを拠点にするというのなら他の子達と顔を合わせておく、というのも思わぬ功を成すかもしれないからね)』
ミレニアムも大きな学校です。
セイバーさんのおっしゃる通り今後、私たちが活動の拠点にしていくというのならしっかり挨拶をしておくのは大切な事でしょう。
「先生から渡された資料もある、またこの前のように古書館に行くのはどうだ?」
「古書館、ですか?図書館じゃなくて?」
「あっ、そっか。トリニティで暮らしてないとあんまり馴染みないもんね。あのねミドリ、古書館っていうのは図書館よりもずっと古い資料がいっぱいあるトリニティのすごい場所なのよ!!」
アズサちゃんの提案に首を傾げたミドリちゃんの気持ちも分かります。
通常の図書館より専門性が強いというのもありますが、そもそもトリニティ以外では古書館という言葉自体が一般的ではありませんから。
それに私たちでもあまり頻繁に通う事はないのもあって知ってはいてもそこまで身近な場所、というわけでもありません。
ミレニアム生のミドリちゃんなら尚更でしょう。
とはいえ古書館は貴重な資料を数多く保管されているトリニティでも特別な場所。
そういうこともあって、コハルちゃんは胸を張ってミドリちゃんに古書館についての説明をしてくれるのですが。
「はいっ!コハル、質問です!どうして最新資料からではなく、古い資料から調べるのですか?」
「うぐっ!?……えぇっとそれは……あれ言われてみたら確かに……えと、その……はなこぉ……」
アリスちゃんからの無邪気な質問に詰まってしまって目線を右往左往するコハルちゃん。
それに助け舟を出したハナコちゃんは彼女の様子を楽しそうに見つめつつ丁寧に解説をしてくれました。
「はいはい♡それはですね、アリスちゃん。古書館の蔵書量は中央図書館で表に出してある物より多いのと、とっっっても♡ディープ♡な事が書いてある痴的な本がたっくさんあるからですよ♡それにそこを管理されている生徒の方も大変知識が、ある方ですからね♡」
「なるほど……つまり秘密の隠し部屋的な場所ですね!全クリ後に行けるボーナスショップやステージです!アリス、納得しました。ハナコ、コハル、ありがとうございます!
アリスちゃんが納得したところで次に出た提案はミドリちゃんから少し足を伸ばしてみないかというもの。
「あとは、どうでしょう?いっそ別の地区まで遠征とかっていうのもありなんじゃないでしょうか?10人って考えると丸一日分には足りないですけど食料もさっき積み込んだ分なら夕食分ぐらいはありますし」
「ミレニアムにしろ他の自治区に行くとなると夜間行動、という形になるな」
「もしミレニアム以外に行くならホテルを予約しないといけませんね。それか車中泊でしょうか。あとはトリニティ内だと……シスターフッドがチャリティーバザーをしているとか」
「ほ、ホテルなら、D.U.でチェックインしておいて……それから別自治区……なんて流れだとホテルに、帰りやすいかな?」
「そうですね、アビドスかゲヘナ……特にゲヘナは少し気になります。どうにか連絡が取れれば……」
今から行くとなると帰りが遅くなったり、暗い中で色々と動き回る形になるのだけが不安ですね。
「そういえば幽霊騒動の現場見なくていいのかな?サーヴァント同士が戦ったなら戦利品とか落ちてるかも」
「どうだろう。あれから3日経っているし……まだ残っているかどうか……とはいえ現地に行ってみる事は大切かもしれないね」
「あとはこの後は車内での移動になりますし、みなさんで作戦会議も出来ますかね?」
「シュロさんの誘いもありますし、夜どうするかとかも話しておくべきかもしれませんね」
「はいっ!アリスはもっとセイバーとお話してみたいです!」
色々な案が出て、私達が選んだのは───
人は自分にない物に強烈な執着を持つ。
それは何も『欲しい』という物欲に限らない。
たとえば内気な少女が快活な娘を見て『羨ましい』と感じる羨望。
たとえば学校に通いづらかったり退学させられたりした不良生徒達がお嬢様学校の生徒を見て『毛嫌い』する嫉妬。
たとえば、身長も声も何もかも足りない子どもが自分より背丈も責任感も決断力もある大人を見て『ああなりたい』と願う憧憬も。
結局のところ、それらは全て、自分にはない或いは足りないものへの一種の『執着』なのだ。
そして今、その白くほっそりとした指で摘んだカップを満たす『珈琲』は、幼い頃に大人の象徴だと思い込んで少女が執着した物だったと。
「(そんな風に考えた事も、ありましたね)」
そんな憧れを、いつの間にか何とも思わず口にするようになってしまった事に休憩中の彼女は気づいた。
「(背丈もそれほど、知識は増えても変わらず運動は苦手、先生のように誰とでも話せるわけもなく……)」
幼い頃憧れた珈琲のアロマ香を愉しめるようになっても、まだ彼女は生徒で子ども。
その事実を物憂げとした表情でカップの中で僅かに揺れる湖面を見ながら、思索に耽る。
そう、トリニティ総合学園3年生図書館委員会委員長、古関ウイは。
本日はちょっとアンニョイな陰のある寂しげな少女───という感じで一人の休憩時間を楽しんでいた。
彼女はまだ17歳の多感な年頃。
そういう風に過ごしたい時だってあるのだ。
ここ、トリニティ自治区中央図書館本部『トリニティ総合学園附属古書館』は基本的に来客者は皆無に近い。
古書館はみんなの物、と今年入った期待の新人である1年生は言うが、そもそも古書館の役割を一般的な図書館で例えるなら「書庫」に近い。
さらにいえば、トリニティ内で発掘されるオーパーツや経典の保存、管理、修復といった考古学の研究機関としての側面もある。
そういうお堅い場所で、貴重な資料を保存している点からカフェ等も併設されず、結果的に立ち入りこそ禁じてはいないが、滅多に図書館利用者が立ち寄る事はない。
後はあっても書庫整理のボランティア学生やティーパーティーに所属する行政官が依頼等で来るぐらい。
だからこそ、古関ウイは早めに事務仕事を片付けて思考の海へと飛び込んで、誰にも邪魔されない時間を過ごせる。
その証拠に、彼女の目元はリラックスしている事もあって気持ちよさげに眦を下げている。
陽に当たらず白い肌も今は香気に当てられ淡く染まり、藤納戸を湛えた視線も実に柔らかい。
決して大きくはないその両の掌でカップを持つ姿はまるで秋の恵みを見つけた栗鼠が大事そうにそれを抱えている様に酷似している。
そう、古関ウイは今、誰にも邪魔されないこの古書館で過ごす時間と場所を思う存分に満喫しているのだ。
残念ながらたった今過去形になったが。
1じゃんね☆
キリがいいから取り急ぎここまでじゃんね☆
……明日はまたお昼と夕方に、じゃんね☆
本作の内容は
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①Part6スレまで読んでる
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②あにまんの過去ログまで読んでる
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③ハーメルン版のみ読んでる