꒰ঌ(๑≧ᗜ≦)໒꒱「おっわりー!」
꒰ঌ(๑≧ᗜ≦)໒꒱「うーん、疲れちゃったね☆」
꒰ঌ(๑≧ᗜ≦)໒꒱「とりあえず帰ってナギちゃんに報告して、それからセイアちゃんの顔見に行って」
꒰ঌ(๑≧ᗜ≦)໒꒱「え?あー……好きにすれば?っていうかそれぐらい自分で考えてよね!」
꒰ঌ(๑≧ᗜ≦)໒꒱「ふぅん。なら、ほら早く姿隠して!……よしっ!じゃっ帰ろっか?」
外はすっかり日が暮れてしまう中、遠い向こうに沈んでいく夕日を追いかけるように私達はクルセイダーちゃんとセンチュリオンちゃんにそれぞれが乗ってミレニアムへの帰路へ着きました。
『魔力について?』
その道中、モモトークをウイさんから受け取ったので無線、そして霊体化越しでモモイちゃん達ともその情報を共有してからの話し合いを改めてするのは自然な流れでした。
「はい、ウイさんから連絡があって。ゴルゴネイオンと関連するかもしれないと文献にあったらしくて……」
魔力。
サーヴァントの方に私達マスターから供給されている物……
モモイちゃんからのは程々*1に、私からはかなりの量*2を供給しているとお二方から教えて頂いたそれに対する実感はないですし、これまで生きてきた16年間で聞き覚えのある単語でもありません。
『この地ではあまり身近ではないけれど、僕達のいた世界では魔力*3というのはあり触れた物だ。勿論、魔除けの概念もね』
「サーヴァントのスキルや宝具には一定値以下の魔力に対して効果を発揮する物がある、とセイバーさんからは伺いましたので……」
『事実である。魔力に限らず、我らの容れ物である霊基が定めた能力値の限界。それを指針にするスキルというのは枚挙に暇がない』
霊基。
こちらはなんでも幽霊、みたいな存在だというサーヴァントの方がこの世界に現界するにあたって聖杯が用意する入れ物だというお話です。
ただ入れ物だとは言っても限りなく生前の肉体に近い物*4、セイバーさん曰く「生前を再現した仮初の器」だとか。
『たとえば僕の持つ対魔力なんかは分かりやすいね。あれは高位のランクであればあるほど、相手の魔術を干渉を防ぐ効果がある。魔力も同じで、その多寡が相手のスキルや攻撃を弾く条件になったりもするんだ。勿論他のステータス、特に……』
マスターがサーヴァントと契約する事で得られる恩恵、それがステータスの閲覧です。
それぞれのマスターが認識しやすいように確認が出来て私はまるでモモフレンズ大百科*5みたいに、モモイちゃんの方はそれこそゲーム画面みたいに見えているそれの中でも一際特殊なステータスが二つ。
筋力や敏捷といった物と比べても少しわかりにくいそれらの話題についてセイバーさんが触れると、ハナコちゃんが顎に握り拳を当てて*6答えてくれました。
「幸運、ですね?」
『ああ。幸運という目に見えない指針はその実、運命力とでも言い換えればいいかな、スキルや宝具から身を守る術になる事もあったりするんだ。その曖昧さから侮られがちだけれど、決して馬鹿にしてはいけない。僕の知る中でも、たとえばアサシンの宝具あたりは幸運値の多寡でその真価を発揮するだろう』
アサシンさんの宝具。
彼女の真名から推測する限り、その宝具は一度放たれれば
だからといって無条件に、というわけではなく回避の際にセイバーさんの言うところの幸運、それが関係するとか。
サーヴァントの方同士、そしてクラスごとの相性や宝具とステータスの関係性。
なんだか色々と考えなくてはいけない事が多いと思っていると、ぽつりとミドリちゃんが呟きました。
『こうやって聞くと、なんだかゲームみたいですね……』
言われてみれば確かにと頷いて相槌をしたところで、相手には見えていないかとバックミラー越しにコハルちゃんと二人揃って半笑いになりながらミドリちゃんへと話しかけようとしたところでセイバーさんの声が響きました。
『サーヴァントという存在やシステムを構築した者の意図は分かりかねる。けれど僕らは死者であり、死後に英霊、つまりは精霊と呼ばれる存在の枠組みにまで至った存在だ。そしてそれは言い換えれば理外の存在でもある』
「システム……確かに、ですがそうなると
ビルとビルの合間から見える引き延ばされた朱色の線が覗き窓から透けるように車内を照らしては陰影を強くする。
その中でハナコちゃんの眼窩に収まる
それに姿はないまま、苦笑いでもするように笑いを忍ばせながら彼は答えました。
『イレギュラーは今に始まった物じゃないし、このキヴォトスの聖杯戦争の成り立ちも今一つ分からないけれどね。それにそれこそ、だよハナコ。理外と言った通りその枠組みの中にあっても僕らは別に万象を見通せる存在じゃない。あくまでも、
『然り。訳知り顔のセイバーと違って
「あらあら♡そんなに
『分からねばそれで良し、分かるならばそれもまた良し。経験則と推論では当てにならんが故に確たる物は言えぬし、今この時に必要な話でもなかろう』
「……うふふ♡ちょっと先走りす『だが聞け、ハナコよ』……」
『
『……なるはど。金言、ありがたく……と言ったら言葉遣いはよかったでしょうか?』
何というべきでしょうか。
今の会話を聞く限り、私の中で浮かんできたのは迂遠の一言です。
どうにもお二人とも、そしてハナコちゃんも敢えて何かを避けるように話をしているのだと
とはいえ、どうやらキャスターさんが仰った事はハナコちゃんにもしっかり伝わったようで、真剣な顔をされてからゆるゆると笑みを作っています。
それに彼は。
『探り合間に揶揄うでない。我はそこな騎士と違って宮仕えでもないただの学者だ……知恵ある者は往々にして偏屈な物だが、素直さは時に金より勝る。偏屈を通しきってしまった老人の小言だが、覚えておきなさい』
ひどく疲れたような物言いながら、けれどその言い方はとても優しく、まるで小さい子へとそうするようにゆっくりと諭すように、そんな風な声が無線から聞こえてきて。
『まぁ、小難しい上に今は
思わずハナコちゃんだけでなく私達まで頷いてしまいそうになったところでセイバーさんが話を戻してしまいました。
「えと、キャスターさんの言った通りっていうのは?」
『人間は知らないままにしておく事が出来ないという話だよ。未知への恐怖と脅威は夜闇のように人の心を蝕む。そうやって考えれば常識の外にある
「理解できない物を理解できる範疇で具象化する……人類史では見慣れた手口、と言っても?」
『セイバーの考えが正しい、という前提ならばだがな。やれ、少し話が逸れすぎた。話を戻すが、兎にも角にもサーヴァントにはクラスが与えられステータスがマスターの目に分かるよう可視化される。それは即ち指標だ』
セイバーさんとハナコちゃん、そしてキャスターさんのお話は難しいなと私達が困り顔をまたし始めそうになったところで、続くのは教育用BDに出てくる講師の方のような、けれどそれよりずっとゆっくりとした口調で私達に聞かせる形でのお話。
『お前達は好まん譬えになるだろうが、与えられた
『うげぇ……また宿題ふえたよぉ』
『戯け。モモイよ、少しはお前もしゃんとしないか。まったく……加えて言えば先に挙げられた対魔力は通常全七騎のうち四騎*7に与えられる。キャスターという魔術師が呼ばれるクラスが聖杯戦争において
難しい無線越しに聞こえてきたキャスターさんの嘆息につい私達は肩を揺らしてします。
私もハンドルを握る手が強張りました。
「えと!……ぅ……ぇと……ぁ、な、なんでもない……」
思わずと言った様子で声を上げたコハルちゃんの気持ちもよくわかります。
キャスタークラスは聖杯戦争において最弱である。
他ならないキャスターさん自身の口からそう言われた事にごちゃ混ぜな感情が湧いて動揺してしまいます。
弱いという考えてもいなかった言葉が飛び込んできたのを受け止められない困惑、弱いと仰った事になんて返答すればいいかの不安、そして二台の車両を隔てていて姿もお顔も見れない彼がどんな思いでそれを口にしたのか分からない事。
最弱と、今この場で自分から名乗り出られた彼の気持ちが私もコハルちゃんも分かりませんでした。
ハナコちゃんは微笑みつつ瞠目した目蓋の奥で考え事を、アズサちゃんは特に気にした様子はなくて、セイバーさんは変わらず霊体化したまま。
だから私とコハルちゃんだけ動揺する形になったクルセイダーちゃんの車内で。
『───構わんとも』
「……ぇ?」
キャスターさんの優しい声が響きました。
『コハルよ、コハルよ。
「……ごめんなさい」
思わず私の心の中でも膨れ上がって、そして同じようにコハルちゃんの口からも飛び出しそうになって、けれど彼女の優しさから行き場なく伝えられなかった不安の種。
それをキャスターさんはきちんと受け取った上で応えてくれました。
『何を謝る事があるか、コハルよ。再度言おう、構わん。此度、お前達が挑むのは正真正銘の戦争である。であればこそ、最弱だと己の力を語る同盟相手の戦力を正しく知らんとして、
「あぅ……ぁ、ありがとう……キャスター」
『三度告げよう、構わんとも。それに、逆に言えばキャスターが最弱という評価は決して悪い物ではない』
彼の優しさにホッとしながらも、その言葉に首を傾げそうになります。
最弱、その言葉通りつまりは最も弱いという評価。
成績表で言うと不可になるでしょうか。
少なくとも対魔力の話からキャスタークラスで呼ばれる事自体がハンデとなり得そうなのですが、キャスターさんは大した事がないように鼻、というか蒸気を汽笛みたいに鳴らしておられます。
その態度と真意に疑問符を浮かびそうになったところで溌剌とした声が無線機から響きました。
『アリス知ってます!ジャイキリですね!』
『……我も覚えがある以上最近、でもないが昔から若者言葉というのはどうして単語を短くしたがるか。まったく……だがアリスの言葉は正しい。ジャイアントキリング、つまりは』
先生から当てられた問題を答えるように、腕を組んだアズサちゃんが言葉を引き継ぎました。
「戦い、特に個々人同士での戦闘というのは数値では決まらない。足が速くても力が強くても、技術があっても飛び抜けた武器を所持していても。環境や精神状態のようなちょっとした、けど無視できない要因で幾らでも戦力差はひっくり返る」
『アズサの言う通りだ。僕らは画一的なステータスが与えられ、分かりやすい数値としての指針をマスターは見ることができる。対魔力による防御は確かに強力で、魔術の妙手にとってそのスキルは重い物。だが、だからといってそれで全てが決まる事は決してない。戦いはいつだって、死力を尽くした者へ勝利の天秤を傾ける』
「目に見える脅威は恐ろしい。だけどそれは見えているから対策できる。戦いで本当に怖いのは
『ステータスをゲームみたいってミドリも言ったけどさ、あっ、私も同じ感想だよ?でも……多分ステータスを比較したり宝具がどっちが強いとかどんなスキルがあるかとか、多分ソレだけじゃ勝てないんだよ、聖杯戦争って』
私も別に戦ったのなんて
あの晩、ランサーさんとの戦闘でも感じたのは溢れるような闘気。
ほんの一瞬、たった一手で命を落としかねないような戦い振り。
それは数字だとかそういうので括る事なんてとても出来ないような生々しい血の臭いが漂う戦いでした。
スキルは重要な物です。
宝具もセイバーさんが言うには全てをひっくり返せるぐらいの力があるようです。
ステータスだってしっかり調べておけば作戦とかも建てやすいです。
でも、ゲームじゃない、遊びじゃない、数で全てが決まりよくは決まってくれない。
『もっ!もももしかして、なんですけど……最弱っていう……その、前評判は……侮られやすいから、逆に……ぇと、敵は足元を掬われちゃう、みたいな……ですか?』
「なるほど。敵、特にセイバーさんを除いた対魔力持ちからすればキャスタークラスは危険視されづらい、対処の優先順位が下がりやすいノーマークな存在になりがち、という感じでしょうか?」
『然り。最弱の評価が何も悪い事ばかりでないのはそういう事だ。敵が我の戦力を見誤る、そして我らを思慮の外に置くというのならば好都合である。幸いなことに我らは同盟を結び、セイバーという
『そういう意味
それに、とセイバーさんは続けました。
『対魔力は確かに強力だけれど、キャスターというクラスは決して侮れない。魔術師や芸術家といった争いや流血とは無縁な人間が選ばれるクラスなのも侮られやすい要因だけれど───彼らもまた英霊なのだから』
今更ながら、改めて私も肩に力が入ります。
私と、そしてモモイちゃんが喚び出した彼らは、別の世界での英霊。
精霊、という妖精さん*8みたいな存在にまで至った歴史や御伽噺の中に登場する偉人、英雄。
それがサーヴァントの皆さん、彼らの一面です。
『つまりだ、聖杯戦争はなにもサーヴァント同士の力比べをするだけが道ではない。文字通りの総力戦。たかがスキルの一つや二つで、有利不利はあれどそれを頼り切りにして勝てるという単純な物でもない』
「マスター自身は、その道で英霊とまで呼ばれるまでに至った存在が使う魔術への抵抗なんて早々には出来ないでしょうから。それを考えればたとえ対魔力を携えたサーヴァントを引き当てたとしても、と言ったところでしょうか」
「マスターだけじゃなく、周囲の人間へという方法だってある。その善悪は別としても、そういうやり方もある以上、サーヴァントという存在はどんなクラス、どんな英霊であっても決してその障害と脅威は軽視すべきじゃない」
『良い考え方だね。どうしても魔術師達にとって僕らはあくまで
そう、最後にセイバーさんがまとめてくださったように、彼らサーヴァントの皆さんの強さや偉大な事を成し遂げた方達だという
話し込んでいたらすっかり時間も経ってしまう物です。
夏の日は長いですが、それでも車窓から見える空はもうすっかり藍色へと変わってしまいました。
『少し脇道に逸れたな、話を戻すとしよう……モモイよ』
『私はおっけーだよ!』
まだまだ
『であればだ。同盟者達よ、我のステータスを開示しようと思う』
「っ!……いいんですか?キャスターさん、モモイちゃん」
『全然平気、平気。必要なんでしょ?』
『そう我が主人も言っているからな……我の魔力ステータスはAだ』
『こうやって聞くとやっぱりおじさまのステータスって高いですね……』
キャスターさんの教えてくれた数値、それは五段階で最高の数値でした。
そして折角教えてもらったというのもあれば。
『同盟相手が誠意を持って伝えてくれたのなら、僕も伝えるべきかな?』
「お願い出来ますか、セイバーさん」
『もちろん、僕の魔力ステータスはBランクに相当する』
魔力とゴルゴネイオンと呼ばれる物、そしてそれに縁深いと考えられる
「魔力とゴルゴネイオン自体の関係とかはあるのでしょうか?」
『難しいな。残念ながら我は
くぐもった声で悔やむようにそう言われるキャスターさんの言葉を残念に思っていると、逡巡するようにというよりどこか口に出すのを迷うようにセイバーさんの声が響きました。
『……いいのかい?例え同盟相手であってもそこまで明かす必要は『セイバーよ。貴公のご配慮、痛み入る』……なるほど』
『その上で伝えよう。あの店の前で、貴方も察したのだろう……この地にあって我は異邦の身なれど、それでもやはり祖国を想うのだ。そしてそれを他ならぬ貴方の前で悟らせたのであれば、何を今更という話だ。何より……』
単に分からないというだけにしか聞こえなかったキャスターの言葉の中から何かをセイバーさんは察したようでしたが、私にはそれはさっぱりで。
セイバーさんとキャスターの、魔力についての会話はそれっきりとなってしまい。
結局、モモイちゃん達のRPGの知識もあって、ライダーさんの持つ『魔眼』スキルに高ランクの対魔力だけでなく、もしかすると高出力の魔力を流せば『抵抗』できる『かもしれない』……という結論でこの話は終わった。
「───この際だから、他の情報も出してしまいましょうか」
『っ?……ハナコ、一体何を?』
『わ、私もいいと思います!ぜんぶ……とまでいかなくても色んな情報を、その、共有したって……』
ユズちゃんとハナコちゃんの言葉に、思わず不意をつかれてしまう。
急ブレーキをかけずに済んだのは幸いだった。
「そうかも……だって別によくない?私達、もう友達だし、それに……仲間なんだし」
『コハル……確かにそうかもしれない。だけど、こんな事は言いたくはないが同盟とはいえ……』
「アリスもコハルの意見に賛成です!アリス達はもう仲間です!同じ、パーティです。これからずっと一緒に冒険をするんですよ!」
セイバーさんのその言葉に、考えてもみなかったなと思ってしまう自分がいました。
仲間ができた。
たくさん信頼できるお友達がいる。
これから最後まで一緒に協力していくんだって、当たり前みたいに考えていた。
だけど、セイバーさんもキャスターも違った。
ううん、現実を見ておられるのでしょう。
聖杯戦争は結局どこまで行っても殺しあ───
そっと。
暖かな、掌が。
私の太ももの上に重なった。
言葉はいりませんでした。
運転中だから目立って合わせられない。
ただ隣に座る親友は、黙って私に体温と勇気を伝えてくれます。
その掌の温もりが、何よりも雄弁で勇敢で。
私は、何も心配いらないよ、そう言ってもらえたのを感じた。
だから───。
『アリス、アリスよ。お前の思いはよく分かる……だが例えそうであっても我らは』
声が重なりました。
「私は殺し合いがしたいだなんて思いません」
思わず笑いそうになります。
『そりゃ最後は戦うことになるかもさ。でも、今はそうじゃないし、その時だって憎み合ってするわけでもない』
隣の車道を走っている戦車の中で、きっと彼女も同じ結論に至っていてくれていて。
「私はハッピーエンドを目指すんです。誰かが傷つく悲しいお話なんて、もう嫌なんです」
お互いの言葉を重ね合い、姿は見えないのに同じ気持ちを共有していく。
『ここは思い切ってさ、こう最後の決戦は隠し事とかなしであるもの出し切った冒険の終わり!って感じで決着つければいいんだよ』
それはきっと、あの夜彼女に抱きしめてもらって再確認できて。
そして今こうして、たくさんのお友達から私の想いを肯定して支えてもらえているから。
「だから」『だからさ』
迷わず、わがままを言ってみよう。それはまだ聞いていないセイバーさんの願いとは相反するかもしれないけれど。
「『いつか敵になるかもなんて考えなくていいんだよ』」
みんなといつもしているように、何度だって諦めないで言葉を尽くしていけばいい。
たくさんお話して、色んな形の正解を見つけていけばいい。
その数だけたくさんのハッピーエンドがあるはずなんだから。
少しだけ沈黙が流れてから。
『……困った姫君達だとは思わないかい?』
セイバーさんの困ったような、でもどこか嬉しげな声と。
『同意する、が一部だけ訂正を。我が主人を姫と呼ぶにはまだまだ淑女としての教育が足らん』
キャスターさんの満足そうな、でとやっぱり憮然とした声が、車内に響く。
『僕は……いや、そうだね。僕もスキルを開示するのは構わないよ。何せ、そう、仲間なのだから』
『我も。陛下、貴方に同意しよう。他ならぬ貴方が仲間だと呼んでくださるのであるのなら』
『……それと、すまない……まだマスターに真名を明かしてないんだ。だからその……』
『それは……すまぬ』
その言葉を聞いて、姿は見えないけどなんとなく今なら見える気がして、ちらっと後部座席の方へと視線を送れば。
揺らめくように、彼がほんの一瞬姿を現して。
すぐに姿を消してしまった。
けれど彼が見せた一瞬の。
いつもと少し違う、どこか眩しげに目を細めながら笑う顔は。
なんとなく、夏空の下で笑う少年を想わせた。
「とっりあえず!」
「休憩ね!」
「コハル、ダッシュ!」
「わわっ!押さないでバカモモイ!出ちゃうでしょ!」
「えー!なにがー!なんだってー!?」
「うっさい!死刑!アンタも一緒でしょうがっ!」
我先にとモモイちゃんとコハルちゃんが駐車場へと降り立ち、そのままそそくさと二人でサービスエリアへと入って行った。
空もすっかり宵の頃で、集中して走らせたり途中で話たりしていても、やはりちょっとは疲れは溜まってしまう。
休憩を挟もうという、もじもじしていたコハルちゃんの提案は正直助かりました。
「ミドリ、どうやらここにはゲームコーナーがあるらしい。私はクレーンゲームにスカルマンがいないか見に行きたいからついて来てくれないか?」
「それなら、ユズも一緒にいかない?上手だよ、取るの」
「ほんとかっ!それは俄然楽しみだ……!」
どうやらアズサちゃんはスマホで調べ物を済ませていたようで、D.U.地区の大型サービスエリアの一画にあるゲームセンターに興味がある様子です。
ミドリちゃんも誘っていますし、どうやらここでの滞在は少し長くなるかもしれません。
ハナコちゃんはミドリちゃんとアズサちゃんに誘われて少しばかり恥ずかしそうにしているユズちゃんへ声をかけていた。
「だそうですよ、ユズちゃん」
「わ、私は別にそんな……ミドリだって取るのうまいし……」
「うふふ♡実は私もそんなにゲームとかをした事がなくて……よければ教えて頂けませんか?」
「も、もちろん!任せて、ハ……ハナコちゃん!」
「ふふっ。ええ、頼りにしてますね♡」
どうやら、この二人も一緒にゲームセンターの方に行くようです。
さて私はどうしましょうと、思って、袖を引っ張られたのに気がつきました。
「ヒフミ、ヒフミ」
「はい、アリスちゃん。どうかしましたか?」
「ヒフミも一緒に行きませんか?アリスはヒフミとも一緒に遊びたいです!」
その言葉に嬉しくなって。
だけど、私は今回は少しだけ時間が欲しいと断ることにした。
「ごめんなさい、アリスちゃん。ちょっとだけお買い物がしたくて……すぐ済ませてそちらに行きますから!」
「うぅ……分かりました。ヒフミといっぱい遊びたいところですが、ヒフミの都合があります。ここは一時別行動です!アリスは我慢します!」
「ありがとうございます、アリスちゃん」
彼女の頭をつい、幼い子にするように撫でてしまうがそれを嬉しそうに受け入れてくれる。
そうして名残惜しいが彼女達と少しだけ別れた私は。
「セイバーさん」
『(どうかしたかい、ヒフミ?)』
「───ちょっと、お時間頂きますね」
そう言って霊体化したままの彼を連れて、買い物へと出かけた。
本作の内容は
-
①Part6スレまで読んでる
-
②あにまんの過去ログまで読んでる
-
③ハーメルン版のみ読んでる