暗い道を一人歩いていく。
モモイちゃん達には先に帰ってもらいました。
時間も時間です。
明日の予定はまだ決まってませんけど色々なところを探索するかもしれません。
もしかしたらまたクルセイダーちゃん達で他自治区に行くとなれば誰かに運転を頼むかもしれません。
それなら、休められるうちに休んでもらっておいた方がいいです。
コハルちゃんやミドリちゃんは心配して反対してくれてたのもあって、最後までこちらに何か言おうとしてやめてを繰り返していました。
けれど、それを振り切ってでも行かなくてはいけません。
考えていかなくては。
調べなくては。
少しでも今は情報を。
ちょっとでも後悔のないように。
せっかくモモイちゃん達と一緒に選んだ道なのだから。
一つでも、喰らい付いてでも何かを。
何か得られる物を───。
『(こらっ。ヒフミ)』
『(ぁ……えとすみません、ぼうっとしちゃって)』
『(違うよね?)』
顔は見えないけれど、何となく彼が仕方がないなぁと言わんばかりの表情をしている気がした。
『(気負うなとは僕は言えないし言うつもりもない。戦いという物は、敵と戦うだけじゃなくその中で己自身の心とも戦わなくてはいけない)』
『(それは単純な勝ち負けよりずっと難しい。君みたいに意固地な子なら特にね)』
『(……べつに意固地じゃないですっ)』
『(さて、どうだろうねぇ)』
あ、明らかに私のことを揶揄ってますっ。
ひどいですセイバーさん!
『(だから、気持ちはすごく分かるよ)』
……なんて、ただ揶揄ってるわけじゃない事ぐらいわかってます。
付き合い自体、その時間は短くても、でもその中で通わせられた想いがあるから。
嗚呼この人はきっと。
『(僕にだって、そうやって肩肘張って頑張らなきゃって時期はあったからね)』
『(だけどね、ヒフミ)』
『(大切なのは結果じゃない、その過程なんだ)』
また一人になって、なんとなく心細くて、ここで何かを得ようと躍起になる私を。
そんな風に固くなりかけていた心をほぐしてくれる。
『(結果と過程はワンセットじゃない。例えこの先騙されただけで徒労という結果に終わったとして。だからといって君達の選択は、考え悩んだ時間は決して無駄にはならない)』
『(安心してほしい。何があっても僕が君の隣にいる。何も気にしないで、君は軽やかに、君達が選んだ道を進んでいけばいいんだよ)』
色んな事を考えすぎてしまって頭がぐるぐるするのを彼は爽やかに流していって、一番大事な部分だけを教えてくれる。
それはきっと、彼もまたそんな風に生きた時間があったからと思うのは邪推かもしれない。
だから今はただ、心からのありがとうを言う。
『セイバーさん……ありがと『(ああ、そうそう)』ぅござ……る?』
言おうとしたのだが。
『ほら、足元をよく見てしゃんと歩くといい。君はそう───少し鈍臭いからね)』
『(うぅ……またそうやって意地悪言う……もう知りませんからっ)』
『(はいはい。っと、右半歩手前に虫発見だ。踏み潰す前に回避した方がいい。ほら、言った通りだろ?)』
『(一言多いですっ)』
なんだか照れ臭くなって、戯れるようにからかいあう。
念話を通して私達は、そんな聖杯戦争なんかと全然関係ない、とりとめのないお喋りしながら深夜のミレニアムを歩き、誰もいない駅舎に潜り込んでその階段を進んでいく。
怖さもあって緊張もありす。
前回はハナコちゃん達がいたからなんとか話を聞き出せたけど、今回はどうなるだろうという不安だってある。
でも、大丈夫だって思えるんです。
だって私には───
例えこの場にいなくても友達が待っている。
失敗したら、またモモイちゃん達に慰めてもらって次に進んだらいいんです。
それに。
「こんばんは、シュロちゃん。でも実はセイバーさんはいるんですよ」
この場にはセイバーさんだっている。
だから今度はちゃんと『お話』できる。
もう怖がってあげたりなんか───しない。
「へぇ……それはそれは。あぁ手前は構いませんよ。戦争中にサーヴァントを連れてこないほど平和惚けされてたら、流石の手前もお手上げで……家まで
怖いなら怖いと言えばいい、つまらなかったら適当に誤魔化して話題を楽しい物に変えようと提案すればいい。
「あはは……シュロちゃんに着いて来てもらえるなら安心して帰れますね」
いつも通り、普通にお話すればいい。
だから今もいつものように笑顔で話す。
別に気取ったわけでもなく、繕ったわけでもない。
思うように振る舞っていく。
何せまだ今日お土産で買った分のケーキやプリンは食べた事ない種類ですから。
アリスちゃん達に食べられてしまう前に、ちゃんと帰らなきゃいけませんからね。
「随ぃ分とぉ……面ぁ、変わるもんですねぇ。イイ人でもできましたかぁ?」
「あはは……素敵なお友達がたくさんできました!」
「そりゃあまた……アハハっ……手前は
「ありがとうございます、シュロちゃん」
にたりと、彼女は笑う。
それは先日話したときの嗜虐的なそれとは違う、どことなく愉快気なそれに見えた。
「いやぁ結構ですよ、ヒフミちゃん。虚勢を張ってたヒフミちゃんも嫌いじゃあなかったですけど、今の方がずぅぅぅぅっといい」
彼女は笑う。
「だってそうでしょ?」
楽しそうにあどけなく。
「中身の腐った果実なんかより、青臭いそれの方がまだ食い出があるってもんですからねぇ……いひひっ」
高く、高く積み上げた砂のお城をその足で踏み潰す快感に震える童女のように。
私という
まあ笑ってる分にはかわいいですし、そういう年頃ってありますし、趣味は人それぞれですからね!
だからそう。
特に気にせず、私は話しかけます。
いざ、本題と洒落込みましょう。
「それで今日はお呼ばれしたわけですけど、どんなお礼が頂けるんですか?」
笑いはぴたりと止まりました。
「ああ……そう言えばそうでしたねぇ。いやぁ失敬、失敬。手前の不徳、大事な要件だってのにすっかり言いそびれてましたねぇ」
悪びれた様子なんて全然ない謝罪に思わず苦笑いをしてしまう。
噺屋さんだなんて自分で名乗った彼女だ、ここまでの流れだってある程度織り込み済みなのだろう。
だから黙って先を促せば、ほらこの通り。
鈴の音は転がり始めます。
「今日はそう、先日のお礼です。ヒフミちゃん。きっと手前様が欲しがってる、そう……情報ってやつですよ」
「それは……嬉しいです。でも、
けれど、つい聞いてしまった。
どうやって知ったのか、そして。
仮にシュロちゃんがマスターならそれを話してもいいのか、そんな確認を言葉の裏に隠して。
「いひひっ……抜けませんねぇ、肩の力。ねぇ、ヒフミちゃん。でも手前はヒフミちゃんのその抜け目ないところ好きですよ」
「あはは……ありがとうございます、シュロちゃん」
当然見逃されるわけもなく、意地悪についてきた彼女の言葉を流してしまう。
こういう嫌味だって彼女なりの
「いんや、いや。ほんとぉに好きですよ、そのいじらしい……おっとそうでした、お礼の話でしたねぇ。えぇえぇ、用意してますよ。他のマスターについてから、他のサーヴァントについても」
そう言って彼女は漸く気持ちよさそうに取り繕った仮面めいた笑顔を剥ぎ取って。
「ちゃあんと、用意してきたんですよ、手前」
けらけらけらけらけらけらけらけら
嗤った。
「さぁてなにから話しましょうか。手前がサーヴァントやマスターの情報をマスターでも集めてる理由?」
「それはもちろん、『困る』からですよ」
ゆっくりと、その小さな指が立つ。
その真上には時計があった。
「ヒフミちゃんも覚えがあるでしょ?自分の使ってた砂場を後から来た連中に邪魔される」
私達が立っている吹き抜けのプラットフォーム。
「そんな経験が。腹が立つじゃないですか、盗人猛々しいったりゃありゃしませんよねぇ」
その柱に掛かった電子時計。
「だから調べたんですよ。邪魔立てされちゃあ困るんです。我が物顔で手前が丹念に作った砂上の楼閣を潰されちゃ困るんですよ」
日が変わるのを示そうと、数字は目まぐるしく駆けていく。
「ただそれだけの噺、ですよ。ところで、ねぇ、ヒフミちゃん」
そして数字は。
けらけらけらけら
けらけらけらけらけらけらけらけら
けらけらけらけら
けらけらけらけらけらけら
けらけらけらけらけらけら
けらけらけらけら
けらけらけらけらけらけらけらけら
けらけらけらけら
───零を指して。
本作の内容は
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①Part6スレまで読んでる
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②あにまんの過去ログまで読んでる
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③ハーメルン版のみ読んでる