彼女と七番目が……そうですか。
連絡ありがとうございます、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎。
しかし七番目、彼女が例のお気に入り、ですか。
今次聖杯戦争において現状唯一と言っていい、正面から彼女を撃破できると目される陣営。
クックック……厄介な事にならなければいいですが。
モノレールは横転
とはいえ、とんでもない速度でドリフトをした以上はプラットフォームを薙ぎ払うような形で駅に突入する事になってしまいました。
そんなモノレールの車内にいた私が今無事なのは。
セイバーさんがドリフトする寸前、つまり私が急ブレーキかけるタイミングで魔力で車体をコーティングし終えた彼が私の隣に来てくれたからでした。
原型を辛うじて留める程度には滅茶苦茶になった駅舎。
私を助けてくれた彼は今、器用に瓦礫を避けながら歩いている。
傷だって一つもない。
あれだけの破壊音だったのに、彼は怪我する事なく私を守り切ってくれた。
まるでヒーローみたいです。
とはいえ、急いで駅舎という遮蔽物の中に入る為とはいえ、これだけ滅茶苦茶に突っ込んでしまって、もし他の人がいたらとゾッとします。
そんな気持ちを察してか、魔力探知の要領で、スキルを使って広げていた魔力で生体がいないかは見極めてからドリフトしたのだと教えられました。
正直無人であるのは分かっていても、ホッとしてしまいます。
もうこれで一安心です!
そう、だからもう安心しきっているんです、私は。
そんなわけですから、私はもう大丈夫なわけですから!
だから私は、意を決していつの間に地上に降りて、素早くデータセンターの中に侵入したセイバーさんに念話越しに声をかけました。
……あと、今すごいナチュラルに片手に持ってる見えない剣で窓硝子を切り裂いたの見てましたからね。
『(ぁ、あのっ!)』
すぐ近くにあるセイバーさんの顔に向かって私は言う。
『(どうかしたかな?ヒフミ)』
にこりと、いつもの爽やか王子様フェイスで笑っている。腹立たしいほど綺麗な顔は月明かりに照らされていっそ幻想的。
でも誤魔化されません。
『(もう降ろしてくださいっ!)』
いい加減私にも分かってきました。
この人絶対私のことを揶揄ってます!
『(はいはい、それはまた今度にしようね)』
『(今度も何もじゃありませんっ!)』
『(いいじゃないか。横抱きだと僕も守りやすいし君も疲れないんだし)』
そういう問題じゃありません!
好きな男の人でも彼氏でもない方にお姫様抱っこされるのは乙女の尊厳に関わるんですっ!
『(いーやーでーすっ!自分で歩けるんですっ!)』
『(はいはい)』
『(なんでセイバーさんが呆れた様子なんですかっ!うわぁん!コハルちゃんとハナコちゃんに言いつけてやりますっ!)』
帰ったら絶対言いつけてやると私が心に誓っていると、笑っているのになぜか疲れ切った感じが抜けきらない微笑みで端的にセイバーさんは告げました。
『(ヒフミ、ハナコはやめよう)』
その言葉で、もし無理矢理お姫様抱っこされたとハナコちゃんに泣きついた時の反応を脳内で予測してみる。
『(……そうですね)』
私は、何も言い返せませんでした。
いつかの目の笑ってないハナコちゃんを想像するのは難しくありませんでしたから。
時々というか特に最近、ハナコちゃんから母性を感じます。
ちょっと……過保護な感じの。
ハナコちゃん……*1。
結局私は、そのままデータセンターの屋上まで横抱きにされて連れて行ってもらうことになりました。
屋上に着いた時、最初に感じたのは月が眩しいということでした
微かに聞こえるサイレンの音や喧騒だって、ここからだと遠くの出来事のように思えてしまう。
霞んだ星空と、地上にぽつりぽつりと咲く光。
人工的で、でも人の営みと自然を感じる夜景が広がっていました。
思わず、感嘆するように声が漏れ出てしまいます。
こんな風に夜のミレニアムをちゃんと見るというのはない機会で、だからそちらに目を奪われて。
「へぇ、嬢ちゃんもこういう景色が好きかい?」
咄嗟にセイバーさんが一歩前に出られる。
低い、音。
セイバーさんのそれとは違う、荒涼とした砂漠に険しく聳える巨石を思わせる力強い声。
「俺も好きでな。
乾いているのに、飢えているわけではない。
暑さはあれど、痛くない。
フードを被って、デニムを履いて、鎧姿のセイバーさんやランサーさんとは違う出立ちの。
いつの間にかフェンスにもたれ掛かって、そんな格好をした大人の男の人から、その声は発せられている。
「あの場所も良かったが、この街も随分と良い」
全体的な雰囲気は荒々しい大地を思い起こさせて、けれどその深く澄んだ瞳はまるで凪いだ湖畔のように思慮深さを窺わせる。
「どうだいセイバー。お前はこの街を、この『世界』を」
野趣に富んだ飾らない、けれどどこか透き通った眼をしたアーチャー、だと思われるその人は。
「どんな風に見ている?」
気さくに、まるで見知った仲のようにセイバーさんへ尋ねられました。
「……君、だったんだね」
「ん?ああ、そうだな。てっきり気づいてるかと思ったが。なんだ、どうやらお互いアテは外れたってところか?」
「……君ほどの腕前だ、というのは考えたさ」
「へぇ、そりゃあ光栄だ」
私は思わず彼の顔を見てしまう。
だって隣に立つセイバーさんの努めて押し殺したような声は、どこか寂寥さを纏っていましたから。
「どうだい、今のマスターとは?」
「良好さ。今日は夜のドライブまで楽しんだからね」
「そりゃあいい。俺も久しぶりに鉄の馬でも引っ張り出すかな」
あれの名前はなんだったかと悩む彼につい、私は口を開いてしまった。
「ぁ……あ、あのっ!それっ!バイクっ!多分バイクっ!……です」
つい、勢いで言ってしまって。
最後は尻すぼみになってしまった。
だけどそんな調子の私に彼は快活な笑みを見せて応えてくれた。
「そう、それだ!バイク、バイクだな。よしよし、ありがとな、セイバーのとこの嬢ちゃん」
からりと笑う彼に毒気が抜かれてしまいます。
さっきまで戦っていたのが嘘みたいな、それぐらい明るくて心地よい軽さで。
これがもし私達を騙そうとしている演技だとしたら、私はきっと人間不信になるんじゃなんて馬鹿みたいな考えが浮かぶぐらい。
不思議な感覚でした。
目の前の彼が敵だと、さっきまで私達を弓で射抜かんとしてきて、シュロちゃんの偽物を撃って、セリカちゃんに『悪いこと』をしようとして、それでホシノさんと戦った人だなんて思えなかった。
「君は……変わらないな、アーチャー」
「おう、変わらんよ。俺は俺のまま、例えこの身が影法師になっても、遥かに彼方、何処に呼ばれても」
「そうか……そうだね」
二人の会話は、ぽつりと雨粒が落ちるように、淡々と交互に降る。
「君の……うん、君のマスターはどうだい?」
「佳い女だ。まだ若く幼い未熟な娘だが、あれはきっとこれからもっと伸びるぞ。ちっとばかしお転婆が過ぎるが、それも愛嬌だろうよ」
「そうか……そうだね。君を呼んだ、君のマスターだ。きっと佳き子だろう」
静かな確信に満ちた声だった。
寂しげで、哀切が籠って、だけど諦めたような動きようのないような。
そんな確信がそこに秘められている気が、隣にいる私には聞こえた気がしました。
「応とも。まぁ……ちと背負いこみ過ぎるのがな」
「恥ずかしながら、僕のところも同じ悩みかな」
「そりゃあまた。なんだ、一緒に酒でもどうだ?話なら聞くぜ」
「……そう、だね。この世界でなら、そういうのがあってもいいのかもしれない」
思わず驚いてしまった。
もうそんな風にお酒を呑もうだなんて、まるで本当に。
「なぁ……相変わらず、旅をしてるのかい?」
旅。
その言葉は確かセイバーさんとあの時話した中で出てきた言葉。
彼もまた、それを知っているのだという事がやはりという気持ちにさせた。
もしかしてですが、セイバーさんと目の前にいるこの方はお友達、なのでしょうか。
それとも前に少しだけ聞いた、前回喚ばれた時に仲良くなったのでしょうか。
「……それが僕の役目で。それこそが僕の最後の勤めだ」
「そうかい。そりゃまた
それは私には決して分からなくて、ただ二人の間にはきっと何か忘れられない何かがあるのだと。
「嗚呼、君も
「最後までは見届けられなかったがな」
「そうか……」
私にも、それだけは確信が出来ました。
「っと、そうだ。一応確認だが、
何でもない天気を聞くようにアーチャーさんは尋ねる。
不良品という言葉に引っ掛かりを覚えてしまうが黙ったまま話を聞きます。
その言葉が何を意味するのか、お二人だけで通じ合っておられるのもあって気にならないと言えば嘘になるでしょう。
けれどセイバーさんの事だからきっと私に必要だと思えば、躊躇わず教えてくれるから。
そして今、彼が私を想って言っていないなら、それはきっとそういう事なんでしょう。
「……分からないんだ。少なくともこの地に呼ばれてそれなりの時間は経ったのに痕跡どころか
会話は終わる事なく続いていきます。
気づけばじっと、喧騒もなく。
ただ星が互いを輝かせあう様子と共に、言葉は夜空へと吸い込まれていく。
「へぇ……まぁ
「アーチャー?君は一体何を……」
そんな時間がまるで永遠に続くような錯覚すら覚えて。
音は、ぴしゃりと閉じられました。
硬質な音がなる。決して大きな音じゃない。
けど、コンクリートの屋上にそれは鳴り渡る。
「こうしてきちんと御挨拶申し上げるのは初めてになりますね」
白のエプロン。
黒のドレス。
浅葱色のリボン。
純白のブーツ。
「私は」
そこに立つのは金紗の髪を綺麗に纏めた麗人。
「このキヴォトスにおける第七のマスター」
水を掬ったようなアクアリンの瞳は凍てついて。
「ミレニアムサイエンススクール」
夜空の下で咲く一輪が今この空間を支配する。
「C&C所属、コールサイン04」
「飛鳥馬トキです」
「───以後、お見知り置きを。阿慈谷ヒフミさん」
「飛鳥馬、トキ……さん」
目の前の少女が名乗ってくれた言葉を思わずと口ずさんでしまいます。
「えぇ。初めましてではありませんね。どうぞよしなに、第二のマスター」
初対面、ではありません。
何度かシャーレ、というか休憩室の備え付けベッドで寝ておられたり、ソファに陣取ってポテトチップスを食べておられたの見かけた事がありました。
「は、い……あの、飛鳥馬さん、はアーチャーさんのマスターなんですよね?」
だからこそ、強烈でした。
今のようなメイド服姿、という印象より、バニースーツやその上からTシャツや先生のYシャツを羽織っておられるラフな彼女しか知らないから。
そんな彼女が髪を丁寧に編み込み、その顔立ちを氷から削り出して、鋭く、けれど色を一切写さないでとこちらを見据える姿を。
私は知らなかったんです。
「肯定を。質問は以上でよろしければ、こちらから『提案』がありますが……それとも戦闘を継続なさいますか?もっとも、
猶予と言われて気づきます。
先ほどよりもサイレンの音が近づいている。
セイバーさんも私を連れてこの屋上まで安全に上がる為に、データセンターの内部へ侵入している。
直に、ここにもミレニアムの治安維持組織が到着するのは時間の問題です。
「その提案、というのを聞かせて下さい」
時間がないのなら、彼女の話を聞こう。
混乱してる頭で色々あれこれ質問している暇はありません。
だったら、彼女がくれる提案という名の情報をとにかく受け取って、帰ってゆっくり検討するという選択の方がいい筈です。
「畏まりました」
そんな私の考えに対して、何を思っているのか。
私の内心まで全部見透かしてしまうんじゃと思うぐらいに澄んだ湖面を思わせる透き通った瞳は逸れる事なく、瀟酒にカーテシーを行う。
「それでは僭越ながら───」
そうして第七のマスターと名乗った飛鳥馬トキさんは。
「阿慈谷ヒフミさん」
顔色一つ変える事なく、ただ事実を告げるように。
ぎちりと鎧が鳴いたのが聞こえました。
彼が半歩前、私を庇うように前へ立つ。
「ヒフミ」
短い、名前を呼ぶだけの声。
だけどありありとその意思は伝わってくる。
それを私は『無視』して彼女へと話しかける。
「……話を、続けて下さい。飛鳥馬さん」
「……ッ!ヒフミっ!」
言葉の代わりに、彼のサーコートをそっと掴む。
その反応に一瞬彼は息を呑んでから、長く吐き出した。
「……
「ありがとうございます」
私が彼を離すつもりがない、というのはどうやらしっかり伝わったようで。
それでも彼はやはり庇うように私の少しだけ前に立ち続けていた。
「話は終わりましたか?」
「はい、お待たせしました。時間、ないみたいですし続きを話して下さい」
続きを求める、そうしないと判断はしないというスタンスを言外に潜ませます。
少し強気かもしれないけど、彼女は気にした様子はなく語り出す。
「言葉通りの提案となります。貴女の持つマスター権を私に移譲して頂きたい。ただそれだけです」
「理由が分かりません。提案、と仰るなら私に理がないわけありませんよね?それを話して下さい。それとも、ただ戦力増強したいという安易なお願いですか?」
「いいえ。逆に質問しますが、折角
「……っ」
それはあまりにも、あんまりな言葉だった。
「これはサーヴァントを
「好き好んで人殺しになりたいのでしたら話は別ですが」
「貴女もお嫌なのでは?」
サーヴァントを殺す。
そうです、マスターを狙わなくても、戦って勝つという事は、そういう可能性だってないわけじゃありません。
分かってはいました。
分かってはいたけれど、言葉として突きつけられる事実に爪先から凍りついていく気がした。
それを、前に立つ彼は力強く否定してくれる。
「いいや、ヒフミ。彼女が言っている事は前提が違う、僕らは死者だ、アーチャーの言っていたように過去に生きていただけの影法師、サーヴァントに過ぎない」
けれどその否定は。
その
「───果たして本当にそうでしょうか?」
くすりと心から、
「……何がいいたい?アーチャーのマスター」
「簡単な話を。こうして対話できる知性、体温を感じる肌、マスターの為に怒りを持てる感情。他ならぬ貴方がそれを持ち合わせておられるようですが、そんな存在を第三者が見た時、そう簡単に貴方達サーヴァントは死人であると受け入れられますか?」
「……ッ、それは……」
そうそれは、正しくその通りでした。
以前語ってくれたようにセイバーさんは私達より昔に生き抜いた『先輩』で『先達』です。
少なくとも彼らサーヴァントは自分達を定義している。
きっとそれは彼らからすれば当たり前なのでしょう。
サーヴァントは過去の偉人、かつて生きていた誰かの陰法師。
魔術、という物が存在する世界で彼らは使い魔として扱われる。
だけど、こんな風にお話できて優しくてあまりにも普通に接する彼らを。
『生きていない』だなんて、私達は受け入れられるかは話が違う。
それは多分倫理観がどうこうとかではなくて、単純に存在する常識の問題。
サーヴァントどころか使い魔も、それどころか魔術なんて物すらないキヴォトスで、誰が彼らサーヴァントを人間じゃないと割り切れるでしょうか。
そしてそうである以上、きっと彼らの誰かを命を奪う形で倒してしまえば。それはきっと殺人という咎を私達マスターはきっと負う事になります。
「どちらにせよ、時間はありません」
「決断を」
「令呪とサーヴァントを差し出すか否か」
「御返事を頂けますか?阿慈谷ヒフミさん」
私はその提案を───。
「お断りします」
きっぱりと告げる。
「それはなぜ?」
「約束、しましたから……ハッピーエンドを」
「……ハッピーエンド、ですか」
「はい」
毅然と私が、私たちが目指す未来を告げる。
殺し合いをしなきゃいけないルールなんて知りません。私はセイバーさんと、補習授業部のみんなと、ゲーム開発部のみんなと、モモイちゃんとで。
最良の未来を掴み取る、ただそれだけなのだと胸を張って答える。
何より。
「人殺しが嫌だから誰かに任せる、なんて私はしません」
「人殺しだなんて、そんな事……っ!私が、私達が」
「そんな事は『誰にも』させませんっ!」
そうです。
ハッピーエンドを目指すなら、きっと誰かに任せっぱなしにしてしまうのも。
誰かが人を殺してしまうのもただ眺めているのも違うんです。
私は、みんなが笑顔になれるハッピーエンドを求めてるんですから。
深い、溜め息が一つ。
瞠目した彼女の口から溢れて。
それからそっと瞼を開いた。
「下らない、等とは申し上げません」
「とはいえ、残念です」
「どうやら私達は相容れないようです」
「貴方はハッピーエンドという結末を」
「私はかつて敗北した命題を」
「それぞれが望むままに追い求めるしかないのですから」
憐れみにも似た離別。
彼女はそれだけを告げて、踵を返した。
「アーチャー」
「応さ。手酷く振られたな」
「構いません。敵か味方か分からない不確定要素が盤面にあるより、はっきり
「なるほど、そりゃあ分かりやすい」
敵なのだと、そこになんの感慨もなく彼女は言いながらアーチャーさんを手招きして、自分を横抱きにさせる。
「それでは、
「きっとすぐそこまで来ているでしょうから、貴女もお気をつけて」
「……また気が変われば、いつでも仰って下さい」
「それでは」
彼女はそうしてアーチャーさんと共に屋上のフェンスを跳び越えて、夜景の中に溶けていった。
「な、なんとか帰れましたぁ……」
あの後。
『(お疲れ様、ヒフミ)』
『(はいぃ、セイバーさんもお疲れ様でしたぁ……)』
モモイちゃんが何処からともなく*4用意してくれた入館証を使って夜間入り口から部活棟へと入る。非常灯の明かりだけで中は暗いが、それでも帰ってこれた安心感は大きい。
『(しかしマスター権の譲渡か……)』
『(気になりますか?)』
『(……まぁ、あまり良い思い出がね。以前参加した聖杯戦争でも形はちょっと違うけれど、そういう事があったからね……)』
どうにも本当にいい思い出ではないのでしょう。
かなりげんなりとした重たい声が聞こえてきました。
とはいえ、度々話にも出てくるセイバーさんの参加していたという聖杯戦争。
やはり経験というか、実際に参戦していたからかこういった知識は本当に頼りになります。
『(はぁ……やっぱりマスターになるとそういう手を取る人出てくるんですね……)』
『(ただ彼女に関しては、僕が実際に体験した二つの前例とは違う気もするかな?)』
『(二つも!?)』
なんて会話をしながら、私達は歩いて。
「あれ……?アズサちゃん?」
「おかえり。ヒフミの事を、待ってた」
「少し、話さない?」
体育座りでそう言う彼女に誘われて、私の今夜最後のお話が始まりした。
明かりのついていないミレニアムの廊下。
その中で白い人工的な光を放っている自販機。
その傍に設置されたベンチに隣並んで腰掛けて、私達はケートピス片手に話をする。
「お疲れ様。どうだった?」
「めちゃくちゃでした……」
シュロちゃんに会ったかと思えば彼女は脳天撃ち抜かれて、その後はモノレールに乗って戦って最後はドリフトしながら駅舎自体をストッパーにしつつ緊急停車して。
その後はトキさんと話をして。
それを余すことなく、隣にいる大切なお友達に全て伝える。
彼女は頷き、相槌を打ちながら話を聞いてくれる。
「ひどいんですよぉ!セイバーに横抱きはやめてって言ったら次は小脇に抱えた挙句『……明日の朝食は少なめをおすすめするよ』なんて言うんです!信じられませんっ!」
「ああ、ひどいやつだ。あとで私が手榴弾をその口に叩き込んでおく」
「ぜひっ!」
セイバーさんへの愚痴を吐いたり。
「帰って来たら部室にユウカが待っていてな。何事かと思ったらどうやらモモイ達は提出期限切れの書類を別の書類と紛れ込ませて提出したらしい。しかも先週締切」
「え……それ大変だったんじゃ?」
「ああ、もうカンカンだった。気になって、あれがモモイの言っていたセミナーの太もも大魔王か?って聞いたらユウカがもっと怒ってしまって……ちょっと前まで太ももで挟まれてた」
「ゆ、ユウカちゃん……」
私と別行動になった後の話をしたり。
「えぇ!?ゲーム大会したんですか?」
「ヒフミが帰ってくるまで待とうってみんなで話をして、その間ゲームをしたんだ。初めてやったけどあれは面白いな」
「うぅ……私もやりたかったです……」
「うん、だから明日というか今日の夜に、またしよう。今度はヒフミも一緒だ」
そんな風に今日の夜の予定を立てて。
二人で話して、なんだか肩の力が抜けてしまって。
うとりと、舟を漕いでしまう。いけない、折角アズサちゃんとお話してるのに。だから起きようと落ち始めてきた瞼を擦ろうとして。
「……ぁ」
そっと彼女が、私の肩を抱き寄せた。私よりも細くて、小さくて、可愛らしい肩。その肩に、そっと私の頭が乗る。
「本当は、布団に行くのがいいんだろうけど」
廊下は少しだけ冷房が効いている気がした。
だって今私を包む彼女の羽の暖かさはこんなにも心地よくて。
「もう少しだけ、二人でいたいから」
まるで外の世界なんて、色んな大変な事なんて夢だったみたいに真っ白な優しさが私の視界を覆う。
「寝たいなら私の肩を貸す。だからヒフミ」
「私のわがままを叶えて?」
少しだけはにかんで、頬に朱を指すアズサちゃんに私は返事の代わりにその腰へ縋り付くように腕を回す。優しい香り、大好きなアズサちゃんが傍にいてくれる証拠。
「今日も一日生きていてくれてありがとう」
「お休みなさい、ヒフミ」
この人のとなりに帰ってこれたあんしん感。
それに身を委ねて。
わたしはねむりに落ちていった。
早朝。
まだ朝日が差し込むかしないかの境目。
爽やかな空気が開いた窓から流れてくる、その筈なのに。
これ以上ないほど、重い空気。
流れてくる音。
それは何故か13の階段を思わせて。
『見て下さい!この惨状!昨夜遅くに突如一人でにモノレールが発車し、こちらの駅へ横になりながら飛び込んできたとの事です!』
『ミレニアムモノレールは本来その構造からそもそも脱線するということはありません!一体どれほどのスピードを出していたというのか!』
『またモノレール自体にも通常の弾痕だけでなくまるで迫撃砲を受けたかのような大きな跡が見つかって……えっ!?』
『あっ!たった今、ミレニアムサイエンススクール生徒会セミナー書記早瀬ユウカ氏が現場に現れました!!』
『ちょっと、え、あれ?いやほんとに肌艶はやたら潤っていますが……とにかくお疲れのご様子です!……が、わたしもクロノスハイスクールの生徒!お疲れであろうと彼女から今回の件につい『貸して』……あはい』*5
『この事件の関係者』
『全員首洗って待ってなさい』
『何処に隠れようと必ず見つけ出して地の果てまで』ア、センセイダー!ヤア、ノア、コユキ。タイヘンダッタネ
『追いかけちゃいますからね♡以上、現場からは早瀬ユウカがお送りしましたー♡』
───ピッ。
「ヒフミちゃん?」
まずいです。
目が笑っていません。
完全にガチおこモードのハナコちゃんです。
モモイちゃんはまだ寝てるし、アリスちゃんは起きないモモイちゃんのほっぺをいじって遊んでるし、ミドリちゃんとユズちゃんは目を合してくれません。コハルちゃんとアズサちゃんは朝から格闘ゲームしてて……キャスターさんはなにか作ってます。
み、味方がいません。
……かくなる上は!
「ち、違いますっ!聞いてくださいハナコちゃん!あれはセイバーさん!セイバーさんがしたんです!」
「なっ!?君だけ逃げる気かい!?ずるいぞ!ヒフミ!聞いてくれハナコ!サーヴァントとマスターは一蓮托生!つまり今回の件は連帯責任だ!」
なんとか言い逃れるためにセイバーさんに甘えますが彼は彼で言い訳をはじめて私まで巻き込むつもりです。そんなの認めません!
私はそんなの悲しいお話なんてい「二人とも」……。
「ちょっとお時間頂きますね」
「「はい……」」
断定系でそう言われて、私達のお時間は2時間貰われてしまいました……。
1じゃんね☆
この聖杯戦争は、型月世界のそれとはまた違う足枷があるよって話とアーチャー陣営の顔見せだったじゃんね☆
一体あのアーチャーはだれじゃんね?
とりあえず今回で5日目はおしまい!Part2スレの内容も明日投稿分でしゅーりょー!……長かったじゃんね☆
明日からはいよいよ魔の6日目!次の陣営も顔出し始めるし、1は初っ端から頭抱える事になった思い出深い安価内容もあるじゃんね☆
ところで。
今日まで青春しっかり満喫してもらったし。
そろそろアクセル、いいじゃんね?
本作の内容は
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①Part6スレまで読んでる
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②あにまんの過去ログまで読んでる
-
③ハーメルン版のみ読んでる