セミナーの会計
「それで今日はどうしましょうか」
いつもの定例作戦会議は朝ごはんを食べながらとなりました。
「今のところ得られた情報はまとめると、アーチャーのマスターがトキさん。それからライダーのマスターがアルさん、でしたっけ?」
「それならトキを探すならミレニアム、アルを探すならゲヘナですね!」
アリスちゃんの言葉を聞きつつ、なんとかありつけた朝食にかぶりつく。
隣でモモイちゃんがまだ眠たいのか舟を漕いでいるのをアリスちゃんが楽しそうに甲斐甲斐しく口に食事を運んであげています。
「トキさんについてだとC&Cの人達に聞くのがいいですかね?それか先生とか?」
「先生は難しいかも……あの、黒服って人……が言ってたし……」
「アルさんって人は起業してるみたいだから、行く前に連絡とかしてD.U.と安全なところで会えたりしないかな?」
トキさんについて、彼女の口からはっきりと
ですが相手のサーヴァントの方、そのクラスはアーチャー。
なるべく彼女達の拠点を見つけておきたい気持ちもあります。
一方アルさんに関しては、今はどこに事務所を構えているか、まずはそこを検索するか、ユズちゃんの言う通りモモトークで連絡を取ってどこかで落ち合うかでしょうか。
「いっそユウカに話しちゃうのもありかな?」
「うん、それもありだな。ヒフミの話ではあの場では
ユウカちゃんのいるセミナーに協力を求める……のと昨晩の謝罪ですね。
うぅ、いけないことと思っても、補填の事を考えると
「そういえばセイバーさんはアーチャーと顔見知りなんでしょ?どんな英雄なの?」
「ああ、彼はアーラシュ・カーマンガー古代ペルシャで60年続いた戦争に終止符をうった……偉大な英雄さ。宝具については……少し特殊な物でね。少なくとも今の様子なら間違いなく彼のマスターもアーチャー自身も
「名うての弓使いか……うむ、一筋縄ではいかぬ相手であろう。マスターも同様に戦力を欲しているというのも気になる」
「(
「真名や宝具についても分かってるとなるとアビドスでの情報収集は必要ないかもしれませんね」
アビドスに行けばライダーさんやアーチャーさんと戦ったホシノさんから話を聞けるかもしれませんが、まだ分かっているマスターは4人。
万が一もありますし、アビドスに行くのは情報収集に限れば急務じゃないかもしれませんね。
「そういえば、ヒフミ、モモトーク来てなかった?」
「あ、お茶会だっけ?そうなるとトリニティだね〜」
コハルちゃんの言葉に、目をしばしばと瞬きしながら目を覚ましたモモイちゃんが補足する。
元気になったからお話しようということだった。
それに確かウイ先輩も今日の午後以降なら『ゴルゴネイオン』の詳細な情報を渡せるらしいです。
ただそうなると何かまたお菓子がいります。
お、お小遣いがぁ。
「さて、ヒフミ。今日はどうしようか?」
「あ、ところでハナコさん。僕はそろそろ膝を崩してもい「頑張ってください♡」はい」
私の考えは───
『とりあえず、謝罪をしに行きたい?』
『うぅん……大魔王ユウカ相手だから個人的にはおすすめしないけど』
『でもそれならヒフミ一人で行くのは嫌でしょ?』
『一緒に行くよ?』
そういうわけで、情けないかもしれませんが。
みなさんに着いて来てもらうことにしました。
「ぅぅ……弁償、とかになったりするのかな?」
「だ、大丈夫だよ、コハル。ユウカ先輩優しいから……多分」
「最悪の場合、我が例の廃墟とやらから資材をかき集めて直すというのも手だろうな」
「廃墟、ですか?」
謝罪についてもそうでしたけど、お金の問題を考えるとお腹が痛くなるばかりの私にとってキャスターさんの言う『廃墟』という単語に思わず反応してしまいます。
どうにか、こう……あんまりお金がかからない方向で!!
「廃墟っていうのは自治区の外郭に接して広範囲に広がる廃墟群、というか放棄された一つの『都市』、自治区規模の廃都なんです。学生の間で一時期流行ってた噂話で、『宝物』があるとか誰もいないのに稼働してる『軍需工場』……まあいろいろ」
ミドリちゃんからの説明を聞いて思い出すのは、トリニティで立ち入り禁止されている『カタコンベ』。
ミレニアムにもそんな場所があるのだという。
「アリス、トキから聞いたことがあります。『ケセド』という巨大なボール型のモンスターがいるらしいです!」
「そういう場所に行けばし、死罪?判決?「し、資材だよコハル」ありがとユズ……とにかくそれも手に入るから!あんまりヒフミも心配しなくていいから!」
「うん、必要ならキャスターの使い魔だけじゃなく、僕ら自身で資材を入手しに行けばいい。大丈夫、きっとなんとかなるよ」
みんなに励ましてもらいながら、私はどうにか心を立て直しつつ、ミレニアムタワーのエレベーターに乗り込みました。
……は、ハナコちゃんずっと黙ってますけどもしかしてまだ怒ってるんでしょうか!?
「(ミレニアム生徒であるトキさん。彼女のサーヴァントは遠距離攻撃に長けた弓兵……なら彼女の拠点は……いえ、流石に考え過ぎでしょうか)」
「(ミレニアムサイエンススクール生徒会『セミナー』。ミレニアムで最も地上高のあるミレニアムビルを本拠地とする彼女達ともし飛鳥馬トキさんが繋がっている……そんな可能性は)」
ミレニアムタワーの最上階。
ガラス張りの現代的、というより近未来的な感じすら漂わせるオフィス。
ティーパーティーの事務本部や応接間、バルコニーとはまた違う、合理性を追求した都会的な機能美。
そこに、いたのが。
「……急にアポ取ってきたかと思ったら何の用?昨日の書類の件ならもう反省したの分かったから気にしなくていいから。悪いけど今ちょっと立て込んでて」
書類と睨めっこしながら机に齧り付いている青髪の女の子で、今朝ニュースに映っていた。
「あはは……お久しぶりです、ユウカさん」
「は、へ?……ヒフミ?なんでミレニアムに?ってなんでゲーム開発部の子達と一緒に?」
セミナーの会計担当であり、イタズラ☆ストレートでアイドル活動をご一緒した早瀬ユウカちゃんがそこにはいました。
……わ、本当に肌艶いいです、私もキャスターさんに頼んでみましょうか?
「ごめんなさい、珈琲ぐらいしか用意できなくて」
そう謝りながら人数分の珈琲を(モモイちゃんはジュースが飲みたいと言って白湯をキャスターさんから強制的に渡されています)渡してくれながら、彼女もソファに腰を据えました。
「でも驚いた。貴女の方から遊びに来てくれるだなんて……でもごめんなさい。本当なら話してたノアやコユキを紹介したいんだけど今現場に出てて」
「あの、モノレール……ですか?」
「来てびっくりしたでしょう?普段はあそこまで酷い事は早々ないんだけど……」
頭が痛いと眉間を摘んでいるユウカちゃんを見て、なんと言って切り出すべきか頭の中で考えつつも中々口から言葉が出ない。
見た感じですが、私達が訪問してからのユウカちゃんの機嫌はそれほど悪くない、様子でしょうか。
問題は正直に話す、と言ってもそもそもどこから説明するべきか。
とはいえ、それでも話始めなくてはいけないし、その結果、何も得られなくても私が選択肢がなかったとはいえ迷惑をかけているのも事実。
きちんと伝えなきゃいけません。
私は、少しだけ勇気を出して。
まずは彼女への謝罪を口にしました。
「ユウカさん、ごめんなさい」
「ん?あ、いいの!大丈夫、忙しいなんて愚痴混じりに言ったけど、久々にヒフミの顔見れて私も嬉しかったし」
「……違うんです。その、私」
息を吸って、吐いて。
私は、彼女にはっきりと言った。
「モノレールと駅、それから線路を壊してしまったの、私なんです」
「……え、は……ああ!そういう冗談なんでしょ?もうヒフミってば、びっくりさせないでよ!あ、モモイ!さては貴女達が「違うんです、ユウカさん」……やめてよ、そんな目。そんな風に真剣に見てこないでよ。茶化せないじゃない」
「きちんと、説明します。長くなるけど、聞いて頂けますか?」
私は、セイバーさんの霊体化を解くように頼んだ。
「……『光学迷彩』?それにヘイローもないってまるで先せ、いえ……どこかで見た事があるような」
「ユウカさん、今からお話しするのは。冗談にしか聞こえない話になります。それでも私は約束します、一つの嘘もありません」
「……分かりました。なら私もセミナーの早瀬ユウカとしてお話を伺います」
その言葉に、私は唇を噛み締めながら感謝の気持ちを込めて頭を下げて。
「始まりは5日前の夜、あの列車事故からでした」
あの日から今日までにあった事と聖杯戦争について話出しました。
「……そして昨日、データセンターから脱出して、今朝のニュースを見て。改めてユウカさんに会いに来たんです」
私とモモイちゃんがマスターで、今聖杯戦争に巻き込まれて、そして昨日トキさんと戦った事まで。
長い話で、乾いた喉がまるで風邪でも引き始めみたいに痛む。
途中で、珈琲に口をつける事なんて出来ませんでした。
話せば話すほど緊張が高まる。
正直、トリニティであればなんとかなるのではなんていう甘い考えがあるのは自覚している。
けどここは他校、他の『自治区』だ。
一歩間違えれば、いえ、普通なら駅と車両と線路を壊しました再建造費用は何十億ですなんて事になれば、まず自治区同士の問題にまで発展する。
ましてや嘘を言わないとはいってもそもそも聖杯戦争自体が当事者でもないと、とてもじゃないけど信じられないでしょう。
私も逆の立場なら何を寝ぼけてと言ってしまっても仕方ないと思います。
「あの時、モノレールを使ったのは私の選択です」
それでも。
「ごめんなさい。言葉で何を言っても仕方ないと思います。それでも、どうか謝らせて下さいっ。ご迷惑をおかけしてしまって、本当にごめんなさいっ」
それでも謝らない、なにも始められない。
正直誤魔化しておきたい。
黙っておきたい。
けど、私のせいであんなに疲れ切った顔を友達にさせておいて、なんの説明もなしにのうのうと過ごすなんて私は嫌ですっ。
「ごめんなさい……少し、出て行って頂戴」
「ユウ「いいからっ!……お願い、少しだけでいいの。時間を頂戴、モモイ」……分かった」
私達は部室へと戻った。
「ものの見事に魂抜けてますね……」
「ヒフミ、大丈夫ですか?……返事がないただのシカバ「はいはい、アリスはこっちでゲームしようねー」むぅぅぅぅ!」
正直、もうこれ以上ないってぐらい。
1時間は喋り倒して、泣きそうになるのも堪えて、頑張ってみましたけど……やっぱり駄目でした。
「まぁなんとか釈明する方法はありますから、そう気を落とさないで下さい、ヒフミちゃん」
「そうですよ!命懸けで戦ったんです!ならユウカだってちゃんと必ず分かってくれます!……ちょっと今回は空気に飲まれちゃったけど、次は私も一緒に!」
ハナコちゃんやミドリちゃんが励ましてくれますが、どうしても心に力が入りません。
「き、気にしすぎ!大丈夫よヒフミ!話だってすごい分かりやすかったからっ……だから!きっと分かってくれるからっ!」
「そ、そうですよ……大丈夫、ユウカ先輩優しいから……あんまり落ち込まないで、ヒフミちゃん……」
けど、けれど。
そうは言われても。
お友達が、大事なお友達を失ってしまったかもしれなくて、しかも最悪の場合、矯正局送りだって考えられて、何より彼女に。
もしユウカさんが私の話した聖杯戦争についての事を全部作り話だと判断したら。
彼女は、私に『二度裏切られた』事になる。
他自治区の友達に自分の住む街を壊されて、その上謝りに来たと思えば作り話をされたと思ってしまえば、それがもう彼女の『真実』なのだ。
そうなったらきっと、彼女の心に酷い傷を───
「いるんでしょ?入るわよ」
控えめなノックが部室内に響いた。
入室した彼女はさっきよりもずっと疲れた顔をしていた。明らかに草臥れている。
私の知っていた彼女は、ダンスレッスンで疲れていても、やり切ったという笑顔で溢れてた。
今のように苦虫を噛み潰したような顔はしていない。無言で、慣れた手つきで、彼女は椅子に座る。
私も、みんなも、そしてユウカさんも誰も口を開かない。けど、言わなきゃ、せめて、せめて全て駄目だったとしても。何もかも嘘だと思われても、それでも友達に───。
「……嘘、だと思ったの」
「言っている事の少しだって理解『したくなかった』。ヒフミとモモイが殺し合いを『強制』させられてる?五日前の列車事故、その被害者はヒフミだった?その上、御伽話の英雄を呼び出して戦うですって……非科学的やオカルトを通りこして、そんなのあり得ない」
「揶揄ってるんだって。馬鹿にしてるんだって。でも」
「ステーションも車両内のも監視カメラは全部データが破棄されてて何が起こったかは分からなかった、けど、ヒフミ。貴女の頭髪が見つかった。それも本来入室できない運転席から」
吐き出すように、振り絞るように。
「貴女が、モノレールを壊した事実だけは、確認できた」
そっか、と納得に似た喜びみたいな物が私の中で『はらはら』と落ちた。
彼女はきっと聖杯戦争なんて物は信じられないかもしれない、彼女の中で私は嘘つきでしかないかもしれない。けれど、モノレールを壊したという事実だけはちゃんと、彼女の中で『真実』になったのだと気づいて。
もう駄目な事は分かって。それでも謝って。許しを乞うんじゃない。少しでも貴女の心につけてしまった傷を、ちょっとでも。
だから───。
「ヒフミは『嘘』なんて一つもつかなかったんだって、その時になってやっと確証を待てたの」
「あの時、あの場所で。すぐに貴女の話を信じてあげられなくて、ごめんなさい」
だめですよ、おかしいです。
「聞いた時は何を話し出したのかと思ったの。でも、時間は短くても貴女とは一緒に歌って踊った仲間だから。その中でヒフミ、私は貴女がどんな人か知っている」
だって、そんな、こんな。
「それでも小説やドラマみたいな話だから、どうしても、何か一個でも確証が欲しくて。現場にいるノアに頼んだの。ヴァルキューレより先に運転席周りの痕跡抑えてって」
「ほとんどめちゃくちゃになってたけど、一本だけ髪の毛をうちの保安部が見つけてて、だから貴女が昨日の夜運転席に『居た』事実が、確証が手に入った」
「その知らせが入って、ようやく、私は『やっぱり』本当の話なんだって。納得したの」
そっと私の頬をぬぐって、彼女は笑う。
「遅くなってごめんなさい、ヒフミ。謝りに来てくれてありがとう、正直に全部話してくれてありがとう。大丈夫、モノレールの事ならすぐになんとかするから」
「モモイも来なさい。そう……こら、恥ずかしがらない。二人とも」
「大変だったわね。話してくれて、今日まで一生懸命頑張ってくれて、生きていてくれて」
「ありがとう───。」
そう言って彼女は私達を抱きしめて、赦してくれました。
抱きしめられ、なんとかすると、力強く言ってくれた彼女は改めて居住まいを整える。凛とした姿はかつて見たのとは違う、ナギサ様と同じ一つの自治区を預かる重役を背負った生徒会の役職持ちたる姿。
「で、私達に協力してほしい事があるのね?」
「モノレールの件に手を回してもらっておいて、こんな風にお願いするのもあれなんですけど……」
「あれはうちの生徒も関わってるから仕方ないわ」
ユウカさんはそんな風に言ってくれるが、やはり申し訳なさもある。その事に気づいてか、それならと彼女は言う。
「幾つか依頼したい事があるから、それをお願いしてもいいかしら?そうすれば、私は依頼に応えて貰った報酬という形でモノレールの件の処理は勿論、他にも表立ってバックアップできる……ほら、ウィンウィン、でしょ?」
もちろんそれが気遣いなのは分かったけれど、だからといってそれをこれ以上指摘するのは野暮なのも分かる。だから私はそれには触れないで、依頼内容を聞く事にしました。
「依頼ですか?」
「ええ、色々あるけど……早急に必要なのはミレニアムの郊外に面した『廃墟』についての調査」
「それは……」
ユウカちゃんから出てきた廃墟という単語には聞き覚え、いえついさっき前にミドリちゃんから聞いたばかりの言葉。
「廃墟自体はうちの会長がかなり熱心に調べていて、その調査を専属する『部活』もあった」
「ただ、その部活と連絡が取れないし元々うちとは組織レベルで仲が良くなくて。だっていうのに、ここ数日前から妙に廃墟が『騒がしい』のよ」
「ドローン等から算出したら、比較的ミレニアム自治区境界線に近い場所の廃工場が稼働してる」
「貴女達にはまず、その調査をお願いしたい」
「その見返りに私達セミナーは貴女方を支援する」
「どう?」
その願ってもない言葉に私達は、大きく頷き───。
1じゃんね☆
ユウカちゃんが仲間入り、じゃんね☆
本作の内容は
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①Part6スレまで読んでる
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②あにまんの過去ログまで読んでる
-
③ハーメルン版のみ読んでる