Eli, Eli, Lema Sabachthani.
主の復活を待つ預言者は侵略者に備える。
Miserere mei, Deus, secundum missericordiam tuam.
慈悲の柱は打ち建てられる。
ATEH MALKUTH VE-GEDULAH LE OLAM AMEN.
足を踏み入れた少女達に問うは堅牢なる王国は問う。
───汝ら侵略者、その咎に何をもって贖うか、と。
二つの隔壁を越えた先で、ヒフミ達を迎えるは至宝の玉体。
キヴォトスで喪われた伝承に語られるは生命の樹。
その第四の扉に座すは堅牢なる王国。
即ち、慈悲深き苦痛を持って断罪する裁定者。
曰く、権力を通じて動作する慈悲。
───その貴き名は、CHESED。
球体状の大型演算装置たる本体とそれを覆う強固な球形外骨格たる玉座。
そしてその預言者たる役割に従い建造される機械の軍勢。
デカグラマトンが接触した事で預言者へと変貌したAI、それこそが今目の前に鎮座する第四セフィラ・ケセドであった。
だが、違うと。
種類は違えど、これまで特異現象に関わってきたヒフミやアリス、コハルは理解する。
これはケセドであってケセドでは
そしてその宿敵への理解は、正しかった。
「ッ!来ますッ!」
「78.6.54.84:114.150.114.120.30.78: 54.84.120.30.108.18.30.96.120.54.90.84:78.90.24.30:6.18.120.54.132.6.120.30.24」
「アリス、構えてッ!」
彼女達の前に君臨するのはケセド、その未完成たる姿。
それはヒフミの考えた『急拵え』、そしてハナコ達が危惧した事の正解。
此処にいるのは手負いの王国。
かつて一度だけ確認された
「はい!勇者の力、お見せします!」
「84.90.138:36.90.108.18.54.12.72.30:30.144.30.18.126.120.54.90.84」
だが侮るなかれ。
第四のセフィラを人工的に体現しているとはつまり。
主の御技、その一端に触れたという事を。
人工神聖、或いはセイバー達のいた世界の理で語るならば『人工神霊:デカグラマトン』の眷属。
例え傷つきその玉体を守る兵士が数を減らしていようと、その威光に翳りはない。
「さぁ───戦いだ」
「「「はいっ!」」」
「ッ!?……随分と身持ちが硬いな」
合戦の合図と共に跳躍。
その分厚い殻を砕かんと剣を振い、だが弾かれこそしなくとも刃は進みを止めていた。
その瞬間、悪寒が奔る。
セイバーは僅かな切り込みしか入らないその殻をいい事に、剣を軸として軽やかに一回転。
その反動のまま、ヒフミ達のいる場所まで戻った。
『ケセド?うーん私もそんなに何回も先生に呼ばれたわけじゃないけど……あ、なんか周りの取り巻き破壊しないとダメージ通らなかったよ!』
セイバーの脳裏に、ブリーフィングでのモモイの言葉が蘇る。
ケセドなどと大仰な名前をつけているだけはあると、改めて再確認する。
「(一見科学的な様相はあるけれど、僕らでいう伝承防御の類か。民を失わない限り王国は滅亡しない……ってところかな。まったく……)」
なんて皮肉だと、口元を歪めながらもセイバーは蒸気の如く怪しく輝きを立ち昇らせる眼前の『王』、いや『王国』を見据えた。
「378. אפס」
その球体然とした白は、より強く赤き発光を湛える。
システム稼働の兆候。
即ち、スキル『剥き出しの玉座』、発動。
その能力は己と同期した軍需工場を強制稼働させる事による兵力の増強。
左の奥、ゲートが開き現れるのは1機のオートマタ。
預言者に殉ずる白き尖兵。
それがヒフミに向かって銃を構えようとして、
「させないんだからっ!」
セイバーが駆けるその一瞬、偶然、そして彼ににとって『幸運』な事に。
彼の動き出しに合わさるようにして、コハルは機械兵の動きを咎めた。
下江コハル、15歳。
未だ身体も幼く、戦地での経験も少ない。
だが乗り越えた修羅場の質、そしてその心に宿す魂は。
あの正義実現委員会の副委員長が認めるほど。
そう、下江コハルは。
「行くわよ───ッ!」
可愛いだけでは終わらない。
その戦闘能力は決して高くはないだろう。
控えめに見積もってもヒフミと同じか体格的な面からそれより劣る部分もある。
だが下江コハルは確かに正義実現委員会の所属。
つまりは
何より彼女は行動と思考が直結している。
考えるより先に動く、直感型。
あろう事かその戦闘ルーチンを組む頭脳は意外にも、なんの偶然か
目の前の情報を脊髄反射で処理するというのは、戦場においては悪い事ではない。
この手の戦士は経験を重ね、己の中に判断材料を増やすほどに強くなる。
そして、この夏に駆け抜けた補習授業部での経験。
それが今、活きる。
歴戦のセイバーの動きにすら、偶然とはいえ追い縋ってみせた0.11秒の脊髄反射による『妨害』。
その『幸運』は正しくセイバーを補助し。
「ナイスアシストだッ!コハルッ!」
まずは一機、素っ首を撥ね落とす。
コハルの妨害により優先対象を図り兼ねた出来損ないの兵士では、セイバーの動きを防ぐことなぞ叶わない。
「さぁ、機械の王よ───」
すれ違うように放たれる電磁の砲撃。
それは嵐のようにセイバーとコハルへと殺到するも、セイバーの掴む風を纏った豪剣によって相殺される。
「まずはお手並み拝見だ」
セイバーが信頼を置く、風の宝具。
それを放つはオイルの付着すら許さぬ剣速。
見事に雷撃から自身とコハルの身を守った彼は、静かに風音を吹かせる得物を突きつけて笑った。
その言葉、その笑顔に。
「ヒフミ、合わせますっ!」
「わわわ……えと、あの、え、え〜いッ!」
ヒフミ達は続く。
「この一撃で……撃ち抜きます!」
アリスが手に持ち、輝きを迸らせるは『光の剣:スーパーノヴァ』。
本来宇宙戦艦用に開発された推定重量100kgを優に超える巨大光粒子放出型レールガン。
キヴォトスでもある程度運動神経のよくない生徒では持つ事も難しく、仮に持てたとして撃てたとして、それをその体幹で支え、反動を抑え、メインアームとして日常的に肌身離さず持ち運ぶとなれば。
天童アリス以外が選択する筈はなく。
だからこそ天童アリスは光の剣を握りるに足り得た。
だからこそ光の剣は天童アリスを主人とした。
そう、お互いが最高のパートナーとなったのだ。
「貫けッ!バランス崩壊ッ!」
光が放たれる。
正しく勇者の輝き。
ビームなどと安直に呼ぶのも憚れる光の奔流は、民は消えたと王国に告げる。
セイバーの推理が正しければ、それは一時的な伝承防御の攻略。
故に、ケセドは輝きに焼かれて、城門を開け放ち損傷を負う。
それに合わせて放たれた30発のフルオート射撃。
鈍い輝きを放つ5.56x45mm の真鍮は、剥き身の王に突き刺さる。
「コウゲキ、コウゲキ」
「ウツゾ、ウテルゾ」
「コウゲキ、ソウシャ」
喋らないの!?とモモイに強請られ、ウタハ達と共に付け加えた音声対応機能(及びBluetooth機能)で片言ながら右腕より弾丸を放ち、追い討ちをかけるヘルタースケルター。
三者三様の攻撃は決して無視できない損耗をケセドに与え、その沈黙を長引かせる。
「チャージタイムは!?」
「じゃっ、ジャスト1分!」
「畳み掛けましょう!!」
ケセドがその城門、球状外骨格を開け放ち、システムを再起動するまでの時間。
その絶好の猶予に少女達は鋼の戦意を送り出す。
『(セイバーさん!スキル……全部を!)』
銃火器を撃っている最中で指示は聞こえない。
だからこそ念話での合図。
その内容は好機を逃すなという物。
『(ああ、任せてもらおう)』
宝具は使用を控える。
ここから脱出する場合、地下にあるこの場所で
何より、いかにここが『廃墟』の中でもミレニアムに近いといっても、廃墟は廃墟。
人目につかない立ち入りが禁じられた領域。
『奇襲』があってもおかしくない以上は余計な消費は抑えたいというのがセイバーにはあり。
「悪いけれど、任せろと言ったからね───渾身だ」
だからこそ、その身体。
宝具は使わない、だがそれ以外の全力で己が主人にセイバーは応える。
『概念受胎』によって赤き竜を宿した彼の強靭なる肉体、その『耐久』をもって全身より放つ莫大な魔力。スキル『魔力放出』、そして彼の『直感』が伝える僅かな獣性に『巨獣狩り』という札を切る。
「(鋼鉄の躯体、科学技術による人工的な神性……決して魔獣ではないが、ともすればケモノに堕ちる可能性だって0じゃない)」
巨獣狩り、その使用。
ソレは本来『あり得ない』。
そのスキルはある特定の条件下においてのみ運用できる特殊な物。
だが、セイバーは何かを感じ取っていた。
人類と共に歩む愛持つ叡智が、愛あるが故にその存在を転じた時、世界から当て嵌められる器。
例え人が作った物であっても『前例』がある以上、セイバーの『巨獣狩り』は反応を見せた。
「さて、人工の神格よ。一手、指南を頂こうか?」
ならばこそ、油断も慢心もなく。
「嗚呼でも」
踏み込み一閃。
渾身の吶喊。
魔力放出という莫大な魔力量によって起こる理外の強化効率、それによる加速は地上すれすれを駆け抜ける戦闘機も斯くやと言わんばかり。
「指南が必要なのは其方かな?若く拙い、機械の王よ」
轟音。
トップスピードの勢いを乗せた横薙ぎを放つ。
空気を切り裂くどころか空間そのものを捩じ切らんとするばかりの暴威。
それ
だがそんな事は知らぬとセイバーは即座に転身。
「お願い!マイネセシティ!」
「いざっ!レイドバトルです!」
「こんのぉっ!」
銃声。
少女達の想いを込めた、勝利への楔。
破壊的な打撃音は鋼鉄に包まれた柔肌へと突き刺さり、声持たぬケセドの悲鳴を聞かせる。
溢れる戦意は少女達の力となり、吸い込まれるように狙いを外す事はない。
そしてまた、ここにも。
今は地上で戦う友から送られた『力』がある。
「ガンバル、ガンバル、ガンバル」
その厳しい外見と裏腹に可愛らしい片言の機械音は、創造主達に託された通り、激しい『攻撃』によって少女達を支える。
だが。
「……114.150.114.120.30.78:108.30.12.90.90.120」
それほどの猛攻を前にして。
目覚めぬモノがいるだろうか。
ヒフミ達の果敢な奮闘は決して無視できない損耗を招き、王国の秩序を乱した。
故に、第四に座す預言者は本来あり得ぬ怒りに震える。
「378. אפס」
二度だ。
「378. אפס」
今まさに二度目の敗北を喫さんとしている。
常ならば赦すだろう。
通常ならば朽ちた
当然だ、何故ならケセドの本体はこの軍需工場でもなければヒフミ達の前に存在する球体でもない。
「6.72.72:138.30.6.96.90.84.114:36.108.30.30.」
進化したAI、それこそがケセドの正体。
故に肉体的な敗北は真の敗北に───否。
否、否、否───ッ!
ケセドの裡で演算された結果はただ一つ。
目の前の存在への敗北、それだけは許されない。
我が王国はナニモノにも屈服してはならない。
もう二度と、サーヴァントに敗北してはならないと己が存在に解答を刻みつける。
故に。
赦し難き蛮行に、最早王に慈悲はない。
「Tehilim149:6」
その両刃の剣は左右のゲートから現れた二機の機械兵。そして、ケセドの前にいる少女達に気づかれぬように、ひっそりと地上へと侵攻を始めた十六の尖兵。
だが、ケセドは見誤った。
怒りという、最初から感情を持って生まれる生き物ですら持て余すその激情で。
あろうことか、先に彼女達の後方へ戦力を集中させてしまった。
「数が増えたところで……ッ!」
たった二機のオートマタ。
今更セイバー達にとって敵ではない。まず一機、セイバーがただその恵まれた膂力で剣撃を放つ。
袈裟斬り。
『筋力』任せ、ではない。筋肉の流れを無駄なく運用する緻密な身体コントロールは長年の戦いを経て最適化されたそれ。鋼鉄で身につけようと膾斬りにする。
さらにもう一機。
こちらは、数の面で不利を見た。
「ガンバルゾ、マケナイゾ」
甲高い電子音とは裏腹にその大型銃器が牙を向く。
対する機械兵もそれに抵抗を見せ、拮抗する。
だが、口径が違う。
仮に相手がオートマタではなく生徒との一対一での銃撃戦であれば、如何にあのキャスターが生み出して鉄騎兵「ヘルタースケルター」といえど、一蹴に伏す。
どんなに口径が違えど、生徒達はキヴォトスの住民。
戦闘経験が違う、身体能力が違う。
だが、今この瞬間立っているのは建造されたばかりのオートマタ。
それも本来は複数機での運用が望まれる機体。
ならば結果は必然。
ヘルタースケルターの勝利であり、機械兵はダメージを受けてよろける。
そこを刈る。
「ミテテ、アリスチャン」
もう一機のヘルタースケルターが異音を立てる。
それは全力稼働の合図。
背部噴出口より蒸気を出して飛び上がり、最上段。
頭上より飛来するは真っ向唐竹割り。
ユズに怖がられてからは表立って装備しないよう厳命されていたマチェットで機械兵を両断した。
「ピース」
一言、残心と言わんばかりに言い放ちヘルタースケルターは敵を討ち取った。
そう、ケセドはあろう事か油断してしまった。
これがただのAIであれば、冷静に戦力差を計算していただろう。
だが、急造の設備、それによる自身が『使う』筐体の演算能力の低下、地上で行われる苛立たせるような陽動、目の前のヒフミ達の猛攻、セイバーという理外の存在。
そして、激情。
これらの原因によってまたしてもケセドがその身に纏う鉄の殻は外される。
その瞬間。
ヒフミ達はその隙を狙うのを忘れはしない。
「うわぁん、固いですよぉ!」
「ヒフミ!コハル!ユズ達から地上戦力の増加したとの通達です!あちらに16機の増援……アリス達も早く合流を!」
「だからって……こいつ中々落ちないの!」
だが、ケセドに油断があったのなら。
ヒフミ達には焦りがあった。
地上での戦闘が激化したという知らせ。
ここまで来て、これ以上長引くならば撤退すら視野に入れる必要がある。
故に、焦りが生まれ手元がブレる。
このままいけば、例えセイバーがいようとケセドの伝承防御プログラムは復旧する。
そう、このままならば、だ。
「デキルゾ、デキルゾ」
淡々と電子音は告げる。
決められた返答を繰り返しているだけであろう。
ケセドとは違う、ただの機械だ。
シンギュラリティと呼ばれる人工知能の一つの限界を突破した物とは違う筈だろう。
だが、だからこそか。
その温度を乗せない音だからこそ、ヒフミ達は冷静になる。
「そうです……出来ます……ここまで来たんです!必ず出来ます!勝てます!」
ヒフミの心に平静さが再び宿る。
戦場で心はどうしていたって荒れる。
人は自身の心拍数や周りから聞こえる音、そして目の前に見える状況、そうした五感を通して容易く感情を昂らせ乱してしまう。
それを抑える為にはそれこそ、キヴォトス各地にある治安維持組織が行っている訓練を日常的に踏む必要がある。
それでも、そんな訓練をせずともヒフミは持ち前の明るさとある種の我の強さによって、焦りを飲み込み、今度は鼓舞する。
そしてその熱の籠った声に、当然アリス達も応える。
「当たり前でしょ!私は正義実現委員会のエリートなんだから!こんなボールギャグみたいなやつ、すぐに倒してやる!」
「アリス達は勇者パーティ!こんなところで負けイベントをしてる暇はありません!」
その言葉通り、士気が上がっていく。
だが、
少しばかりケセドの方が立ち直るのが早かった。
「114.1⬛︎⬛︎.114.……120.30.……78:108.⬛︎⬛︎.……12.90.9⬛︎……」
再び殻が閉じようとする。
先ほどの猶予と比べて、格段に早い。
恐らく、これを見逃せば次ヒフミ達に向けられる戦力は今までの比ではなくなる。
だからこそ。
「みなさん!……いきますよっ!」
ヒフミは中央の本体を狙うのを早々に諦めた。
否、
「……っ!こんのぉッ!負けないんだからッ!」
コハルもヒフミの意図を言葉なしで
ヒフミの意を汲み、コハルもまた閉じようとする『外骨格』を狙って引き鉄を引いた。
当然、今まさに閉じようとする外郭の動きを妨害するには足らない。
だが僅かながらでも、ヒフミとコハルの『攻撃』は掠めるように本体も傷つけながら確かな時間稼ぎとなった。
「モウ、ヒトフンバリ!」
「ガンバルゾ!」
「デキルゾ!デキルゾ!」
その間に、ヘルタースケルター三機分の火力が本体へと吸い込まれる。大口径の火勢は確かなダメージを与えて、さらにケセドの動きを鈍らせる。
だからこそ、間に合った。
「上でみんなが待っています、だからっ!」
「合わせて、いこうかッ!」
光の剣は臨界を迎え、瞬きを始める。
風の剣は唸りを上げ、閃きを魅せる。
双方の準備を整える為の時間稼ぎ。本体への攻撃を確実に通す為の一手。それは正しく、二人の渾身の一撃として形を成す。
「光よ───ッ!」
「さあッ───フィナーレだ」
この調査チーム、最大火力による光と風の奔流がケセドに向かって放たれた。
「か、勝てましたぁ……」
思わずへたり込んでしまう。
全員大きな負傷はなし。
ケセドという強力な相手に、無事に7人で勝てた。
その喜びとここまでの疲れが足を重くさせます。
「お疲れ様、ヒフミ。いい戦いだったよ」
「あはは……ありがとうございます、セイバーさん!」
ぺたんとお尻をつけてしまっていた私に片手を差し出してくれたセイバーさんに甘えて立ち上がらせてもらう。
とりあえずケセド本体は沈黙したようだし、後は地上に戻るだけ。
『こちら護衛チーム、アズサだ。最後に残っていた20 機のオートマタが今、システムダウンした。そちらの戦況はどうだろうか』
「はいはい、こちら調査チーム。無事にケセドを「パンパカパーン!アリス達勇者チームはケセドの討伐に成功しました!」もぉっ!今私が話してるでしょぅ!」
「いひゃいでふ!こはふ!」
アズサちゃんからの通信もあって、地上での陽動も無事に終わった事が知れて今度こそ一安心です。
本当に疲れちゃいました。
『皆さん、お疲れ様でした。マッピングしたデータや交戦記録をユウカさんに届けてお昼にしちゃいましょうね』
「ハナコちゃん達もお疲れ様でした!とりあえず私たちも地上に戻りますね」
とにかくこれでケセドが拠点にしていた軍需工場の制圧は完了。あとはそれを報告して、改めてミレニアム側でも安全を確認して頂くだけです。
その時はキャスターさんにも話を噛んでもらう形にすれば、暫くはケセドが残した技術なんかの解体で得た資材を流用しつつ拠点下……その後は聖杯戦争の問題が解決してからはセミナーに管理を委託すれば、もしかすれば立ち入り禁止も解除されてここ一帯も含めた土地をミレニアムが管理できるかもしれません!
私は政治に疎いですがこれで少しでもユウカちゃんの力になれたなら幸いです!
『おつかれー!お昼はどっか食べに行こーよ!』
『私、冷たい物がいい……』
「アリスは冷麺が食べたいです!』
アリスちゃんの口から意外な食べ物が飛び出しつつ、とにかく地上へと足を向ける。
通例という言い方も変ですが、こういう機械系の……で、デカ枕?とかいうAI系の敵は、既にさっきまで戦っていた筐体からいなくなっているそうです。
本体がAIだから何度も新しい工場や筐体を作って復活するのだとか。
とはいえ、一度こうやって沈黙させれば暫くは復活しないそうですし、ちょっとはこれでユウカちゃんもゆっくりできる筈です!
「私は麺類ならパスタとか……あ、冷製パスタなんていうのもいいかもしれませんね!ヴィシスワーズ風にするとか!」
『……聞いたミドリ?』
『うん、聞いたよお姉ちゃん……』
「な、なんですか二人とも?」
夏野菜でさっぱりとか考えましたが、折角なら万人受けしやすいし冷たくて合いそうなのをと思ってパスタを挙げましたが反応があまり良くなくて。
恐る恐る二人に聞けば……。
『女子力!!あれが私達にないものだよミドリぃ!』
『一緒にしないでって言いたいけど、そこで外食じゃなくて自炊の発想にまずなるところがすごいよね……これが2年生の力ぁ!』
「あはは……今度一緒にお料理してみましょうか?私も基本的には一人暮らしで身につけたものですし」
ハナコちゃんもお料理得意というか、この手の事(花嫁スキル)はなんというか卒なく熟せちゃいますし、私よりも教えるの上手ですし。
二人を相手にお料理教室なんてのもいいかもしれません。
「僕はなんでもいいかな。君達の食べたい物を食べるといい」
『ふむ。セイバーよ。我がノア……セミナーの生徒から聞いた話を教えよう』
「あはは……なんだいキャスター?改まって」
『女性が聞いてきた何を食べたいかに対して、なんでもいいと返すのは最も駄目らしい』
「ぐはっ!!」
あ、セイバーさんが崩れ落ちました。
『と、とりあえずお昼どうするかは置いておいて……本当にお疲れ様でした!』
「ユズもお疲れ様、あとでユズが考えてくれた作戦で私がしっかり活躍したの話したげるからね!」
『う、うんっ!楽しみにしてるっ。それじゃあ帰還後の予定をお話しします』
お昼の話が出たりしているように、よくよく考えればまだ午前中。
ユウカちゃんと話してから、そのままケセド戦って事でなんだかボリュームがありましたが、今日はまだまだ時間もあります。
どこかに探索に行くのもよしですし、例えばトリニティに向けて午後からでれば、夕方か夜からならマリーちゃんと約束したお茶会なんてのも出来ます。
いっそ午後イチでアルさんとアポ取って、今日中にシャーレで会うなんてのもありですし。
アポだけ取って明日会うようにして、15時まではミレニアム内でトキさんの情報集め、後は自由に……なんてのも。
そんな風に考えていて。
『とりあえずユウカさんは不在のようなので、セミナーに各種データを提出だけしたら……あれ』
「どうかしましたか?ユズ?」
『ううん、なにかキャスターさんのド⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎……』
じじっと、短く何かが爆ぜる音がする。
『なにこ⬛︎……げて!!……⬛︎力が!』
『⬛︎⬛︎です!ヒ⬛︎⬛︎ちゃん!!急⬛︎⬛︎!!』
それは魔力ではなくて、機械だから殺意もなくて。
だから誰もが浮かれていて。
想定していなくて。
───ケセドの再起動に誰もが気づけなかった。
───赦すまじ。
───赦すまじ。
───赦すまじ。
其は『慈悲深き苦痛を持って断罪する裁定者』。
───悍ましき『怪物』の眷属。
経典にミセリコルディアと銘が記されし愛。
───邪なる杯の使徒。
故にこそ、その激情は荒れ狂う。
───霊長を名乗る楽園の住民。
愛とは怒りはある一側面を持って共通項を持つ。
───皆諸共に滅ぶべし。
それを人は『執着』と呼ぶだろう。
───『王は慈悲を施すものなり』強制起動。
そして今この瞬間、ケセドが抱いた憤怒は確かに、この場に少女と騎士への執着であり。
─── ATEH MALKUTH VE-GEDULAH LE OLAM AMEN.
殺意に他ならなかった。
背後を、ヒフミ達は振り返る。
先ほどまで、一体どこに隠していたのかと思うほどの爆発的な熱量。
そう、ケセドは隠していた。
二度目の『敗北』。それは決して赦し難い屈辱。
そして、預言者であるその身に決して赦してはならない⬛︎⬛︎という感情。それらはケセドに狡猾さを与えた。人が見れば傲慢とも捉えるだろう超常存在の視点、神の視座。それをケセドはこの場限り棄てた。油断なく、本来は己の存在保存の為に一定以上の損失を負った場合は戦場からの撤退を定められたケセドが、その役割を、プログラムを反故してまで息を潜めていた。
故にこの瞬間。
油断に満ちた少女達の背後で、準備は整えられた。
「378. שלוש」
セイバーは剣を摂り宝具を放とうとする。
だが『今』の聖剣ではこのケセドには敵わない。
「38.90.108.18.54.12.72.30:30.144.30.18.126.120.54.90.84」
アリスは光の剣をケセドに向ける。
なるほど楽園の霊長として迎え入れられた彼女であれば拮抗し得る。
だが少し遅かった。
「150.90.126:6.108.30:84.90.120:6.72.72.90.138.30.24」
コハルはその小さな身体を目一杯に広げる。
その抵抗に価値があるかは、この後に放たれる裁きの雷によって分かるのだろう。
だがそれを知るのは彼女の亡骸を見る事になる友だとは気づかない。
「File.Bereshit:319」
そうして罪人を焼く極光は臨界を迎える。
土は土へ、塵は塵へ。ロトの妻がしたが如く、振り返った故に『知らぬまま終わりを迎える』という慈悲はなく。阿慈谷ヒフミは───。
『壊滅的な音』が、ヒフミ達の『頭上』より降り注ぐ。
あまりにも強大な力の渦は、今この瞬間に解き放たれんとしていた。
最後の最後に、ヒフミ達は敗北したのだ。
最早それは避けようのない事実。
人工であれど、神は神。
如何にこの地の霊長が新しき形であろうとその形がある限り、彼女達は人。
もし仮にこの場に箱の主人がいれば話は違っただろうが、現実はそうはならない。
そして例え星造りの聖剣があれば、この問題を解決できただろうが、それもまた出来もしないifを並べても仕方がない。
このキヴォトスの地において、『彼』を除いて真の意味で宝具の開放は未だ叶っていない。
だからこそ、この敗北と犠牲は。
必然だったのだ
そう、必然となる筈だった。
僅か6日という時間では
ここで阿慈谷ヒフミは敗北する、その筈が。
偶然、昨晩。
───そう、彼女の選択は敗北以外の道を示した。
「挫けてはいけない。幼き子よ」
今にも神の裁きは降らんとしたその時。
一人の男が、天上より舞い降りる。
「前を見たまえ。胸を張りたまえ」
迸る極光に照らされながら、その偉大な背中を惜しげもなく少女達に魅せる。
「そうすれば、ほら」
その、その背中は。
───
1じゃんね☆
というわけで最後の一騎が登場じゃんね☆
ここから活躍してもらう予定……じゃんね☆
ここから先は裏話じゃんね☆
ぶっちゃけケセド戦は負けイベント兼セイバーの宝具お披露目イベントの予定だったじゃんね☆
理由は単純、各陣営のパワーバランスを整える為じゃんね☆
セイバー陣営が強くなり過ぎちゃうのは当時の1としては困り物だったじゃんね☆
でもせっかく安価で決まったし、前回の安価でモノレール壊れたし……という諸々の条件をスレにいる方達がクリアしてくれてたおかげでこういう形で助けが間に合った、という展開になったじゃんね☆
これだから安価は面白いじゃんね☆
まあその結果、敵陣営が鬼のように強くなって1がまた頭抱える事になったのはご愛嬌じゃんね☆ミーカミカミカミカミカミカ
本作の内容は
-
①Part6スレまで読んでる
-
②あにまんの過去ログまで読んでる
-
③ハーメルン版のみ読んでる