【アイテムを入手しました】
アイテム名:ゲームガールアドバンス復刻版
分類:交流補助アイテム/パッシブ
説明:『あの頃の冒険が待っている』。今冬発売予定、名作ゲーム機「ゲームガールアドバンス」の復刻版。童心に帰ってみんなでレトロゲームを楽しむのもいいかもしれない。(獲得個数1台)
アイテム名:ミレニアム製ポケットドローン「アイギス7号」
分類:戦闘・交流補助アイテム/パッシブ
説明:ミレニアム屈指の天才「小鈎ハレ」が手掛けたEMPドローン。手のひらサイズと小型ながら、索敵や通信妨害など一台あるだけでも活躍する。(獲得個数1機)
聖杯戦争非常対策会議。
ミレニアムサイエンススクール『セミナー』会計、早瀬ユウカの声掛けを受けてトリニティ総合学園『ティーパーティ』、アビドス廃校対策委員会の両校首脳部と共に立ち上げた、キヴォトスで行われている聖杯戦争の諸問題を解決する為の緊急会議。
そして、現在ミレニアム自治区近郊にある立ち入り禁止区域『廃墟』に拠点を持つセイバー、キャスターの両陣営による同盟陣営への協力・互助組織でもある。
その第一回目の会議が人知れず、通信を介して、ここミレニアムビルのシチュエーションルームで行われようとしていた。
『そういえばゲヘナとレッドウィンターは?』
『万魔殿の羽沼議長と風紀委員会の空崎委員長の連名で欠席連絡が。どうやらこの案件に関わる事らしく……急遽、現場対応を指揮されるとかで人員が出せない、と』
「レッドウィンター事務局については……またクーデターらしいです……」
ああ、やっぱりかという感想が、モニターに映る全員の顔に出る。
レッドウィンター事務局。
その名と
───キヴォトスきっての魔境、と。
あの地で自治区運営を任される小さな肩*1とその右腕*2を思って、彼女達は天を仰いだ。
嗚呼、あいつら多分今夜は徹夜だな、と。
『……にして、ゲヘナは大変だねぇ。そこら辺、トリニティとしてはどうなの?』
『今期間限り、という形にはなりますが不干渉協定の締結に向けて動いてはいます。ほぼ固まって後は署名を、という段階ですから両校の関係においては今回ばかりはみなさんのご心配には及びません……お互い、下手に腹を突かれたくはないという一点さえあれば合意出来る物です』
『おっきい学校だとそこらへん大変だぁ……まぁ、借りというかうちも桐藤ちゃんとそれから
『お気遣いありがとうございます、小鳥遊委員長』
ホシノでいいよぉという緊迫した空気をほぐす声に思わずナギサも苦笑しつつ了承する。
お互い同学年。
とはいえ彼女の存在を2年前から知っているからこそ、その言葉の意味をナギサはしっかりと理解する反面、とてもあの他自治区にまで名前が響いた
『シャーレはどうだい?やはり、独自で動いているんだろ?』
「純粋にお忙しいのと、他にもゲヘナや他自治区からの依頼もあって手が回らない……って感じですね。とはいえ先生もかなり気にしてますから……」
「あんまり当たりつけるのは先生の配慮に対して失礼かもしれませんけど、恐らくは『SRT』のような少人数かつ自治区を持たない生徒達に頼んでいるかと」
それはシャーレの、そして先生からの気遣い。
それはトリニティとミレニアムの自治区を運営する者しては有難い配慮だった。
殺し合いにどんな形であれ自治区主導で参加している。
シャーレが連邦生徒会直轄の特務機関であり特任の部活である以上、その事実が表沙汰になれば庇うというのは極めて難しいという現実がある。
「現在確認できているマスターは6名。その内二名ずつがトリニティとミレニアムの生徒であり、うち2名は両生徒会と協力関係にあり、残る4名は……」
ユウカの言葉が言い淀む。
当然だ。
誰も自校の生徒、いや、同じキヴォトスの住民が。
『行政府や学園そのものに対してはともかく、少なくとも我々と協力関係にあるマスターと敵対或いは関係が中立に徹している、ですか』
大切な友達同士で命の獲りあいをしているなどと口にしたくはない。
その思いを理解できるからこそ、ユウカと気持ちも立場も似ていながら一年長く行政に携わってきた先輩である桐藤ナギサは、年長者として言葉を引き継いだ。
友の悲痛な涙も声も、今日十分なほどに聞いたのだから。
「事態を穏便に収束させるという点で考えると非常にデリケートな状況です」
「うちの人員さいて情報の隠蔽してますけど、正直ぎりっぎりですよぉぉ」
ノアは苦悶に満ちた表情でデリケートと言い、情報工作をセミナー側から指揮するよう任せられたコユキもげんなりして言う。
ここでいう情報工作、つまりは聖杯戦争に関わる一切の情報、その隠蔽だ。
今はまだどの陣営も夜や人気の少ない動くのもあってなんとかなっているが、キヴォトスは情報社会。
潰して回ってもいつかは破綻が来る事を少女達に予感させていた。
『他自治区については?』
「ミレニアムと連携指定校にある中小自治区については問題ありません」
『トリニティもです。そして羽沼議長からは情報統制は今のところは問題ない、最悪、風紀委員会を使ってでも
『あそこの委員長ちゃんに実力行使させるなんて穏やかじゃないねぇ』
現ゲヘナ最高戦力にして、かのゲヘナ情報部にかつて所属していたとされる少女を、対外的にも不仲で有名な羽沼マコトが惜しみなく投入するという明言。
その言葉の重さを理解できない者はこの場にはいない。
……いない、と思いたい*4。
『それだけゲヘナも本気なのだろう。自由と混沌を掲げる彼女達も、いや、だからこそ』
肩をすくめながらもトリニティの生徒会長に座す小柄な少女、百合園セイアは言い切る。
ゲヘナとトリニティの対立は根深い。
個人的な思いはどうあれ、セイア自身もトリニティ生であり、その代表。
そしてかつてのエデン条約を推し進めた一人。
だからこそ、理解している。
自由と混沌を愛し、秩序と調和を重んじるトリニティとは相容れないゲヘナだが。
『キヴォトスの根底にある秩序───人の命を奪うという最後の一線を踏み抜くのを許す事だけはないさ』
その根っこには決して違える事のない物があることを。
『それを誰かが許せば、その刃が自分達返ってきても文句は言えませんからね。一線を踏み越えて待っているのはそういう結末だけです……そういえば他の大きな自治区はどうでしょうか?』
アヤネの言葉にユウカは言葉を詰まらせつつ、苦虫でも噛み潰したような表情を見せる。
「レッドウィンターは……サーヴァントの銅像*5建てたらしいわ」
『いやほんと何やってんのさ』
間髪入れないホシノの言葉だったが、こればかりは誰も何も言えない。
あの自治区は何かこう、違うのだ。
具体的に言うと他の自治区とは別の秩序で動いている節がある。
「他校に関して、特に大きな自治区を抱える百鬼夜行、山海経、ワイルドハントについてはマスターも確認できませんし、こちらで調べた限りは何らかの干渉を行う兆しはありません」
『どの生徒会も今代は特に聡明な人材が揃っておられます火遊びのつもりで首を突っ込んで大火傷を負いたいと望む方はいないと、信じましょう』
「そうであってほしいですね……」
マスターを擁さない自治区の動きは静観。
恐らく自衛の為に情報を集めてはいるだろうが、だからといってそれを元に介入や三大校にちょっかいをかける者はいないだろうと、ユウカ達は断定気味に推測する。
自分達が逆の立場だと考えれば絶対に関わりたくない案件なのは間違いなく、そして彼女達が逆の立場で自分達を想ってくれればきっとそうはしない、そんな風に信じてみたかったのだから。
「では一通り、現状についてわかったところで、そろそろ件の
軽く手を叩きながら、一度話を切り替える為にノアはコユキに準備を促す。
黙ってた方が良さそうだなという考えと、思った以上に大変だった資料集めと外回りしていたユウカの代役として事務処理をしたのもあってコユキはグロッキーだった。
とはいえ、あまり変なところを他校の生徒に見せるのは
だからコユキにしては珍しくテキパキと作業を進めながら話し始めた。
「はいはーい。えぇっと、こちらの映像については一点目が本日のケセド戦で確認できた物、もう一つはトリニティ側からの依頼で削除された監視カメラの映像、で、それをデータベースから洗い出して見つけた物……です」
『昨晩あった崩落事故……いや崩落
セイアの声には疲れが滲む。
それもその筈、ここ数日ナギサと共に事務仕事や不安がっている自治区内の企業との面談、果ては今回のマリーの件でシスターフッドへの聴聞まで熟した後なのだから。
だが、セイア自身、ここで疲れたなどと弱音を吐いている暇はない。
阿慈谷ヒフミは浦和ハナコと桐藤ナギサの、セイアの大切な友人の友なのだ。
そして自身の友であるハナコ自身も聖杯戦争に関わっている。
為政者としても、一人の友としても、へこたれている訳にはいかず、そしてそれはこの場にいる全員に相手は違えど共通した想いだった。
「アビドスのホシノさんはサーヴァントとの直接的な戦闘経験もありますし、うちからは美甘部長、トリニティからは剣先委員長という各校の最高戦力の方がこの場にはいます。その意見も含めて」
「サーヴァントの戦い、そして『宝具』の危険性について確認していきましょう」
監視カメラの映像、それが映し出したとあるトリニティ・ゲヘナ間の自治区境界線の一帯には誰もいない。
これまでの紛争染みた両校での戦いで瓦礫だけが残るその場所は普段であれば不良生徒達がいそうな物だが、今だけはぞっとする静謐さを孕んでいた。
そこに鼻歌が流れる。
引きずるような足音と調子外れの聖歌は、主の身許に近づかんと音を奏でる。
そして、その音は唐突に現れた少女と共に、ぶつりと切れた。
「───こんばんは、良い月夜ですね」
修道服の少女が、誰もいない暗がりに向かって微笑みかける。
その舌先に令呪を載せて、その隣に己が盾たる槍兵を従えて。
「今宵はトリニティでの狩りですか?随分、下品な真似ですけど───そんなに急いでどうなさったんですか」
疑問符はない。
確信めいたことだと、少女の声は相手へと伝えている。
それを、暗がりから現れた娘は詰まらなそうに返した。
「話す必要、あるかしら?───伊落マリーさん」
「主は聞く耳のある者は聞きなさいと仰られました。この世界の始まりが言葉であるのなら、話す意味はあるのでは?───陸八魔アルさん」
「悪魔に説法?悪趣味ね」
「ええ、貴女好みの
陸八魔アルと呼ばれた舌打ちを返して。
その右に嵌められた手袋を口を使って抜き取る。
そうしてアルは、咥えたそれを吐き出すように地面へと叩きつける。
古い決闘の申し込み、今は廃れた風習。
それを令呪を見せつけるという形でアルはしてみせた。
その合図に合わせて、槍兵はマリー庇うように前に立ち、もう一騎も夜の帷からするりとその姿を現した。
「まあっ!今日は随分早くに姿を見せて下さるんですね。この前は出し惜しみされてましたのに……」
「もう
「ええ、本当に……
「
話は終わったと、真紅の外套から抜き出すのは一丁の古風な狙撃銃、『ワインレッド・アドマイヤー』。
同時にマリーもまたその右手に苺の花の金細工が施された『パイエティー』を構える。
「───ライダー」
「───ランサー」
ライダーと呼ばれた女はその身を包んでいた黒いスーツ、その糸を解くようにして新たな戦装束へと身を包む。
「勝てたら好きにしていいわ」
「少し乱暴ですけれど、交渉の余地はありません」
対する槍兵、レオニダス一世の全身から焔が溢れ出す。全身から溢れるように張り詰めていく魔力が、世界を軋ませる。
「ここで伊落マリーを」
双方共に、
「ここでライダーを」
この場で互いの息の根を止めんと、
「「殺しなさい」」
開戦の号令を告げた。
まず仕掛けたのは。
「マスター狙いか、ライダーッ!」
ライダーからであった。
「当然でしょう。この地の少女の強さはよく理解しています」
鎌首をもたげて獲物がくる『幸運』を待つように、その手に持った『鎖に繋がった一対の鉄杭』を鞭のようにしならせての攻撃。
「サーヴァントに迫る身体能力、戦場慣れも済ました戦士の如きマスター。ですが」
ただの鎖が僅かに瓦礫に触れただけで道を開ける、いや、切断される。
それほどの速度で迫る鎖の先端には腕ほどの太さが鉄杭。
「厄介であれ生身という明確な弱点がある。でしたら先に潰しておくに越した事はありません」
正に蛇の毒牙、当たれば生徒であってもその肌に小さくない傷を残すだろう。
『(ランサーさん、お手伝いします)』
それを看過する伊落マリーではない。
マズルフラッシュを焚いてライダーへと0.5インチの銀弾が吸い込まれていく。
「……なるほど」
当然、それは当たらない。
その速度、まるで霞か何かのような身熟しだけで弾丸は何も空間を通る事となる。
恐ろしいのはその動き、映像を見ているネル、ツルギ、ホシノには理解できる。
それは鍛え上げられた技術によるものではない。
純粋に見えた物を躱す、驚異的な動体視力と見てからの回避を可能とする身体能力。
間違いなく一部の、それもキヴォトスでも最高クラスの運動神経を有した学生が厳しい訓練の果てにのみ許されるような芸当。
それを長い藤紫を揺らす女は、生物としての基本的なスペックのみで可能としている。
間違いなく強者である事を、窺わせた。
そして対峙する男もまた、その動きになんなくとついていく。
「援護ッ……感謝しますマスターッ!」
大薙。
矛先へと『魔力』を込めた一閃は、隙という名の『幸運』を拾おうとするライダーの動きを咎めていく。
速さは間違いなくライダーに分があるだろう。
現にランサーはマスターを背にして6m、付かず離れずを保ちながら防戦を強いられている。
縦横無尽に地を駆け回り変則的に顎を向ける鉄杭とライダーの動き、そして。
「忘れてもらっては困るのだけど?」
「……ぬゥッ!」
狙撃。
アルからの強襲が行われる。
その波状攻撃を受けて、ランサーの全身は細かな傷を作り始めた。ランサーの守りを『妨害』し、ライダーの攻撃を通そうとする狙い。
だが。
「流石に硬い……っ」
「当然ッ!仮にも
「ッ!そう……です、かッ……本当に」
ライダーが魔性の戦い方ならば、ランサーのそれは鍛え上げられた技術の結晶。
肉体の鍛錬、そして幾度もの戦いにおいて完成されたある種凡庸な『誰にでも出来る戦い方』。
盾で攻撃を防ぐ、槍で突く、その単純な動き。
空気を爆発させるような蹴技の勢いを盾で完全に殺し、ほんの僅かでも距離を詰めてくれば針の穴を通すが如き精密さで鎖の合間を縫ってライダーの急所を突く。
そうして。
「───
「獲った……ぞォッ!」
ライダーの左肩、それを真っ直ぐに穿ってみせた。
単純、そしてどこまで無骨。
なれどもその完成度、最早文句のつけようもなし。獣の速さに人の技術が勝利する。
その動きに、一つの治安維持組織を預かるツルギはモニターを前にして胸を熱く昂らせた。
血飛沫があがり、左肩を抑えるようにしてライダーが距離を離す。
その姿をモニター越しに美甘ネルは冷静に観察する。
「(関節ごと持ってかれてるな、ありゃ私でも治すのには骨が折れる……普通の奴なら撤退だ)」
そう、ランサーの一撃には魔力が篭っていた。
当然その破壊力は左肩の肉どころか左肩鎖関節を丸ごと穿って孔を開けて見せる。
それほどの怪我を負えば生徒達でも、半月は治療に時間がかかるだろう。
ネルでさえ、そこまでの深手を負うなら少しぐらいは撤退を考える。
だが、ライダーの動きは、ネルの予想通り継戦の意思を見せていた。
目元を眼帯で隠した女は、薄らと笑みを作り、ぶらんと垂れ下げた左腕を庇う事をやめて。
「少し、ギアを上げましょうか」
「あら、素敵じゃない。それなら、いいわ」
狙撃の為だろう、いつの間にか廃ビルの屋上へと移動していたアルは嫣然と指示を出す。
「第二スキルを使いなさい」
「ええ、有り難く」
その動きは変わる。
鎖を、鉄骨が剥き出した大型の瓦礫を絡めて、空中へと持ち上げる。
ふわりと浮く様は砂糖菓子だろうか。
まさか。
その重量は軽自動車と同じ程度はあるだろう。
その重さを鎖の先端に備えたそれは、即席のモーニングスターか、フレイルか。
鎧や盾でその身を守る騎士を殺す為の武器と同じ効果をより強大に仕立て上げられた殺意が、今まさにランサーへと牙を向く。
「では、お覚悟を───」
壊音。
最早爆撃すら思わせる一撃。魔力で補強もしているのか鋼鉄程の強度を得た瓦礫は上空よりランサーへと叩き込まれる。
「愚、ゥゥッ……ッ!!」
一度。
二度。
三度。
止まる事はない。
まるで発条で跳ねるようにか、盾で防ぐランサーに衝突するたびに空へと戻り、また降ってくる。
正にモーニングスター、明けの明星か。
アスファルトを陥没させ、足元が崩れている中。
最早嬲るような激しい鉄槌の攻撃に、ランサーは防ぎつつ前進していく。
「ランサーさんっ!スキルを……っ!」
あまりにも暴力的な光景、馬鹿げた質量攻撃にマリーの喉奥から悲鳴のような音が響く。
先程までしていたパイエティーでの援護もやめて、叫びながらランサーへと出した指示は第一、第二スキルの使用。
そして。
『(なんとか脱出を、私の事は気にせずにっ!とにかく宝具を使っても構いませんっ!)』
ランサーが中々動けないのが、その後ろに自分がいるからだと分かっていても、そうそう離れるわけにもいかず。
マリーは宝具の使用を許可した。
「かん、謝……しますぞマスターッッ!」
瞬間、ランサーは宝具を起動。
マスターの魔力ではなく、彼女の持つアイテムを用いて全身に魔力を巡らせんとして。
「今それを使わせるわけにはいきませんから」
瓦礫を叩きつける瞬間に、ライダーは硬く掴むように絡めていた鎖をその手から『消した』。
「チィ……ッ!勘のいい事だ」
自由落下。
空中に投げ出され、つい先程まで注ぎ込まれていた魔力の残滓を纏いながらランサーへと降り注ぐ巨大な瓦礫。
それを、宝具の発動をキャンセルする形でランサーは薙ぎ払うようにして、頭上から迫る巨石に盾を叩きつけ、轟音。
鎖越しに流されていたのならいざ知らず、少々魔力が込められた程度の石ころ、槍兵はその『筋力』で容易く破壊してみせた。
仕切り直し。
肩で息をするランサー、肩から血を流して左腕をぶらつかせるライダー。
満身創痍とまではいかずとも互いに消耗が見え始めている。
だが総量で測るならば、未だランサーの優位は揺るがない。
故に、陸八魔アルは一つの
「悪いけどあまり時間をかけたくないの。だから」
月明かりの下、屋上で。
夜空を背にして右手を掲げて、宣言する。
夜という時間帯、そして距離によってマリーから何をしているかはよく見えず。
けれどアルがあげたその手に何が刻まれていたのかを思い出して焦りをみせた。
「
それは逆転の切り札。
全マスターに3画の配られた奇跡。
「───ええ、マスター」
即ち、令呪の使用。
瞬間、戦況は一変する。
双方の距離、約10m。
その間合いをライダーは僅か
「眠りなさい、スパルタの子よ」
触れるようにランサーの胸に手をそっと、
「がッ……ッ!?」
撫でるように、軽く押すように。
手で枯れ葉を払うように。
ただそれだけで、ランサーは一瞬にしてマリーのいる場所までその身を吹き飛ばされる。
あり得ざる一撃。
否だ、攻撃ですらない児戯。
───ただ押しただけ。
それなのに、ランサーの第三・第四肋骨、そして胸骨体が粉砕される。
「ランサーさん……ッ!?」
瓦礫に埋もれる彼の姿に驚愕と恐怖、そして何よりも心配をありありと浮かべてマリーが駆け寄ろうとして。
「あら、随分情けない声をあげるじゃない」
7.62mmの弾丸がほぼ同時に4発、ランサーへと近づこうとしたマリーの側頭部や肩、そしてランサーの肉体へと突き刺さる。
「ぃ、痛ぁ……!聖なる力よ……ッ!」
叫ぶ。足を止めて、倒れ込みそうになるのを奥歯を噛み締めるようにしながら、我慢して己のマスタースキルをマリーは起動させる。
なおもランサーとマリーへと襲いかかる弾丸からその身を護る神秘の護り、その領域を生み出す。
その状況を月明かりに照らされながら睥睨するアルは思案して、それからため息を吐くように決断した。
『(思ったより優秀、骨もある……あの子、邪魔ね)』
『(サーヴァントもまた優れた
念話での通話ではっきり邪魔と言い切ったアルは、唇を歪める。
眼下でいじらしく抵抗する子猫が、けれどその存在は間違いなく後々大きな爪痕を残す獅子となるのを理解して。
『(そう、なら……熔かしてしまいましょうか)』
『(……アル、あまり無理をしては……)』
『(問題ないわ。貴女の餌はあの子達含めて三人もいるんだもの……それで十分足りるでしょう?)』
『(……承知しました、それが貴女の命令なら)』
ライダーに魔力が注ぎ込まれ、満ちる。
それをモニターで確認した小鳥遊ホシノはすぐさま理解した。
アレが来る、と。
かつての一戦、ホシノはライダーの宝具と対峙した。そこまで追い詰めていた。
そして宝具を受けて、防ぎきっている。
だが。
「(やっぱりアレ、前やり合った時のは本領じゃなかったか)」
切り札っぽいわりには弱かったとホシノは回想し、だからまだあると当たりをつけていたが、果たしてそれは正解だった。
ライダーは鉄杭を首へと突き立て、血飛沫を噴き上げる。
その血は意思を持つように虚空へと魔法陣を描く。
脈動し、蠢き、まるでそれ自体が生きているかのように悍ましく陣は回転する。
文字は踊り、線は渦巻く。
そうして周囲の空気にプラズマを迸らせながら。
「お控え、を……ますたー」
「ランサーさんっ!?」
男は立ち上がった。
油断はなかった、予想を超える実力者だった、それだけの事。
故に、男はその実力すらねじ伏せん為に、痛みすら力と変えて猛りを見せる。
「明日の予定がある筈、です……明日は、貴女、がッ!ご友人に会うの、だからッ!……臥ゥゥッ……御安心を」
呼吸、それ一つで全身に活力をランサーは今一度漲らせる。
油断なく前を見据え、渾身の力を振り絞り、マリーの前に立つ。
そう、立たなくてはいけない。
勝たねばなるまい。
生きて己が主人を、その友に会わせなくてはいけないのだから。
「我等はスパルタ、我が主人が望まれたのならこの戦いを生き残る為に……」
槍兵と騎兵、互いの魔力とボルテージが上昇する。
槍兵の背後には三百の盾が。
騎兵の前面には一筋の流星が。
それぞれ開放されるその時を、今か今かと待ち侘びて。
そして、彼らの宝具は。
片や必滅の殺意を。
片や雌伏の決意を。
それぞれが思い描き。
しかして解き放たれた。
暫くの沈黙が彼女達を包んでから。
早瀬ユウカは口を開いた。
「以上が、自治区境界線の警備カメラから削除されたデータを可能な限り復元した物となります」
「各自治区の、治安維持担当者から何かご意見はありますか?」
それに真っ先に口火を切ったのは、やはり。
「純粋な身体能力、それだけなら問題ねぇ」
C&Cリーダー、美甘ネル。
このミレニアム自治区における、最高戦力である。
その彼女ははっきりと条件つきだが問題ないと口にする。
「サーヴァントっつったか?あたしや剣先、小鳥遊ぐらいの実力ならまず
『おじさんは疲れるから嫌だけどねぇ』
「んなもん知るかっ!……つぅか、あんた、一回あのライダーってのと殴り合ってんだろ?」
その言葉にホシノは顔を顰めて答える。
その口調は緩やかだが、明らかに毒があった。
『三味線弾いたか、それともあの令呪ってのが原因か分かんないけど……少なくともあそこまでじゃなかったよ』
『ホシノ委員長の仰る通り、ヒフミさんから聞いて提供を受けた資料の物とは別格です。正直、寒気がしました』
「ツルギ委員長は如何でしょうか?」
僅かな瞠目後、ツルギは淡々と所感を語り始める。
『令呪、を使った命令前なら私も小鳥遊委員長やそちらの美甘と同意見です。ですが、令呪、という命令を受けた後に関しては……私の知る限り身体能力のみと限定して
「やはり、ですか……」
令呪。
その存在に一同は頭を悩ませる。
話には聞いていたがまさかあそこまで戦闘能力を飛躍的に跳ね上げるほどとは思わなかった。
ネルの言う通り、通常状態の彼らならその際の被害を考えなければ十分対処が可能だ。
だが、令呪、そして最後に見せた───。
「……宝具については、この会議の前に各校で確認して頂いたケセド戦の映像資料、そして先程の物を見て頂いた限りご理解頂けたかと思います」
口にするのも悍ましい、そんな風にユウカは吐き出す。
確かに彼らサーヴァントの実力は高い、一対一での攻略は難しい。
だがそれはあくまでも難しい、という話なだけだ。
例えば令呪を使われたとしても複数人、それも以前のように学校の枠を取っ払って協力する事になれば、負けはしないのではとユウカは戦力差を見ている。
だが、それを簡単にひっくり返す要因があった。
『聞かせてほしい、早瀬書記───アレを受けて我々キヴォトスの生命体は生存可能か?』
その言葉に、ユウカは。
「
『やはりか……嫌な直感だけは当たる物だから、敵わないな』
『身体的には同強度。ですが、我々を殺し得るだけの大量破壊兵器を大掛かりな準備なしで有した人間大の存在、ですか……』
困ったことになったと、この場にいる九名は途端に頭が重さを感じるような錯覚を味わう。
自校の生徒達が巻き込まれて、そして呼び出してしまった存在の脅威度を改めて理解する。こんな情報が公になれば一般生徒達のパニックは必須。
そしてそんな存在を従えて、本人の意思を別としてどんな形であれ戦争に、殺し合いに参加している生徒への排斥だって考えられるだろう。
「幸い、生徒会長代行はこの件に関して、一線を踏み越えない限りは自治区での対応を認めるという言葉を貰っています」
『助かりました、ユウカさん』
「いえ、これは
『……なるほど、流石耳も行動も早い。
「えぇ、
ユウカ自身、
それでもその少女の働きかけで、何重にも秘匿する形で行った交渉の結果、既に各自治区が個々で
しかし、とユウカは考える。
「これが、聖杯戦争……なんですね……」
正直、先にこの映像を確認した時には全身に鳥肌が立った物だ。
モモイとヒフミが、そしてアルとマリーが、果てはトキまで巻き込まれている物が、こんな凄惨な戦いだと思ってもなかった。
なんだかんだ保安部の戦力をかき集めれば、何とかなるという甘い考えはとうに消えた。
犠牲なくやるならば、C&Cの数字持ち、そして他校の最高戦力との協力が不可欠。
『とりあえずは今後も何か分かったら即座に情報を共有していこう。少なくとも、これに今のタイミングで我々が介入するのは犠牲者を増やすと……直感するんだ』
『実際のところ、武力的な介入や極端な物資の支援は代理戦争を引き起こし兼ねません』
『表沙汰にして他の子達がどう考えるか……なんてのはちょっと想像したくないねぇ。自分の心だって満足に制御できないのが人間なのに、他の人の心にそれを期待するのは間違ってるからね』
トリニティ、アビドスの発言はユウカにとっても納得のいく物だ。
下手に突けばどんな風に爆発するかも分からない案件なのだから。
「ミレニアムでは一応ケセドの軍需工場跡地の調査名目で、調査担当のエンジニア部への支援という形で物資の情報を今後も提供していきます」
『こちらからもミレニアムとの技術交流という形で物資と情報、それから掛かった費用の補填を行います』
「……よろしくお願いします」
その言葉を最後にして、かつて四大校と並び称された生徒達の会議は終了した。
ユウカの胸にあるのは危機感と脅威の共有が出来、今後の協力を取り付けられた僅かな達成感と、形容し難い恐怖。
「(モモイ……ヒフミ……)」
友達が、可愛い後輩が、彼女達が一体何に巻き込まれてしまったのか、それをただただ案じるしか無かった。
『ところで今回の映像の念話?だっけ、そこの台詞どうなってるの?』
「あ、それは私がなんとなくつけたやつです!いやぁ、なんかこんな感じの事言ってそうだなぁいだあああっ!??」
「……すみません、みなさん。この子にはしっかり言い聞かせますんで」
「助けてください!ノア先輩!!」
「自業自得ですよ、コユキちゃん」
『あの、ユウカさん、彼女のお顔が真っ赤から真っ青になってますから、ね、それぐらいで、ね?』
哀れ、コユキに明日は来るのだろうか。
それはユウカの太ももだけが知っている*6
1じゃんね☆
でっかいミスあって直してたらいつもの時間に間に合わなかったじゃんね☆
……い、一応語呂合わせになってるからよしじゃんね☆ミーカミカミカミカミカ
今回で6日目もしゅーりょー!
次はいよいよ7日目!しっかり気合い入れて一部終了まで書ききるじゃんね☆
それはそれとして今日のちょ時間良すぎたじゃんね……
楽しみがまた増えたじゃんね☆
本作の内容は
-
①Part6スレまで読んでる
-
②あにまんの過去ログまで読んでる
-
③ハーメルン版のみ読んでる