「……ええ、これから伺います」
「お土産は不要でしょう?」
「じっくりお話を聞かせて下さい」
「───⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎さん」
トマトは1cm角ぐらいに小さく、玉ねぎとにんじんもみじん切りにしてしまう。
切ったトマトとほんの少しの玉ねぎをホットチリソースとレモン果汁、それから軽く七味と塩を合わせてソースの味を整える。
ソースの用意が出来たら次はフライパン。
「ねーまだー」
「モモイ、お皿持って。私も麦茶とコップ用意するから」
「ごめんね、アズサちゃん。お姉ちゃんもごろごろしてないで働いて!」
「ふふっ、本当にお二人は仲良しですねぇ」
モモイちゃん達もお腹を減らしているようだし、急がなくては。
にんにくはほんの少しだけ、香りを立たせたらすぐに取り出してしまって、玉ねぎを炒めて頃合いを見て挽肉。
流石ユウカちゃん、野菜もお肉もある程度揃えてくれてあったし、用意してくれた組み立て式キッチン*1も思いの外使いやすい。
「だって動くと暑いんだもーん……ねーありすぅ」*2
「はいぃ……空調効いてても蒸気がすごくてアリスはもうだめですぅ……」
「う、うごかなきゃだめよ……やっぱむりぃ……」
「君達大丈夫かい?ほら、アズサから麦茶来たよ」
しかし失念していました。
夏場という事もあって大急ぎで拠点に個室と広間代わりの今いる簡易食堂兼レクリエーションルーム*3には冷房は用意して頂けましたが。
残りはちょっとサウナみたいになってます。
正直、廊下に出るのも蒸し暑いです。
と、お肉も良い色になったら片方に寄せてからフライパンを斜めに、余計な油をキッチンペーパーで拭き取ってから火から降ろします。
「ヒフミちゃん……これでいい?」
「ありがとうございます、ユズちゃんっ!」
ユズちゃんが用意してくれた、人数分の水気を切ってから千切ったレタスの上にご飯をよそったプレートに、炒めた玉ねぎとお肉、その上からソースと砕いたトルティーヤチップスとチーズをかけて。
「ヒフミさん、出来たのから乗せていきますね」
そう言ってミドリちゃんが用意してくれた目玉焼きを乗せれば、なんちゃんってタコライスの出来上がりだ。
さぁ、お昼にしましょう。
「でさ、この後どうするわけ?」
いつも通り、お昼ご飯がてらの作戦タイムです。
「個人的にはこの後は休養でも良いんじゃないかな?幸い拠点も形にはなった、キャスターが掌握している今ならあのケセドも取り返しにはこれないわけだし、午後一杯はゆっくりしてもバチは当たらないさ」
ミレニアムのショッピングセンターをぶらぶらするか、D.U.に最近できたプール型レジャー施設……なんてのもいいかもしれません。
そうなると午後は夕方まで遊ぶ、形になりますかね?
「んー、私は今から行ってもだしゲヘナについては今日はいいかな……夜には帰っておきたいしね」
「モモイ、すごい気にしてるけど……やっぱりゲヘナ……ライダーさんが気になるの?」
「どっちかっていうと、確認かなぁ……あんだけ釘刺されたってことは
ゲヘナ、となるとやはりアルさんの事でしょうか。タイミングを見て、モモイちゃんの気になる事についても話を聞かなくちゃです。
「そうですね……でしたら私、トリニティに行きたいです」
「はい?さっき帰ってきたのになんでよハナコ。ウイ先輩忙しいからモモトークで連絡取る……って感じになったじゃない」
「実はトリニティに……し・た・ぎ♡忘れちゃいました♡」
「エッチ!馬鹿!そんなのこっちで買えばいいでしょ!?」
「お気に入りなんですよ♡それはそれとして、トリニティでお買い物したり、夜はしっぽり合宿所で……なんてのもよくないですか?」
ハナコちゃんは忘れ物を取りに行きたいとのこと。実際境界線の話も気になりますから買い物じゃなくて、実際にマリーちゃんとアルさんが戦った現地に行くのはいいかもしれません。
そのまま一泊して、またヘリ*4をお借りすれば帰って来れますしね!
「ならさ、午後はあっついんだししばらくゲーム大会とかしよーよ」
「またお姉ちゃんそんな事言って!そりゃ私もしたいけど……」
「あはは……ゆっくり過ごして、夕方からまた動くのもありですかね?」
このまま食堂でゲーム大会をして、夕方の行動はまたその時に考えるのもありかもしれません。
ユウカちゃんから用意してもらいましたけど改めて買い物に行ってお夕飯の食材を、なんていうの。
そういえばウイ先輩にはいつ頃、連絡しましょうか。
「私はやはり廃墟周辺を探索しておきたい。居住スペースも確保したし、比較的ミレニアムの自治区境界線にも近いのあって忘れがちだが、それでも此処は
「正直、今アズサが危惧している可能性は大いにあるからね。自治区内ではないから好きなだけ戦闘も攻撃もできる……廃墟に限らず『アンタッチャブルな場所に拠点』を構えるというのはそういうリスクがある」
「自治区法はあくまでも自治区内のみに適応します。言い換えればこの場所はミレニアムの法の外です。そして立ち入り禁止区域の中でも『廃墟』はトリニティの『カタコンベ』等と同じ、連邦生徒会がそもそも調査する事自体がリスクがあると判断しての立ち入り禁止扱い。ならそこで何が起こっても
言われてみれば確かにです。
ここがミレニアム自治区の外でありどこの自治区内でもない空白地帯である以上は、政治的なアレコレを考えずに戦闘ができます。
そしてそれは私も、他の子もです。
でも、ヘル助さん達も数が揃ってきていますし、拠点化自体も出来ています。
アズサちゃんとウタハ先輩は危惧していますが、これ以上、調査したり戦力を拡充する事は『ハッピーエンド』にどういう形で『必要』になるのでしょう……。
「私やっぱり、ミノリ先輩に会うのがいい、と思うな……」
「ミノリさん、だっけ?私もユズの言う通り会いに行ってみてもいい気がする……かな。物作りでもそうだけど、不確定要素って怖いからね」
「セイバーは休息を提案したのならば、我はヴェリタスに行く事を進めよう。モモイの提案は断られたが……誤情報を流す、というのを試すのを前々から思っていてな。情報の専門家であるチヒロ……女史であればきっと良き結果を生むだろう。他にも調べたい事があれば、何か頼んで見るのもよい」
なるほど、ユズちゃんとヒビキちゃんはミノリ先輩にコンタクトを、キャスターさんはヴェリタスに行って情報収集と誤情報の拡散の依頼を提案されました。
色々な意見が出てきました。
その中から私達が選んだのは───。
午後からの動きとして私達が選んだのは『トリニティとゲヘナの自治区境界線』の調査。
先日ナギサ様達とユウカちゃん達が話し合った際に提供を受けたという資料の中にあった崩落事件のことやアルさん達の動きが気になるというのもあります。
特に崩落事件、つまりはランサー陣営とライダー陣営の衝突からは日が浅いですから、もしかすると彼女達につながる手掛かりだったりも残っているかもしれません。
そんなわけで今さっき帰ってきたばかりですが、大急ぎで準備を始めました。
「トリニティに行く、となると私達はお留守番かな?」
「センチュリオンに乗って行くのはいいですけど、明日の午後15時までには戻ってきて下さいね!昨日のうちに第二エリアの拠点化も完了しましたから改造しますからねー!」
「もし戻るのが難しくても『夜までに』戻ってきてくれたら……私達でなんとか次の日の朝には動かせる状態にするから」
どうやらセンチュリオンちゃんは明日の午後から、もしくは夜から改修作業があるようです。
帰りはやはり空路、ヘリがいいかもしれませんね。
ヘリなら今晩でも帰って来れますし!
勝手に改造する事になりますけど、大丈夫でしょうか?*5
「トリニティに行くならナギサにも一言連絡した方がいいだろう。特に自治区の境界線はアルの行動や一昨日の戦いもあった場所で、緊張してる可能性もある」
「そうですね、ナギサ様に連絡しておきます!」
ナギサ様に自治区境界線の調査をさせて欲しい事の連絡をモモトークでして、私はみんなの方を向き直る。
「それでは皆さん、自治区境界線の調査に行きましょー!」
「「「「「「おー!」」」」」」
「……どうしたセイバー?」
「……いや、僕の気のせいさ」
「あの娘達に気を遣うのは良いが、我には構わず言うといい。万一には対応する、
「すまないキャスター、助かるよ」
『え?此処で降ろしてほしい……ですか?』
『はい♡実はアパートの方にも荷物があって♡少し荷物を纏めるの時間がかかりそうなんです』
『そうですか……なら、合流はどうしましょうか?』
『もしヘリで帰られるのでしたらヘリポートへ、このままトリニティで一泊されるようでしたら食材を買うタイミングで私も合流しますから連絡を下さい』
『分かりました!それじゃあ……何かあったら必ず連絡くださいね、ハナコちゃん!』
『……はい。勿論ですよ、ヒフミちゃん』
という経緯があってトリニティに到着して、一緒に輸送してきたクルセイダーちゃん達に乗り換えた私達は、ハナコちゃんと一度市街地でお別れしました。
元々荷物を取りに行くという話でしたから、なんだかいないのは少し……いいえ、かなり寂しいですが。
それでも帰ってきた時にハナコちゃんに良い報告ができるように頑張らないとですね!
「さて、着いたのはいいですけど」
「わあっ!なんにもありません!これはマップ名『戦場跡地』ですね!」
アリスちゃんの言う通り、見渡す限り瓦礫と廃屋ばかり。
エデン条約が本格的に始動する前はまでは鉄条網あったりとかなり緊迫した場所だったところです。
トリニティとゲヘナで隣接している境界線は此処以外にもありますが、基本的には郊外の住宅地になってるか、ここみたいに戦場跡みたいになってスラム街みたいになっている……のどちらかです。
私も余程のことがない限りは、治安もそこまで良くありませんしあまり訪れる機会はありません。
そして───。
「驚くほど、人の気配がないね」
「はい、こういった自治区境界線はどうしても中心地より見回りも少ないですから、普通は闇市になったり色んな方がたむろされたりで人はいるはず……なんですけど」
ナギサ様から先ほどあった、というか電話口で聞いた話では、一昨日の戦いの後、崩落事故という名目のマリーちゃんとアルさんの戦いについての調査要員の方達はゲヘナとの話し合いで全く調査はせずに撤収しているとのことです。
なんでも羽沼議長という方からの嘆願があったそうです。ただ、それ自体は聖杯戦争のマスターを庇う意図ではない……という確認だけは取れているのだとか。
「しっかし、ここから何処を調べよっか?」
「実際に現場は今いる場所を中心に大体半径50mぐらいの円にすっぽり収まるぐらい……かな?」
「アルがいたのは北のビルです!その方向に初エンカした時の物陰もあります!」
「逆に伊落さんが出てきたのは南側……かな?」
「監視カメラがあったのは東西にそれぞれ一つずつ。データベース自体を隠蔽したらしいが、調査出来ていないなら何かあるかもしれないな」
東西南北でそれぞれ調べる場所があります。
どこから調査しましょうか───?
まず初めに向かったのはさっきまでいた場所から見て北側でした。
「ビル側はどうですか?」
『こちらアズサだ、排莢した後の空薬莢も見つからない。徹底している』
「薬莢もちゃんと回収してるってこと?それって……」
「自分達がいた痕跡を消したいって……感じかな?」
アズサちゃんの報告を受けて、私とミドリちゃん、コハルちゃん、そして。
「とにかく、自分達と繋がる物は消したい……のかも……薬莢まで徹底的に回収してるなら、購入先がバレたくない……ならやっぱり陸八魔先輩達は私達のような自治区側のバックアップはない……のかな?」
考え込んでいるユズちゃんとセイバーさんの5人でアルさんが現れた方にある物陰や廃屋を一つひとつ虱潰しに探し続けます。
ユズちゃんの言葉を私も自分なりに考えてみるけれど、羽沼議長のトリニティへの譲歩的な態度がある以上、やっぱり物資とかの協力体制はなさそうです。
自治区側から弾薬等を供給してもらえるなら、正規品でも横流し品でもなんでもある程度融通が効くはずですから。
「アズサちゃん、そっちには
『うん。二日経ってるというのもあるし、元が廃屋なのもあって現場の保存状態もあまりよくないのもある。ただそれを差し引いても何もない』
それなら、わざわざ戦闘後に薬莢を回収する意味が生まれない。
だってどんな弾薬でも自治区の財力で用意できるなら、薬莢一つで足取りを追われる心配なんていらない。
「ねぇ、普通足跡とか薬莢とかそういうの全部消すのって『逃亡先を知られたくない』とかがセオリーなんじゃないの?」
「うん、そういうのもあるけど……逃走経路をバレたくないなら、それこそブラフ含めてばら撒いて撹乱……させるとか私ならするかも」
「監視カメラの件はどっちがしたか分からないけど、
それらの行動は宝具まで使った戦闘後にです。
疲弊してる事だって考えられますし、何より宝具の使用もありなんてそんな派手な戦闘をすればどんなに自治区の端とはいえ、私とマリーちゃんの戦いの時のように誰かが気づかれる可能性だって大きい。
それなのに薬莢も含めて痕跡を徹底して消してるならのなら、アルさん達の痕跡を何か一つでも見つけられる事が彼女達の足取りを追う上での大きなヒントになる筈です。
「となると、やっぱりこっちをしっかり探す感じね!アズサ達があっと驚くようなの見つけなきゃ!」
「そ、そうだねっ、何となくだけどやっぱり陸八魔先輩達に『私達みたいな大きな組織との協力はない』と思うから……きっと何か、うん、たぶん、隠しきれなかったナニカがあるはず……たぶん……」
「日差しが暑いからちょっと辛いけど、頑張らなきゃだね!……うん、でも本当に暑い……帰ってクーラー効いた部屋でゲームしたい……」
「ほらそこ!弱気になっちゃだめ!きっと手がかりはあるから!」
そんな風に話をしつつ、廃屋内の本棚やら、使い古されたソファ、あとは型落ちしたテレビが置かれた台をひっくり返したりしながら探し続ける。
「……妙だね」
「セイバーさん?」
「いや、僕の気にしすぎかもしれないしまだ全部を見て回ったわけじゃないけど、アルという少女は戦闘中にどうやってビルまで移動したんだろうか?」
セイバーさんの疑問に頭の中でクエスチョンマークが浮かぶ。
どうやっても何もこの廃屋群や瓦礫に隠れてひっそり移動しただけ、だと私は映像を見た時に思った。
別に数十メートルの距離を移動するのは例え隠れながらだって手間じゃない。
「それはきっと、この廃屋とか瓦礫とかの物陰に隠れながら……」
「僕も最初はそうだと思った。君達の運動能力は目を見張る物があるから」
だけどと続けながらセイバーさんは、足元を見る。
そこには確かに瓦礫や長年掃除されていない事で粉塵のような埃が、そしてそこに残る私達の足跡があった。
「そうまでして痕跡を消したがるライダーのマスターが、何故わざわざ
「ここであったライダーとランサーの戦い。あれは夜間の戦闘だ。暗い中で痕跡を消すのだって、一苦労な筈。それならコハルの言う通り何かしらの痕跡があっても可笑しくない。人の手による物なのだから取り零しがある筈だ。ましてや戦闘中に移動したのなら……」
それがこうまで綺麗に見当たらない、だから私達は苦労していました。
だけどここまで何も見当たらないのなら。
「……もしかして私達、探す場所を間違えてましたか?」
「恐らくは……戦闘で一切被弾のリスクもなく、そして足跡含めてこうまで痕跡を残していないなら」
そうだ、それなら確かに納得がいく。
移動をする上でそんな場所があるのなら、アルさん達はもしかすると、予想以上にトリニティとゲヘナ間をスムーズに動けていたのかもしれない。
そしてそれなら彼女達が自治区境界線に現れた事、ナツちゃんの言っていた郊外のスケバンさん達の姿が見られなくなった……っていう話も理解できる。
何より私達はそれによく似たものを知っている。
「ゆ、ユズ……なにか難しい事言ってるけど分かる?」
「戦闘中に上なんて目立つ場所は移動できない、それなら見るべきは下……?でもそんな物自治区境界線に作れる筈ない……なら昔からある?羽沼議長はそれを隠したい……もしくは把握しきれていないから大々的な捜索をやめたかった……」
「み、みどりぃ……」
「はいはい、コハルちゃん、大丈夫だよ。多分この後説明してくれるから」
コハルちゃんが頭を抱え出しましたし、ひとまず一度ここでの探索で得た情報の結論を共有しましょう。
恐らくアルさん達は。
「───地下。この地面の下に通路があってそこを移動した。だからこんなにも痕跡が見つからない……ですかね?」
その言葉にセイバーさんと、ユズちゃんは真剣な顔で頷いてくれました。
ひとまず、北側ではアルさん達は地下を通って廃ビルと物陰、そしてもしかするとゲヘナとトリニティの間も移動しているというかもしれないという情報を入手できました。
次に向かうのは時計回りにという事で、東側です。
「でもそんな通路、本当にあるの?だってそんな、自治区を越境するような通路なんて……」
「まず間違いなく問題になるよね。でもそれだとすると、やたら陸八魔さん達の情報が手に入らない理由にはなるんじゃないかな?どこにいるのかほんとに分からないんだし」
そう、ミレニアムの情報網、そしてトリニティ側からもあまり得られる情報はありませんでした。
それが誰も知らない地下を通っていた、という形でなら一応説明がつく。
とはいえそれは大きな問題、それも自治区間の政治的な問題に繋がってしまいかねないものです。
自治区の越境、というのは決して難しい話ではありません。
外の世界のようにパスポート、なんて物も必要ありませんから。
それでもそれぞれに学園の校則やそれに準った自治区法がある以上、それぞれの自治区は独立した場所です。
それが誰にも知られず自治区間を自由に行き来できる道がある、というのは話がちょっと変わってきてしまいます。
「ねぇ、モモイ……どう思う?」
「……やっぱり、形振り構わずある物、使ってる感じかな?俄然、
「……そうだね」
モモイちゃん達は何かに気づいたようですし、恐らくそれはこの前から言っているゲヘナ、それもアルさんの所在に関する情報。
モモイちゃんに遅れて私もトリニティに存在する
もしそうなら、状況はよくありません。
下手をすればトリニティはいつでもライダー陣営が出入りできる場所ということになり、最悪それが公に露呈すれば。
「あまり表立った調査は……難しいかもしれませんね」
「そうだね。そういうのさ、私は詳しくはないけど、自治区間で戦争でも起きたら大変だよ」
こんな形で知りたくなかった情報が出てきてお腹が痛くなってきました。
ナギサ様に報告は、しておいた方がいいのでしょうか。
多分ナギサ様達なら決して悪いようにはしないとは思いますし、恐らく万魔殿側もそれがあるなら頭を抱えているでしょうし。
「うぅっ……アリスはちっとも分かりません!後で良いからちゃんとした説明を要求します!」
「私も分かんない……助けてハナコぉ……」
帰ったらきちんと二人にも説明しなきゃですが、その前に。
「とりあえずこの東側を探してみましょうか」
丁寧に破壊された監視塔を見上げながら私はそう言いました。
破壊された監視塔のコンクリートからは、剥き出しになった鉄筋が見えている。といっても錆びたりはしていないから、ここ何日かで破壊されたのは間違いないでしょう。
破壊も念入りではあるけど何を使って壊したのかは一目瞭然だった。
「爆破……ですね。焦げ跡とかもしっかり残ってますし」
「サーヴァントの力でって感じじゃありませんね。ヒフミさんは陸八魔さん達がそういう武器を使ったりとかっていうのは?」
「あまり……でも確か以前アルさんがムツキちゃんって子とハルカちゃんって子が仕事で使うから爆薬代が馬鹿にならないってお話してくださった事が……」
マリーちゃん、ではなさそうな気がします。
マリーちゃんならそれこそシスターフッドの力を借りて、トリニティ側の監視映像ぐらい処理できてしまうんじゃないでしょうか。
それに、この崩れた監視塔だった物を見る限り、なんというか
「なんか、
「カメラや映像機器の類い……は破壊されて残骸だけだな。逆に言えば残骸が
そう、一目見て分かるぐらい北側で痕跡一つ残さないよう立ち回っていたのが嘘みたいに『雑』に処理されています。
監視塔を破壊した方法からその痕跡まで、かなり残っているのだ。
「こちらはデータを消してしまったから大丈夫という事なんでしょうか?」
「我はあまりその分野については詳しくはない。だが念入りに破壊はされている、この破片や壊れたカメラ自体から得られる物はない……そうライダー達は判断したか」
「でもさ、なんかスマートなやり方じゃないよね?北側みたいに何一つ痕跡を残そうとしないなら、それこそこの監視塔ごと宝具で消し炭にするとか、それか機材丸ごと盗むぐらいやってもよくない?ほら、ライダーってめっちゃ力持ちっぽかったし」
「時間が足りなかった、もしくは人手が足りなかった……っていうのも全然あり得る話だけど……なんだか、露骨すぎる気がする……なんていうか敢えてこんな風に分かりやすく違う形で壊したっていうか……」
アルさんがそういう風に指示をしたのか。
単純に壊す役目だった人の性質なのか。
或いは。
「この壊し方自体が何かしらのメッセージ、なのかもしれませんね」
「メッセージ……と言えばダークネス・スピリッツシリーズでもお馴染みですね!」
「だ、だーくねす・すぴりっつ?なにそれ?」
「コハルは未プレイですねっ!それでは今晩早速アリスと一緒にプレイですっ!一緒に火を継ぎましょう!」
アリスちゃん達の言うことはともかく、瓦礫をどかしたりしても何かめぼしいものは見つかりません。
けどあからさまに北と東でやり方が統一されていない。
爆破痕なんかを写真に記録してミレニアムに帰ってから調べればどんな爆薬を使ったとかなら分かるかもしれない。
なんなら壊れたカメラ類の破片なんかも持ち帰れば何かしらの情報が手に入る筈。
そう、戦った映像や情報は消そうとしてるのに、痕跡がこちらには残っている。
なんだか私にはそれが意図がある気がする。
もしかすると。
「便利屋68の方の中に、アルさんの方針や思いとは違う意見の方がいる……?」
なんとなく、そんな風にこの瓦礫の山を見て私は思った。
まだ青空は見えますけど、日差しが段々と熱を失ってきました。
もう一時間もすれば時計台の鐘も鳴る頃です。
幸いキャスターさんが光を照らしてくれているので、暗くなるの自体は探索に影響は出ませんが少しずつ疲れも溜まってきました。
南側でも何か有益な情報が見つかれば良いんですが。
「……こちらは戦闘痕が酷いね」
しゃがんだセイバーさんが地面を撫ぜながらそう言われます。
その場所は地面が崩落したように抉れていて、おまけに所々が焼け焦げている。
間違いなく宝具同士が衝突しあった名残です。
「アズサちゃーん、そっち、どうですかー!」
私は少し声を張って奥の瓦礫、ちょうどランサーさんが胸を押されて吹き飛んだ辺りを探索してくれている、アズサちゃん達へと声を掛けました。
彼女達は振り向いてくれたけれど、返事がない。少し離れているからその表情はあまりよく見えないけれど、なんというか困惑した様子が感じられます。
何かあったかと思い近寄ると、手袋越しに見つけたそれを私に見せてくれました。
「アズサちゃん、何かありましたか?」
「……うん、一応」
「そうですかっ!マリーちゃんにまた会う手掛かりがあったのなら大チャンスですっ!」
「そうね!やっぱりこっちにも足跡とか移動した痕跡は見つけられなかったし……」
「彼女もライダー達と同様に、どうやらかなり移動には注意を払っているようだからね。何かしらの手掛かりがあったのなら、」
そうセイバーさんが伝えたタイミングで、アズサちゃんは見つけた時に一緒だったらしいミドリちゃんと顔を合わせてから。
「……マリーが使ったと思われる空薬莢、それから」
その手に持った銀色の薬莢と。
「───アンプル剤の空瓶が見つかった」
中身の入っていない使用済みのアンプルを見せてくれた。
どきりと、心臓が嫌な音を立てた気がした。
「アンプル、ですか……?」
「使用済みだしラベルも剥がされた後だから何かは分からない。けど、瓶自体の変色とか使用するためにおった部分以外に破損がない。それに中にまだ少し薬品が残っている……だから、かなり真新しい物だと思う」
もしかするとマリーちゃんが使用した物かもしれない。
体調が悪いのか、それとも。
「キャスター、何か分かるかい?」
「我の魔術分野の知識はどうしても偏りがある。一概にこれだとは言い切れん。そしてそれが魔術に関係する物だけとも言い切れん」
「ただの医薬品……と?」
「分からんな、もし気になるのであれば先ほどの薬莢も含めてミレニアムで鑑定するのが早かろう」
その言葉を受けて、モモイちゃんがポケットからビニール袋を取り出してくれした。
「とりあえず、壊したり無くしたりしたらいけないから袋に入れちゃう?」
「そう、ですね……もしも中の薬剤が溢れちゃったら、調べられなくなるかもしれませんし」
「だね。とりあえずしまっとこうか」
そう言ってアズサちゃんからアンプルと薬莢をそれぞれ受け取ると袋に入れると、モモイちゃんはそのまま自分の手首へと結んでしまいます。
確かにあれなら、戦車に戻るまで無くす事もありませんね。
「パンパカパーン!アリス達はアイテムを二つもゲットしました!アズサ、ミドリ、お手柄です!」
「そうだね……ここにきて物って形で何か見つけられたのは大きいかな?」
「ミドリの言う通りだ。解析をすればそれらの入手経路も特定できると思う。それに銀色の薬莢……重さからもしかすると銀製なのかもしれない。わざわざ銀を使っている理由も調べれば何か分かるかもしれない」
少し、なんだか言いようのない不安を覚えてしまいましたが、よくよく考えれば大きなヒントを二つも入手できました。この調子でまだ壊れていない西側の監視塔も行けば何かが見つかるかも……そう思って戦車に乗ろうとして私は。
「あれって……?」
何か光る物を2個、瓦礫の中で見つけました。
また何か手掛かりかと思って、戦車に掛けていた足を下ろしてその場所へ。
そのまま瓦礫の中を弄るようにしゃがんで手を伸ばした私の指に触れたのは。
「なん、でしょう……ッ!?」
硬く、冷たい感触でした。
『ねぇ、ライダー……あの子は?』
『……寝ていますよ、アル』
『そう……ならいいの』
音がなる。
陶器が苛立たしげに机に置かれる。
『私は……どうしたらいいの?』
『……私を召喚してしまった以上は、もう降りる事は不可能です。恐らくこの聖杯戦争でサーヴァントを自害させる事は貴女達に大したメリットを齎してくれない……戦って殺す、それを強制させるシステムです』
『そう……』
椅子を回してアルと呼ばれた少女はブラインドにそっと触れる。
その隙間からは僅かにネオンの光が漏れている。それを睨みつけるように、下唇を噛みながら少女は黙って光を見つめていた。
それに女は声をかける。
居た堪れないと、我慢がどうしてもできないと言うように。
『アル……貴女が望むのなら、私は貴女達の剣となりましょう。でも望まないのであれ『やめてちょうだい』……はい』
それを少女は遮って、ブラインドに折れ目がつくのも気にしないで音を立てながらそれを握りしめた。
『少しだけ……少しだけでいいの。時間を頂戴、ライダー』
『……勿論です。心の整理も必要でしょうから』
そう言ってライダーと呼ばれた女は姿を消した。
後に残ったのは嘔吐くような泣き声だけだった。
「今のは……」
見つけたのは青銅で出来たお守りの破片、それが二つ。
それらを組み合わせるように重ねた時に周囲に溢れるような光の粒子が広がって。
その中で見えたのは、アルさんとライダーさんの姿。
「……悪趣味な罠、でないのなら。間違いなくあれは彼女達の記録なんだろう」
そう言うセイバーさんの表情にも困惑した物が見て取れた。
重要な情報であるのには違いない。
けれど、あまりにも唐突すぎて今の私達には判断できない物でした。
ただ、一つ。
頭を殴られたみたいに脳裏に刻まれた物がありました。
───
見つけたらお守りを強く握りしめる。
あの人が泣いていた。
その理由も、ライダーさんが言っていた内容についてだってまだよくわかりません。
でも、泣いていた。
辛そうに、苦しそうに。
それが分かったから、そして彼女はきっと今も泣いている、苦しんでいるんだと思うから。
「助けに、いかなきゃ───っ」
どんな事情があるかまでは聞かなくては分かりません。
だけど声を殺して背中を振るわせる彼女を助けたいという気持ちが強く、そしてくっきりと私の心に色づきました。
青空に浮かんでいる雲にオレンジ色が混ざり出してきました。
廃屋の中にまで入ってくる日差しが、ここからの1時間はきっとこれまでよりぐんと少なくなります。
だけどそこまで不安はありませんでした。
キャスターさんが明かりをつけてくれるし、何より西側の監視塔はまだ倒壊していません。
その分、情報にも期待はできないかもしれないけど、時間的にも最後に探す事を考えれば、瓦礫を掘り返したりする手間が省けるのはありがたかった。だからそう。
探索もすぐ終わると───。
「こんにちは、皆さん」
「何か───お探し物ですか?」
微笑みを湛えて影を伸ばす彼女に。
伊落マリーちゃんに今ここで会うなんて想像もしていませんでした。
1じゃんね☆
マリーちゃん、再登場じゃんね☆
本スレ投稿時は毎回18時に合わせて投稿してたのもあって18時の女と呼ばれたり、ジャプニカ暗殺帳書いてそう言われたりしてたじゃんね☆
こ、ここから!ここからもっと可愛く書くじゃんね☆
作中登場する情報マトリクスはEXTRAに登場する同名の要素とブルアカのオーパーツ要素を混ぜ込んだ独自アイテムじゃんね☆
今回みたいにアイテムを発見すると該当サーヴァントのスキルやステータスを鑑定(看破)できたり、アイテム自体を成長(凸)させていく事でマスターとの記録を一部投射してくれてそこから真名やマスターとの関係、その陣営の背景に迫っていく……っていう要素だったじゃんね☆
……そうじゃんね☆
だった、過去形じゃんね☆
基本的に蒔いた伏線はちゃんと回収する1だけど、システム的な噛み合いがあまりにも悪かったじゃんね……1の見通しが甘々甘栗だったじゃんね☆ミーカミカミカミカミカミカ
さらっと新情報出したけど改めてお伝えしておくじゃんね☆
この聖杯戦争でサーヴァントを自害させるメリットは文字通り0じゃんね☆
本作の内容は
-
①Part6スレまで読んでる
-
②あにまんの過去ログまで読んでる
-
③ハーメルン版のみ読んでる