【アイテムを入手しました】
【これまでに各種獲得したアイテムの清算を行います】
アイテム名:赤銅の林檎ジュース
分類:戦闘補助アイテム
説明:魔力の籠った赤銅の果実、それを飲みやすく加工したジュース。
飲むと魔力が僅かに漲る。
この世のどこかにはまだ別の色の果実、そしてそれを実らせる苗木があるという。
獲得日:5日目夜
アイテム名:英雄の証ワッペン
分類:交流補助アイテム
説明:ココデビルから発売されているワッペン。
人が誰しも心の中に持っている英雄への憧れ……を形にしているらしい。
英雄への理解が高まり、コミュニケーションがうまくいく……かもしれない。
獲得日:5日目夜
アイテム名:古びたゴルゴネイオン
分類:情報マトリクス
説明:元の形が分からないほど劣化した、とある古き地母神の遠い過去、或いは彼女への祈りと願いが込められた魔除け。
彼女を喚んだマスター達と歩んだ道のりがほんの僅かだが刻まれている。
獲得日:7日目午後
重々しい空気が、私達を囲う。
想定以上に話が大きくなってきてしまいました。
『(ヒフミ、
『(正直厳しいですね……私もゲヘナにお友達はいますが流石に自治区政治の中枢で働かれている方でお知り合いの方はいません)』
セイバーさんからのいけるかという問い。
それが意味する正攻法以外の手段での調査について、私は難しいと答えざる得ません。
そもそも私は別に政治的に大きな役職や融通の利く立場というわけじゃないんです。*1
ナギサ様とこそお友達ではありますが、それもあくまでプライベートでの関係になります。
イズミさん*2のように他自治区とはいえゲヘナにもお友達はいますが今回の件でお力添えをお願いする、というのはやはり難しいでしょう。
『(……僕はこのキヴォトスにおける自治区というのは、僕達で言う国に相当すると考えている。その上で確認するよ、他自治区が後ろ暗い経緯で立ち入りを制限する地域を君達が調査する。その際に君達の自治区指導者からの賛同は現時点で得られるかい?)』
『(……聖杯戦争という特例があったとしても正面から政治的にこの件をクリアするのは難しいと思います。なにより今回の件はティーパーティの協力も難しい気がするんです。少なくとも古関先輩の話を聞く限り、ティーパーティの御三方は全員3年生ですから)』
『(ナギサ達も例の雷帝という子が在職していた期間に既に入学していた、ということか)』
この件をこれ以上深掘りするべきか。
それともアルさん達はこの件には関わっていないと決め込んで別の糸口からアルさんについて調べていく行べきか。
正直に言えば悩んでしまいます。
きっと多分この中にいるみなさんは同じ事で悩んでいて。
だから誰も口を開けないでいる、少なくとも私はそう思い込んでいました。
「よぉっし!一個気になってたの分かったし目星もついたね!次は現地調査に行く感じだー!」
そんな私達の悩みを吹き飛ばすようにからりと清々しい言葉が耳に届く。
ハッとして見てみればモモイちゃんが満面の笑みでブイサインをしていました。
「……モモイさん。貴女、話を聞いてました?これ以上この件に「うん、分かってる」……」
古関先輩の心配を、モモイちゃんは笑顔で返されました。
軽やかな声です。
でも決して軽薄ではありません。
安心してと言わんばかりに遮った言葉はいっそ逞しさを覚えるぐらいの芯がありました。
古関先輩もそれを感じられたのでしょう。
モモイちゃんの言葉を待つように、けど本音では私達が関わろうとするのを心配して下さって止めようとしたくて、だから我慢するように唇を真一文字に閉じておられます。
「色々難しい事情、絡んでるみたい。私、あんまりそういうの詳しくないけど、それでもヤバそうなの分かったよ。でもさ、ウイ先輩」
「……なんでしょう」
「それでも私達、調べたいんだ。だって知らなきゃ、何もできないからさ」
力強くモモイちゃんが言う姿に、ウイさんは眩しそうに困惑している。
「私一人じゃこういう事、お手上げだけどりアリス達もヒフミ達もいるしキャスター……あっ!じゃなくてぇ!ええっと……とにかく!頼りになる仲間もいる!だからこんなところで躓いてる暇なんか私にないんだ」
だから、と彼女は続けてグッと親指を上にあげてウイさんの目を見た。
「ありがとね、ウイ先輩!私達、どうしてもこの事調べて、次に行かなきゃいけなかったから……とっても助かっちゃった!」
曇りなく、まっすぐにウイさんの瞳を見てそう言い切ったモモイちゃんに、ウイさんは目を見開いてから。
「……きゃす、たー」
と、小さく呟いた。
「そう……貴方が、ですか……」
噛み締めるように、奥歯が砕けそうなぐらいに。
耳を研ぎ澄ませないと分からないぐらい小さな声にはどこか羨望のようでいて哀しいぐらいに優しい音が乗せられていて。
そんな言葉を下向いてぽつりと溢してから古関先輩は、書類を取り出しました。
「……これ以上、この教会について私から話せる事も資料もないですから。もし知りたいなら、当時をよく知る三年生を訪ねるか、その逆にゲヘナの上層部融通の効く人間に頼むかして下さい」
そう言ってから古関先輩は次の資料、取り出したメモ帳と22冊の古書、そしてレポート用紙を机に並べていかれます。
別に普通の仕草です。
いつも通りの古関先輩です。
私にはそれがどうしてか、何かを振り切るように見えてしまった。
「次の……貴女達が知りたがっていた英雄についてのお話をします。まず、メドゥーサについてですけど」
ウイさんは止まらない勢いのままそう言って古書を開いて、挿絵を私達に見せてくれた。
「前回のレポートでも触れましたがゴルゴーン、そしてその中の一柱であるメドゥーサはかつてラケダイモンと呼ばれる半島やアナトリコンと呼ばれる海沿いの地域で広く信仰されていた地母神です」
そう言ってウイさんが指差した先には大きな翼を広げ、その両手や足元に蛇を這わす女神の絵。
「黄金の羽を持ち宝石の瞳を宿しその腹部に蛇の帯を巻く偉大な地母神、それがメドゥーサです」
その長い髪と優しげな表情、そして長方形が刻まれた独特の瞳をした女性の絵は、昨晩見た彼女にやっぱりどことなく似ていました。
「彼女は古くから多くの地域で祀られましたが、最終的には新たな宗教と時の権力者によって徐々にその信仰は失われ、その過程で女神から怪物へと貶められました」
そのままページを捲り次に指差した先には髪が蛇となり、涙するように両目を手で覆う女性の姿があった。
「ですがその本分は地母神です。農耕と密接に関わる『多産』と『肥沃』を司り、季節の交替を象徴する『死と再生』を司る女神である事こそが、怪物となろうと変わらない彼女の本質です」
そう言ってからウイさんは次の本を手に取ってから、ちらりとメモを見て書かれている数字を確認すると手早く目当ての場所を見つけてまた同じように広げて見せてくれました。
「地母神という神格が持つ職能、いえ権能*3は多岐に渡りますがその多くは多産と肥沃といった物に関わります。これはかつて彼女達が信仰されていた時代に原因があります。今ほど科学が発達していない時代において、子どもの出産や作物の実りは生活、より厳密には種や民族の保存という意味で非常に重要視された。この飽食かつ科学全盛の時代からは考えられませんが、実りとは言い換えれば生命の存続と直結した物でした。だからこそ彼女達は信仰され、尊ばれる物だったのは想像に難しくありません」
想像してみれば当たり前かもしれません。
今よりずっと昔、出産も命懸けだった時代があった。
食べ物だって必ず毎年同じ量を得られるわけじゃない。
だからそんな命の恵み、豊穣を祈る相手がいて、それがあのライダーさんだった、かもしれないという話ですね。
「そして、足もなく地を滑る蛇は脱皮を繰り返し大きくなりますが、これは遥か古き人々は不老不死の秘密に通ずると考えました。今でこそ苦手とする人も多い爬虫類ですから不思議に思うかもしれませんが、太古の人々は非常に重きを置き、その神秘に女神の姿を垣間見ました」
なるほどと納得してしまいます。
確かに足もないのに地面をするすると這って進む姿は不思議だし、脱皮して大きくなるのもわたし達とは全く違う成長の仕方だ。
科学の知識が乏しい時代ならその摩訶不思議な姿を見て神秘的に思うのも無理がない気がします。
以前、ペロロ様が脱皮という特技を披露しておられたのもそういう事かもしれませんね*4*5。
「そうした信仰を受けていたからこそ、彼女は後年に貶められた際も、蛇の怪物となってその死体から多くの魔物を産んだという逸話になった……とも考えられますね」
元からそういう性質があったからこそ、その怪物になってもその名残りがある、ということでしょうか。
「ええ、また、その……皆さんから見せて頂いた特殊撮影の映像ですが、はい。仮にあのオートマタがメドゥーサと関連するのであれば、あれは『魔物』なんでしょうね。地母神メドゥーサは『多産』を司ります、それを怪物と転じて描かれたゴルゴーンもまた『魔物の祖』となった存在です」
古関先輩は二冊ほど自分の手元に古書を置くとまたぺらりと捲ってたくさんの魔物が描かれたページを見せてくれました。
その一番上には天を駆ける翼の生えた馬とそれに乗った片刃の剣を持った戦士の姿が描かれています。
「多産の権能は彼女の領分であった以上、ゴルゴーンにもその権能から零れた何か……そう、例えばですけどスキルのような物があってもおかしくありません。名付けるなら……魔の血脈でしょうか?」
そう言い切るもどことなく恥ずかしげな様子があった。
分かりますよ古関先輩。
私も実はスキルの名前読み上げしたり叫んだりするのちょっと恥ずかしいですから!*6
「蛇が一度に産む卵の数は多い種で二十個程になります。これはあくまで想像ですが、もし仮にそのドラマに出てくるオートマタを作っているのがゴルゴーンであるなら。
そういう考えもあるなと思えば、モモイちゃん達ゲーム開発部のメンバーは手を叩いたりしながら納得といった様子をしています。
どうやらそういう展開に思い当たる事があるみたいです。
「対策があるとすれば、オートマタは所詮オートマタである事、でしょうか?わざわざオートマタの姿をしている理由は分かりませんが、それでも何かしらの理由がある筈です。映像から分かりましたがあのオートマタは一般流通している規格の物でした……ドラマの撮影用ですから当たり前ですけど。なら、流通先を抑えればそれ以上は作れない或いは作れたとしても別の物になる、かもしれません」
一瞬だけ、ウイさんがチラリとハナコちゃんの方に意味ありな目線を送っていた。
それ目線にハナコちゃんは笑みを浮かべるだけで特に反応はない。なんでしょうか、二人だけで分かる秘密のお話……とかが今の中にあったとかでしょうか。
「もう一つはオートマタ自体の置き場所です。仮にゴルゴーンが魔物を産んでいるなら、それを飼うための広いスペースが必要になります。その場所を破壊していけば、戦いを有利に進める事に繋がります……ね、ドラマの中なら」
特殊撮影のドラマという前提でしたがウイさんの話は実際の聖杯戦争で十分に方針として検討できるぐらいの対策を考えてくれていました。
マーリンさんの言った通り、頼れる先輩のウイさんに頭が上がりません。
「それからもし中身が魔物なら、その存在自体も危険かもしれません。人は野生の大型動物に遭遇してもパニックを起こす物です……それが文字通り魔の生き物なら、生物として捕食者への恐怖心や忌避感を抱いて身体に異常を来たす……ぐらいのことはあっても可笑しくありません」
何せ常識で測れない物なんですから、といいながらウイさんはメドゥーサさんについて書かれた古書を閉じた。
「次にスカサハと呼ばれる英雄についてもある程度調べて宝……必殺技についてでしたか?それのおおよその検討をつけました」
スカサハ、スパルタクス、アーラシュとそれぞれのサーヴァントの方の
ちらっと見てみると、事細かに書かれた資料に私達が調べた時よりもより詳細な情報が載せられていた。
「これらにスカサハ、スパルタクス、アーラシュについてを簡単にまとめています。その逸話や剛力無双振りと過去数年分の正義実現委員会の運動テスト結果や模擬戦の記録とを比較してこの程度と考えられる現実的なラインの数字を出していますから……よければ参考にしてみて下さい」
まだ直接的な関わりの薄いスパルタクスさんや、前回黒服さんが漏らしたもう一つの宝具らしき物を示唆した発言。
それからアーラシュさんの詳細なステータスやスキルについてもこれである程度は目星がつきます。
そう思って心を弾ませてみなさんと回し読みしようとした時に。
「それからスパルタクス、という英雄についてですけど……」
ウイさんから思わぬ人の名前が出ました。
「彼の生涯、そしてその功績は体制側へ『叛逆』という言葉が相応しい物です。奴隷達をまとめ上げ常に体制側へ戦いを挑み、かつてあった大国を震撼させる程の戦力に成長し各地での戦闘に勝利し続けたウォーモンガー」
その荒々しい逸話は確かにバーサーカーに相応しいと感じてしまう一方で、あの時片膝をついて視線を合わせて話を聞いてくれた彼らしくないとも感じてしまう。そしてそう感じたのは決して間違いではないと言うようにウイさんは説明してくれた。
「その反面、語られる彼個人は戦う力がない老人や幼い子どもへの暴力を徹底的に禁じ、金品の略奪を諌める理性的な男性だったと謳われます。その戦いは窮乏と困難に見舞われたものでしたが挫ける事もなく突き進んで勝利を手にする勇敢で、そして非常に聡明な人だとも」
ウイさんが持つ古書の表紙、そこに古代語で書かれた『Tertium Bellum Servile』の文字を彼女は一なぞりしてからこう締め括った。
「もし仮に私が彼と対話をするならば……そしてもし今困難な状況にあるのなら。打算を捨て、語り継がれた彼の姿を信じて『
長い話を終えてウイさんはまた一口珈琲で喉を潤して、それから近くにあったブックトラックを引き寄せた。
ウイさんの細い腕でするりと手繰り寄せられたそれに彼女はてきぱきと古書を収めていく。
どうやらここでの話はそろそろ終わりのようでした。
「映像記録にあった……銀の薬莢。あれがどんな物なのか、私では調べきれません」
ぼそりとこちらに顔を向けず古書を仕舞っていく彼女の声が流れた。
「確かに銀の薬莢……というより銀の弾丸は御守りとして存在しますし、シスターフッドでも新年や式典で用意される事があります。ただし、だからといってそれ自体に何かしらの格式や由緒があるというわけではないんです」
意外な言葉にびっくりしてしまいます。
わりと銀の弾丸なんて実際に使えるかどうかは別としてアクセサリーや御守りで見かけたりするの物です。それが何の謂れもないと聞かされると驚いてしまいます。
「考えてみれば当たり前ですよね。銃もそれに用いる弾丸も科学の発展と共に生まれた産物です。なら銀の弾丸自体、それほど古めかしい起源があるわけじゃありません」
けど、よくよく聞いてみれば尤もな話です。
剣や槍なんかと比べれば明らかに銃や弾丸は新しい武器なんですから。
「どちらかと言えば銀という貴金属自体に意味があります。その美しい輝きは古来から月や女性と関連し、心の平穏と幸運を呼び込み
銀そのものに意味があるのだとウイさんは強く念押しするように言う。弾丸にではなく、銀という金属自体が重要なのだと。
「銀そのものは鉛より軽く、その威力は見込めません。仮にそれを実戦の場で使うとすれば、それは宗教的な意味合い以外に考えられるのは一つ。威力の高い鉛の弾丸を押し除けても効果的であると判断したから」
「たとえば……魔物や
「まぁ、所詮はフィクション、迷信に過ぎませんけどね……ああ、それからアンプルについても同型の物は見つかりましたが、アレはよくある一般に流通している物です。『ラベルが剥がされていて』これ以上の判別は難しいです」
残念な事にアンプルについての情報は調べられなかったということでした。
後はヴェリタスの方が調べて下さっている結果待ち、ですね。
ただウイさんは、分からなかったでは済まさずに、次の道標を示してくれました。
「もし貴女達がさっきの二つを調べたいなら、銀の薬莢はシスターフッドの歌住サクラコを、アンプルなら……そうですね、救護騎士団を訪ねるのをお勧めします」
「ただどちらを行くにせよ、一方は弾薬、もう片方は医薬品について。そうした物品の情報を尋ねる以上は『きちんと』説明しないと……理解を得るのは難しいかもしれませんね」
シスターフッド、そして救護騎士団。
どちらもトリニティの中ではとても大きな組織。
そこを訪ねれば確かにもっと情報を得られるような気がする。
けど、なんとなく。
古関先輩の言い方に妙な引っ掛かりを覚えました。それが何かは言葉に出来ないですけど、なんとなく、そう本当に小骨のような違和感がある。
何かシスターフッドについて、もしかすればマリーちゃんについての情報を知っている、そんな気がしたんです。
明確な理由があるわけではなく、ただ漠然と直感でそう感じて。
「ウイさんは……マ「そういえば、随分調べて頂きましたが、いいんでしょうか?たかがドラマの話なのに」ぃちゃ……はへ?」
マリーちゃんについて何か知らないかと尋ねようとしたタイミングでハナコちゃんの疑問とちょうど被ってしまいました。
けどハナコちゃんの言った疑問というか申し訳なさそうな声にも確かにと頷きそうになります。
その専門性から普通の学生で利用される方は少ないとはいえティーパーティから度々依頼を受けておられます。
何よりそもそも古関先輩は図書委員会の委員長さんです。
私達の持ってきた調査依頼をドラマの話として受け止めてもらったのは助かりましたけど、そんな事で貴重なお時間を割いてしまって大丈夫だったのかとも感じてしまう。
もしかすると、これが私が感じていた違和感、だったのでしょうか。
「……別に。言ったでしょ、もう終わった話だって。ちょうど急ぎだった仕事、片付いたところで暇だったんです。だからドラマの映像を見たりその所感を語ったり、考察するなんて依頼ぐらい……逆に頭の体操になりましたから。もし可能なら、戦っている映像や貴女達の話だけじゃなくてそのドラマの『本編』も見たいぐらいです」
じとっと彼女は私達を見る物ですから慌てて取り繕ってしまう。
そんなドラマ、実際には存在しないんですから。
「あ、あはは……こ、今度!今度またディスク持ってこれたら持ってきます!」
「期待しないで待ってます」
今日一番、軽い溜め息をこぼす古関先輩を見て、私の中にあった妙な違和感のざわめきは落ち着きを取り戻した。
だから最後に一つ、どうしても気になっている事を聞いてみる事にしたんです。
マーリンさんは違う視点でこの聖杯戦争を見ている人に会う事が手掛かりになると仰っていました。幸いウイさんは聖杯戦争その物とは『関わりがない立場』にありますし第一『マスター』じゃありません。なら、そういう視点から見える物があるかもしれません。
「古関先輩、実は一つお尋ねしたい事があるんです」
「……いいですけど、もうお昼になりますから手早くお願いします」
「あはは……実は今、あるゲームに参加してるんですけど、そのルールに気になる事があるんです」
「ルール、ですか?」
突然の話題に訝しむ古関先輩ですけど、私は無視するように気にしないで話を続けます。
幾らマーリンさんからいずれ分かると言われても、これを知る事がマリーちゃんやアルさん達の願いに近づく一歩になるかもしれない……そんな風に思うんです。
「はい、そのゲームに勝つ為には必ず相手を蹴落として脱落させなきゃいけない。そしてそれ以外の方法は認められてなくて、もし仮に相手が棄権したとしても必ずやり直しさせられる……そんなルールがあるんです」
「……それは」
「どうして運営をしている方はそんなルールにしたのかとか……なんでもいいんです。頑なに勝ち方を一つに拘る理由を、棄権が出来ない理由を、考えてはもらえませんか」
監視カメラの映像をドラマだと思い込んでいるウイさんに今から改めて説明していてはきっと日が暮れてしまいます。だから私はゲームという仮定の話で少しでもこの信頼できる上級生から何か良い考えが欲しいと思って尋ねて。
「───それ本当にゲームなんですか?」
根本からばっさりと否定されてしまった。
「いえ、疑っているのではなくそもそも『ゲーム』だと思っている物、それ自体の認識が間違っている。そういう可能性はありませんか?」
それはわたしとは全く違う視点でした。
「ゲームのルールに認められない物なんていうのは『プレイヤーの一方だけが不利益になる』物や『著しいゲームバランスを崩壊させる物』……ではないでしょうか。そうなると、棄権できない事はそのどちらかやそれに準ずる物に該当するのかもしれません……けど」
私が伝えた棄権、つまり聖杯戦争におけるサーヴァントの自害という選択肢はそれ自体が聖杯戦争やその参加者に何らかの不利益を齎してしまう可能性があるという考え。
そして───。
「ヒフミさん。貴女から今聞いた話はゲームで説明するより料理とか若しくは『実験』で説明した方が納得しやすい……気がします。蹴落とすという勝ち方を工程と捉えてみましょう」
実験、そう言われて薄ら寒い何かが背中に触れた気がしました。
「対戦相手が何人か知りませんが……仮に七人だとして。自分を除いて六人の相手を蹴落とさなきゃいけない。棄権はしてはいけない。相手を倒さないで勝ったらもう一回『やり直し』……奇妙なルールです。そしてやり直しを強制させるほどルールその物を遵守する事その物への拘りを感じます」
やり直し、つまりそれ以外の結果が認められない。
それに私はただの悪意なのかと思っていましたが、そうではなく、相手を倒すルール自体が非常に重要なのではと古関先輩は推理してくれました。
「例えば、そうですね。相手を倒す六回の戦いを全部で六つの工程を必要とする実験、と置き換えてしましょう。全ての工程は決められた通りに行わないと正しい実験結果は導きだせません……ましてや棄権、実験で例えるならその工程を一つ飛ばすなんて事をしたらまともな実験結果にはなりません。だから六つつの工程を必ず全て践む必要があって、それ以外の方法は認められない」
眼鏡のブリッジを弄りながら古関先輩自身あまり納得は言っていないと言いたげな声で一応と前置きしてから結論を教えてくれました。
「……というところでしょうか?棄権させたくない、必ず蹴落として脱落させてほしい、その二つを両立させるならこういった考え方ができます」
聖杯戦争を運営する人間の目的、それは自陣を除く『六騎を倒す』という工程を踏まないといけない……そういう物なのかもしれません。
「運営する人間が是が非でも実験を成功させたい、だからそういうルールを敷いた……のかもしれません」
でもそれなら一体、その工程をわざわざしなきゃいけない『理由』は何なんでしょうか?
「話、おしまい?それならもういい時間だし、そろそろ帰ってもらえますか?……私もお昼にしたいですし」
「わわっ、ありがとうございました古関先輩っ!あっ!よかったらお昼、ご一緒しませんか?」
「……ありがたいけど遠慮しとく。古書館を空にするわけにいかないから」
残念ですけどそういう事ならお暇をと思って私達はもう一度頭を下げて古書館から出ようと彼女に背を向けた。
「棄権できない?……どういう事?そんなルール、存在する筈ないのに」
だから彼女が最後に呟いたその一言は、私達の耳には届かないままになった。
1話ごとの文字数で望ましいのは?
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3000文字〜4000文字
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4000文字〜5000文字
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6000文字〜7000文字
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8000文字〜90000文字
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9000文字〜10000文字
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10000文字〜12000文字
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12000文字〜15000文字
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15000文字以上