③古関ウイはサーヴァントを四騎斃す必要がある
「ヤッタ!ヤッタ!」
「シーね!シーね!」
「馬鹿ナ奴!馬鹿な女ァッ!」
耳障りな声だけは聞こえて来た。
私達を囲うようにいつの間にか24と数を増やしたモドキ共が集まってくるのが目の端に映る。
けど、そんな事関係なかった。
「ごめっ……血っ、血がっ……」
「申し訳、ありません。少し、間に合わず……ですからこのような手負いを……」
「……違っ!そっ、そんなの、わ、私が……!」
「いいえ。まさか数を増やしてくるとは……少し油断してしまったのは私の落ち度に御座います」
片膝をつくようにして肩で息をする彼女に駆け寄る
そう、何もできない。
手当ての仕方は知っている。
だけど包帯がどこにある。
背中を大きく切り裂かれた人間を私一人でどうやって止血する。
敵に囲まれる中で、弱くて情けない私に何ができる。
「……私がっ……私がちゃんとしてなかったから……!」
「いいえ、これしき問題、ありませんよ……ウイ、さんは……ご無事、ですか?」
「そんなのっ……っ!……キャスターさん、が守ってくれたので」
「それなら、ホッとしました」
何がだというのだ。
こんな弱い己を守って、こんな弱い自分を守って、こんな役にも立たない人間がマスターになったばかりに傷ついたというのに。
どうして彼女は自分の怪我より私なんかの心配をしているのだと言うのか。
「マスター、御不便をおかけしますがもう暫く御時間を。敵も数を揃えてきたとなれば恐らくは大詰め」
キャスターさんは再び立ち上がった。
嬌笑が森の中を木霊し、私達をせせら嗤う声が銛のように突き刺さる中で。
怪我をおして立ち上がり、痛みで上手く表情を作れないのに。
「この敵勢は言うなれば聖杯も敗色を認識している証左でしょう。ならばあと一押し」
彼女に杖が戻り、私に背を向ける。
その背を見て、私の喉が情けなく鳴った。
痛々しい傷跡が背中一面に深く広がっている。
綺麗な洋服が乱暴に引き千切られている。
それなのに、勝手に戦場で自暴自棄になった馬鹿な私なんかを庇ったせいで怪我をしたのに。
「大丈夫です───必ず勝ちますから、良い子でお待っていて」
この人はまた、微笑いかけてくれた。
「……っ」
私も、立ち上がる。
「……ウイさん。良いんです。戦いなぞ、サーヴァントに任せて、貴女は後ろにただ立って」
キャスターさんが心配してくれている。
気持ちはよく分かる。
こんな何にも出来ない人間が立ち上がった所で何になる。
何が出来る。
邪魔なだけだろう。
それは分かる。
「だから───」
彼女は言う、だから任せてと。
それが賢い。
それが正しい。
私には何もない。
何も出来ない。
───だけど。
「……ぇろ」
脳を動かす。
思考を加速させる。
今まで読んできた万を越える蔵書の中からこの窮地の打開策を見つけんと脳へ血を送る。
思案に耽る。
目をかっ開いて、奥歯を噛み締めて、呼吸すら止めて。
敵を睨みつけながら私に出来る、私なりの方法で、
「……ウイさん?」
考えろ。
考えろ、考えろ、考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ───考えろッ!
私にあるのは本だけだ。
一度ぐらいの成功体験に浮かれた凡愚だ。
今この場で迫ってくる怪物に抵抗できる力なんかない。
だけど───古関ウイには本だけはある。
どうせ頭でっかちに知識ばかりは溜め込んできたのだ。
今考えないで、今打開策を打ち出さないで。
今何もできないでいて。
じゃあ一体、古関ウイという人間のどこに価値があるというんだ。
私のせいで怪我をさせたのだ。
治療する技術もないのだ。
だったらせめて!
せめて彼女がこれ以上痛い思いをしないで確実に勝てる策を考えろ───!
─── ですがそれこそが問題なのです。
「あっ……」
答えは、始まりにちゃんと用意されていた。
─── 仮初の形でごく一部のみ形にした木偶人形
───定まらぬ形を固定できぬ以上
そう、そうだった。
忘れていた、前提を。
どうして戦わなくてはいけないのか。
どうしてキャスターさんがあのモドキ共を倒しているのか。
前提条件があったのだ。
聖杯の雫が呼び出す存在はサーヴァント未満の不安定な
それは召喚に失敗したサーヴァントの逸話を一部分だけ現出させた存在。
聖杯戦争中と誤認している聖杯の雫を停止させ、回収する為にはモドキという不安定な存在を倒し尽くすか、運良く召喚に成功したサーヴァントを斃すしか方法がない。
そう、要するに問題は初めから提示されていた。
「……妖精」
「深夜に時計台でお茶会を開いているとか、羽根のない生徒の枕元に羽根があったら妖精の悪戯だとか……そういうトリニティで語られているよくある都市伝説とか古い噂話で語られる存在」
「ウイさ……いえ、マスター。何を……?」
「ですが、今から話すのは全く別です。私が言っているのは起源を外の世界に持つ者達。より源流に近い、始まりの形」
キャスターさんが訝しんでいますが、私の頭はそれに答えられる余裕なんてない。
今はただ、私が出来る最低限を熟すので精一杯だ。
「調べました、森に関連する怪物の逸話について……少なくとも、モドキ。貴方のような存在をそのまま描写している文献は私には見つけられなかった」
元より当館に蒐集された物は文字通りの
未だ解読し終えていない物も数多くある。
中には偽書が蒐集されている場合もあり精査には時間が幾らあっても足りないのが現実。
膨大な資料の中で森に潜む怪物の正体を突き止めるのは骨が折れた。
「もっと時間があればとも思いましたが、古書館の蔵書量は膨大です。だから、今日一日で可能な方法を考えて……私は貴方の要素を分解して、探すという手段で検索することにしました」
そうだから、私は楽な方法を選んだ。
全ての資料からではなく、要素を抽出して適当な当たりをつけて初めから探せる範疇に収めて調べた。
「人に害をなし、けれど無邪気に遊ぼうとする」
モドキ連中の騒めきが少しずつ秘められ始める。
ひそひそと怯えるように相談をする声が聞こえる。
馬鹿らしい。
こんな小娘が突っ立って話しているというのに、今更相談とは。
「そして森を住まいとする魔性」
もうとっくに。
「斃されるべき存在ではなく、恵みと災いを齎す自然の二面性が擬人化したような
───
「統一された民族によって繰り返し編纂され時に権威と文明の傍にあった神聖ともまた少し違う、より原始的な
何の役にも立たないと思っていた。
でも一応戦いに行くから、その程度の気持ちから調べてはいた。
「だから貴方は多分……妖精です」
古書館に行ってから机に並べた古書の山。
その中に答えは、かなり精度は低いが確かに見つけておいたのだから。
「そして森の中で私を……
「まさかマスター、貴女は……!」
キャスターさんも私が何をしようとしているのかが分かったのか何故か嬉しそうな声を上げた。
それがどうしてかはさっぱり今はとにかく自分の知識をひけらかすのに専念する。
何故ならそれしか出来ないのだから。
「該当する存在は幾つかありました。森で遭難というのは今以上に多かったでしょうから、何せ人通りがいないという事はそれを好都合とする存在が住まうという話にもなります。気分は良くないですけど、銃のない時代に私みたいなのがふらふらしてたら攫われたっておかしくない。だからそういう逸話は……たくさんありました」
森。
今いる此処、そして昨晩襲われた時もそう。
とにかく森というのは電気やまともな交通網のなかった時代において
昼間でも暗いその場所は獣達の住処であり、正しく人を寄せ付けない異界として人の生息圏と明確に分たれていた。
「でも、一応聖杯戦争ですから……英雄と関連がありそうな物に絞る。その中でトリニティの歴史、より正確には古書の中でも収集が早い段階で行われた物。つまり今のトリニティ自治区周辺に持ち込まれた書に重点をおきました」
だからこそ数は多かった。
森に纏わる伝承は数えきれないほどにあった。
「貴方はモドキ……です。聖杯の雫が召喚に失敗してサーヴァントの逸話、その一部分から零れ落ちた存在。ですが召喚に失敗したのは
その中で私はまた楽をした。
結局英雄を呼び出そうとして失敗しているわけなのだから、英雄譚に纏わる物のみに絞った。
さらにそこに追加したのは。
「なら、ある筈です。土地、の縁……とか……」
なんでもサーヴァントの召喚には触媒の用意がいるという話。
キャスターさんから聞いた限り、土地にも左右されるとのことだったから、当たれば儲け物ぐらいの気持ちで仮説を元に探し歩いた。
「伝承、そして民話とはそれを継承する民族のアイデンティティ足り得ます。何故ならそれは彼らの過去だからです。そして書とは人の叡智です。人が受け継いできた、受け継ぐべき物を纏めた宝物です。だから……この地に移り住んだ私たちの祖先が手元に置いた古書」
中々その内容を理解させてはくれないし、中身が欠けてしまっている子もある。
難解で複雑で、だから愛しい。
そしてそんな子達を理解するには、ただ古代語の知識があればいいのではない。
本の材質、インクには何を使われているか、誰がいつどこで蒐集したのか。
その子を知る為に、内容だけでなくその子の背景もしっかり辿らなくてはいけない。
「私たちの先祖が一番近くに置いていて過去の記憶は、私の先輩達が古書の蒐集をするにあたって比較的集めやすかったその子達は……きっと最初期から古書館で私を待っている筈」
それだからこそ、今回の探し方で私はこのトリニティに縁深く、森に纏わる伝承を持った英雄譚。
それを随分と奥から見つけることができた。
「残念ながら、それその物というのは見つかりませんでした。それもそうでしょう、土地に引っ張られたんです。だから貴方は見つけられなかった。だって少なくとも、このキヴォトスで集められた古書の中に
それが正しいのかは分からない。
そもそも調べたところで役に立つかどうかだって分からなかったぐらいなんだから。
「顔がない、というのはその伝承の中で犯人が分からなかった事の記号化……でしょうか。それとも忘れ去られてしまったから、でしょうか。少なくとも貴方がした悪行は残ってもその名前までは残らなかったのですから」
だけどどうやら。
私の後ろ向きな努力とやらは珍しく。
結実してくれるらしい。
「その英雄を襲った悲劇の舞台の名は───エリン」
その単語を口にした瞬間、森の中、その一帯から突き刺さるような怒りと殺気と動揺が私に向けられた。
ところがお生憎様だが今の私は喋るのに必死。
普段まともにレファレンスサービスだって面と向かって利用者とせず書庫整理していた図書委員が私なのだ。
普段の百倍は喋っている今、そんな感情を向けられたって相手してやる余裕はない。
「貴方は恐らくエリンの英雄、その妻が妖精に攫われたという逸話の具現化です。名すら残されなかった悪しきドルイド或いは……」
そしてどちらにせよ手遅れだ。
だって私が調べきれたのはそろそろ底を尽きる。
第一この方法は正しいとしてもどこまで上手くいくかなんて分からない。
「もう一つの風説にあった、人の妻を攫った哀れな妖精」
ただまぁ、私に向かっていよいよ影が襲いかかってくるのが目に映像と入って来たの考えるにどうやらこのやり方は───正しいみたいだ。
「マスター!お気になさらずッ!貴女の身は必ず私が守ります!」
このままいけば八つ裂きにされてお仕舞いというところでキャスターさんが間に割って入る。
「ですからどうぞッ!そのまま───
そう、これは定める行為。
決定付ける為の儀式。
答えは初めにあったのだ。
モドキという不安定な存在を倒し尽くす必要があったのは、聖杯の雫が呼び出したのがサーヴァントではなくその擬き。
つまりは不完全で不安定で、逸話の一部分だけだったから。
問題点はそこなのだ。
ならば───それを解消してやればいい。
召喚に失敗して、存在が不安定だというのなら。
その悉くを解き明かして本来のあるべき姿に。
そうすれば後は単純。
何回も倒して、また現れたのと戦うだなんて消耗戦をしなくて良い。
あと一体倒せば済むんだから。
そしてそれが。
「汝、無敗の紫靫草、妖精に愛されし智慧の御子」
何も出来ない古関ウイが。
本しかない古関ウイが。
キャスターさんの隣に立って、自分なりに出来る。
「偉大なるドルイドに育てられし金紗の騎士ッ!」
たった一つの馬鹿みたいに冴えていない方法なのだから。
名を叫んだ瞬間だった。
今日聞いてきたどの断末魔より激しい悲鳴が響くと共に黄金の粒子が夜空と私達を照らした。
「如何にも。我が名、我が身はフィン・マックール」
黄金のカーテンを横一閃。
その手に持った薄紫の槍でモドキごと薙いで現れるのは伝承通り見事な金紗を揺らす美丈夫。
「サーヴァント、ランサー。エリンの守護者。栄光のフィオナ騎士団の長。ヌアザに勝利せし者。レンスターのフィン・マックール。それこそが私の名だ」
キャスターさん、そして私を庇うように彼は敵のモドキを。
いえ、力ない悲鳴を上げて徐々に姿が粒子となって綻び始めた妖精達へと冷徹に。
「さて、早速だが……麗しい美女達の為だ」
そして驚くほど自信に満ち溢れた声で。
「悪いが───御退場願おうかッ!」
そう宣言した。
「なるほど、事情は理解した。いやはやまったく、異世界とはな。冗談はよし子ちゃんだ」
軽い口調でそう冗句を口にしている目の前の人がさっきまで凄まじい動きで敵を一掃していた英雄と同じだとはとても思えなかった。
そう、一掃。
あの後、敵は全てこの人が一人で平らげるようにして倒し尽くしてしまった。
「……ふむ、うら若き少女には私の諧謔は些かばかり早かったようだ」
「あ……いえ、その……すみません……」
「いやいや、良いとも。君はまだ若い。私の魅力とフィオナジョークの素晴らしさに気づくのはもっと齢を重ねて外も内も磨いてから……なに、それを恥じる必要はない!誰しもが平等に歳を重ねるというものさ!だから安心しなさい、隈が酷い少女よ!」
「はぁ……」
凄いめんどくさい人。
少なくとも私が返事をしようがしまいが関係なしに喋り倒してくる。
普段ならもうこの辺ですごすごと消えるのだが、生憎今はそうもいかない。
ここからもう一つやらなくてはいけない。
聖杯の雫の回収。
無事に引っ張り出すような形で完全に顕現したサーヴァントを斃す事で今度こそ雫は誤作動を停止する。
だから私も、キャスターさんも。
まだ戦わなくてはいけなくて───。
「さて、聖杯の雫だったか───これで良かったかな?」
「ひぃぇあ……?」
思わず、気が抜けた声がした。
彼は自分の胸の前に手を翳すと、そこから金色の粒子が解けるように溢れて。
いつの間にかその手にはキャスターさんが持っているそれと同じ雫形の物が握られていた。
「……ランサーさん。宜しいのですか?」
彼は聖杯の雫を握ったまま私達へと近づくと、さらりとそれをキャスターさんに渡してしまった。
「構わないとも、赤毛の君よ。確かに私は騎士。そして信の置ける主と共に戦場へ立ったのならば、女人相手であろうと我が槍を存分に振るうだろう。そこに呵責はない、それが一人の戦士としての私を求めた主に対する騎士としての在り方だ」
こんと、硬質な音が響く。
彼の持つ槍の石突が地面を叩いていた。
その余韻に浸るように目を瞑ってから。
「だが今はそうじゃない……そうだろう?」
彼はぱちりと目を開いて笑う。
あまりにも爽やかなそれは、私にも、そして今の季節にも縁遠い初夏の風を思わせる。
「それにだ、見たまえ!この景色を!戦の爪痕は残っている、だが!ちらつく雪と白く色づいた異邦の街並み!」
蜂蜜のように滑らかな髪をふわりと揺らし、両手を広げて結果的に今回の戦闘で切り拓かれた森の向こうに見える建物を見つめる。
「私はね、美しい物を愛している。もちろん、美し過ぎる己のこともだが、同じように美しいと感じる物は大切にしたい。つまり……この美しい景色を前に無粋な真似はしたくないという話さ」
その瞳は信じられないほどに愛情が溢れていた。
初めて見ただろう景色を、たかだかありふれている筈の夜景を。
私の住む街を、彼は心底綺麗だと笑ってくれた。
そうして彼はゆっくりと両手を降ろすと私の方を向く。
また何か反応に困る冗句でも言われるんじゃと内心焦り始めるのも知らないで、彼はさてと呟いた。
「黒髪の乙女、私に名前を教えてくれるかな?それとも君の魔術の師は妄りに名前を言いふらすな、などとお堅い事を教えているだろうか?」
勘弁してください。
そう言えたらどれだけ良かったか。
名前程度、と言ってもらっては困る。
普段ならまだしも、もうこちらは心身共にボロボロなのだから。
そして当然と言うべきか。
今日一日で滅多にないほど喋り通した私の舌と唇は、思い出したように寒さと疲れを訴えてか全く仕事をしてくれなかった。
「う……うううウイです……」
最悪である。
完全に吃ってしまった。
最早スマートフォンのバイブレーションも斯くやという音の連なりになっている。
「ハッハッハ!うううウイか、良い名前……かは当世の文化に疎い私には判断つかないが、中々になんだ、うん、珍妙で愛らしいじゃないか!」
最悪である。
完全に勘違いされてしまった。
初対面でここまで酷いことになったのは初めてだ。
なんとか訂正しようと私は再度、情けなくシバリングする唇に喝を入れて口を開いた。
だが。
「いえ……あの、ちが「まあよろしい!私が言いたいのはそういう事ではないのだからな!」……ぁ、あぅ……」
普通に流されてしまった。
勘弁してほしい。
うううウイとはどんな冗談か。
そもそも、言いたいことがあるとはなんだろうか。
文句なら勘弁してほしいと心から願って。
「異なる世界の嬰児よ、どうか君に感謝を贈らせてほしい」
思いがけない言葉に、私の思考は急停止した。
「単純な話だ。私はフィン・マックール。朋友達と戦場を駆けた誉あるフィオナ騎士団の長。私の美しい人生に、これは内緒だがやはりほんのちょっぴり悔いはある。だがそれでもだ、私は私が駆け抜けたあの人生を英霊となった今も誇りに思っている」
眩しそうに彼は己の生涯を振り返る。
それは誇りに満ち溢れていて、私の目には輝いて見えた。
「私の生涯には確かに長く、苦しい時間があった。苦々しい終わりも迎えた。それは紛れもない事実だ。だが、
いつの間にか私を庇うように立つのではなく、隣に立って、そして呆けている私の両肩にキャスターさんの暖かい掌が置かれた。
「友と沓を並べ、互いに武を競い合い、戦果を挙げて凱旋し、愛する人が暮らす城へと帰る。そんな素晴らしい時間が確かにあった。そんな私の人生の……そうだね、暗く辛い部分だけ知ったように切り取って私の一部だけが喚び出された。まぁ、それを君が喚んでくれた時に知ったわけだが……」
彼は私の目をしっかりと見てきた。
翡翠のようなその瞳が私を捉えて離さず、ただただ彼の心根そのままのように真っ直ぐに。
私を見ていた。
「あのままいけば、私が人生で最も苦しんだ七年という逸話を元にした邪悪がいたずらに無辜の民を傷つけていたかもしれない。私が傷ついた時の記憶で、より多くの人を傷つけていたかもしれない。それは本当に苦しく、恐ろしい事だろう。そうなっていたのならば、私は己を許せなかったかもしれない」
そんな事は考えていなかった。
酷い話だと思ったのだって読み終えてからだ。
古書館に籠っていた時だって調べるのに必死で、感情移入なんてまるでしていない。
だから。
彼が今から言おうとしてるのは全くの偶然でしかなくて。
「だが、それを防いだのは、紛れもなく君だ」
けど、彼が。
「───君が私の名前を喚んでくれた」
あまりにも嬉しそうに笑うものだから。
私にはどうしたら良いかわからなかった。
「聞こえていたよ。私の伝承を探し見つけ出してくれたのだと。どうやらこの世界は、私達のような存在を必要としなかった結果なのだと私の親指が教えてくれた。それは少しばかり寂しい話かもしれない。だというのに、君は確かに私を見つけてくれたんだ」
大した事をしたわけじゃない。
今日だって自己嫌悪に陥った挙句、キャスターさんを怪我させてしまった。
役に立てたかと言われても別にあのまま戦っていたってキャスターさんはあのモドキを倒してきってくれた筈。
よく考えたら存在の証明をして召喚されたのがランサーさんだったから連戦しなくて済んだが、そうじゃなかったらどうなっていたかなんて。
第一そもそもそれを言い出したら───。
「ありがとう、君のおかげで私は無辜の人々を傷つける真似をせずに済んだ」
「ぁ……」
ぐじぐじと言い訳のように私の中で溢れる心の膿が一瞬で吹き飛ばされた気がした。
真っ直ぐに、輝くように。
彼が、私の
その言葉で私は、また胸の奥がかっと燃えるような痛みに似た喜びを感じてしまう。
「さて、もう時間のようだ。宝具の使用後に聖杯の雫を渡して、更にもう一つも使った。ならば、こうも早いというのは惜しい話だが仕方あるまい!」
けれどその喜びを自分の中で処理し切る前に別れの時間はやって来てしまった。
「だが!……十分だ。最後に私はこの見知らぬ雪景色を見る事ができるのだから」
彼の身体が紐を解くようにするすると黄金の粒子となって解けていく。
「それに絶世の美女と未だ蕾のように幼くも花開く瞬間が楽しみな少女に見送られる。私の男振りにも磨きがかかるような最後ではないか!」
その名の通り、
時間にすれば15分と満たない邂逅だった。
ほんの少し、話しただけだ。
寂しいなどと感じる余裕なんてありもしない。
「では、さらばだ!異邦の星!同郷のキャスター!そして私を救ってくれた
だけれど、この爽やかな英雄が。
私達を助けて、
「いつか君が困ったならば次は私を呼ぶと良い!必ず力となるのを───騎士として約束しよう!」
最後まで華やかで軽やかに。
そう、初夏の風のように私の心に何かを残してすぐに立ち去ってしまった。
「ウイって……分かってるじゃないですか……」
寂しいだなんて感じるわけもない。
別に何か特別な思い入れがあるわけじゃない。
ただ、なんとなく、何処となく。
不思議な気持ちに整理がつかなかった。
それだけだった。
1じゃんね☆
というわけではちゃめちゃな聖杯戦線開幕じゃんね☆
聖杯の雫が呼び出すサーヴァント擬きの正体を明かして本来の姿に戻してあげよー!……って感じで話は進むじゃんね☆
C○さくら?何の話かさっぱりじゃんね☆ミーカミカミカミカミカ
今回のランサーが彼だったのは完全に1の趣味じゃんね☆
残りはまだ未定じゃんね☆
突貫工事過ぎて困るじゃんね☆いつものことじゃんね☆
さて最後になりましたが今日、明日は更新お休みします。
理由は普通にお家のことしたいからと流石に連続投稿し続けてへとへとじゃんね☆
というわけでまた明後日、じゃんね☆
良かったら感想、評価、お待ちしてます……っていう欲深い1からのお願いでした!じゃんね☆
1話ごとの文字数で望ましいのは?
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3000文字〜4000文字
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4000文字〜5000文字
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6000文字〜7000文字
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8000文字〜90000文字
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9000文字〜10000文字
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10000文字〜12000文字
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12000文字〜15000文字
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15000文字以上