【tips】
①自治区境界線で発見した薬莢とアンプルはそれぞれトリニティに由来がある
②薬莢はシスターフッドに、アンプルは救護騎士団で調べると情報が手に入る可能性がある
③アンプルの中身は極めて鎮痛作用の強い薬品である
④その薬品はターミナルケアの現場での使用を想定されて開発された
『情報の整理といこうか』
セイバーさんの合図で一度食事する手を止めて、周囲を見渡します。
ウイさんと分かれてから訪れたカフェ街にある喫茶店。
デザイナー個室になっているそこは幸いな事に壁もかなり厚く、昼時の賑わいもあって個室の外に話が漏れる心配はなさそうでした。
「とりあえず教会については結構分かったんでしょ?……なんかすごい危なそうだったけど」
「危なそうっていうより実際かなり危ないっぽいね。古関先輩もそうだけど、ミレニアムでもチヒロ先輩にも釘刺されたくらいだし例の雷帝って人関係についてこれ以上触れるのは難しいかな?」
実際のところ、どこまで例の教会の件について関われるかは見極めが必要です。
出来るなら無断で行くのではなく、きちんと事前にアポを取るのが求められるかもしれません。
ただウイさんも言っていましたけど、生徒会関係者にはこの件はおそらく頼れないでしょう。
「でも地下の通路、あれ関わりありそうだしやっぱりもう少し調べたいかな……現地行かなくても、もう少しゲヘナに詳しい人にも話聞いてみたい」
「そうですね、私もライダーさんの動きは気になります。仮に、最低日に20機オートマタを建造しているなら、調べるにしてもあまり日数をかけるのは得策じゃないと思います」
私達もヘル助さん達を増産していますが、それは他の陣営も同じです。
同じ時間でそれだけ戦力を増強していきます。
ただ、だからといってあまり急いで動く、というのも危険なのかもしれません。
「み、ミノリ先輩に話をしてみる、とか?もし仲間になってくれたら頼もしいですし……ウイ先輩も、すぱっ、スパルタクスさんはいい人だって言ってたし……」
「アリスも一度お会いしましたがスパルタクスはとても礼儀正しい縛りプレイ中の勇者でした!また会いたいです!」
ミノリ先輩と会うというのも大切かもしれません。
前回はしっかりお話し出来なかったので、どこかでじっくり腰を据えてお話しがしたいですね。
「私はシスターフッドか救護騎士団に行くのがいいかと思う。銀の薬莢の効果にせよ、アンプルの中身にせよ、よりしっかりそれぞれの組織で調べられる」
『ウイもそんな風に話をしていたね。僕もそれに賛成かな。トリニティで済ませられる用事は一度にまとめてしまってもいいと思うよ』
「ですが、どちらの組織もマリーちゃんが関係しています。シスターフッドは言わずもがな、救護騎士団についても前回の戦いで彼女自身が話に触れていたようですから……私は無理をせずミレニアムに戻るのも一つの手かと」
アズサちゃんとセイバーさんはこの後もトリニティ、シスターフッドか救護騎士団へ行くのを提案してくれましたが、ハナコちゃんの言うようにリスクはあります。
ただトリニティなら通功の古聖堂に行って黒服さんと話すっていう選択肢もありますし、なんならいっそ昨日出来なかった休養がてらスイーツ巡りだってありです。
時刻はお昼時。
幸いなことに輸送ヘリでの移動がトリニティとミレニアム間に限定されるとはいえ私達がお願いすればいつでも動いて頂ける、そんなありがたい状況。
そして昨日はアルさん達との戦闘がありました。
実際に現場に出た、出ていないに関わらず、その事実はきっと私含めてみなさん重く感じている筈。
それなら───。
カフェを出てからすぐ、ずんずんと足音荒く私達より先に進んでいたコハルちゃんはくるりと振り返りました。
腕を腰に当てていかにも私怒ってますよポーズで可愛いです*1。
「それで!なんで!スイーツ巡りなの!?」
私も昨日襲撃に遭った事もありますし、ウイさんのところで入手した情報だってありますから動くのも大切かなとは思います。
でも。
「あはは……たまにはそんなのも悪くないかなぁって」
折角八人、それにセイバーさんやキャスターさんも合わせたら十人もいるんです。
先週はずぅっと聖杯戦争関係の事ばかりしていましたし、こんな風に友達と何にも考えずスイーツ巡りするのもいいんじゃないかなぁって思うんです。
「今戦争中なんでしょ!?そんな呑気な事、言ってられないんだから!」
「ふふっ♡コハルちゃんはヒフミちゃんとモモイちゃんの事がとっても心配なんですね♡」
「ちがっ!?そうじゃなくって!!だから!……そのぉ……とにかく!気を緩める訳にいかないの!」
羽を忙しなくはためかせながらコハルちゃんは叫んでいますけど、その言葉の裏側に少しでも早くこの戦争を終わらせようって心配してくれている優しさが見え隠れしていて胸が温かくなります。
でもそんなコハルちゃんだって、さっき窓越しにパフェ眺めて羨ましそうにしてたのは見逃してません!*2
「コハルちゃん!私、コハルちゃんと一緒にスイーツ巡りしたいです!」
「ぅぐ……で、でも……その……だってぇ……」
そう言ってハナコちゃんの制服の裾を掴んで困っています……もう少し、ですね。
ちらっと横を見るとモモイちゃんとミドリちゃんがにやりと笑ってくれました。
「まぁ落ち着きなってコハル。私達もさぁ、なにもサボろうって言ってるわけじゃないんだよ!」
「サボる……わけじゃない……」
「そうだよ、コハルちゃん。私達、ここのところずっと拠点詰めだったし……すこぉし羽目外したっていいよね?」
コハルちゃんの両肩に、いつの間にかサングラス*3をかけたモモイちゃん達の手が置かれます。
才羽姉妹のコンビプレー、輝いてますね!
さぁっ、あと一押しです!
「こ、コハルちゃん……」
「ぅ……ゆ、ユズ……」
そっと正面に回ってコハルちゃんの眼を見るユズちゃんは、その靴底の差で僅かにコハルちゃんより背が低くて、だからこそ。
「ぁあの……そのね、わ、私に……トリニティの美味しい物、教えてくれたら……うれしいなって」
小柄なコハルちゃんが普段中々体験できない、相手にされる上目遣いがしっかり決まるんです!
「ぅ……わ……分かった「コハルちゃんっ!大好きですっ!」むぅぅぅっ!?」
思わず正面にいたユズちゃんごと抱きしめてしまいましたが嬉しい気持ちが溢れちゃって仕方ありません。
「そうと決まれば!今日はスイーツ巡り、みなさんでたくさん楽しみましょう!」
ぎゅっと腕に力を込めつつ、私はこの後のスイーツ巡りとお友達とのお喋りが楽しみで今日一番の笑顔が溢れるのでした。
「こっちのお店は生地とクリームの甘さのバランスが最高ってハスミ先輩が!それであっちのはね、ハスミ先輩がパフェを食べるならまずここって言っててね!それから向こう三軒先の、そう!あそこはハスミ先輩がおすすめしてくれたらちょっと前に補習授業部で食べに行って───」
カフェ街の何恥じないほぼ全て飲食関係で埋め尽くされた通りを先導して、コハルちゃんはみなさんに色んなカフェを紹介しながら回ったりお店を冷やかしたりしています。
もうアリスちゃんとアズサちゃんは二人とも両手に二段アイスを持っているし、ユズちゃんとハナコちゃんもぐんぐん手を引かれてるしで、残った夏の暑さなんか負けないぐらい燦々と輝く笑顔でスイーツ巡りを楽しんでいる。
それを私は注文したフラペチーノが来るのが遅くなったのもあって、みなさんがいる場所から数歩離れたところを歩いている。
『楽しそうだね、ヒフミ』
「はいっ!みなさんとっても素敵な笑顔ですっ!」
『それはそうだけど、その皆んなの中には君もいるだろう?』
「えへへ……はいっ」
すっかりお馴染みになったハンズフリーでの通話、という体でセイバーさんとのお話しを楽しむ。
『彼も、このところ君達が根を詰めすぎているんじゃないかと少し心配していたから。こんな風に君達がなに憂う事なく友と良き時間を過ごせてきっと安心しているよ』
「それはそうですけど、
『おっと、これは一本取られたかな』
やり返すようにわざとらしく同じ言葉で指摘してみせて、言葉で互いをくすぐるようにして遊ぶ時間。
『そういえば今日はもう少し見て周る予定だったね?くれぐれも食べ過ぎとペロロ関係で散財しすぎないように……君の脇腹と財布の紐はすぐに緩んでしまうからね』
「またそういう意地悪言って!酷いですよ!そんな人には今日のお夕飯のおかずは一品抜きです!」
『これは困ったな。今日は冷蔵庫に入っていたハドックかサーモンでムニエルって当たりをつけて朝からずっと君が作るそれを楽しみにしていたんだけどな』
「あはは……そうやって調子のいい事言ってもダメですよー」
あの夜にセイバーと出会ってから気がつけば一週間は本当にあっという間でした。
少なくとも病室でお話ししていた時は、こんな風に大人の方と冗談を言い合う関係になるだなんて思っても見なかった。
「ヒフミー!次のお店入るってー!」
「あ、はーい!」
どうやら目当てのカフェがあったらしくて、私は駆け出す。
「さっ!行きましょうー!」
『仰せのままに、僕のマスター』
暑い日差しを受けながら、私は陰を伸ばして走っていく。
その先に待っているお友達と過ごすこれからの時間に胸を膨らませて。
「久しぶりだね」
にひっ。
「阿慈谷ぶちょー」
きんと冷えた冷房の中、私は頭を抱えていました。
「いやぁ、まさかこのタイミングで会えるとは思わなかったよ」
「ほんとだね。ヨシミちゃんに写真見せたらびっくりするんじゃないかな?」
ミルクレープにフォークを立てながら言うナツちゃんと久しぶりに会ったけれど変わらずチョコミントパフェを堪能しているアイリちゃんの朗らかな会社が抱えた頭の上を飛び交っている。
「間違いない。まるでムラのできたナッペのようにきっと動揺する事だろうね」
嗚呼、どうして、こんな事になったのでしょう。
「ところでだけど」
私は何もしていなかった筈なんです、今日は楽しくお茶する予定だったんです。
それがどうしてこんな事に。
「結局、今外でサイン会やってる謎のヒーローXさんというのが阿慈谷ぶちょーの所謂好い人……ってやつなのかな?」
どうして。
一体なんでこんなことに。
あれが私に口酸っぱく真名云々についてお話してくださった方と同一人物なのでしょうか。
「ちがいます、ちがうんです」
「ナツちゃん……多分ほんとに違うんだと思うよ」
どうしてこんな事になってしまったのかと頭を抱えます。
そっと脇見をしてみると、窓ガラスの向こうで握手とサインをしているセイバーとその横で整理券を配っているモモイちゃんとキャスターの姿が見えました。
握手の度に騎士王スマイル。
女の子達の檸檬色な悲鳴が窓越しにも聞こえてきました。
なにやってるんでしょうか。
サインはもちろん古代語まで添えて、頼まれたらモモスタ*4用に肩を掴んでツーショットまで。
なにやってるんでしょうか。
こんな予定じゃなかった。
こんな筈じゃなかった。
何やら後悔と謎の羞恥心に悶えながら、発端になったつい20分ほど前の出来事を私は思い返すのでした。
───現在時刻より20分前。
「いやぁ、悪いね阿慈谷ぶちょー。相席させてもらっちゃって」
コハルちゃんがおすすめしてくれたカフェ。そこで偶然お会いしたのが、ナツちゃんと。
「ごめんねヒフミちゃん。私達まで座らせてもらって……」
ミントグリーンのリボンを揺らして申し訳なさそうな顔をしている栗村アイリちゃんでした。
「ぜんっぜん!大丈夫ですよー!ナツちゃんもアイリちゃんも、久しぶりにお会いできて嬉しいですっ!」
「そういえばモモトークで言ってたもんね。ヒフミちゃん、今ミレニアムに短期留学してるんだっけ?」
「あはは……そうなんですよ。あそこに座ってのもミレニアムでお友達になった子達なんです!」
通路を挟んだ隣の席、それから私達の後ろのブースに座っているモモイちゃん達がその言葉で顔を出してひらひらと手を振ってくれた。
「良きかな、良きかな。その土地でしか生まれないスイーツもあるけれど、異なる産地の素材と交わったからこそ生まれる甘味もある……人もスイーツも同じだね」
「そうだね。トリニティだけとかそんなの関係なく、色んな場所でたくさんの人とお友達になれる、そんなヒフミちゃんが素敵だなぁって私も思うよ!お勉強、大変かもだけど、お友達と頑張ってね!」
「二人とも……ありがとうございますっ!」
二人の優しい応援は本当に心地よい甘さで、ほっとしてしまう。
前回ナツちゃんとお話しした時は何をあんなに緊張していたんだと、数日前の自分を思い出して笑いそうになる。
だって彼女はこんなにも、暖かく思慮深い子だというのに。
「そういえば、『例の彼』とはどうなんだい?阿慈谷ぶちょー」
「例の、彼?先生のことかな?って、ナツちゃん、その呼び方気に入ったの?」
「チーズケーキがレアなのかベイクドなのかスフレなのか、はたまたテリーヌか。指し示す本質を正しく認識できなければそこには齟齬が生まれてしまい食べたい物と通った注文が異なってしまう……人は理解し合えない生き物だが、理解をしようと努力は出来る。だからいつでも名前も、そして心のうちも正しく『言葉』にするのが肝要ってところかな」
「ええっとつまり……?」
難しい譬え話に私とアイリちゃんは疑問符を浮かべてしまう。それにナツちゃんは、にひっとシニカルな笑みを浮かべて、眠たげにも見える柔らかな視線のまま簡潔に答えてくれた。
「一言で言えば、うん。音の響きが気に入ったんだよね。阿慈谷ぶちょーって呼ぶの」
ちょっとずっこけそうになりますけど、私のことを補習授業部の部長と呼んでくれる方も少ないですし、なんだか特別感もあるので。
「ナツちゃんが気に入ってくれたなら、そう呼んでもらって大丈夫ですよ。ナツちゃんの声、私とっても『大好き』ですから、他の人なら堅苦しくなっちゃう呼び方もナツちゃんが呼んでくれる
親愛を込めて、この呼び方が好きだと言ってくれるのなら、大事にしたいと思ってそうやって言うんですが。
「……おぉ……これは流石……やはり似た者同士、か。まるで生クリームとマスカルポーネ」
ナツちゃんは私とアイリちゃんの顔を見てから何故か天井に顔を向けています。
「……えっと、と、ところで!結局彼って言うの誰なのかな?先生、とか?それともヒフミちゃんの新しいお友達?」
「え?あ、うん?……嗚呼、例の彼は……そうだなぁ。実は以前少しだけ知り合った共通の知人……かな?ちょっと珍しい格好をしてるからツーショ撮らせてって頼んでるんだけど……」
ちらりとナツちゃんは私の方を見る。
私がセイバーさんと知り合いな事自体はしっかり隠しつつ、以前約束したセイバーさんとのツーショット写真の話についてアイリちゃんへ説明しています……けど。
「(ひ、冷や汗流れてますよナツちゃん……)」
多分何の気もなくセイバーさんの話について聞いてしまったんでしょう。アイリちゃんに私がセイバーさんと知り合いなのをバレないようになんとか誤魔化してくれているんですね。目線がふらふら明後日の方向向いててちょっと、いえかなり怪しい様子ですけど。
『(ここは僕の出番、かな?)』
『(へ?セイバーさん?)』
どう上手く説明しつつ、それとなくナツちゃんをフォローしてこれ以上言及のないようにするかと悩んでいると、セイバーさんから念話があった。
『(実は前々からヒビキに頼んでいてね。ほら彼女、服飾が得意という話だから)』
『(いえ、え?出番って一体……?それにヒビキちゃんに何を……?)』
あぁ、何でしょう。
頭の中でマーリンさんがお腹抱えて笑ってるのが急に過りました。
なんだかすごく面倒な展開になる気が、というか直感がします。
『(僕が不審者扱いされる原因はあのバスジャックと戦車強奪……もそうだけど、やはり鎧姿なのがよくないと思ったんだ。だからね)』
『(え、多分違うっていうか、あれ?セイバーさんもしかして……)』
『(ちゃんと
現代らしい服、とセイバーは言われました。
なるほど確かに、セイバーさんならどんな服でも似合うでしょうし鎧姿よりずっと注目は集めにくいとは思います。
出来れば落ち着いた服装、例えばスーツとか、それかカジュアルなTシャツにデニムみたい姿なら……そんな風に考えた私の耳に。
「おや、ヒフミ。こんなところで
「……あは、あはは……そ、ソウデスネ」
多分わざわざ一度外で霊体化を解いてからカフェに入店して、さも偶然会いましたと言わんばかりに微笑む。
バッチリ決め込んだ
ご丁寧に胸元には青い薔薇まで挿してあります。
今ここど平日のお昼時のカフェ街なのですが。
「わぁっ!ナツちゃん!ナツちゃん!この人って!」
「……そうだよ、アイリ。この者こそが数日前から電子の海の話題を奪い去った例の彼!……だね」
「わぁっ!あれだよね、正義実現委員会の子とかヴァルキューレの人達と戦車とかでバスで街道バトルしてるモモスタグラマーの人!正面から迫ってきた二台の装甲車の間を戦車で片輪走行して突破するやつ、切り抜きで見たよ!うわぁ……本物だぁ……」
センチュリオンちゃん合宿所に持って行く時にそんな事してたんですか、セイバーさん*9。
というか話が盛られてモモスタグラマー扱いまでなってるなんて私知りませんでした。
「あれは不幸な行き違いでね、幸いな事にトリニティの子達は理解を示してくれたから……まぁだからいつもあんな風にやんちゃをしてるわけじゃないんだ」
相席してもいいかな?なんて聞いておきながら返事する間もなく私の隣に腰掛けるセイバーさん。
「僕はセイバー。セイバー……そうだね、セイバー・コーンウォールだ。君たちはアイリと……それからナツだね。いつもヒフミから話は聞いているよ、今日でよければ幾らでも写真に付き合おう」
「写真?」
「ええっと……その、話題沸騰中の彼というか謎のヒーローXなるセイバーって人とツーショ撮れたらみんなに自慢できるかなぁ……って」
なるほどねとアイリちゃんは頷いてから、首を傾げる。
「あれ?でもその、ヒフミちゃんとセイバーさんってお知り合い、なんですよね?そんな話聞いたことこれまで……」
「ああ。僕はヒフミの遠縁でね。元々はこのキヴォトスの外、ウェールズという場所で暮らしているんだよ。今回は、ヒフミを頼ってちょっとした観光のつもりでキヴォトスに立ち寄らせてもらったんだ。とはいえ、こちらの習俗にはまだまだ不慣れなものだから悪目立ちしてしまったけどね」
店員さんに声をかけてしれっとアイスティーを注文しつつ、セイバーさんはあらかじめ用意した台本があるように設定を並べていきます。
「外部から来た僕は言ってしまえば他所者だからね。観光の件も一度しっかり話を通そうという形で、ヒフミがこの自治区の首長に相談してくれたんだ。その手土産をこのカフェ街でヒフミ達が土地勘のない僕の代わりに探してくれたんだけど、その相談に乗ってくれたのがたまたま通りかかったナツというわけなんだ」
「なるほど!ナツちゃん、困ってたヒフミちゃん達を助けてあげたんだね!ありがとうナツちゃん!」
「あーうん、どういたし、まして……?」
さすが、と言っていいのかは分かりませんが一国の王様だったセイバーさんです。
語る言葉に何一つ澱みもなくて、謎の説得力だけはあります。
話の骨組みはちゃんと本当の話だからでしょうか。フィクションが散りばめられてても違和感はありません。
「そういえば観光で来られてるんですよね?その、トリニティは如何ですか?えっとセイバーさん」
「美しい土地だね。豊かな自然と大切に使われている建造物、何より君たち学生の活気と心遣いがとても魅力的だ。あれから色々と見て回ってこの地にも慣れてきたとは思うけど、まだまだ新鮮な驚きに溢れているよ」
「あ、外は銃とかも珍しかったり、キヴォトスとは随分様子が違うんでしたっけ?先生が以前仰っていたような……」
「そうだね、僕のいた国だと銃は
「そうなんですね!それであんな行き違いが」
「うん、本当にお互い不幸な
行き違いを強調するセイバーさんが机の下で隣にいる私のスニーカーを揶揄って小突きますが無視します。
というか靴まで革靴にしたんですね*11
「そういうわけだから、ナツ。君さえよければ写真はどうかな?ちょうど僕もミレニアムで知り合った友から服を貰ってね、今日袖を通したばかりなんだ」
「うぅん、突然の展開。けれどいつだって人生は偶然の連続、まるでフィユタージュの層のよう……そう言う事だから喜んで、ツーショットといわずみんなで撮らせて貰おうかな?」
そうナツちゃんが言ってからいそいそとスマホを取り出して、数回、シャッター音が鳴る。
それから彼女は撮れたその画面を私達の方に向けてくれる。そこには私とナツちゃんとアイリちゃんとセイバーさんの四人の写真がパフェやケーキと一緒に映っていた。
「うん、いい感じに撮れてるね!あっ!ナツちゃん、後で私にも送ってね」
「勿論。阿慈谷ぶちょーにも帰ったらすぐ送るから」
「あはは……楽しみに待ってますね!」
いい写真が撮れたナツちゃんも満足そうですし、途中セイバーさんが現れるというハプニングはありましたが私もナツちゃんとの約束を果たせて少し胸を撫で下ろします。
しばらくミレニアムに行ってたのもあって中々会うタイミングがありませんでしたから、こうしてここで会えてよかった、そう思っていたんです。
この時は。
「あのぉ……謎のヒーローXさんですよね?」
そう、この時私は忘れていたんです。
「すみません、私達も」
セイバーさんはSNSで話題になって、いつの間にか謎のヒーローXとしてネット上で動画や画像が一人歩きしてて。
「お写真良いですか?」
そしてセイバーさんがSNSで有名になったのは何もやらかしちゃったバスジャックだけが理由じゃなくて。
やたら王子様風のビジュアル面で人気が出たという事を。
そしてここは拠点でもなんでもない普通のカフェで、当然私達以外にも生徒がいるということを!
「あ、私もサインお願いできませんか?」「あのよかったら一緒にお食事でも……」「すみません!目線お願いします!」「あ、もしもしレイサ?パトロール終わった?ならカフェ街おいでよー。面白いもん見つけたよー!」「コハルちゃんの先輩さん、私達もお写真お願いしてもいいですか?」「じゃんねじゃんね」「くひひっ。あっという間にすごい人集りだね」「おい、どうする?」「と、止めた方がいいかな……?」「……まあ、このまま静観でいいでしょう」「あのっ!私らもサインお願いします!あ、名前のとこにラブちゃんへってお願いします!」「ふぅ……ゆっくりお食事も楽しめませんわね」「えぇ……ちょっと、ここで
あっという間に私達のボックス席の周りに人だかりが出来てしまいました。
その人数は大体、59人ぐらいでしょうか。
ああ、まずいです通りに面した窓の向こうからも視線を感じます。
こんな、それこそ悪目立ちする予定はなくて、ちょっと焦り始めたそんな時。
「はいはーい!みなさーん!ちゅうっもーく!」
モモイちゃんが、キャスターさんの肩の上に立って注目を集めて……いやなんでキャスターさん霊体化解いてるんですか?
「今から謎のヒーローX!ゲリラサイン会&撮影会しまーす!」
───回想を終え、現在。
私は頭を抱えていました。
モモイちゃん発案のサイン会と撮影会は当然お店に迷惑がかかる……けど店前の通りでする分には呼び込みになるからというご好意もあってスムーズに行われています。
いつ用意したのか、かなり小型な蒸気ドローンで待機列にミストシャワーしたり、チケット代の電子決済はアイギス7号ちゃんが対応したり、キャスターさんはアリスちゃんを肩に乗せて待機列の整理してますし、モモイちゃんは撮影担当しつつ自分達のゲームもここぞとばかりに売ってますし、セイバーさんは若い子に囲まれて王子様対応しつつちょっとデレデレしてますし。
どうして、どうしてこんな事になってしまったのでしょうか。
私は今日は全然悪目立ちする予定、なかったんです……!
「まあ、こんな事もあるさ。気を落とさないで、阿慈谷ぶちょー」
「ごめんね、ヒフミちゃん……まさかこんなに大騒ぎになっちゃうなんて……」
「いいえ、うちのセイバーさんはほいほい出……着いてっちゃったのが問題ですから……」
お二人は慰めたり申し訳なさげにしてくれますが、決してアイリちゃんのせいじゃありません。
強いて言うなら私がこうなるのを予測して別の場所で撮影するよう言わなかったのと、うっきうきで新衣装お披露目したセイバーさんに問題がありますから!
「まぁまぁ、とりあえず。もう少し彼女達が夏の暑さに浮かされた宴が終わるまで、涼しい場所でスイーツを楽しもうじゃないか。人生いつだってちょっとの心配や失敗に悩むより甘い糖分で脳を癒してあげる方がずっと楽しいよ?」
「そうですよね……」
「そうだよ、ほらっ!食べよ!あ、そうだ!ヒフミちゃんが前に言ってた私と同級生のコハルちゃん、今日来るの?」
慰めてもらいつつ、アイリちゃんにコハルちゃんを紹介したり、コハルちゃんがハスミさんが食べてたという巨大パフェに挑戦してその大きさに絶望するのを励まして一緒に食べたり。
外でいつの間にかゲーム開発部の幟まで立ち始めたのを横目で見つつ、私は他のみんなとパフェやケーキを楽しむ午後を過ごしました。
1じゃんね☆
今日からまた通常投稿じゃんね☆
ちょっと思うところがあってウイちゃん短編はゆっくり進めることにしたじゃんね☆
理由?普通に書いたら完全新作を一日四話ペースで作らないと終わんないからじゃんね☆ミーカミカミカミカミカミカ
というわけで今日からまたいつものように本編を12:03、18:18、1:23を目安に投稿してくじゃんね☆
ちなみに今回のセイバーの服装はホワイトローズって名前でFGOに実装されてる霊衣(各サーヴァント専用のスキン)イメージじゃんね☆
1話ごとの文字数で望ましいのは?
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3000文字〜4000文字
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4000文字〜5000文字
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6000文字〜7000文字
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8000文字〜90000文字
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9000文字〜10000文字
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10000文字〜12000文字
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12000文字〜15000文字
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15000文字以上