阿慈谷ヒフミは聖杯戦争に参加するようです   作:1じゃんね☆

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おはよう、ハルカ。
え?社長とライダー達?
……うん、少し出てくるって。
ハルカも無理しないでゆっくり出来る時は身体を休めなよ。

どうせ今日も───戦争しなきゃなんだから。


ハッピーエンドの定義

 

『───僕はサーヴァントを犠牲にすべきだと思う』

 

 誰の犠牲もない終わり方。

それを話す中でセイバーさんは決して揺れることのない真剣な眼差しで私をまっすぐに見つめながらそう告げる。

譲る気はない、そんな想いを込めるようにして。

 

「僕達サーヴァントはごく一部の例外を除けばその殆どが既に生を全うした死者であり、過去に存在していた英雄の影法師に過ぎない」

 

 それはこれまで幾度も聞いてきた話。

セイバーさんだけじゃありません。

トキさんやアーチャーさん、ランサーさんも。

みなさんが一様にそう話をしていた事でした。

 

 

 

サーヴァントは生きている人間ではないのだと。

 

 

 

「英霊は、サーヴァントは、決して今を生きる生者ではない。その本質は境界記録帯、分かりやすく言えばどこまでいってもその存在は過去の情報であり現象でしかない。たとえ君たちと同じように話し、考え、動くとしても……僕らはね、もうとっくに()()()()()()なんだよ」

 

 そういう彼はどことなく寂しげで、その顔に夢で見たあの血が広がる物悲しいカムランの丘(夕焼けの丘)を思い出してしまいます。

彼の生涯、その最後の記録は物語にあるような湖の畔ではなく、確かにあの真っ赤な丘で終わったんです。

 

「そんな僕らの存在を討ち倒す事を罪だと、殺人だと責を背負う必要はない───死人を墓に還す事を犠牲だと、僕は思ってほしくないんだ」

 

 殺人では、ないのだと。

何故なら彼らは死んでしまっているからと。

だから気にしなくていいんだとセイバーさんは仰ります。

 

 確かにその選択をすれば、きっと私達は今抱えている問題の解決に近づける。

相手のサーヴァントを倒してしまう。

少なくともそのやり方を取れば、拒絶反応に苦しむ他のマスターの方達をすぐに救えるでしょう。

倒してしまえばいい以上、今までのように話し合う必要すら減ります。

ただ()()()()

それだけに集中すれば6騎のサーヴァントが減って、元からキヴォトスにいた6人のお友達を救える。

決してプラスにはならないけど、マイナスにだってならない方法。

 

『セイバーの言う通りお前達のハッピーエンドに我らを含む必然性は存在しない。その定義をする上で問題を履き違えてはいけない。我らを倒し聖杯戦争を終わらせる、であればお前達マスターの生は保障されるのだから』

 

 生きる事、死なない事。

それが大切なのだと通信越しにキャスターさんは仰られます。

確かにそうです、死んでしまっては何の意味もありません。

私もモモイちゃんも、そしてマリーちゃんもアルさんも、ミノリ先輩も、トキさんも。

今を生きている生徒が誰か死んでしまってはいけない。

けど、聖杯戦争が長引けば例え戦っていなくても最後には死んでしまうとトキさんが言っていた。

そしてマーリンさんはマスターは敗北しても死ぬ事はないと断言してくれた。

それなら、サーヴァントを倒すという選択をすれば。

 

「この場での自害は意味を成さないらしいから、君達をすぐに戦いから降ろす事は出来ないけれど。それでも僕らサーヴァントを倒す事は決して君達の罪ではない」

 

何も間違っていない、そうセイバーさんとキャスターさんは仰られます。

その言葉を頼りにして、その選択をしてしまえば。

もう少しだけ私達が頑張って聖杯戦争を駆け抜けて、すべての敵を倒せば。

 

「もし罪があるのなら、それはかつてランサーが言った通り、どんな理由であれ聖杯を求め現世に降り立った僕ら自身にあるべきだ」

 

 この聖杯戦争はきっと、そしてちゃんと終結する。

悩む必要も考える事もとてもシンプルになります。きっと何かを迷う必要だってなくなります。

だって私が迷わず覚悟を決めるだけでいいんですから。

 

『お前達の真に愛する友を守る為に、割り切る選択を。我らは決してそれを恥じる事も詰る事もない。何故ならそれこそが正しい選択であり聖杯戦争の正しい在り方なのだから』

 

 私も含めた七人のマスターの命を救える。

その後に、トキさんと同じように聖杯戦争の恒久的な中止なり聖杯の破壊をすればもうこれ以上、苦しむ人は生まれない。

なんだったらトキさんとだって協力関係を、同盟だって結べるかもしれません。

 

「これからを生きる君達の輝かしい今を、僕達サーヴァントが邪魔していい筈がないのだからね」

 

 サーヴァントを『倒す』事で他のマスターの命を救う。

そう、私達のハッピーエンドを定義する。

それがきっと賢いやり方です。

なんとなく分かっていましたけど、『彼女』はきっとその覚悟を持っている、そんな気がします。

サーヴァントは生者じゃない。殺人にはならない。

……だから、倒しても罪の意識に苛まれる必要も、選択に制限をかける必要も、ない。

 

 

 

───でも、私は。

 

 

 

 好きな物があります。

大好きな人達がいます。

大切にしたい時間があります。

セイバーさん達の言うお話はきっと正しい。

私が選ぼうとする選択はもしかすると間違ってしまうかもしれない。

自分だけじゃない、他の人の、お友達の命がかかっているんです。

正しい事を選ぶべき、そう分かってます。

 

 私には好きな物があります。

大好きな人達がいます。

大切にしたい時間があるんです。

失いたくない、ものがあるんです。

だから───。

 

 私の大好きな物を心の中に思い描く。

補習授業部とゲーム開発部のみなさん。

先生、ナギサ様、ユウカさん、エンジニア部の方達、アイリちゃん、ナツちゃん、古関先輩、ミネ団長、アルさん、マリーちゃん。

前から友達だった人、この戦いを通して新しく友達になった人。

たくさんの大好きがわたしの中にはある。

その中にはセイバーさんもキャスターさんもちゃんといます。

 

 

 

 

 

 

私は───自分の大好きを手放したくなんかありまけん。

 

 

 

 

 

 

「私には大好きなものがあります」

 

 胸を張る。

右手をぎゅっと握りしめる。

あの日、青空を指差したこの手に今は令呪が宿っている。

そんな右手に力を込めてみれば、応えてくれるように温かい光が溢れていく。

 

「大好きな人達がいます。私の世界は大切で温かくて優しい、そんな大好きな物で一杯なんです。そしてそれはきっと他の人もそうなんです」

 

 私の世界には溢れるぐらい大切なものが沢山ある。

セイバーさんだって、そうなんです。

あの夜、私とアズサちゃんを救ってくれて、一緒にお買い物して、一緒に遊んで、戦車に乗って、バスジャックだってして。

たくさん、お話をしました。

 

「誰かが欠けるなんて嫌です。生きてるとか死んでるとかそんなこと、私にとってはこれっぽっちも関係ないんです」

 

 そんな彼はもう、わたしの大事な人なんです。

いなくなるなんてそんなのイヤなんです。

そしてきっと、それは他のマスターの人達だってそう。

 

「……っ。ヒフミ、それじゃ駄目なんだ。サーヴァントを倒さなくちゃ聖杯戦争は終わらない。どんな形で願うにしても、最後の一組にならなくては君達は……」

 

セイバーさんが呻くようにそうやって告げる。

諦めようと、悩む必要なんてないんだと。

そうやって気遣ってくれるのは分かってます。

それがセイバーさん達のいた世界ではきっと当たり前なんでしょう。

私はまだよく分かりませんけど、彼らの言う魔術という学問や価値観がしっかりある世界ではそうなんでしょう。

だけど。

 

「それでも───!」

 

関係なんかないんです。

 

「セイバーさんもキャスターさんもいなくなるんて嫌です!他のサーヴァントの方だってそうです、誰かの大好きを奪った先の未来で私は笑えません!」

 

 誰かの大切な人を奪うなんて、サーヴァントを殺すなんて覚悟を私はしたくないんです。

 

 

 

私が持つべき覚悟は『誰も殺さないし殺させない』であるべきなんです。

 

 

 

「だから諦めません、セイバーさんもキャスターさんも、他のマスターの人もサーヴァントの人だって。誰一人、失わない、誰も犠牲になんかしません!私のハッピーエンドは、私が見たい未来は」

 

 胸を張って言うんです。

たとえこの選択の先で苦しんでも、選んだ事にはきっと意味がある。

犠牲を出すと選ばなかった事は必ずハッピーエンドに繋がるんだと、私は信じる。

 

 

 

 

 

 

「どれだけ難しくても辛くても、最後にはみんなと一緒に笑顔になれる明日なんです!」

 

 

 

 

 

 

 それをきっと、みんなも同じように思ってくれる。

そう信じてる。

そしてそれはきっと叶うんです。

 

「セイバー、諦めた方がいい。私も、そうだった」

 

「アズサ……」

 

「色んな物を拒絶して、ヒフミの手を振り払って。そうやって必死に足掻いて、せめてヒフミ達の未来をと願ったその先で……それでもヒフミは来てくれた。ハッピーエンドの続きを見せてくれた」

 

 アズサちゃんが私の言葉のその続きを紡いでくれる。

あの時見た青空を、私達は忘れてなんかいないんです。

 

「だから私はヒフミを信じる。ヒフミが行く道をこれから先ずっと支える。例えどんな結果に繋がろうと、今この瞬間にヒフミが選んだ選択に胸を張って。それが私の出来る精一杯だから」

 

「アズサちゃん……!」

 

 頷きが、一つ、また一つと返ってくる。

みんなの目が言ってくれます。

 

「ヒフミとアズサだけじゃ心配だし、私達も勿論一緒に歩くんだから!ね、ハナコ!」

 

「ふふっ、ええ、勿論。みんなで一緒ならもうどんな事だって折れたりしません。どれだけ迷っても必ず辿り着ける───私はそう信じたい、みんなで信じていきたいんです」

 

 コハルちゃんもハナコちゃんも賛成してくれる。

犠牲なんていらないとそう言ってくれる。

 

「……君達の願いはあまりにも眩しい。その選択はずっと美しく貴い物だ。でも違うんだ、僕達までその中にいれる必要は……僕達の事で、既に一度死んだ異世界の人間の事で悩む必要なんて君達には最初から必要ないんだ……っ」

 

「違う筈だ、セイバー。私達にとって必要とか、不必要とかそういうことじゃない。大切な相手だから悩むんだ。大事な友達だから一緒にいたいんだ───そこにそれ以上の理由なんてある筈ない」

 

 一緒にいたいだけなんです。

私のこれはわがままなんです。誰も失いたくないんです。

生まれた世界が違ってもこうして出会えた大切な人とまだまだこれからも一緒にいたい。

それを失ってしまうなんて辛い思いはしたくないし、()()()()()()()()()()()

そんな気持ちになるなんて、自分の心で想像するだけで苦しくなる。

だからそんな結末を見ることを、そんな結末を誰かに強いることを、()()()()()()()()んです。

 

「確かにセイバーの言う理屈は正しい。ヒフミの考えてるハッピーエンドは無理なのかもしれない。だけど」

 

 正しい理屈や行動を選ぶのは望ましいんでしょう。

でも結果よりも時には過程が、選ぶ事がずっと大切なのだと教わったから。

 

 

 

「だからといって、そんな理屈で私達がハッピーエンドを諦める理由にはならない」

 

 

 

 諦めない、犠牲を出さない。

それを選んだ過程が大事なのだと、それがきっとハッピーエンドに繋がると私達はそう思うんです。

 

「私は……ヒフミもモモイも失うのは嫌。だけど、この子達が納得できないやり方を、誰かを犠牲にするやり方をはじめから許容するなんて出来ないし認められない。もう二度と、そんな選んだ人まで傷つく選択を誰にもしてほしくない」

 

「……ユウカの言う通りだよ。私達は誰も犠牲にしない結末をあの時に選んだ。一度決めた、その為に傷つけた人もいます……だからおじ様、私達はこんなところで躓いてなんていられないんです」

 

 ユウカさんもミドリちゃんも、そうやって一緒に選んでくれる。

隣に立つアリスちゃんやユズちゃんも頷いてくれる。

 

「キャスター」

 

『モモイ……お前は……お前とて……』

 

()()()()、だよ。誰かを犠牲にするとかさ。そんな目覚めの悪そうなエンディング、この中の誰も望んでないんだよ」

 

 そしてモモイちゃんも。

この場にいるもう一人のマスターも、私と同じ道を選んでくれるのを知っている。

だって彼女は。

 

『いいや、違う。モモイよ、違う、違うのだ。我らはそもそもサーヴァント、生者ではない以上犠牲には当て嵌まらん。お前達は己の生を、今を生きるお前達こそを優先すべきなのだ』

 

 

 

─── みんなで一緒に、『ハッピーエンド』を目指せばいいんだよ

 

 

 

「そんなの知らない、そんな理屈どうだっていいよ。私はヒフミを、私の希望を信じてる」

 

 

 

───私達にはこんなにたくさん、頼れる仲間がいるんだからさ

 

 

 

「キャスターもセイバーも他の子達もまとめてみんな救えるエンディングに辿り着けるって、あの同盟を組んだ日に私は()()()んだから」

 

 あの日、初めて私達が出会った日の夜にそうやって言ってくれたのを。

私に勇気をくれて、私が辛かったのを支えてくれた言葉を覚えているから。

 

「だからつべこべ言ってないで考えようよ!出来ないなんて理屈はもういらない!私達が見たいエンディングは一つだけなんだから!」

 

 

 

 

 

 

「……本当に、どうして君達はそう在られるのか」

 

 

 

 

 

 

 長い、沈黙の後にセイバーさんはそう切り出されました。

真っ直ぐにその翡翠が私に向けられる。

 

「きっと困難な道のりになる。他のマスターの願いだって分かっていない、時間制限だってある───それでも君はそれを選ぶのかい」

 

 つい、笑ってしまいました。

だってあまりにも似ていましたから。

言葉も場所も国も星も性別も。

何もかも違いましたけど。

だけどその問いかけはあまりにも、岩に刺さった聖剣を抜く彼(セイバーさん)にマーリンさんがされた質問によく似ていたから。

 

 だから私ははっきりとセイバーさんへ、答えました。

 

「はい」

 

楽しい時間がありました。

これからもずっと続けていきたい時間なんです。

誰しもその時間には、溢れるばかりの笑顔がそこにあって、お友達と、大切な人と過ごせる幸せがあるんです。

 

「だって私はたくさんの時間を一緒に過ごして、たくさんの笑顔を見たんです」

 

 奪ってはいけない。

傷つけてはいけない。

大切にしたい。

いつまでも一緒にいたい。

そんな宝物みたいな青春なんです。

私だけじゃありません。

みんながそれを持っているから、だから私はその笑顔を守りたい。

 

「なら、この選択はきっと───間違いなんかじゃないんです」

 

 あの日、セイバーさんが剣を抜いたのと同じように。

たくさんの人の営みとその中の幸福と笑顔を守ろうとして、王になる道を選んだように。

どれだけ困難でも私もハッピーエンドを目指すんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 深々とため息を吐いて、目を瞑ってしばらく考え込むようにされてから。

 

「降参だ───その道をその理由で歩むというのなら、僕が応えないわけにいかない」

 

 彼は仕方ないという風に笑ってそう言ってくれた。

 

『……愚かしい方針とは言わん。いつの世も、人は不可能を可能にすべく足掻くのだから』

 

 タブレット越しに嘆息する音と共に憮然とした気難しい声も聞こえてくる。

それがお二人の出した結論なのだと気づいて、胸が暖かくなります。

 

「セイバーさん、キャスターさん……っ!」

 

「ただ、君の命には変えられない。もし刻限が迫ってどうにもならない時が来たのなら……僕はたとえ令呪を使われても君の、君達の命を優先する」

 

 念押しするようにセイバーさんはそう言ってから、私を揶揄うように頭を一撫でしてくれる。少しだけ乱暴に、でも心からの親愛が掌の温度と共に伝わってきます。

 

「それじゃあ改めて方針決まった事だし考えていこっか!」

 

『お前はもう少し落ち着きを持てないのか、モモイよ……』

 

「でもキャスター!アリスはモモイのそういうところが大好きです!」

 

『……まったく』

 

 全員の気持ちが一つになりました。

 

私達が目指すハッピーエンドは誰もが笑顔で終われるように誰も犠牲にしない。

 

 それはまだどんな形で叶えられるかは分かりません。

でもだからこそ、みんなで考えていくんです。

 

『やるべき事は明確だ。戦争で誰も犠牲に出来ないのであれば、停戦ないしは休戦。つまりは全ての陣営を味方にする他あるまい』

 

「わっかりやすーい!いいじゃん、それぐらい単純なの、私すき!」

 

『馬鹿者。単純である物か。聖杯戦争である以上、他の陣営には願いがある。それを諦めろというのだ、困難他ならん。我のような受肉やそれに準じた願いであるならどうとでもなるが……』

 

 聖杯戦争を犠牲なく終わらせる。

その為には他のマスターの方達にも私達のやり方を選んでもらわなきゃいけません。

そして犠牲がないという事は聖杯で『願いを叶える』事が出来ないという事です。

 

 

 

「現実的な願いなら私達セミナーで支援や協力して実現出来るようにする……そうやって交渉してもらってもいいから」

 

 

 

「ユウカさん……それは……」

 

 その申し出はありがたいけれど、聖杯に願うほどの事です。

それを叶える支援や協力となったら、もしかするとそれこそ莫大な金銭が必要になるかもしれません。それを私達を除いた五組分も叶えるとなれば一つの学園、一つの自治区で賄えない可能性だってあります。

そんな心配が顔に出たからでしょう。

彼女は隣に置かれたロボットと並んで毅然と答えてくれました。

 

「いいの、ヒフミ。これは、セミナーとしての()()……戦う為じゃない、誰かを傷つけるのでもない。その制約の中で最大限貴方達を援助するって決めたのよ」

 

「ユウカ、それって……!」

 

「その代わり!……必ず勝ちなさい、ヒフミ、モモイ。誰一人犠牲にせず、誰一人欠けず。聖杯戦争なんて企みその物に勝って、それから私達のいるべき場所に帰ってきて。それが私の……ううん、この場にいない他の人全員の願いなんだから」

 

 願いだと、そう言って彼女は私達に託してくれる。

ユウカさんは賢い人です。

計算が強くて生徒会のお仕事も役職も任せられている、現実的な物の見方ができる人。

そんな彼女が私達が選んだハッピーエンドを尊重してくれる。

誰も犠牲にしない選択を絵空事だと笑うのではなく、背中を支えてくれている。

 

「ありがとう、ございます。ユウカちゃん……っ!」

 

 その事実に、目頭がつい熱くなってしまいました。

 

「これで……その、他のマスターのお願いとかは……なんとかできそう、かな?」

 

「ただ、それはあくまでその願いが現実的な話です。聖杯は万能だと聞きます。なら特異現象のような超常的な願いを持っている可能性だってあるでしょう。なら交渉前に、願いを知っておくかある程度予想して妥協案や折衷案を用意しなきゃいけません」

 

「ぅぅ……そういうパターンもあるよね……むずかしぃ……」

 

 ハナコちゃんの言うように願いを知る事、戦う理由を知る事。

それは間違いなく大切な事です。

これからも大事にしなくてはいけません。

なにせ。

 

 

 

「確かにマーリンさんもそうやって言ってましたもんね……」

 

 

 

そうぼそっとつい思った事を口にしたら、何故か会話がぶつ切りになってしまって。

みなさんの視線が集まり始めました。

あ、あれ?

 

ど、どうしたんでしょうか。

私そんな変な事、言ったつもりなかったんですけど。

 

「ねぇ、ヒフミ」

 

「あはは……ど、どうしましたか?アズサちゃん……なんだかすっご「さっきからずっと気になってたけど」……あは、あはは……」

 

 

 

「───()?そのマーリンって女」

 

 

 

「あ、アズサちゃん?なんだかお顔がちょっと怖いよう「いいから」……はい」

 

「早く答えて」

 

「あは、あはは……」

 

 あ、あれ?

おかしいです。

なんだかアズサちゃんが急にピリついている気がするんです。

なんとか目線を外して周りに助けを求めてみるんですけど。

 

「そういえばさっきハナコと話してた時も出たわよね、マーリンって名前」

 

「アーサー王物語に登場する魔術師、のお名前でしたか。ただヒフミちゃんの口振りだと会った事があるようでしたし一体どちらで会ったんでしょう?少なくとも私達と一緒にいる時はそんな機会はありませんでしたし」

 

「まあ彼女「やはり女か」……あー、そのマーリンはね、所謂夢魔という種族でね。夢の中で干渉したり「私だって毎晩ヒフミの夢を見てる」……そ、そのヒフミ?よかったらどういう話をマーリンとした「シタ!?エッチなのは駄目!死刑!」……こ、コハルちょっと待ってくれないかい?とにかくどういった話をしたのか教えてくれないかい?出来ればアズサが納得する形で」

 

 なんでちょっと笑顔でハナコちゃんの後ろに隠れようとしてるんですか、セイバーさん!

私だってアズサちゃんの目がだいぶ怖いのでちょっと今だけ隠れたいんですよ!

 

「見な、アリス。あれがよく先生が巻き込まれてるっていう、所謂修羅場だよ」

 

「アリス、現物は初めて見ました!あれがシュラバ!」

 

『ふむ、花の魔術師ともなれば夢とはいえ世界を跨いでの干渉すらしてのける、か。あとアリスよ、それは不要な知識だ。捨ておけ』

 

 なんかモモイちゃん達がはしゃいでますけど、今は突っ込んでいられません。

というか私まだベッドに腰掛けてて逃げ場なんかないわけで。

結局じりじりと迫ってきたアズサちゃんにそっと両頬をその小さな掌で挟まれて。

 

「ハナコも話したんだ。ヒフミも()()全部話して。───いい?」

 

鼻と鼻がくっつきそうな距離。その綺麗なアメジストは決して目線を離してくれなくて。私は。

 

「……ひゃい」

 

そう、なんとかお返事するので精一杯でした。

 

 

 

 

 

 

 

一つ目は『代償』。

異なる世界の法則が交差した事で生まれた弊害。

私達の中で七日目時点で知っている人がいる。

 

二つ目は『訣別』。

何を犠牲にしてどの願いを叶えるか決めている。『四つの陣営が抱えている痛み』。

誰が何を知ったのか、それを受けて何を考えたのか、その果てにどんな願いを抱いたのかという事。

 

三つ目は『絶望』。

私が向き合わなきゃいけない物で、最後まで知ってはいけないと『警告』された秘密。

知りたいのなら、沢山の場所を歩く事。

 

「その三つが聖杯戦争に用意された秘密、なのね」

 

「はい、ユウカさん。そして私はその二つ目の秘密を調べるのに専念するのがいい……らしい……です……」

 

自分で言っていて困ってしまうぐらい具体性に欠けてる秘密です。

ただ、少しだけ、今の私達ならわかる事があります。

 

「代償ってもしかして、お姉ちゃん達の身体のことなのかな?」

 

「異なる世界の法則による弊害、そして私達の中で知っている者。とくればまず間違いないでしょう……私とウイさんの会話まで筒抜け、というのは些かばかり気になりますけど」

 

 そうであるのなら、残る秘密は二つ。

そしてそのうち最後の秘密についてはもうヒントを貰っています。

 

「多分三つ目の秘密は、聖杯戦争の仕組みその物と関わってる秘密なんだと思います……あの時の会話を思い返すとそんな風な気がするんです」

 

 私が聖杯戦争の仕組みに尋ねた時、マーリンさんは『理屈や理由をシステムに求めるのなら優先度を変える。会うべき者は私達とは違う視点でこの戦争を見ている人』、そう言う風に仰られました。

そしてその後続けて、本当に聖杯戦争について、『第三の秘密』について知りたいのなら沢山の場所を歩けとも。

 

「ぜんっぜん、分かんないよぉ……代償?訣別?絶望?小難しい事並べないで分かりやすく説明してくれなかったのぉ!?ヒフミぃ!」

 

「あはは……それが全然……結構はぐらかされるといいますか、本人も全部話す気はないって仰ってましたから」

 

「なんだよそれぇっ!普通こういうヒント出すキャラだったらもうちょい攻略の役に立ちそうな事言ってよぉっ!」

 

 そんな風に怒るモモイちゃんの気持ちもなんとなく分かります。 

結局私達が一つ目の秘密を分かったのも昨日の晩でしたし、分かりやすい二つ目の秘密ですらどうして四つの陣営()()なのか。

分からない事だらけだと頭を悩ませていると。

 

 

 

「ヒフミ、マーリンは他に何か言ってた事はないかい?」

 

 

 

そうセイバーさんに尋ねられました。

 

「その……」

 

 言おうとして、思わず口籠もってしまいました。

マーリンとの話はほとんどお話しました。

唯一伝えていないのは一つだけ。

 

 ただそれは、あまり気持ちのいいお話でもなければ、ここでみなさんに伝える必要性だって少ない話です。

だから、このお話は私の中で、そう思っていると。

 

 

 

「───ヒフミ」

 

 

 

むぎゅっとまた私の頬に温もりが戻ってくる。

 

「むぅっ……!?……ふぁふふぁひゃん……!?」

 

「私はヒフミの話が全部聞きたい。全部、知っておきたい。どんなに些細な話でも、私達の間に秘密なんてもの、あってほしくない」

 

「ふぁふふぁひゃん……」

 

 囁くようなその声がするりと心に飛び込んで、心なしか耳に熱が集まる気がします。

彼女の吐息も鼓動も全部感じて、覗き込まれる瞳に全てを見透かされてるような気持ちで、なんだかくすぐったを感じてしまいます。

 

「……なんか見つめ合ってるけどさ。すっごい締まらないし話進まないから何とかして、コハル」

 

「わっ!?私!?……は、はなこぉ、たすけてぇ」

 

「うふふ♡はぁい、任せて下さい、コハルちゃん。ほら、アズサちゃんもそれぐらいで。可愛いヒフミちゃんのほっぺ、溶けちゃいますよ」

 

「むぅぅぅ……ハナコのいじわる」

 

 いつの間に見つめあってしまっていて、それもみなさんに見られてしまってなんだか恥ずかしいです。

アズサちゃんはなんだか不満そうですが、今彼女を見ると熱がぶり返しそうなので見ないふりをします。

 

「でもヒフミちゃん、私も聞かせてほしいんですよ?だって()()()()した仲じゃないですか♡」

 

 冗談めかしてハナコちゃんはそう言うけれど、その視線に僅かばかり私に抗議する色があって、つい申し訳なくなっちゃいます。

そうです、こんな事、内緒にしてても仕方ありません!

 

「あはは……本当に大した話じゃないんですけど……そのぉ……なんというか……私が他のマスターさんに願いを託してするのは最後の最後らしくて……」

 

 

 

───どうしようもなく時間が足りなくなって、それでも足掻いたビターエンド。それが君が唯一、誰かに己の夢と願いを託して舞台から降りる時だ。

 

 

 

 マーリンさんが言っていた言葉を思い返す。

ハッピーエンドを目指すと決めた以上、そんな未来は来ない筈ですけど。

それでもその言葉をみなさんに伝えてから。

 

「私が令呪を譲渡したりして途中で聖杯戦争を()()すると最終的に自分でヘイローを砕いちゃう……かもしれないみたいなそんな話があるかもしれないってだけで別にそんな選択するつもりは全然ないですから安心して下さいね!」

 

 一息にそう伝えてみる。

あまり気分のいい話じゃないですし、足早に、それからせめて元気を出して!

そう思ったんですが……みなさん頭を抱えててしまいました。

 

 

 

「……あぁ、頭痛くなってきた」

 

「普通そういう話は最初に共有してよね、ヒフミ……」

 

「とりあえずトキさんに全部お任せコースはこれで完全にアウトだね」

 

『マッタクヨ。自分ノ事ヲ計算ニ入レナイタイプトハ思ワナカッタワ』

 

「ぁぅ……コハルちゃんの言ってた意味分かった気がする……モモイと同じタイプでヒフミちゃんも一人にしちゃ駄目だね……」

 

「待って、誰今の?」

 

「アリスはヒフミに対する認識を改めました!今後はアリスがしっかり見守ります!」

 

 ゲーム開発部のみなさんの反応が痛いです。

どうして、そんな、別に降りる気がないから言わなくても大丈夫かなぁってちょっと後回しにしてそのままなぁなぁにしちゃおうかと思ったぐらいでしたのに。

 

「どうして!そういう!大事な話を!あんたは!しないの!」

 

「いひゃい!いひゃい!いひゃいでふ!こはふひゃん!たふへへ!ふぁふふぁひゃん!」

 

「ごめん、ヒフミ……コハル、私の分までよろしく」

 

 ほっぺたを思いっきりコハルちゃんに引っ張られてます。

ど、どうして。

だって自分から棄権しなかったら大丈夫ですし、ほんとうもしもの話だから言わなくても大丈夫だと思ったんです!

 

「……苦労かけるね、ハナコ」

 

「……可能性としてしっかり頭に入れておきましょう。今後行動を選ぶ際に特に注意しないといけません」

 

『……よく理解した。セイバーよ、ハナコよ。あの娘も随分と抜けているようだ。しかと見ておかねばいかん』

 

だ、誰か……誰か助けて下さい!

 





1じゃんね☆
というわけで安価の結果、サーヴァント含めて誰も犠牲にしないっていう方向で進んで行くことになった主人公陣営じゃんね☆
型月世界じゃない、キヴォトスっていう死が遠くて魔術に関連した知識や技術、そして価値観自体がないこと。
そしてヒフミちゃん達がマスターっていうのもあってサーヴァントを生者のように扱ってしまっていたからこそ発生した問題だったじゃんね☆
そこら辺を今回は改めて考えて、これからに向けて定義付けした感じじゃんね☆

……まあそれが1の首を絞める事態に現在進行形でなってるのはご愛嬌じゃんね☆ミーカミカミカミカミカミカ
これだから安価スレは楽しい、じゃんね☆

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