阿慈谷ヒフミは聖杯戦争に参加するようです   作:1じゃんね☆

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クックック……これはこれは。
また随分とご用意をなさったようで。
いえいえ、それだけの数を揃えるというのも骨が折れたことでしょう。
クックック……嗚呼、いいえ。
別に大した話ではありませんよ。
ただ。



そうまでしてしたい事が私達を足止めとは───実に子供らしい無駄な努力と。

そう思っただけですから。



現状確認と新たな手掛かり

 

「とりあえず、話を戻そうか」

 

 咳払いをしつつセイバーさんが会話の流れをなんとか戻してくれました。

よ、よかったです……!

 

「サーヴァントも含めた誰の犠牲もなし、という方針でいくなら重要になるのは二つ。一つはキャスターの言った他のマスターを説得して仲間に引き込み休戦してしまう事。もう一つは……」

 

「はいっ!休戦後、つまり6日後でもヒフミとモモイ、それにアルやトキ達が生き残れるように安全確保!……ですね、セイバー!」

 

「正解だよ、アリス。そしてそれが一番大きな問題になる」

 

 真面目な話、の話なんですけど。

ユウカさんが連れてきたロボットさんがやたら大きなホワイトボードを出してきて、それにセイバーさんが書き込み始めたりして雰囲気はまるで授業みたいになってきました。

 

「6日後、つまり戦争開始から14日目を迎えると大量魔力を供給してくる……か」

 

「そうでなくても今もかなりの負担がかかってますし……魔力負担の軽減、投薬以外でどうにかならないものでしょうか?」

 

 ハナコちゃんの言う通り。

薬の効果で忘れがちになってしまいましたが、やはりその問題も早く解決しておきたいところです。

今後、モモイちゃんが発症する可能性もありますからなおのことです。

 

「ぁの……その、キャスターさんや、セイバーさんって……そもそも聖杯から魔力受け取ってるんですよね……?」

 

『うむ。甚だ遺憾としか言いようがないが、そうなっている』

 

「じゃあ……その魔力とか、聖杯戦争終わって供給されなくなっちゃう……とかもあり得ますよね?……その、聖杯戦争が金輪際起こらないとか願ったら……あのゲーム機のオンラインサービスとサポート終了……みたいな感じで……」

 

「……あ、確かに」

 

 言われてみるとユズちゃんの言う通り、聖杯戦争を終わらせちゃったら魔力の供給がなくなってしまいます。

今は私達の身体を通して魔力をセイバーさん達に聖杯が配っていますけど、それだっていつまで続くか分かりません。

私達の身体の事もそうですけど、魔力が切れたらそれこそサーヴァントの方は存在を維持できません*1

 

『ふむ。その事ならば幸いな事に当てはある』

 

 そう思って焦り始めているとキャスターさんが、心なしか嬉しそうにそう答えてくれました。

 

「え?うちになんかあったっけ?」

 

『……モモイよ、モモイ。我らがケセドなる者の拠点を奪って建造した物はなんだ?』

 

「んん?……ああ!!O型マリョク炉!!」*2

 

『正解だ*3慌ただしいお前でもしっかり記憶出来ていたようで我は嬉しいぞモモイ』

 

「あーもーうるさい!」

 

 そんな風に言いつつどこか照れた様子のモモイちゃんに思わず笑みが溢れてしまいますがしっかり見つかってしまって両手をあげて威嚇されてしまいました。

もう少し見ていたかったのですが、ここは切り替え、ですね。

 

「キャスターさん、あの大きな魔力炉があれば大丈夫なんですね?」

 

『お前達を通した聖杯からの魔力供給自体には干渉はできん……だが、それが途絶えた後の魔力に関しては我が巨大魔力炉アングルボダⅡである程度の維持は可能だとも』

 

「あれ、そんな名前だったんだ……」

 

 私も知りませんでした。

あの大きくていつも蒸気を吐き出してる子のお名前はそんなのだったんですね。

 

「ヒフミ達の魔力負担はどうにもならないのか、キャスター?」

 

『業腹だが、今すぐにどうこうは出来ん。我らをそうだな、巨大なコップとしよう。水が魔力、そして水道が聖杯、蛇口がモモイ達マスターだ』

 

 その説明通りにミドリちゃんがホワイトボードに図を描いてくれます*4

 

『膨大な量と圧力の水を注ぎ込めば金属で出来てようと蛇口は錆びつき、各部が緩み、劣化していく。流されている水の量と勢いに金属が耐えきれず悲鳴をあげている。それがヒフミやモモイ、お前達の身体に起きている拒絶反応の正体、という事なのだろう』

 

 ミドリちゃんが描いたイラストでは蛇口の先が破裂してしまっていました。

なんだか、我が事ながらかなり恐ろしい状況です。

 

『我のアングルボダⅡが出来るのは既にある蛇口を取り替える事や直す事でもなく、別の蛇口からコップに水を注いでやる事だけだ。故に、例え元あった蛇口から水が出なくなってもコップに水を注ぎ続けられるという話だ』

 

「えと、結局ヒフミ達の体のことは……その……」

 

『蛇口を取り替えるないしは取り外す、或いは栓を閉めるとなると別の手立てが必要だ。そもそもヒフミ達のそれは閉める機能すらない孔に近いのだろう。先の譬え話で言うならばそれこそ聖杯という名の水道との契約を解除せねばならん』

 

 とうとうミドリちゃんのイラストから蛇口のバルブが消されてしまいました。

なんというか流しっぱなし、な感じです。

 

「キャスターの説明通り、契約の解除というのは譬え話だけのことじゃなくてね。本来マスターとサーヴァントの魔術的な契約というのは早々簡単に外部からどうこうできる物じゃないんだ……ましてや聖杯からの魔力供給なんて形で干渉を受けてるならなおさら複雑な形で契約が施されている可能性もある」

 

 セイバーさんは難しい顔をしてそう言っています。魔術の契約、私達の繋がりというのはそう簡単に解除したり破棄できたりする物でもないんでしょう。

 

「でもトキもマリーもなんとか出来る感じじゃなかったっけ?……いや、マリーのは結構バイオレンスなやり方だったけど……」

 

「トキの方については分からない。正直、そんな令呪やマスター権を安全に剥奪して契約を解呪する方法をたった一週間で確立したとなると、一体どんな手段なのかは見当もつかないよ……けどマリーのやり方なら心当たりがある」

 

 そう言ってセイバーさんはふふんと胸を張って教えてくれました。

 

「魔術というのは一見複雑なようで中身は意外とシンプルでね。基本的に物理的な破壊に弱いんだよ」

 

「ぶつりてき」

 

「うん。令呪のある場所を切り落としたら、それはもう元の働きが出来ないんだ。ほら、理論的で分かりやすいだろ?」

 

「りろんてき」

 

「それに自動車だってそうだった筈じゃないかな?沢山の科学技術の集積だけれど、ほら、あれだってエンジン部分を斬り飛ばせば動かなくなるじゃないか。同じだよ」*5

 

「はぁ……」

 

 全然分かりませんけどセイバーさんがそう言うならそうなんでしょう*6

まったくちっとも分かりにくいというか想像しにくい譬え話でした。

 

「……んん、ともかく。魔力や僕達の今後についての憂いは心配しないで大丈夫だよ。問題はそれよりも君達と聖杯との間にある繋がりだ」

 

「結局そこなのよね、問題って」

 

 ユウカちゃんも深々とため息をついていますけど気持ちは分かります。

サーヴァントの方を倒さない以上は残る6日後、もしくはそれを過ぎた瞬間の7日目に入った時なのか。

どちらにせよ、そのタイムリミットまでになんとか身体への負担をどうにかしなくちゃいけません。

 

「えぇ……っとわっかんない。聖杯にお願い……は出来ないんだし……うぅん……ミドリ、なんかない?ほらこう、ゲーム開発の経験とかで」

 

「考えてるけど流石にすぐには出ないよ、コハルちゃん。ユズちゃんは?」

 

「む、むりだよミドリ……私達の経験なんてミレニアムプライスで入賞したりC&Cと戦ったりセミナーに襲撃したりエリドゥに攻め入ったり虚妄のサンクトゥム戦に参加したり……あとはゲーム会社の運営とか映画作ったりクレープ屋さんでバイトしたりコーヒーショップの経営したりとかだけだから……」

 

 それは経験()()()という言葉で区切ってしまっていいんでしょうか。

なぜかユウカちゃんがそんな事あったなみたいな懐かしそうな顔をしてますけど。

 

「……ねぇ、ハナコ」

 

「なんでしょう、コハルちゃん」

 

「ゲーム開発ってなんだっけ?」*7

 

「……さぁ?」

 

 私も聞きたいぐらいです*8

でも、それだけ経験豊富*9だというのなら。

 

「それなら、なおのこと……モモイちゃん達ゲーム開発部ならではの視点から見えてくるものがあると思うんです」

 

 マーリンさんも言っていました。

違う視点や立場の人と話す事。

それから私達はすでにもう、これまで会った人達の中に聞くべき人も場所も十分手掛かりはあると。

 

「例えば……そうです!聖杯戦争をゲームに見立ててみるんです!案外そういう形で考えてみるとなにか手掛かりが掴めるかもしれませんから!」

 

 なら、まずは身近なところからです。私

とは学校も部活も違うゲーム開発部のみなさんの視点から、何かヒントを掴めないかと思ってそんな風に提案を出してみました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の言った『モモイちゃん達ゲーム開発部ならではの視点』という話に、彼女達は悩みつつぽつぽつと話始めてくれました。

 

「ゲームに見立ててってなると……聖杯戦争のジャンルはSRPG*10?」

 

「ストーリーモードありの格ゲーって、感じじゃないもんね」

 

「ダクスピのようなアクション系も考えられます」

 

「あ、人間性……確かに……あと私ちょっとハイロボ風な気もする、かな……?」

 

 学校が違います。

立場も違います。

部活だって違います。

性格なんて一つだって同じじゃありません。

価値観ですらきっとそれぞれが違う物を抱えています。

だってこれまで生きてきた中で、その人生の中で得た物、感じ取って受け止めた物が違うから。

だから私達はみんなバラバラで、だから一人じゃ駄目なんです。

一人ひとり違うから、たった一人では解決策が思いつかなくて悩んでしまう問題だって答えが見つけられる、その筈なんです。

 

「全員倒して聖杯ゲット!でノーマルエンドでしょうか?」

 

「それならハッピーエンド分岐が誰も倒さないでエンディング迎える……と時間制限あるし……なら倒していい黒幕用意する、かな?私なら……」

 

「どちらかと言えば縛りプレイではないでしょうか?聖杯入手でエンディングを目指すのが開発者の考えている正規ルート、アリス達がしようとしているのは縛りプレイで『全員生還』トロフィーの獲得です!」

 

「あと前から気になってたんですけど、そもそもなんでサーヴァントを倒さなきゃいけないんですっけ?」

 

 ミドリちゃんの疑問に、セイバーさんとタブレットの映像越しのキャスターさんは互いに顔を見合わせてから少し躊躇って話してくれました。

 

「……うん、今更隠す話ではないから話しておくよ。サーヴァントの魂というのは非常に高密度の情報でね。魔術世界では情報とはそれその物が燃料として扱われるんだ*11

 

「それって……それじゃあ聖杯が願いを叶えてくれる手段って」

 

「基本的には倒されたサーヴァントの魂を格納した聖杯がそれを燃料にする……って考えてもらって構わないかな」

 

 聞かされた内容は決して気持ちのいい話ではなくて、みなさんの会話する声が止まってしまった。

 

 私達にとってサーヴァントの方はすごく強いけど、お話出来て笑ってくれて仲良くなれる、そんな素敵な人達です。

決して道具とは、割り切れません。

だからそんな風に始めから燃料として扱われているという事に驚きも、悲しみも、胸をひどく重くするように感じました*12

 

「キャスター、キャスター」

 

私達が押し黙る中、ふと、アリスちゃんがタブレットに向かって疑問を投げかけました。

 

「それだったらおかしいです。どうしてこの聖杯戦争は『自害』を禁止しているのでしょうか?」

 

 言われてみればその疑問はもっともな話です。

あまり良くない言い方にはなりますが、サーヴァントを燃料として扱うなら、別に自害を禁止する必要どころか意味はありません。

 

「本来なら聖杯戦争を仕組んだ何者かがそういう形式でルールを設定した、と考えるのが順当だけれど……」

 

「監督役の黒服さんが言うには、彼らはそのルールを含めた聖杯戦争のシステム構築に一切関与していない、ですか……」

 

 ユウカちゃんの言葉を引き継いだハナコちゃんの言う通り、あのライダー陣営の襲撃があった夜に黒服さんは自分たちは聖杯戦争のシステム周りには触れていないと教えてくれました。

 

「それもどこまで当てになるんだか……」

 

 そういうコハルちゃんの気持ちもよく分かります。正直黒服さんはとても胡散臭いですし、何より()()アサシンさんのマスターです。

彼の言った話をそっくりそのまま鵜呑みにしていいかは悩んでしまいますが。

 

「私は……あの人の言ったこと、信じてみてもいいと思うんです」

 

「黒服さんは、確かに悪い大人だと思います。でも嘘は言わないと思うんです。そういう不誠実さはないって思うんです」

 

 あの人は多分悪い大人です。

必要なら相手を騙すでしょうし、大切な事は全て包み隠さずとはいかないでしょう。

でも私に嘘はつきませんでした。それが彼という人の確かな一面なのだと思うんです。

 

「ヒフミ。それでも私は……」

 

「彼はアサシンさんのマスターです。だからアズサちゃんが信じられない気持ちはよく分かります……だから味方とか全部信じるとか、そういうのはしなくて大丈夫です」

 

 眉根を顰めて困った顔をするアズサちゃんの気持ちはよくわかります。

実際私も殺されかけたわけですしね。

 

「ただ黒服さんは頻りに取引と口にしていました。彼がどんな思惑で聖杯戦争に参加しているのか分かりませんし、どこまで信じていいかは分かりません。でもビジネスをする人間として、取引相手に敢えて不利益な、それも調べればもしかしたら後でわかってしまうかもしれない情報を渡す……そんな不誠実で雑な手は打たないと……私は思うんです」

 

 私の言葉を最後に、また少し静かな時間が訪れました。誰をどこまで信じるべきか、まだまだ考える事は多そうです。

 

 

 

 

 

 

「もういっそさ、聖杯なんて壊しちゃおうよ」

 

 

 

 

 

 

そんな沈黙の中でモモイちゃんが口を開きました。

 

「……賞品を台無しにしてゲーム自体ひっくり返すってこと?お姉ちゃん」

 

「んー、分かりやすくない?私達、聖杯なんていらないんだし」

 

「それはそうだけど……」

 

 提案された方法は少し乱暴かもしれませんけど、確かに彼女の言う通り分かりやすい方法です。

ただ、その方法には考えなくちゃいけない問題があります。

 

『単純だが分かりやすい解決手段である。少なくとも聖杯を物理的に破壊すればお前達マスターにかかっている魔力負担という問題は確実に解決する』

 

キャスターさんの言葉には含みがありました。

 

「……それ以外の問題。たとえば今次以降の聖杯戦争が発生についてはその手段だと解決できない、って事ですか?」

 

 私が想定していた聖杯の破壊による弊害というか問題、それ以外にもキャスターさんは問題があるのだと答えます。

 

『聖杯その物がどういった物なのかによるのだ。仮に物質的に存在するのであれば破壊してしまうなり、単純な魔力リソースとして使い切ってしまえばいいだろう。だが……』

 

 言い淀むキャスターの言葉を引き継いでセイバーさんは顔を顰めながら教えてくれました。

 

「聖杯というのはそれ自体が形を持たない霊体として顕現する場合やその実態が術式という可能性もあるんだ。物理的に完全な破壊が可能なのかどうかすら現状定かじゃないんだよ」

「えー!ずるじゃん!それ!じゃあどうやって壊すのさ!」

「そもそも壊す事は想定していないんだろう。しかし、やはり魔術というのは私達の想像を遥かに超えていくな。実態がないとは」

 

 これまでも聖杯の顕現といった形で話を聞いていましたがまさか聖杯に実態がないとまでは思ってませんでした。

てっきり金色のティーカップかトロフィーみたいな感じだと思ってましたけど、どうやら違うみたいです。

 

「ここら辺は監督役の人に聞くしかないかなぁ……あとはなんとか探してみるとか?」

 

「聖杯探索クエストですね!アリスもやる気十分です!」

 

 その言葉を聞いてセイバーさんが天を仰いでいます。

そういえばアーサー王物語って確か……*13

いえ、今はそれを考えるのはやめておきましょう。

それに。

 

「だけどモモイ。聖杯を壊すって言っても、それはそれで問題が残るわよ」

 

 私が考えている聖杯を壊す解決方法の問題点。

恐らくそれと同じ事に思い当たったコハルちゃんがモモイちゃんに声をかけました。

 

「あり?そうだっけ?」

 

「聖杯を壊しちゃったら、願いを叶えられない……から……私達とかあと多分トキさんはそれでいいけど……他の人達の願いはまだ分かってないし……」

 

 ユズちゃんの言う通り、聖杯を壊してしまうというのは無条件で他のマスターの願いを叶えないという事。

 

「どんな形であれヒフミやモモイの命に負担をかけているのは聖杯だ。それを壊すという方向は私も賛成……だけど他のマスター……マリー達が何を思っているのか知らないまま壊してしまうわけにはいかないと思う」

 

「私もアズサさんの言う通り、かな?やっぱり命には替えられない、だけどトキさん達はきっと命に替えても叶えたい願いがある。ならそれを無視したり知らないまま壊す方向を選んだら……ゲームならそれこそバッドスチル回収じゃない?」

 

 ミドリちゃん達の言葉は大事な物だと、私は思うんです。

どんな願いを、どんな想いで、聖杯に託してでも叶えようとしているのか。それを知る事こそがきっとマーリンさんの言っていた『二つ目の秘密』……四つの陣営の痛みを知るって事なんだと思うんです。

 

「ただそうなると、どんな願いか本人から聞いても答えが返ってくるかは分からないのが難しいね」

 

「少なくとも話し合いのテーブルには着いてくれるとなると、安守先輩になるでしょうか?」

 

「後は周りの人からの聞き込みっていう方法もあるわ。各マスターの事をよく知っている人から聖杯戦争開始前後の様子を聞いたりとか」

 

 誰から聞くべきか、どうやって調べるべきか。

そしてその願いを聞いてからどんな風に交渉するべきか。考えることはたくさんありますけど、時間はまだありますから一つひとつ片付けていけばいいんです。それに幸いな事ですが。

 

「マリーちゃんとトキさんは……」

 

 ここにはマリーちゃんの友達も、トキさんの友達もいます。

その繋がりを辿っていけば、彼女達の願いにも辿り着けると思うんです。

 

「ある程度の予測でしたら。ただ答え合わせには私だけじゃなく、『彼女達』との話し合いが必要でしょう……戦力を測る意味でも確認しておく必要があります」

 

「トキ、ね……はっきり言って私達には彼女が何を考えて今みたいな行動してるかもさっぱりなのよ。彼女が最後に活動していたのはC&Cとしての任務ではなく特異現象捜査部だったから」

 

 ハナコちゃんは少しだけ寂しそうに、けど目に強い光を秘めて。

ユウカちゃんは肩をすくめながら、どこか戯けたというか、まるで。

 

「だから聞くなら、それは()()()()()()

 

サプライズを企画しているようなそんな茶目っ気のある顔で。

 

「そうですよね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───リオ会長。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユウカちゃんにそう言われて、彼女の横でずっと待機していた『ロボット』がキャタピラを少し前進させてから、そのなんというか、前衛的なデザインからはあまり予想できない綺麗な声で話始めてくれました。

 

『……ええ、そうね。もっとも、私のそれも予想になるけれど』

 

ずっと気になってはいたんです。

でもみなさん、誰も突っ込まないですし、昨日の夜にオートマタの物資依頼もしてましたから、もしかしてそれなのかなって思ってましたけど。

 

『久しいわね、アリス、モモイ。そしてはじめまして、補習授業部の皆さん。私の名前は調月リオ、ミレニアムサイエンススクールの中枢、セミナーの代表よ』

 

 

 

まさか、四本腕のロボットの方が生徒会長だとは思いませんでした。

 

 

 

『……何か勘違いしているようだけど、今は貴女達が発注した光る!鳴る!DXあばんぎゃるど君プレミアムエディションを通して喋ってるだけよ』

 

あ、違うみたいです。

 

「違うのか……」

 

「ロボットじゃないんだ……」

 

「ミレニアムですからてっきり……」

 

「キャスターが呼ばれたのもそれが縁になってとかそういう関係なのかと思ったんだが……」

 

『貴女達がミレニアムについてどう思ってるのかについて改めて後で聞かなくちゃいけないわね』

 

『セイバーよ。話す事ができた、後で我の工房の裏に来るといい。盛大に歓迎しよう』

 

 私達の思っているイメージはどうやら誤りだったのが分かったところで口をあんぐりと開けていたモモイちゃん達が慌て始めました。

 

「な、ななななんで会長!?」

 

「お久しぶりです!リオ会長!」

 

 モモイちゃんは完全にパニック状態ですし、アリスちゃんはとびきりの笑顔です。

確かにミレニアムのような大きな学校の生徒会長の方とは中々会う機会はないかもしれませんし、驚くのも仕方ないかもしれませんね。

 

『……元気そうでよかったわ、アリス。それとモモイさん、私が来たのが意外かしら?……あの時と同じよ。自治区だけでなくキヴォトス全体の危機。なら私がどんな形であれ動くのは自然な事ではないかしら?』

 

それにと続けるロボットことアバンギャルド君は、機械ではありますけど、どことなく寂しげで。

 

『ユウカも貴女達ゲーム開発部の子も、アリスも。我が校の、ミレニアムの生徒が困っているのよ。なら、今度こそ味方になるのは当然でしょう?』

 

 でも、その機械音がとても温かくて、彼女が優しい目をしている、そんな気がしました。

 

「貴女達の件について前々から相談したり連邦生徒会の過剰なアクションを抑えてもらうようにリオ会長には動いてもらってたの。三大校の生徒会長って立場はそれだけ力がある……私やノアの立場だけじゃ限界があるから」

 

 そう言うユウカちゃんはどことなく誇らしげで胸を張っている。その反応でどれだけ彼女が調月会長の事を信頼しているかがよくわかります。

 

『ユウカやトリニティの会長達からこれまでの話を聞いたわ……大変だったわね、阿慈谷ヒフミさん』

 

「いえ、そんな!私は全然……」

 

『謙遜は不要よ。このキヴォトスで行われた超自然的な儀式に巻き込まれる、その辛さは理解しているつもりよ』

 

 その言葉に、鼻の奥がつんとなる気がした。

大変、だったねと労う言葉だけじゃありません。

ユウカさんやナギサ様達とも協力してくれる人が、そして私達の味方また一人がここにもいるという事。

その事実が嬉しかったんです。

 

『本当はもっとゆっくり貴女達の話を聞きたいところだけど、貴女もモモイも時間がない』

 

 調月会長は切り替えるようにそう言うと私達の方を見られました。

 

『だからまずは、本題について。トキの話をしましょう』

 

ロボットさん*14のマイク越しに彼女が語ってくれたのは。

 

 

 

 

 

 

 

『あの子の願い、いいえ、命題に心当たりがあるの』

 

 

 

 

 

 

今まさに私達が知りたいと思っていた情報についてでした。

*1
サーヴァントの肉体にあたる霊基は物理的干渉力を有するが、それを構成しているのは魔力である。当然一部の例外を除けば、魔力の供給が途絶えた時点で退去は否めない

*2
大型魔力炉である

*3
この時発音が同じだったため勘違いしていたが、後に正解ではなかったことが発覚。哀れ、モモイは正座させられた

*4
ゲーム開発部イラスト担当、才羽ミドリ。巷で一時はブームとなったムカデコアラの発案者の画力は高かった

*5
無茶苦茶である

*6
間違ってはいないが、これを理論的と言うにはあまりにも乱暴である

*7
少なくとも通常はパソコンの画面に向かって行う物だろう

*8
まったくである

*9
少なくともゲーム開発において重要な発想力に繋がったと本人達は自負している

*10
シミュレーションロールプレイングゲーム。ぴこぴこ……ではなくコンピュータゲームの分類の一つ。シュミレーター形式とストーリー形式を採用して成長要素のあるユニットを戦略的に動かして勝利条件を満たすゲーム

*11
言わばエネルギーを持ったソースコード。魂という目に見えないそれは魔術のある世界においては五つの魔法、その三番目にも紐づけられている

*12
魔術という技術とそれに付随する価値観が存在しないからこその発想。キヴォトスの人間にとってサーヴァントの存在は生きている人間に対するそれと根本的には変わらない

*13
キヴォトスで確認されるアーサー王物語では聖杯探索という形で円卓の騎士が冒険をする逸話が残されている。その結果は少なくともアーサー王本人の手に聖杯が齎される事はなかったとだけここに記載する

*14
光る!鳴る!あばんぎゃるど君DXプレミアムエディションよ





1じゃんね☆
というわけでずっと待機してたリオ会長が合流じゃんね☆

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  • 4000文字〜5000文字
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