コぉぉユぅぅキぃぃ!!
貴女また書類放って遊びに出掛けてたでしょ!?
私が見てないからってすぐそうやって!
もうっ本当にもうっ!
この前の会議の時はちゃんと良くやってたんだから普段の業務だってそれぐらい……
え?私?
ああ、もうっ、ほら心配しないの。
大丈夫よ、ちゃんとトリニティで休んだから。
さっ、ちゃっちゃと業務終わらせるわよ
聖杯戦争のマスターが体調を崩している。
少なくとも、ミノリ先輩の姿を目にした私達の頭に過ぎるのは、例の拒絶反応について。
ですが、出迎えてくれた彼女の顔色は少なくとも思っていたそれよりは悪くありませんでした。
「昨日から微熱が続いていてね。とうとうベッドの上から起き上がれなくなって……という具合だ。まぁ少し無理をすれば動けない事はないんだけど、あの子達もえらく心配していたし、たまの休養って事で今日はゆっくりさせてもらってる」
来てくれたのが今日でよかったよとミノリさんが言うとその隣でずっと小さく背中を丸めて*1林檎*2剥いていたスパルタクさんも、私達の方を向き直ってから手に持っていた物を差し出されました。
「食べなさい。未だ若く青い少女達よ」
丁寧にカットされて白いお皿に行儀よく並べられた林檎。
彼のごつごつとして大きな手から生まれたと思うと、とてもバーサーカーだなんてクラス名とは思えないぐらいの器用さだと感嘆してしまいます。
皮もとても薄く丁寧に剥かれて、切り方だって潰さないように慎重にされているのが一眼で分かります。
意外ですが、何より愛らしいのはその形。
「「「「「(うさぎだ……)」」」」」
うさぎカットなあたりはミノリさんの為なのかご本人の趣味なのかは謎でしたが。
でもお人柄が窺えるような素敵なリンゴさんでした。
「あ、ありがとうございます、それからお久しぶりです。ミノリ先輩、スパルタクスさん」
お礼を言いお皿を手に取って、作業用なのか近くにあったアウトドアテーブルへとそれを置いてからミノリさんの方をちらりと見る。
微熱、と本人も仰っていた事に加えて見る限り話す事自体も苦という程ではない様子です。
特別に呼気が荒かったり、化粧で無理やり顔色をよく見せてるわけでもありません。
少なくとも私の時はセイバーさんを相手に喋るのすら億劫な状態でしたし、聞いた話ではマリーちゃんも似たような症状ということらしいです
魔力供給に伴う肉体への過負荷、或いは閾値を超えてしまった事による拒絶反応。
ミノリ先輩の口振りやあまりにもそれを想起させるタイミング。
幾ら見た目が軽そうといっても恐らくはミノリさんの身体に負担を強いている病症は十中八九、マスター特有の拒絶反応───命に関わる物でしょう。
ただミノリさんが特別軽症なのか、それともハナコちゃんから聞いた話の中にあった一人ひとりで症状が違うという仮説通りなのか、定かではありません。
そんな風に頭の中で幾つか考えが点いたり消えたりしている中で、気がつくとぬっと目の前に顔がありました。
「……ぬひっ」
ち、近い。
「え、えぇっと?スパルタクス、さん……?」
近いです。
目と目があって、互いの顔の距離は掌一つ分あるかどうか。
それぐらいの急接近でしたが、私が疑問系でスパルタクスさん名前を呼ぶとすっと身体を離して、彼はにこやかな笑みを浮かべた。
「ぬふっ……久しい時が経った。だが
喜ばしい事だと言いたげに、初めてお会いした時にも見せてくれた優しい表情のまま、彼は尋ねてこられました。
「果敢にも困難の道を征く少女よ、もう
「……はいっ。おかげさまで、もうすっかり。あの時はありがとうございます。助けてもらっただけじゃなくて、
一瞬戸惑ってから、はたと気づきます。
彼と初めて会った時にも聞かれたその言葉。
─── まだ
見た目、まったく怪我をしていない私に随分不思議な事を聞くと思ったけれど、今やっと確信が持てました。
現にあの後、私はナギサ様とちょうど大喧嘩をしていましたし。
この人はあの時から、私が一人で空回りしてるのに気づいていたんです。
「当然の行いある。スパルタクスは勇気ある者、困難の中にある者の味方だ。君の傷が癒えたのならば、その傷跡を抱えて進むというのならば……私は何時であっても味方となろう。私はスパルタクスであり、君は叛逆者の卵なのだから」
体の傷ではなく、きっと心の傷。
敵か味方かどうかは関係なく、彼はそれを心配してくれていたという事実と見透かされてしまっていた事になんとなく気恥ずかしさと嬉しさを感じます。
なによりあの時、それに気がつけなかったというのもなおさらです。
「こら、スパルタクス。勝手に話を進めるな。まだヒフミの話を何も聞いてないだろう?」
ちょっと照れてしまって曖昧な表情をして固まっているとミノリさんが助け舟を出して下さいました。
「すまないな、ヒフミ。スパルタクスは誰に対してもこうなんだ。少々、デリカシーっていう物に欠けている。もし気を悪くしたのなら謝罪しよう。だからどうか、あまり気にしないでやってほしい」
「いいえ、全然。とても温かい心遣いをして下さいましたから……素敵な方ですね、スパルタクスさん」
困ったやつだと言いたげな表情の彼女の目は、その言葉とは裏腹にとても嬉しそうで、どことなく誇らしそうです。
彼女の目を見れば彼と彼女の関係性がどれだけ強い信頼で結ばれているかも分かるような気がしてきます。
「そうか、うん。そんな風にスパルタクスの事を、私達の
思いがけなかったのは彼女の口から飛び出た二人の関係性を示す言葉。
モモイちゃんとキャスターさんの関係とも私とセイバーさんの関係ともまた違う同胞という単語が指し示す関係性。
それに私の興味がむくむくと鎌首をもたげて、つい聞いてしまいました。
「同胞、ですか?」
「あぁ、同胞だ。それが私とスパルタクス、そして工務部の皆との関係性なんだ」
少々不躾な質問になってしまいましたが、彼女は快く話して下さいました。
「共に志を同じくして労働に励み、同じ釜で飯を喰らい、同じ場所で眠りにつき、明くる朝にまた共に労働へと精を出す───それは紛れもなく同胞と呼ぶべき間柄じゃないかな?」
ミノリ先輩の言葉はとても静かで、ですが確固たる堅く揺るがない芯のような物を感じさせました。
誇りともまた違う。
強く、貴い、克己心のような物。
「通常のマスターとサーヴァントという関係から見ると少し歪かもしれない。けどこれが私達が選んだ在り方なんだ」
そうやって噛み締める彼女の言葉には重さがありました。
私やセイバーさんとも違う、モモイちゃんとキャスターさんとも違う関係性。
けれど彼女とスパルタクスさん、もしかしたら工務部の皆さんと共に選んだその在り方というのが、私には共に過ごす中で積み重ねた信頼がしっかりとあるんだと不思議と彼女達を見ていると確信できました。
「そんな事はありません。とても、素敵です」
今もそう。
彼女が私達の方にベッドの上で身体を向けようとする時もスパルタクスさんはまるで壊れ物を扱うように優しくとても丁寧にミノリさんの動きを補助して、それを彼女も嬉しそうに受け入れていた。
林檎一つとっても、きっと私達が来るのもあったでしょうけど、それ以上にミノリさんの為に。
あの大きな手で剥いて切っていた。
彼が用意した小さな一つひとつ林檎には、彼女達の間柄が伺えました。
「ありがとう、ヒフミ。そう言ってもらえるのなら嬉しいな。実はこの関係を構築するまで紆余曲折のすれ違いもあったりしてね。だからこそ、今こうして同じように働きながら汗を流す同胞になれた事が私も私達工務部も嬉しくもあり誇らしくもある。貴方もそうだろう?
「無論だ、同胞よ。君が私をそう呼んでくれる限り、私は最後まで君と君達の同胞であり続けよう」
「ふふっ、改めて口にするとくすぐったいな」
それは何気ない会話の中、微笑ましいぐらい柔らかなやり取りの中でした。
本当に自然でスマートなお話。
ただ、いたって普通のそれですけれど。
「(今のって、セイバーさんの時と同じ……)」
勿論勘違いかもしれません。
でも、私はその時、彼のその言葉に込められた想いは、セイバーさんが口にしてくれた誓いのような、とても大切な
「そういえば、阿慈谷さん。君はトリニティ出身だっただろうか?それから才羽さんはミレニアムの子でよかったよね?」
「あぃぇ、えっと……」
「そうでーす!ミレニアム1年生!ゲーム開発部でキャスターのマスター!才羽モモイ!モモイで良いよ!よろしくね、ミノリ先輩!」
そんな風にぼうっと考えに耽ってしまい返事が出遅れていたら代わりに隣から元気のいい声が飛び出してくれました。
「そうか君がキャスターの。で、ヒフミがそちらの男性のマスターになるわけか」
「ああ。僕がヒフミのサーヴァント、セイバーだ。よろしくね、ミノリ。それから遅くなったけど改めて感謝を、バーサーカー。あの時は助けられたよ、ありがとう。君の高潔さ、そしてその名の偉大さは僕のいた国にも伝わっていた。こうして異邦の地で相見え、ましてや助力してもらえた事が嬉しい限りだよ」
セイバーさんからのお礼をお二人は自然な姿で受け取って下さりました。
「こちらこそ、よろしく。長くなるかそれともかは別としても良い付き合いにしたい」
「気にする必要はない、嘗て圧政者であり今は旅する者よ。涙する者がいた、理不尽を強いる悪意があった、故に叛逆せり。私はスパルタクス、スパルタクスは止まらない、挫けない、屈しない。ただそれだけである」
よく通るバリトンボイスは真っ直ぐ前を向き、セイバーさんへと向けられた。
スパルタクスさんの言葉は少しだけ難しいです。
けれどセイバーさんには何か感じる物があったみたいで、彼はただ微笑みで返していました。
「それで、他の子達は君の友人……いや、戦友といったところだろうか?」
ミノリさんの言葉にまだしていなかったことを思い出して私は慌てて、みなさんの事を紹介し始めました。
「はいっ!アズサちゃん、ハナコちゃん、コハルちゃんがトリニティの補習授業部。モモイちゃんの隣におられるのが右からミレニアムのゲーム開発部のミドリちゃん、ユズちゃん、アリスちゃん……それから」
この場で唯一、ロボット姿の調月会長が私の言葉を引き継いで自己紹介をして下さいました。
『機体越しでの通信、失礼するわ。初めまして、安守ミノリさん。ミレニアムサイエンススクールのセミナー代表を務めている調月リオよ』
一瞬、ミノリさんの目が大きく見開いてから、しばらく数度頷いてから口を開きました。
「そうか。貴女が
『……レッドウィンターまで話がいくなんて、間違っても良い風評、なんてものはないのでしょうね。本来ならこの場に相応しくない自覚はあるわ』
「……なるほど。中々どうして私
つい十数分前、ユウカちゃんが話していた内容を思い出します。
どうやらここでも調月会長の話は出ていたようです。
『……とんだ勘違いよ。私は私に出来る事をしたに過ぎないわ。それに最後には無責任な……』
押し殺した調月会長の言葉に対して、ミノリさんはきっぱりと自分の思いを告げていく。
「労働者の営みは、人々の生活は決して嘘をつけない物だよ、リオ。それに君は私のことをどう思っているか分からないけど、少なくとも今この場で君に噛み付くつもりはない。確かに私は日頃から労働者の権利を守る為の闘争と革命に身をやつしている。それが私のライフワークというのは間違っていない。だが権力者であっても、いや権力者であるからこそ、相手を色眼鏡で見るつもりは毛頭ない」
貴女に対してもそうだと言う彼女は自信と誇りに満ち溢れながらも調月会長への思いやりに溢れていました。
多分、さっき言っていた自治区の住民の方から調月会長が不在だった話を聞いていたのでしょう。
事情や実態がどうだったかは分かりませんが、きっと会長に対しての不満ではなく心配の声を聞いていたからこそ労りの言葉を彼女は伝えていく。
「これは私の心情だけど、私が言葉を尽くすのはあくまでそれが闘争の場だからだ。闘争の本質を見誤ってしまえばそれはただの
けろりと笑って仰っていましたが、心情だと言い切ったその言葉には強い信念が宿っていました。
「私は革命を愛してはいるが、だからといってトリニティだから、ミレニアムだから、今目の前に権力者がいるからという曖昧模糊でなんの
そう言って頭を下げる彼女に対して調月会長は慌てず、けれど先ほどよりしっかりとした声で返されました。
『頭を上げてちょうだい。こちらこそ、卑屈な態度を取って貴女に失礼な物言いをしたわ。ごめんなさい、安守部長』
機械越しではありましたがお二人の目線がしっかりと合った、そんな気がしました。
もしかすると聖杯戦争という状況ではなく、今のように話す機会でもなかったのなら、お二人はまた違った関係だったかもしれません。
でも少なくとも今は対等に、そしてとても穏やかなお付き合いをしていける、そんな関係になれたと思ったんです。
「さて、互いの勘違いを解消し蟠りもなくなったところで、だ。あまり気持ち良くないかもしれないけれど、一つ質問は良いだろうか?」
切り替えの合図はとても爽やかでした。
ミノリさんのご出身はレッドウィンターと聞いています。
あの自治区は寒冷地ということもあってとても厳しい自然環境だと。
そんな場所で学び、生きている彼女の雰囲気は、冷たくとも湿り気のない清々しい冬の青空のように爽快です。
「まず私の認識として君達は今日この場に、私と聖杯戦争についての何かしらを話に来た。そしてこの場にはセイバーという戦力を霊体化や隠し立てせずに携えてきている」
そんな竹を割ったような方だと思っている私からすると少し意外なぐらい、ちょっと躊躇いがちな声で彼女は質問を投げかけました。
「そしてモモイも自分がマスターだと告白してくれた。したがって今の状況を私は君達なりの誠意だと認識したいんだが……その、モモイが契約しているという
困惑、という表現が似合う顔でそう聞く彼女に私とモモイちゃんは思わず顔を見合わせて、それから今来ている全員を見て、もう一度顔を見合わせてから。
「「……あ」」
キャスターさんをお呼びするのを完全に失念していた事を思い出しました。
「……どうします?」
タイム!と何故かミノリさんも含めて円陣をしながら私達は早速作戦会議を始めました。
「今から呼ぶのはどうだ?時間は多少かかるが事情が事情だ、キャスターも来てくれる」
『というか彼に私達話したわよね、ミノリさんのところに行くって。何故いないのかしら?』
「リオ会長、リオ会長。アリスのログを確認しましたけど、アリス達は一度も現地集合の話してません!」
キャスターさんにはトリニティを出たらミレニアムに
私達全員、それを伝えて満足していましたけど、よく考えたら拠点に戻るとも、戻らないとも言ってません』。
「そうなんだけど……うわぁ……タブレットで話してたし合流の事も全部話してる気になってたぁ……これ多分、絶対あっちで待ってるよぉ……」
長時間タブレットで話をしていたのも原因の一つですね。
完全にキャスターさんがそこにいる感じになっていました。
「この後の予定もあるからあんまり時間かけられないんじゃ……」
「念話で頼んでみたりとかは?」
「試してるけど遠すぎて繋がらないよぉ……!」
「けどまずいですよ。流石にこれから話し合いしようって相手に手札というか戦力隠したままって……」
ミドリちゃんの言うように、話し合いに来ましたけど最高戦力かつ最大戦力のサーヴァントは一騎いません、は正直相手からしたら怖いでしょう。
しかもそのサーヴァントの方ははキャスターというクラスです。
私達からしてみればそんな事しないのは知っていますけどセイバーさんみたいに他のというか通例を知っている方ならキャスタークラスは搦め手を得意とするのも存じているはず。
「あー、見たところ……というか聞いた限りキャスターは不在、という事で良いんだろうか?私は別に構わないぞ。だからあまり気にしないでくれ」
当のミノリさんは円陣というかベッド周りに集まって囲まれながらこちらの気を遣って下さいますが、僅かでもミノリさんと話をしている時に、彼女にいらない不安をさせたくはありません。
「あぅ……えぇっと……そのですね……」
とはいえ、とりあえず今すぐ呼ぶか、先に話をしてしまうかで私達が頭を抱えていると、ばっとモモイちゃんが頭を下げました。
「ごめん!ミノリ先輩!キャスター忘れてきちゃった!」
腰を曲げつつ両手を合わせて謝るモモイちゃんにミノリさんも困り顔といった様子です。私もお腹が痛くなっちゃいます。
「いや……うん、なんだろうな。知ってた、というか今聞いたよ。とりあえず顔上げよう、モモイ。うーん、まぁ一応先輩という立場だから話しておくけど、交渉の場には十全の用意をして臨むというのが望ましい。次から気をつける、って事にしようか?」
そういう風に優しく言ってくれるミノリさんに思わずお礼を私達が言いかけたところで。
「うん、ありがとう。でもまだ間に合うよ。だから」
モモイちゃんは彼女の目を真っ直ぐに見ていました。
「
その言葉と共に円陣からするりと抜けたモモイちゃんは窓開けてーと叫びながら仮設事務所の外へと駆け出していく。
理由がさっぱりわかっていない様子のコハルちゃん達を置いて、私とハナコちゃんとアズサちゃん、それからセイバーさんが慌ててそれに着いていきます。
「も、モモイちゃん!?モモイちゃんが
思わず静止の言葉が口から飛び出していました。
モモイちゃんが何を考えているかなんて分かります。
わざわざ外に出て、今から呼ぶなんて聖杯戦争のマスターが言ったならそれは一つです。
「ごめーん!ヒフミー!でもさー!」
三画しかない令呪の使用。
サーヴァントへの絶対命令権。
モモイちゃんはそれを使って、この場所までキャスターさんを空間転移で呼び出そうとしていました。
「私、やっぱりこういうのはちゃんとした方がいいと思うんだ!」
仮設事務所を飛び出してすぐに、入り口まで追ってきた私達から少し離れた広めの駐車スペースに立っているモモイちゃん。
左手を空に向けて高く掲げながら彼女は外に立っています。
その手の甲に刻まれた令呪は私のそれと同じように淡い桃色に輝いていました。
「だってさー!ミノリ先輩が折角!誠意だーって言ってくれたんだよー!じゃあ、ならさー!……
そう言う彼女はその姿勢で止まっている。
何をだなんて言わなくても分かります。
令呪は貴重品で、そして取り返しのつかない物です。
私もまだ一度も使っていません。
そんな大事な物だからこそ、彼女は待ってくれているんです。
使いたい、使って誠意をちゃんと示したいという彼女の思いに、仲間である私達が首を振ってくれるかどうかを。
だから一度、私達は目線を合わせて、しばらく見つめ合ってから思わず笑ってしまいました。
令呪です、とっても大事な物です。
それをこんな形で使うだなんて思ってもみませんでしたが。
『(任せてみようか、モモイに。僕らの仲間に)』
『(はい、そうしましょうか)』
誠意を持って話し合いをする。
そんな彼女の思いに頷かないわけにはいきませんでしたから。
「こっちは大丈夫です!モモイちゃんお願いします!」
その合図に、遠目からでも分かるぐらいの快活な笑顔を彼女は返してから。
元気よく叫んで。
「おっけー!それじゃあいってみよー!……第三のマスターが令呪を以って命ずる!」
それと同時に令呪は昼だというのにわかるぐらいはっきりと桃色の輝きを灯した。
時は少し遡り、モモイが令呪を行使する数分前。
珈琲の並々と入ったマグカップ*3をキャスターへと手渡しながらウタハは尋ねた。
「教授、モモイ達はいつ頃戻るのだろうか?」
「うむ。トリニティからミレニアムへ戻ってバーサーカーのマスターと協議するという話は聞いているが……随分と遅いな」
その言葉にちらりとウタハも、その周りで作業をしていたヒビキとコトリも手を止めて時計を見る。
これからミレニアムに戻ると連絡が入ってからそれなりに時間が経っている。
いつもの予定ならもう帰ってきてもおかしくはなかった。
「午前中で回収できた野良のオートマタ*4は20体、そのまま直して運用するにしてもヘルタースケルターの建造用に回すにせよ、どうせ一度は拠点に戻ってくるだろうからその時にまた話しをしておきたかったのだけれど……」
午前中の廃墟周辺での探索活動。
ヒフミがトリニティで入院している間に拠点の留守を任されていたキャスターとエンジニア部は、その時間を無駄にする事なく行動していた。
その目的はミレニアム側にあると予想されるゲヘナ、カイゼリン・ブリッツ記念教会から伸びる地下通路の出入り口の探索とオートマタの回収。
そのうち地下通路があると思われるエリアを絞る作業は、実に脅威の97%程度の進み具合であった。
「まさか拠点に戻らずそのままその安守さんって人のところ行ったんじゃ……?」
ヒビキの言葉に冗談めかして賛同しつつ、それでも流石にそれはないだろうとコトリは言った。
「モモイならやり兼ねませんね……けどあちらにはなんでもリオ会長がいるとか!用意周到!胸中成竹!
合理の化身、『全知』のヒマリ部長と肩を並べる我らがビッグシスター調月リオ会長!そんな彼女に加えしっかり者のヒフミ先輩やアズサ先輩にハナコ先輩も揃ってますし何よりユウカ先輩もいますからまさかそんな事ありませんよー!」
「いや、コトリ。クールっぽいけどああ見えてアズサ先輩、ぽけぽけ*5してるよ。この前コスプレの話してたらスカルマンのコスプレというか着ぐるみ作ってくれって頼んできたし……」
白洲アズサ、トリニティ総合学園2年生。
意外と後輩受けが良かった。
「教授、何かあったんでしょうか?」
「……いや、モモイに内密に仕込んだバイタル確認端末を見る限り、大きな変動はない。早急の危険性はないだろう」
「バイタル確認端末、ですか?」
「……うむ。ヒフミのような事が起きては事だ。深夜に寝室で一人発症していたなどという事になれば目も当てられん。それに……うむ、何処へなりと歩いて行く様は危なっかしくて見ておれん」
憮然と、そして少しだけ口ごもりながらキャスターがそう言うと、思わずウタハは頬を緩ませてしまった。
「ありがとうございます、教授」
「ウタハよ、何故急に感謝なぞ言う?」
「私の、私達の可愛い後輩を大切にしてくれている。その事実が、私は今ただ嬉しいんです」
不審に思って彼女の顔を見たキャスターの真紅のモノアイに飛び込むのは姉のように、母のように、幼い愛し子に向けられた愛情へ安堵する表情だった。
見ればヒビキやコトリもまた嬉しそうにしている事にキャスターは気がつき、ますます虫を噛み潰しでもしたような声色で返答する。
「……ウタハよ、勘違いするでない。我はただサーヴァントの務めを果たしているだけに過ぎん。敗北に繋がるようなリスクの排除をしているに過ぎんのだ。ウタハよ、ヒビキよ、コトリよ。止めよ、何故微笑む。こら、待ちなさい。違う、お前達は何か勘違いをしている。心配してるんですね?違うぞ、我はただ
そう言い聞かせようとしたところでキャスターは己の身に流れ込む魔力と術式、そしてその強制力に気がつく。
魔術の起こり。
だが、尋常ではない。
ともすれば魔法の疑似的な再現すら可能とするほどに迫るだろう力の奔流にキャスターは解を見る。
「この光、魔力……まさか令呪をッ!?」
桃色の光がキャスターの足元から粒子を散らして、招き寄せんとしていた。
何があったのか、キャスターは理由が分からず、ウタハ達も何が起きているのか分からない。
だが、神秘の根強い土地に生きる彼女達だからだろう。
理由も理屈も分からないが、彼が呼ばれている、それも緊急の案件でだとなんとなく察したウタハは力強く声をあげる。
「教授っ!……よろしくお願いします」
「案ずるな───確と、任された」
自分のマスターを案じる心優しい少女達の想いに応えるように、キャスターもまたしっかりと頷きを返し。
その姿を拠点から、ウタハ達の前から消した。
この後、呼ばれたキャスターが憤慨したのは言うまでもない*6。
1じゃんね☆
なんか総決算がまた来週来るじゃんね☆
……なんか一ヶ月まだ経ってない気がするけど、まぁ!気のせいじゃんね☆
それはそれとしてアオイちゃん含めてそのうち連邦生徒会メンバーが何してるかとかの話も書きたいとこじゃんね☆
え?本作の先生?
そりゃ多分───今頃喰われそうになってるじゃんね☆ミーカミカミカミカミカミカ
1話ごとの文字数で望ましいのは?
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3000文字〜4000文字
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4000文字〜5000文字
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6000文字〜7000文字
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8000文字〜90000文字
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9000文字〜10000文字
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10000文字〜12000文字
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12000文字〜15000文字
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15000文字以上