阿慈谷ヒフミは聖杯戦争に参加するようです   作:1じゃんね☆

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「おっし。良い当たりだな」

「うわ。今ので届くんだ……」

「伊達にこれで飯食ってないからな。さて、戻るとしますか」

「うん、これなら流石にトキも気づいてないと思う。火薬は勿論、大した魔力消費なしで遠距離狙撃が出来るのは本当に厄介(すごい)ね」

「なぁに、お前さんも死ぬ気でやればこれぐらい出来るさ」

「……冗談でしょ」

「さてな。それは兎も角、これでヒマリにも良い土産が出来たってわけだ」

「うん、私達が今出来る精一杯。そしてここから先は……命の取り合いだ」

「ああ、俺が出来る義理立ては此処までだ。だから」



「───後は上手い事やってくれよ?セイバー」



夢の形を教えて

 

『怪我なく戻って来れて何よりだわ。まさか、こらやめなさい、キャタピラの溝を掘ってはいけないわ。本当に矢文なんて、ちょっと、腕の稼働範囲は360°よ回して調べようとしないでちょうだい、原始的な手段で連絡してくると、はい今日はおしまいこれから私達は話があるのよ解散なさい、は思わなかったけど』

 

タノシイ、タノシイ』『オウタ、オウタ』『ウタオウ、ウタオウ』『ア、ヒフミチャン』『カエッテキタ、カエッテキタ』『ミンナ、マタネ、マタネ

 

 時計台から降りてきた私達を出迎えてくれたのは小さな子達*1が人集りを作る中心で玩具にされている調月会長達とヘル助さん達で、そんな彼女達をなんとか引っ張り出して暫く。

 

「あー……少なくとも僕やアーチャーが生きた時代でもそこまで主流な手段ではないけれど、こういう状況下ならやむを得ないからね」

 

 時計台前の広場から少し離れたベンチに腰掛けたセイバーさんは今回アーチャーさんがUSB型端末を届けてくれた『矢文』という方法について話し始めました。

 

「そうなんですか?」

 

 意外だったのはメジャーではないという事。

メールやトークアプリどころか電話だってない時代。

遠くの人と連絡を取り合うのに、漠然としたイメージですけど矢文は頻繁に使っていたと思っていました。

 

「僕らが生きた当時はそもそも紙自体が貴重品だったからね。それに矢文というのは射手にそれだけの技量が求められる。距離が遠くなればなるほどにね。だから僕たちの時代でも基本的には連絡手段が相当限られる状況……たとえば船の上や敵城内部の人間と極秘裏に連絡するみたいな限定的な場面での選択肢になるかな?」

 

 そんな私の疑問に答えつつセイバーさんはアズサちゃんの方を見ると、彼女は頷きながら補足してくれました。

 

「ヒマリの立場を考えると、前提として軟禁状態で自分達は身動きが取れず、その上で味方陣営の『トキ』と『エリドゥの監視システム』。この二つにバレずに私達に情報を届けなくてはいけない。それには内密かつネットワーク上の足取りや人の目を無視する必要があった。だから逆に矢文という人の移動を必要としない手段で送ってくる事も十分に考慮できた」

 

『射程範囲を度外視すれば、の話になるのだけれどね。私も少し考えを改めなくてはいけないわ……貴方達サーヴァントという存在について』

 

「ははは……あそこまで目も腕も良い弓兵というのは珍しいぐらいだよ。僕が知る限り、トリスタン卿なら或いは……ってぐらいかな?それでもこの長距離を寸分違えないのは彼だからこそだよ。それと、今回入手できた情報でもう一つ、分かった事がある」*2*3

 

 トリスタン卿、という名前が古書の中に出てきた彼の仲間の方である事を思い出しつつ、居住まいを正す*4

午後の日差しを受ける翡翠には峻峭な色がありました。

 

「さて、僕やアズサの懸念は残念ながらアーチャーの矢と同じように当たりを引いた。つまり、明星ヒマリ。彼女の軟禁状態は僕らが想定するより遥かに厳しい物だ」

 

「元々、私もセイバーも矢文を使った連絡手段についてはあくまで()()()だと考えてた。何かしらの手段で運び込んだメッセージのような物が時計台に隠してある、もしくは軟禁を逃れる形でメッセンジャーが送られてくる……というのが最善策だと踏んでたんだ」

 

 そう言うアズサちゃんは形の良い眉根を顰めて難しい顔をされています。

恐らくはその最善策を明星さんが取らなかった、そして取れなかった状況というのが芳しくないという話なのでしょう。

私の考えていたぼんやりとした答えは、顎を細く綺麗な人差し指に乗せたハナコちゃんが分かりやすく言葉にしてくれました。

 

「確かに……もし私が同じ状況なら今回の『矢文』は最善策とは言い切れませんね。幾ら射手の腕前が良くても、そもそも暗号に気づかれなくてはいけませんし、受け取る私達だって別にヒマリさんと仲間と確約出来ている訳ではありません。そもそも今日、私達が動くのだって不確定。おまけに罠だと判断される、此処に来ない事も相手側は想定できます」

 

「ましてやアーチャーがエリドゥからトリニティに向かって狙撃を行った。その魔力の余波や残滓はそういう事に長けたサーヴァントなら容易に察知できる。今回のようなことをすればどうしても足がつくんだ」

 

 思った以上に矢文という手段を使うのはリスクがある、というのが分かったところで調月会長はアバンギャルド君の腕を組ませながら結論を伝えてくれました。

 

『エイミやヒマリ本人は無理でもアーチャーを使いに出す。別に直接でなくても何度か人を経由する事で情報を私達に確実に届ける方法だってあるわ。それでも、矢文という極めて前時代的でかつリスクのある手段を取らざる得なかった。それだけ事態が逼迫しているという事ね』

 

 だからこそ、とセイバーさんも頷かれます。

 

「そういう状況下で手に入れたこの情報端末の価値は大いにある筈さ。ここに来たのは間違いなく正解だった、きっとこの甲斐はきっと報われる。僕はそう思うよ」

 

 私の手の中にあるファスナー付きの保存袋に入ったUSB型の端末を見ます。

この小指程度の大きさのそれに一体どんな情報を明星さん達は残しているのか。

私と同じように気になるのかコハルちゃんの急かすような声が広場に響きました。

 

「それなら早く見なきゃ!どこか会議室とか視聴覚室借りるとか……!」

 

『安全性を考えるのなら拠点、それもオフライン下でというのが本来は望ましいわ。けど下江さんの意見も決して間違ってはない。聖杯戦争には時間制限があるのだから、さっさと見てしまって、検討する時間を多く取るというのも一つの手よ。最悪トラップを仕掛けられていてもトリニティで見て仕舞えば拠点への影響は薄い……あまり好ましいメリットではないけれど、それも一応伝えておくわね。そういった事態になった際の此処の各種システム復旧はミレニアムの方で無償で引き受けるわ』

 

 難しい問題です。

トリニティのセキュリティというのがどの程度堅牢か分りません。

出来ればそういう事に関してはある程度安全な場所で拝見したいところですが、一方で今見てしまえば『考える時間』が増えます。

罠に関しては、あまり考えたい話ではありませんが可能性も捨てきれないというのはあります。

 

「時間はありますけどデータの量が分からないと精査する時間がどれだけかかるか分かりません。……ひとまずの欲しかったトキさんについて情報は届いたことですし、私から提案してもいいでしょうか?」

 

 ハナコちゃんはそう言って胸「どこから出してんの!?えっちなのは駄目!死刑!」……とにかく取り出したのは()()()()()

封は既に開けているのか澱みなく取り出したのは小さな金属でした。

 

「機構室周りの回廊で封筒に入っていたこんな物を見つけました」

 

「鍵、ですか?」

 

 とても小さな、それこそ掌にすっぽり収まってしまう大きさ。

ですが持ち手の部分にはアンティーク調の彫刻が質素ですがしっかりと掘られている、()()()()()()がある鍵でした。

 

「えぇ。時計台の事務所の方でも少し確認してきましたが、事務員方からは時計台の備品では間違いなくないという言葉を預かっています。それに、封筒には宛名も鍵以外の手紙なんかもありませんでしたけど、丁寧に封蝋が施されていました」

 

 ハナコちゃんが見せてくれた裏面にあるのは、赤い蜜蝋の上に押された刻印。

それ自体はあまり見慣れませんがその刻印の下にある文字はよく知っている単語が刻まれています。

 

「これ……もしかしてシスターフッドの?」

 

「えぇ。使われているシーリングスタンプはシスターフッドの公式文書に用いられる物です。けれどこの封筒に宛名も切手もありませんから正式に()()()()()()()()()()()()()()()()。何より封筒自体がかなりカジュアルな物です」

 

 見ると確かに真っ白ではなく、空押しの装飾が施されています。

あまり派手な物ではありませんが、何か、植物の蔓と花でしょうか。小さな5枚の花弁がある花が刻印されています。

 

 確かにハナコちゃんの言うようにオフィシャルな文書に使うには可愛らしすぎる、どちらかといえば学生がお友達に送る『レターセット』の物のように感じます。

 

「……これ自体にどんな意味があるかは分かりません。私が今考えている事の根拠も受付で確認した『過去一週間の来場者に彼女がいた』という事実だけ」

 

 その表情をなんと表現するべきか、私には待ち合わせるべき言葉がありませんでした。

ただ彼女のペリドットに映る憂いはきっと寂しいという感情なんだと思います。

此処にはいない誰かを想う、その人の今と過去を想って幽かに揺れる。

水面のように瞬く瞳の色を見て私達は、彼女が見つけた封筒に何を想って、誰の物だと察したのか、なんとなしに検討がつきました。

 

「……とはいえこの封蝋を使っている以上、これは間違いなくシスターフッドの物です。折角ですから届けに行くついでに、如何でしょう?マリーちゃんの話を伺いに行くというのは?」

 

 切り替えるように微笑んだ彼女に、私は一瞬目を閉じてしまう。

それを瞬きだと誤魔化してからアズサちゃんと目を合わせました。

 

 彼女は何も言わずに私の気持ちを受け止めてからら、力強い声で話題を切り出してくれまふ。

 

「なるほど、いつもの作戦会議だな!」

 

「あはは……でもそうですね。確かに予定してた時間よりかなり早く終わって余裕がありますし、モモイちゃん達の検査が終わるまでの時間で何か出来ないか考えましょう!」

 

 時間はまだ16時を過ぎた程度。

夕焼けを迎えるまで暫くあります。

今出来る事を、考えなくちゃいけません。

 

「今出てる案はハナコちゃんの『シスターフッドに行く』、コハルちゃんの『USBの中身を先に見る』……ぐらいですか」

 

改めて先に挙がった二つの提案を私は口に出して整理をしました。

 

 正式文書のスタンプが押された封筒を届けるという名目でシスターフッドに行けばサクラコ様に会うのもスムーズに運べると思います。

 

 USBの中身を見てしまうというのも調月会長が言っていたように『考える時間』は多いに越した事はありません。

 

「案は多い方がいいな。それなら私は救護騎士団に行って失踪したミネの手掛かりを探すのを勧める。マリーに協力しているだけじゃなくてヒフミ達の拒絶反応についてもおそらく生徒の中で一番詳しいのは彼女だ。病院で調べたらそのままモモイ達を回収して帰投するのもスムーズだろう」

 

「そ、それなら私も!……えと、そうだ……コハルちゃんが前に話してくれた治安維持部隊……正義実現委員会の人達に聞き込み調査……な、なんてどうでしょう?えと!き、聞くのは……最近の変わった事とか、自治区境界線の事とか、ぁ……あと!この自治区に拠点を置いてる黒服さんの事とか……!」

 

 アズサちゃんとユズちゃんの意見はそれぞれ『病院でミネ団長について調べる』と『正義実現委員会の方に話を聞く』の二つ。

 

 前者はお忙しいかもしれませんがセリナちゃんに話は聞けますし帰り際がスムーズになります。

 

 後者なら彼女達は学内、そして今はアビドスでもパトロールをしてくださっている話ですから、聖杯戦争が起きてからのこの自治区内外の状況や不審な点のお話を広く聞けるかもしれません。

それに正義実現委員会の方だけじゃなく、トリニティ自警団の方にも連絡してみてもいいかもしれませんね*5

 

「僕は黒服との交渉を勧めようかな?古聖堂、だったね。折角近くにいるんだ、一度訪ねてみてもいいかもしれない。勿論、モモイ達がいない状況で何かを決めてしまうというのは望ましくない。けれど、そもそも彼の狙い自体分からない状況だ。まず話を聞いてみる、というのもいいんじゃないかな?幸い、戦力だけなら十分だからね」

 

『最悪、私は生身じゃないわ。自爆機能も搭載してある……何かあっても貴方達を逃す時間は確保するから上手く使って頂戴』

 

「あはは……そうならないようにしますね」

 

 セイバーさんの言う通り、交渉するにせよしないにせよ()()()()()()()()()()です。

それに今この場には、調月会長の話はともかくヘル助さん達も合わせたら戦力はかなり多い方です。

昼間というのもありますし、最悪の場合でも切り抜けるだけならなんとかなりますね。

 

チョウサ、チョウサ』『ジチク、ジュウミン』『キキコミ、キキコミ』『タンケン、タンケン』『トリニティ、マワル』『カイモノ、カイモノ』『ブッシ、ブッシ

 

「あはは……買い物はともかく街の人に聞くのも良さそうですね」

 

ワタシハショッピングデス!

 

「あはは……」

 

 護衛役として一緒に着いてきてもらった7機いるヘルタースケルターさん達は『物資集めと住民の方への聞き込み調査』というのを提案してくださいました。

この時間ですと放課後ですから住民の方だけじゃなく生徒の方もいますし、色々な話が聞けるかもしれませんね。

 

「……物資、そういえば……でも……ううん、言おう」

 

 そう考えているとユズちゃんが思い出したというようにあっと声を挙げてからポケットを探し始めました。

 

「あの、そういえば……これ……」

 

「あら?ユズちゃん、これは?」

 

 彼女の手の中にあったのは小さな金色の鐘、でしょうか。

キーホルダーのようですが、色は違えどどことなく鐘楼で見た時計台の鐘にも似ています。

 

「ぇと、その……時計台で見つけて。忘れ物かもって……まだ受付に渡しに行ってなくて……でもなんだか、()()()()が」

 

 そう困った顔をしている彼女に、今から受付の方へ話をしに行こうと伝えようとしたところで。

 

 

 

「ちょっと見せてもらってもいいかい?ユズ」

 

 

 

セイバーさんから待ったの声がかかりました。

 

「セイバーさん?何か気になる事が?」

 

 少しねと言いつつユズちゃんから手渡された鐘を掌に彼は乗せるとそれを暫くの間じっと見る。

どことなく緊張した面持ちで待つユズちゃんと真剣な顔で鐘を見つめるセイバーさんとを交互に見ながら待っていると、彼はゆっくり口を開きました。

 

「……やっぱりそうだね。微弱だけどこれ、魔力を帯びているよ。勿論微弱と言っても、あくまで魔術的な品としてはという話だ。少なくとも忘れ物というには魔術師が落とした物でもないと説明し難い程度には魔力が込められているよ」

 

 そう言った彼にユズちゃんも飛び跳ねるようにしてから恥ずかしそうに顔を赤らめました。

 

「あ!やっぱり!……ぁぅ……ぁの、やっぱりそうなんですね……お土産屋さんにあったのに比べてすごく高価そう……というか、いえお土産の方が安物とかじゃなくて……なんだかちょっと違う感じというか……!」

 

「うん、大丈夫。君の感覚は間違ってないよ。見て違和感を覚えたというのならその感じた物を大切にしていい。これは魔術的な品に違いない。目がいいという話はしたけれど、もしかするとユズはそういうセンスにも優れているのかもね」

 

「ぁ、ぁぅぅ……」

 

 ますます赤くなった彼女を微笑ましく見ていると、コハルちゃんも同じようにポケットを弄り始めました。

 

「な、なら!これは!?見て、セイバーさん!」

 

「ははは……ありがとう、コハル。僕は専門家じゃないけどありがたく見させてもらうよ……おや、これは……」

 

「ど、どうなのよ?」

 

「……驚いたよ、当たりだね。前のと同じ、これも確かに魔力を帯びている……ただこれがどういった物なのかまでは分からないけど、嫌な感じというのはないかな」

 

「よっし!」

 

 小さくガッツポーズをするコハルちゃんが見つけたとても小ぶりなガラス玉。

それもユズちゃんが見つけた物と同じように魔力を帯びている物のようです。

 

 ただ、セイバーさんだけではそれがどういった効果を持つ物かまでは分からないのが難しい話ですが。

折角お二人が見つけて下さった物ですからなにか上手に活用したいと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()の隣で考えていると、調月会長とハナコちゃんの会話が耳に飛び込んできました。

 

『……魔力を帯びた物質が何故今になって発見されるのか。それとも元々私達の世界にあって単純に魔力という存在を知らなかったから見過ごしていたのか』

 

「或いは聖杯戦争が始まった余波によるものか……流石にそこまでは分かりませんね。ただ今回のような事例がある、そう覚えておいて損はないかと」

 

「それならヘルタースケルターさんが言うように物資集めも戦力の強化だけじゃなくて、何かしら別の意味もあるかもしれませんね……」

 

 そういえば以前見つけた銃弾やワッペンのように魔力の籠った道具がこれまでも幾つか見つけてきました。

もしかするとしっかり探せばまだまだあるのかもしれません。

 

『マジックアイテム、なんて胡乱な言い方が正しいかは分からないけど。そういう物を今後も集めるというのなら専門家が欲しいわ。ちょうど此処にはそういう意味でも私達の先輩がいる。協力関係を結べているのだし、拠点へ迎える事も含めて古関ウイさんに会いに行くというのはありかもしれないわね』

「ウイさんに、ですか。それならシスターフッドとの話し合いをする時も着いてきてもらってもいいかもしれませんね」

 

 そういう事の専門家がちょうどこのトリニティにいて、なにより私達と協力関係なのはありがたい話です。

もし可能なら拠点までご一緒出来たらなんて考えてしまいます。そう考えて、もう一人。私もこの後お会いしたい方がいると思って提案してみました。

 

「あと私、ナギサ様に……な、なんですかみなさん?その微笑ましげな顔は!?」

 

「いえいえ♡なんでもありませんよ、ヒフミちゃん♡」

 

『アフターヌーンティーなんてする暇はなi……こら、やめなさい。ユズさん。どうしてスピーカー部分を塞ごうとするの、こら。ちょっと……ちょっと待ってちょうだい!』

 

「か、会長はちょっと黙っててください……!」

 

 何故か私がそう提案すればハナコちゃん達は生暖かい目線を向けてこられますし、アズサちゃんはと言えば。

 

「むぅぅ……私も着いてく」

 

「あはは……勿論!アズサちゃんも一緒にお茶会しましょうね!」

 

「むぅぅ……」

 

 何故か拗ねてしまいます。

別に他意なんて特にないったらないんです。

本当にちょっとお話できたらと思ったぐらいなんです!

 

「んんっ!……とにかく!このあとどうしましょうか?」

 

色んな案が出て私達は向かった先は───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───申し訳ありませんが、お引き取りください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あはは……」

 

トリニティ総合学園シスターフッド本部。

マリーちゃんがかつて在籍していたその場所に来て。

今まさに立ち往生している真っ最中でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんだか前も同じことがあった、そう思いながら大聖堂受付をしてくださっている生徒さんの顔を見ます。

厳しい剣幕ですが、やはり生来のそれと言いますかシスターフッドに所属しているのもあってか、人の良さからどことなく申し訳なさが滲み出ています。

 

「あら?一応私達は()()()()そちらの()()()()、それも『正式文書』の封蝋が押された書類をお持ちしたのですが?」

 

「はい、それについてはありがたいと思っております。機密文書となりますので早急に受け取らせて頂ければ」

 

「でしたらその()()()()()()()()()も他でもない自分の手で貴女方の代表に面通りしてお渡ししたい、責任ある人間としてそう思うのは当然ではないでしょうか?」

 

 ハナコちゃんからの言及に思わず詰まってしまった彼女に代わり、後ろからその先輩らしきシスターフッドの方が出て来ます。

 

「生憎、浦和ハナコ様。歌住は()()()()()()()()()。ですからお引き取り下さい」

 

「……っ!それは……私以外の人間なら話は別という認識で構いませんか?」

 

「いいえ。補習授業部に所属される阿慈谷ヒフミ様、浦和ハナコ様、白洲アズサ様、そして……下江コハルさん。そちらの男性を含めて貴女方補習授業部の生徒全員は、今後しばらくの間は大聖堂に講義と朝の礼拝以外での入館を許可出来ません」

 

 思わず愕然としてしまった私を誰が咎めるでしょうか。大聖堂の壁でも燃やした*6のならいざ知らず、トリニティ生が大聖堂に期限なしの出入り禁止を受けるだなんて前代未聞な話でした。

 

「……ではヒナタさんは?彼女は大聖堂管理を任せられている筈ですから、こういう文書を預かって頂ければと思うのですけど?」

 

「大変申し訳ありませんが若葉も本日はボランティア活動で不在にしております。書類は我々が責任持ってお預かり致します」

 

 取りつく島もない、とはこの事でしょう。

毅然とそう仰られる彼女にハナコちゃんも攻めあぐねてしまいました。

だからでしょう。

それを見ていたユズちゃんは何度か頷くようにしてから口を開きました。

 

「ぁ……ぅん、よしっ……す、すみません!み、ミレニアムのゲーム開発部の部長!は、花岡ユズです!け、見学!ゲームの参考にしたくて!だから!……そのぉ……大聖堂の中の見学とかって……」

 

「……大変申し訳ありません。午後から清掃活動と備品整理、それから自治区民団体の聖歌隊の練習を行っております。その為、本日は外部の方の見学をお断りしております」

 

「ぁ、あぅ……」

 

 それも駄目とバッサリと切り捨てられてしまったユズちゃんの意見に続いて調月会長も話を通そうと声をあげてくださいました。

 

『横から失礼するわ。ミレニアムサイエンススクール生徒会、セミナー代表の調月リオよ。そちらの代表と緊急の案件で会談をしなくてはいけないわ。通して頂戴』

 

「……誠に失礼ですが、ご身分等を証明できる物は?」

 

 

 

『ないわ』

 

 

 

「……は?」

 

 見事なぐらい堂々とそういう調月会長に、名乗りにこそ反応しなかった彼女も流石に面食らったよう一瞬黙ってしまいました。

話し合いの場で気勢を削ぐという意味ではとても効果的なやり方です。

なにせ聞いてる私も思わず戸惑ったぐらいでした。

 

『(いや、あれ多分素面で言ってるんじゃないかな?)』

 

あはは……そんな訳ありませんよ、セイバーさん。

 

「はぁ……まぁいいでしょう。ご本人の証明が出来ないのでしたら残念ですが会談は『だからセミナーに貴女達からこの場で連絡して頂戴。会計の早瀬ユウカか書記の生塩ノア、それか役員の黒崎……はまずいわね、あの子ここぞとばかりに悪戯しそうだわ。とにかく役職持ちのその二人であれば証明できる筈よ?』……」

 

なんて幻聴というか『直感』が囁いてきそうになってきましたが、ひとまず無視して調月会長と事務員さんとのやり取りに注視します*7

 

「折角お越し下さって申し訳ありませんが、歌住は謹慎中です。会談はアポをとった上で謹慎が解けてから行って頂きますようお願い申し上げます」

 

『謹慎、ね。上位組織、たとえば生徒会の命令や学生課の判断でそうしているなら問題ないわ。言ったでしょう?極めて重要かつ緊急の事案よ。私が後で問題ないように伝えるし、私がこの自治区で行うある程度の行動についてはティーパーティ首脳陣3名の連盟で許可を貰ってるわ。これで十分でしょう?』

 

 器用に上体を反らしてそういうアバンギャルド君でしたが事務員さんはにべもなく断りを入れました。

 

「……歌住の謹慎はあくまでご自身での判断、シスターフッドの長としての判断になります。ですので、たとえティーパーティから許可があろうと歌住が会わないというのなら我々は貴女を通す訳にはいきません」

 

『なら許可を貰ってきて貰えるかしら?他校の生徒会長が来た。だから顔を出しなさい、と』

 

「その判断と許可は歌住自身が謹慎中の為、我々に全て委任されております。ですので重ねてお願い申し上げますが、お引き取り下さい」

 

軽い一礼の後、彼女は事務局へと戻ろうとする。

 

 

 

「あのっ!ど、どうしても駄目、ですか?ヒフミ……もそうだし私も歌住先輩とお話したくて……」

 

 

 

 その背中にコハルちゃんが投げかけた言葉。

まるでそれが突き刺さったかのように、彼女は足を止めて振り返った。

視線の先、声をかけてきたコハルちゃんの姿を確かめるようにしてからここに来て初めて、無表情だった事務員さんの顔が崩れた。

 

 

 

「……下江さん、ですか」

 

 

 

 敬意と逡巡、そして悔恨が入り混じるような声に、当の本人であるコハルちゃんの方が困惑した表情を浮かべていました。

それを気にしないで、彼女はゆっくり、そして丁寧に事務員さんは話始められます。

 

「……ごめんなさい。()()()()()貴女のお願いを私達は聞いてあげたい。あの時、あの教会とそこを頼りにした人々を私達に代わって守り抜いてくれた貴女の頼みなら……」

 

「それなら!「でもね」……っ」

 

「ごめんなさい。それでも貴女方を通せないの。サクラコ様にもシスターヒナタにも、貴女達を、そちらの殿方を含めて会わせる訳にはいかない」

 

 目線を合わせるようにそういう彼女の瞳には有り余るような申し訳なさが宿っている。思わず、私も声をかけてしまいました。

 

「どうしても……駄目でしょうか?」

 

けれど、すくと背中を伸ばして私を見つめた彼女の瞳には。

 

「はい。これ以上の問答をされるというのなら、我々は───」

 

コハルちゃん向けられていた色はもう残っていませんでした。

 

 

 

 

 

 

相応のやり方で貴女達に対応せざる得ない

 

 

 

 

 

 

 周りが騒めいているのに気がついた時には、大聖堂受付前にいる私達を囲うように20人のシスターフッドの方が立っていました。

その手には黒く鈍く光る鉄の塊が握られています。

 

『……正気?確認したかどうかは知らないわ。けど私がセミナーの代表だと後々分かったら、貴女達の組織への非難は決して小さな物にはならないわ。脅すつもりはないけれど、言っておくわ。軽挙な真似はやめておきなさい、組織を思うなら今貴女達がしている行動は極めて不合理よ』

 

 思わずといった様子で調月会長が吐き出した言葉に代表をしてなのか変わらず事務員の方が応えます。

 

「構いません。歌住は謹慎中ですので、全責任は現場を任せられた我々にあります。したがって、この場で何か問題が起きて飛ぶ首は我々の分だけです……第一、首がすげ替わらないのであれば手足どころか指の一つや二つ、何を惜しむ必要がありましょうか?」

 

 呆気なく答えたそこにあったのは、たとえ退部になろうが構わないという意思表示。あまりにも堂々として、彼女達は捨て身になって私達の入館を断ろうとしている。

 

「……なんで、そこまで……!」

 

理解し難いぐらいのその覚悟に、私は思わず聞いてしまって、それから後悔しました。

 

「何故?言わなくては分りませんか?」

 

 歯軋りのような音がしました。

 

「……たとえあの子がこの地を去ろうとも」

 

血が出るほど硬くその手が握りしめられたのが見えました。

 

「たとえその席を喪おうとも」

 

先ほどまでの淡々とした言葉ともコハルちゃんにお話しされていた時とも違います。

 

「たとえ……たとえあの子が人を殺める事があろうとも……っ!」

 

思い出すように、ぶり返すように。

その胸の中で何度も炎を燃え上がらせるように。

 

「あの子は私達の後輩で、私達はあの子の先輩であの子の()を名乗ります」

 

静かな声の中には私にでもこの場にいる誰にでもなく、ただただ沸るようにふつふつとした秘めた叫びがありました。

 

 

 

 

 

 

「───我々は最後まで、私達の可愛い後輩の味方です

 

 

 

 

 

 

 ただそれだけ、そう言い切った彼女の言葉に同意を示すように一斉に安全装置が外される音がする。

 

「お引き取りを、阿慈谷ヒフミ御一行様。衆目もあります。この場で彼女のように銃を取らせないで下さい」

 

 こうも頑なであるのなら、今この場でどうこう話をしてもその席にすら着いてもらえません。

何より彼女達が何を思って、そして誰を想って今こうしているのかもしっかり理解できました。

だから一度この場を後にしようとして。

 

 

 

「もし押し通るというのなら……我々全員を「何をしていますか?」……っ!?」

 

 

 

 風が止むように、静かな声がこの場に響きました。

 

 

 

 

 

 

やけに外が『騒がしい』と思いましたが

 

 

 

 

 

 

 黒いシスター服に身を包み、同じ色のウィンブルを纏いその下から銀灰の御髪をしゃらりと流す。疲れの滲む伏し目がちな視線の奥には神秘的な柘榴石が優しくも力強く此方を見つめている。

 

 胸元で揺れる浅葱色のスカーフを翻すその姿をトリニティで知らない人間はいません。

 

 

 

 

 

 

なさん『お揃い』でどうされたのでしょう?

 

 

 

 

 

 

 長い歴史と沢山の部員を纏めるシスターフッドの長、トリニティ総合学園においてティーパーティに並ぶほどの有力者である『歌住サクラコ』様がそこにおられました。

 

*1
時刻は16時を過ぎた頃。ちょうど小学生達の下校時間だった

*2
私は悲しい……異世界の王は私への期待が高すぎる……

*3
誰ですか今の

*4
トリスタン卿。円卓の騎士の一人であり、その名は悲しみの子。アーサー王物語とは元々別流にあったともされる物語『トリスタンとイゾルデ』の主人公であり、円卓の騎士としては武勇に優れ並ぶ者がいない弓の名手とされた

*5
トリニティ自警団は2年前に発足した組織だが、組織としてしっかりと体系化されているというわけではない。あくまでも理念を同じくする生徒達が集まって、というのが実態である。だがそれは彼女達がただの烏合の衆、という話ではない。肥大化した組織には出来ない柔軟な動きはあの剣先ツルギ委員長をして目を見張るという言葉がトリニティ委員会代表者会議で上がった事があったほどだ

*6
過去の礼拝中に暇だった生徒が持っていたキャンドルサービスの火で壁を焼くという珍事が流行した世代があった。当然シスターフッドはこの件に対して(検閲済み)

*7
イマジナリー囧「うわあぁああああ───!なんで───!」





1じゃんね☆
というわけで今夜?からシスフとお話しするじゃんね☆
1話ぐらいでサクサクっと終わらせる……かもしれないじゃんね☆
少なくとも本スレでやってた時は二日ぐらい掛けて1も読者さんも頭抱えながらやってたじゃんね……自分で用意しておきながら導線は雑だしおまけになんか内心ぐちゃぐちゃな子だしでえれぇ大変だった思い出じゃんね☆



こぼれ話じゃんね☆
この話書いてたのはまだアイドルイベするより前、だけど一部のイベントスチルだけは5thPVで判明してたじゃんね☆
その中からこうだったらいいなっていう妄想を膨らまして出番となったのが今回出てきたシスフの子じゃんね☆
だから細かい設定とかがびっしりあるわけじゃないけど、偶然そういうことになったじゃんね☆
1の解釈と想定してたのとバッチリ解釈一致だから1はそのつもりじゃんね☆

1話ごとの文字数で望ましいのは?

  • 3000文字〜4000文字
  • 4000文字〜5000文字
  • 6000文字〜7000文字
  • 8000文字〜90000文字
  • 9000文字〜10000文字
  • 10000文字〜12000文字
  • 12000文字〜15000文字
  • 15000文字以上
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