早いな、支度が。
いや……愚問だったか、忘れてくれ。
……笑って、聞いてほしい。
お前と並んでこうしている今が、私には不思議なんだ。
こんな風にあの人の傍で、今度は……今日までこんな風に過ごしてきたのがどうにも夢のように……。
……笑えとは言ったが、抱きしめろだなんて言ってない。
いや、決して嫌ではないが……その、お前は私なんか嫌だろ……そうだな。
───私もお前も、そうだったな。
『それじゃあ、案内よろしくね?』
『見せて、欲しいんだ。ヒフミちゃんの仲間を』
『ヒフミちゃんが今日まで頑張ってきた全部を』
その言葉に、私は頷いて彼女の手を取って拠点へと走り出しました。
道中、たくさんお話をして、みなさんのことも紹介して。
また一人、私の隣に並んで一緒に歩いてくれるお友達が駆けつけてくれたことを私は噛み締めたんです。
「いやぁ、想像してたより大所帯だねぇー」
そうして、ホシノさんをお迎えして集まったのは拠点の食堂、ではなく。
「しかもこんなおっきな機械も置いてるなんて。すごいねー、なんだか秘密基地みたいだよー。あれかなー、先生とか見たら喜びそーだねー」
「あはは……気づいたらこんな感じでして……」
たくさんの機材と通信機器、そして大型魔力炉が設置されたメインホールです。
今この場にはミレニアム側からはユウカちゃんにチヒロさん。
そして私達とトリニティとアビドスからお越しくださったウイ
本当に大所帯になってきました*1。
「うちの部員が明後日あたりから世話になるからな。まだまだ人数は増えるぞ」*2
「うへー。もしかしておじさん、来る必要なかったかな?」
「もう!そんな事ありません!ホシノさん来てくれて私とっても嬉しいです!」
「……うへへ」
ホシノさんが照れたように頭を掻かれているのをセイバーさんが微笑ましげに見ている後ろからかつんと硬質な音が床を叩きました*3。
「本当ですよ、ホシノさん。守りなんてどれだけ堅くてもいいんですから。来て頂けて私としてもありがたいです」
「おーユウカちゃんじゃーん。おっひさー。いつもうちのノノミちゃんと仲良くしてくれてありがとねー」
「こちらこそ。ノノミも元気にしてますか?」
私とユウカちゃん、アルさん、アリスちゃん、それにノノミさんの五人は学校を越えてのアイドルグループ*4として活動していた事がありましたから。
その後も予定が合えばお休みの日や放課後に遊びへ、なんて事はちょくちょくです。
だから、ユウカちゃんが聞いた質問は有り体に言えば、それこそ天気の話題ぐらい自然な物でした。
けれどホシノさんの反応は。
「……うーん元気だけどねー、ちょっと最近
何故か話を渋るような、悩んでいるような。
そんな複雑な顔。
それが気になって口を開きかけたところで彼女は話を流しながら切り替えるように手拍子を鳴らしました。
「……さてさて、新顔の話はここまでが良いのかな?色々話さなきゃいけない事、あるんだよね?」
慌てて私も頭の中の疑問を追い出しつつ、作戦会議用に用意して頂いたテーブルを囲んでいる一人をちらりと見た。
彼女は視線に気がつくと注目を集めるように喉を鳴らされました。
「では私達からだね。まず見てもらいたいのはこの地図になる」
そう話し始めたウタハさんに合わせるようにコトリさん達が手元のPCを操作すると、デスク上にホログラムで拠点周辺の地図が表示されます。
「これまで私達は教授と共に拠点周辺を捜索してきた。ここで改めて確認するが、前回のライダー陣営からの夜襲について、我々ミレニアムは事前に保安部やハイランダーにも協力依頼をして自治区の出入りを監視を強化していた。その中で起きた事態だった。であれば必然的に彼女達は我々の監視網の外にある廃墟、つまり拠点が存在するこの立ち入り禁止区域から侵入した事になる」
その言葉に合わせてあの夜の監視映像記録が早回しで再生されます。
各駅や空港、果ては港まで。
他自治区と面した境界線、中にはドローンで撮影された物もありますがその中のいずれにも当然アルさん達の姿はありません。
科学的な光学迷彩にも対応されているのだというその映像でもこれだけ姿が見えないとなれば、必然的に地下坑道を通って来たというのが筋でしょう。
もちろん、魔術を使ったという線は捨てきれませんが。
「ウタハ達の懸念もあってヘルタースケルターを何台か導入して自治区内に魔術や魔力の痕跡がないかは調査してある。だが我が出来る範囲ではライダー達に繋がる物は何一つ見つけられなかった」
既にキャスターさんが調査済みとの事で、一安心です。
これで懸念なく、ウタハさんの言う廃墟からの侵入説を前提に話を進められます。
「そもそもの話になるが、
ウタハさんの言う通り、ここ廃墟は連邦生徒会とミレニアム自治区が連名で立ち入り禁止を指定している地域です。
今日までもウタハさん達が開発してくれた物や物資の供給等を通してミレニアムという自治区と学校が三大校と呼ばれる片鱗、資金力や科学力を見てきました。
その上で今日まで全容が明らかになっていないという事実。
それその物が廃墟という存在が極めて危険な場所なのだと物語っています。
「既定出力を大きく越えたドローンにオートマタ、通常の電子機器ではまず通信が行えない環境。自慢じゃないがそれなり以上と自分達の技術を自負する私達も、そして同じように志を持っていた先代以前も、廃墟の全貌を探索する事は危険と隣り合わせで碌にしていないぐらいだ。はっきり言って廃墟を突っ切ってミレニアムに侵入するというのは現実的じゃない。仮に可能であったとしても、激しい消耗を強いられるという問題は無視できない」
透明のペットボトルに詰まっていた水を呷るようにしてウタハさんが飲み干していく。
その様子はまるで全力失踪でもした後のように。やや間があってから、ウタハさんは一息ついてまた報告の続きを始めます。
でもどこか、その顔色は優れませんでした。
「……したがって、私達は拠点周辺を重点において探索した。ここは比較的自治区にも近いからね。そしてようやく今日の昼過ぎに入口と思われるポイントを発見して……その中を探索する事にした。それが私達から唯一今回話せる嬉しい話というやつだろう」
映像がマップから、暗い道を照らした録画映像とそれに合わせて用意された3Dでマッピングされた物に切り替わります。
「今回はドローンを先行させた上で私とコトリの二人、それから5機のヘルタースケルターを伴っての探索となった。ヒビキにはモニタリングを、残るヘルタースケルターにはヒビキの護衛という形を取った。我ながら安全はある程度確保されていたと思う」
映像に映る坑道はとても暗く狭いようでしたが、それでも護衛として連れられたヘルタースケルターさん達は隊列を組めば行動するのはそう難しくないようです。
実際、一番前をドローンが、その後ろにヘルタースケルターさん。
最後尾にウタハさん達と記録用のドローンが飛んでいるようです。
「だからはっきり言って、廃墟の地下を通る経路に関しては一切問題がなかった。途中まで戦闘らしい戦闘はほぼ発生しなかった上、トラップやセントリーガンもなし。道も一本道で隠し通路も素粒子観測をした限り発見できなかった」
聞く限りではかなり深く、遠くまで探索をしてくださっていて、それでも私達が想定するような大した脅威はなかったという。
そうなると、良い話ではなかったという調査結果も大体の予想が出来ます。
「問題は、地上で言う廃墟を抜けてゲヘナ自治区に入って暫くしてからだった」
たとえば膨大な戦力を発見してしまったとか、坑道自体がアルさん達のブラフで実際には行き止まりだったとか。
そう考えていた私は。
「はっきり言おう。見ていて気持ちの良い物じゃない。少なくとも私はそれと対峙した瞬間……うん、嘔吐を催した……ショッキングな映像だから気をつけてみてほしい」
聖杯戦争とサーヴァントという存在をまだ甘く見ていたとこの時、痛烈に実感しました。
「……なんですか、これ」
少し開けた道の先。
ドローンに照らされて映し出されているのは土や石、コンクリートで出来た坑道なんかではありませんでした。
まず広さが違います。
さっきまで二、三人並んだらそれで精一杯という広さだったのがまるで吹き抜けの通路ほどもある広さに。
けれどそれは吹き抜けなんて清々しい物じゃありませんでした。
「……肉の壁、肉の道か」
アズサちゃんのぼそりと呟いた一言が正しくソレを表現するのに適していました。
コハルちゃんやミドリちゃんが口元を抑えるのを見て、慌ててモモイちゃんやハナコちゃんが背中を摩っていますけど、その二人の顔色だってよくはありません。
「……やられたな、セイバー」
「あぁ。ここまでとは思わなかった。この規模まで拡張できるというのなら、宝具か、それとも僕らがあの時感じ取ったようにそもそもの
「いずれにせよ。これは最早魔物の類。おぉ、悍ましきかな蛇の女、哀れなる、可憐なる。されどお前はその名が如く正に恐ろしき者である」
サーヴァントの御三方をして、この反応。
私達の目に映る景色は一面に脈動し続ける腐肉で埋め尽くされた壁。
まるで何かの臓器の中でも覗いている気分になるそれはところどころ、煙を上げて腐り落ちては、その場所を縫い合わせるように新しい肉芽が生まれている。
どす黒い魔力が紫電を小さく散らすのは色は違えどツチボタルの燐光のようですが、それが照らすのは内臓のように蠢く肉塊。
揺らめくように怪しく周囲を照らしながら粘度の高い汁が天井から滴り落ち、それが溜まった床は脈動する度に嫌な音を立てている。
開けた通路の先は、腐肉によって構成された内臓のような道になっていました。
「……酷い、腐敗臭だったよ。見てくれも酷いが実際はかなりガスが溜まっているようでね、私達の装備が真っ当じゃなかったら……今ここでこうして話すことも叶わなかったはずだ」
ウタハさん達はその時の様子を語りつつもデータを見せてくれました。
少なくとも何の用意もせず足を踏み入れたら、即座に意識を失ってもおかしくない量のガスが溜まっている。数値にはそうありました。
『……冗談でしょう?ライダー達はゲヘナで地盤沈下でもさせるつもり?』
「さて、そこまでは。ただ下手に踏み入って、火器でも使おう物なら爆発騒ぎではないね。彼女達を相手取って銃火器を使うなら平野での戦闘、内部でやり合うならそれこそ前時代的な兵器の使用をお勧めするよ」
肩をすくめるウタハ先輩は戯けて見せても表情は暗かった。
そして、渋るようにしてから彼女は次の映像を見せてくれました。
「……この肉塊で出来た通路、私達はその先へと足を踏み入れた。さっきも言った通り、装備は整えていたからね。こういったガスにしても、まあメンタルを除けば備えはあった。それに万一を考えても、もう少し調査をしたかったからね……そしてそれが失敗だったよ」
先行するドローンと踏み入れた先頭にいたヘルタースケルターさんの一機が肉塊に埋まる道へと一歩踏み出したところから映像が始まりました。
『ゥェ、ヤダナァ……』
一言、ヘルスケさんが呟いてその鋼の足が肉塊を踏んだ、その瞬間でした。
『……!カンチ!カンチ!』
『ニゲテ!ニゲテ!』
『タイヒ!タイヒ!ニゲテクダサイ!ウタハちゃん!コトリちゃん!』
ヘルタースケルターさんが鋭く叫んだと共にドローンは突然壁の側面に叩きつけられ、ヘルタースケルターさんの足が虎バサミにでも捕まったように動かなくなってしまう。
その理由は単純でした。よく見ればドローンが壁へめり込んだのは見えない何かが理由ではありません。
壁からイソギンチャクのように伸びた触腕がドローンを絡め取っている。
プラスチックか金属かまでは分かりませんけど、白い煙を上げながら文字通り
『ニゲ……error……セ……oク……キケ……ゴメ……イ、キャ……サ……セン……』
そして戦闘にいて足を踏み入れたヘルタースケルターもまた、両足からずぶずぶと沈んでいく。
肉塊の檻へと落ちていく。
その足元にはまるで、いいえ、確かに肌のない腕のようなものがヘルタースケルターさんを自身の裡へと引き摺り込もうと何本も肉の床から伸びている。
『……っ!撤収!コトリを頼む!』
『リョウカイ、リョウカイ』
『コトリチャン、ダイジョウブダカラネ』
『……』
ウタハさんのくぐもった叫び声。映像はそこで終わっていました。
「……すまない、教授。私達にはどうにも出来なかった。あの子と雷ちゃん探索verを置いて逃げに徹するしかなかった……アレは踏み入れた存在をどうにも喰って再構成するらしい」
「問題ない。何よりもまずお前達が無事だったのが幸いである……よく生きて、そして正しい判断をしてくれた。困難な仕事をよくぞやり遂げてくれた。ウタハ、お前達に任せて良かったと。お前達が生きていてくれて良かったと。その判断と勇気に我は心から敬意を表さん」
ですが、その言葉にウタハさんは下を向かれました。
握った拳が震えるのは恐怖ではなく自身への怒り、なのは前髪の隙間から見える目で分かります。
「……そう言われても、ね。そもそも入口の発見までで良かったのに欲を掻いたのは私のミスだ。部員を命の危機に晒して、何をしているんだか」
「いいや。それでも生きてさえおればよい。それだけでお前は正しい判断が出来た証左なのだ。もしミスがあるとすれば、敵戦力を過小に評価していた我にあり……」
「聖杯戦争に付き合わせてる私に責任があるよ。だからごめん、ウタハ先輩。辛い思いさせちゃって……でもありがとう、これで私達はまた一歩、ライダー達に近づけた」
キャスターさんがウタハさんの肩に手を置いてからそう言い、モモイちゃんも下を向く彼女を抱きしめるようにしてから上を見てそう言った。
それを聞いて少しだけウタハさんの表情にも温かみが戻る。
「……ありがとうございます教授。それから君が責任だなんて二年は早いよ、モモイ……でも、ありがとね」
「全くだ。だが二年済めば良いが……であろう?粗忽なモモイよ」
「だーれーがー!粗忽者だ!このポンコツ!」
「ええい!やめよ!我のバルブを腹いせに回すのはよせ!」
キャスターさん達のやり取りを見ているとウタハさんだけでなく、私達もいつの間にか入っていた肩の力が抜けたようでした。
空気が少し落ち着きを取り戻す。
どんなに下を向きそうな時でも、引っ張ってくれる。
そういう力がモモイちゃんにはありますから。
それから一頻り戯れた二人が落ち着いたタイミングでウタハさんは話を戻しました。
「この映像については帰還後にチヒロにも解析してもらった。その結果だが、映像をみた限りではどうやら人間の子宮内膜、若しくは蛇の口腔内と一部構造が一致しているそうだ。勿論、大きさは比べるまでもないしサンプルも持ち帰れなかったからあくまで似ているという話になるけどね」
「───蛇の胎。産み直しによる神秘ですか」
ふいに、訥々とウイさんは語り出していました。
古い知識を引っ張り出すようでいて、けれど澱みなく。口元に人差し指を当てながら思案するように。
このキヴォトスでは恐らく形骸化してしまったのだとセイバーさんが言う、外の世界の古い物語。
そしてそれを研究した学問。
キヴォトスで失われて久しい知識を元に。
「古い伝承です。前にお話しした通り、古今東西、蛇というのはその生態から信仰の対象でした。足がないにも関わらず地面を進み、脱皮と共に新たな肉を得る。巨大な獲物を丸呑みする食性と人とは比べ物にならない多産という生存戦略。再生、或いは不死。かつて外の人々は、蛇からそういった神秘を見出しました」
さっきまでとは違い、映像はありません。
ですが、その落ち着いたトーンは不思議と語り口から風景を頭の中に描いてくれました。
遠い世界、いつかの時代で、私達とは違う人々が蛇を見て驚き、考え、自分達の生態や知識とはまるで違うその生態を神秘的だと感じていた。
そんな遠い昔の歴史を、ウイさんのお話から私達は垣間見ます。
「以前にお話を聞いていた腐敗臭のするオートマタ。下手なゴシックホラーを思わせますが、これを見た後なら理解できます。この光景がもし仮に推測通り子宮であり口腔。穴というのは古来から同一視されがちなのです。口から食物を産む神話も存在するように、穴とは入口であり出口。語弊を気にせず言うなれば『怪物的なソレ』もまたその一つでしょう」
「なるほど、有名なアレですか……顎を広げた⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎。本能的な女性性に対する恐怖。古代の地母神の記号化としてはこれ以上ありませんね」
ハナコちゃんが納得したように明らかに文字だったら黒塗りされそうな放送禁止スレスレの言葉を言いましたけど、ウイさんは特に気にしていません。
「えぇ。とは言っても、少しというかかなり妙な話ではあります。確かにサーヴァントという存在は得てしてそういう事象に引っ張られやすいのです。語り継がれる伝承は場所によってその中身も性質も、時には本質すら変わっていく。そしてライダーは非常に古い蛇の神聖であり地母神です」
多分思考にどっぷりと浸かっているのでしょう。
その反応にやっぱりハナコちゃんは寂しげにしつつ、でもなんだか少し嬉しげです。
「それをキヴォトスというフォーマットに合わせた結果が、地下深くに広がる胎にして口、とも考えるのはそこまでおかしくないのかもしれません。なんらかの宝具か、スキルの影響。であれば場所が違えば、もっと洗練された形だったかもしれませんが……」
くるりと人差し指でウイさんが艶めいた黒髪を巻き取ってはするりと抜く。
ふわりと良い椿の香りがしました。
「でも私が想像していた女神メドゥーサの零落した姿だしても少し合わない気がします。まだ何か、彼女にはからくりがある……」
下を向いて一人考え込むようにして、暫く黙ってからあげられた顔には釈然としないと言いたげな色が浮かんでいました。
「いけませんね。もう一当てしない事には分からない、なら考えても無駄です。切り上げて結論だけ言います」
それでもその目にはしっかりと冷静さが宿って、はっきりと自信ではなく確信を持って彼女は言い切りました。
「恐らくは、この肉塊が例のオートマタ、その
しん、と18人が集まったメインホールに静寂が響き渡ります。
決して嫌な意味ではないのは分かりきっています。圧巻。
私達のまったく専門分野の外にある知識の広がりを見て、思わず黙ってしまいました。
「あの……なにか……?」
ただウイさんとしてはかなり気になってしまったようで、おずおずとそう尋ねられてこられましたから慌ててフォローを私達も口々に切り出します。
「いや、素直に驚いただけ。そういう考古学っていうの?専攻じゃないのもあって興味なかったけど。トリニティから来た古関さんだっけ?私もウタハも、なんならユウカだっているのに今更バックアップ要員って最初は思ったけど、またすごいの連れて来たわね。正直、ちょっと……ううん、かなり聞き入っちゃった」
「何度か先生のところでお世話にはなってましたけど……いえ、流石の洞察力です」
チヒロさんやユウカちゃんは素直に驚いたと伝えられて。
「と、当然!ウイ先輩はうちの学校でも……有名じゃないけど……えと、その……」*5
「知る人ぞ知る、ですかね♡ね、コハルちゃん♡」
「そうそれ!」
コハルちゃんやハナコちゃんも鼻高々といった様子で誇らしげ。
それに照れくさそうにもじもじしているウイさんを眺めてほんわりとした空気になったところで、気を引き締めるようにミドリちゃんが軌道修正をしてくれました。
「……とりあえず、話戻しますけど。ウイさん達の推測だと坑道を壊さないといつまで経ってもライダーさん達の、えっとアンドロイドはなくならないんですよね?」
『ウタハ達の観測結果とウイさんの推測が正しいならそうでしょうね。しかし地下一杯に広げてくるとは……不味いわね。事は早急な対処を求められるのに、政治的な問題が絡むわ』
頭が痛いと調月会長もアバンギャルド君の頭を器用に四本の手で抑えていますが、実際そうです。
ミレニアムから行ける場所では限界がある以上、トリニティ側の自治区境界線にある入口から入れるか確認するか。
「都心から離れているとはいえ、ゲヘナの自治区領内ですもんね……」
後はゲヘナに直接赴いてみるしかないと頭を悩ませているとユウカちゃんが助け舟を出してくれました。
「……明日か遅くとも明後日。ゲヘナの生徒会との話し合いの場をセッティングしておきます」
「うへー。そりゃきっとありがたい話なんだけどさ……いいの?ゲヘナ、この件に関わらないって宣言してるんじゃ?」
「大丈夫です。なんとかしてみせます。それにゲヘナの生徒会長は……」
「まぁ馬鹿でしょうけど、阿呆じゃないわ*6*7。詰めこそ甘いけど自治区の運営手腕は見事だって話だからね」
「そっか。
幸いなことにゲヘナ、それも生徒会である万魔殿との会談のセッティングをユウカちゃんが請け負ってくださるとの事です。
各校の生徒会に即日で、私達から会談をお願いする、というのはたまたまお友達がいるトリニティやミレニアムだからこそ出来た荒技。
ナギサ様やユウカちゃんがお話を聞いてくれたから出来た事です。
それも含めて、今回の件で万魔殿の方とお話するのは難しいと思っていましたから、本当にこの申し出はありがたい限りです。
「さて。私達からの報告はこれで終わり。詳しい入り口の位置なんかはまた本格的な作戦前にでも伝えるよ。さて次はいよいよ本番、というわけだけどその前に何か話しておく事はあるかな?」
話を終えるようにホログラムを閉じたウタハさんからの提案は魅力的でした。
私としても早めにミノリさんやホシノさんに現状を共有したり、それからミノリさんにも聞きたいことがありましたから。
ただ明星さんからのメッセージ。
あれについても早めに聞いておきたいという気持ちがあって今、先にミノリさん達との話し合いを済ませるべきか悩んでしまいます。
18人揃っているとはいえ、特にユウカちゃんだったりはお忙しい中ですから先に重要な案件を済ませるべきかどうか悩んでいるとホシノさんが手をあげてくれました。
「ま。色々話しておきたい事はあるけどさ。後でもいいんじゃないかなー」
「あ!私も!USBの方が先に気になるかなって!」
同じようにモモイちゃんもそれに賛同してくれます。
それにハッとして顔を上げれば二人は軽く頷いて笑ってくれました。
「なるほどね。構わないよ、そういう事なら……用意はいいかな?ちーちゃん」
「誰がちーちゃんよ……コタマ、ハレ、マキ」
選択するのに悩んでいた私への助け舟だったのを察してくれたのかウタハさんもさっきの提案を取り下げてチヒロさんへと声をかけて、それに合わせて通信先のヴェリタスの部室が映ります。
『はいはーい。かいせきかんりょー!』
『ロックも無事に外してあります。コユキさんがいてくれたので随分楽させてもらいました』
画面越しには久しぶりにお会いしたコタマさん、それから隣には話に聞いていたマキさんと。
『えへへ……そ、そうですかねー!?そうかもしれませんねー!』
強気な言葉とは裏腹にちょっと自信なさげに目が揺れる子がいました。
コユキと呼ばれた彼女のことは以前聞いたことがありました。
確かそれは……。
『うん。ありがとう、コユキ』
「助かったわ、お疲れ様。……それからコユキ」
『な、なななんですか!?ユウカ先輩!?きょ、今日はちゃんと……!』
ユウカちゃんが以前、困ったように。
「よくやってくれたわ。私の友達の助けになってくれて、ありがとう」
でも嬉しそうに話してくれた名前でした。
『うぇ……ぁ……ぅぅ……こ、これぐらい!ちょちょいのちょいですよー!一大案件なんてたいそーな話だから気合い入れましたけど、ぜーんぜん!つんまないお仕事でしたー!』
早口で大したことないと捲し立てるように、けど尻尾があれば振っているのが想像できるぐらい弾んだ声色に、私だけじゃなくこの場にいる誰もが、勿論ユウカちゃんも口元を綻ばせる。
「えぇ。でもコユキのおかげよ。今回……ううん、これまでもだけど改めて、貴女がいてくれて良かった。先輩として、コユキがセミナーの一員である事が誇らしいわ」
『ヒマリが用意したデータ相手に素晴らしい働きよ。貴女をセミナーに登用したあの日の選択は正しかった、心からそう思うわ』
『……ぅ、ぁ……えへへ』
二人に褒められて、頬に手を当てる彼女の後ろから抱きすくめるようにしてそっと声がかかる。
『ふふっ。良かったですね、コユキちゃん』
『うばぁっ!?の、ノア先輩!?いつの間に!?』
『さぁ?いつからでしょう?』
『うわぁぁあ!?なんですかそれー!?』
そんな二人の姿を微笑ましく見守っていると、カメラの向こう側から見慣れた彼女が声をかけてきてくれました。
『じゃあ、副部長。用意いい?』
「えぇ。お願い、ハレ」
『……わかった』
いつも落ち着いた声のハレさん。
初めて会った時からその静かな声は変わりません。
「ハレ?どうかしたの?」
『……悪いけどさ。私達、聖杯戦争なんて与太話、あんまり本気にしてなかった』
でも今日は一段と静かな気がして。
『別世界が云々かんぬん、現実味なんてなかった。でも、これを見ちゃったし、例の坑道も解析したし、だから今は信じてて……ごめん、わけわかんないこと言って……あと一応、先に部長からのデータ見たの私だけ、だから』
ごめんと、それだけ言って。
『……だから先に確認したこれも部長のイタズラだって……信じたかった』
画面は切り替わりました。
1じゃんね☆
次のお話でPart5までの内容はおしまいになりますじゃんね☆
今日まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。
本日以降からの更新については今日この後に更新予定の1/10付の活動報告からお話させて下さい。
まだまだお話は全3章予定のうち2章の半ば。
よければ今後もお付き合い頂ければ幸いです、じゃんね☆
1話ごとの文字数で望ましいのは?
-
3000文字〜4000文字
-
4000文字〜5000文字
-
6000文字〜7000文字
-
8000文字〜90000文字
-
9000文字〜10000文字
-
10000文字〜12000文字
-
12000文字〜15000文字
-
15000文字以上