阿慈谷ヒフミは聖杯戦争に参加するようです   作:1じゃんね☆

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随分とご機嫌な様子ですね、アーチャー。
よければ私にその理由を話しては頂けませんか?
それとも。

───隠し立てするほどの物があると?


……っ。
馬鹿、なのでしょうか。
いいえ、馬鹿なのですね、貴方は。
本当に……どうしてそう……。

……支度を手伝って下さい。
何をとは、決まっているでしょう。

お夕飯の支度です───今日はフムスとシャワルマ。
貴方の好物なんですから



舞台は進むされど踊らず

 

 USBの中にあった動画ファイルを見終えた私達でしたが、誰も何も。

言葉を発するという事を忘れてしまったかのように静まり返ってしまいました。

 

「(そんなの……こんなの……当たり前です)」

 

 聞こえてきた声は叫びでした。

大きな声じゃなくてももし叶うなら喉が引きちぎれるんじゃないかって勢いで、言葉に懇願を乗せて遥か彼方へと届けようとする、そんな祈りでした。

 

「(ヒマリさん……トキさん……)」

 

 ヒマリさんが言うには、現状で最も確実に聖杯戦争を恒久的に停戦させるには、一人のマスターと七騎のサーヴァントの方全員を犠牲にならなきゃいけないのだという。

 

ある意味で、確実な方法というその言葉に、私達は目指してきたハッピーエンドを否定するような事実を突きつけられた事になります。

 

 そしてマスターは永遠に聖杯の中でシステムを管理しなくちゃいけない。

それがどんな形になるかは分かりませんけど、まず間違いなくその方法を選択すればトキさんとは永遠に会えなくなると()()が煩いぐらいに警鐘を鳴らしています。

 

 何より。

 

「モモイちゃん……」

 

「……ごめん。どうしたらいいんだろうって……わたし……」

 

「モモイ……アリスは、トキは……」

 

『私は……あの子に……』

 

 彼女達にとっては同じ学校の先輩や後輩、そして友達であるトキさんが自ら犠牲になると決めていた。 

そしてその想いはとてつもなく()()()()です。

ヒマリさんからの助けての言葉を聞いた誰もが口を開けない、それが当然でした。

どうしたら良いのか、何をしたらいいのか。

ハッピーエンドを目指すのは諦めていなくても、突然見えていた道筋が呆気なく掻き消えたようで心細くなってしまう。

踏み出す先に不安が募る。

だから誰もが口を開けない。

話を切り出せない。

待っている筈だった明るい未来ではなく、悲痛な現実に踠き苦しんでいる彼女達の姿と言葉を受け止めようとするだけで精一杯。

 

 ()()()

その中で、最初に口を開いたのは。

 

 

 

「かなりの収穫だな。今後の動きに直接的な関係があるかは定かじゃないが、少なくともマスター側の願いやその思想はこれで分かった」

 

「そうだねー。おじさん的にもちょっと気になる箇所あったけど、とりあえずはあのトキちゃんの話、続けちゃおっか。それとも一旦分かったし、別のこと話す?」

 

 

 

 今日初めてこの場に来てくれたミノリ先輩とホシノさんでした。

二人の顔には悲壮感なんてこれっぽっちもありません。

ホシノさんはいつも通り柔らかな笑みを浮かべて。

ミノリ先輩は不敵な笑みを浮かべて。

 

 確かにお二人はトキさんとの付き合いが薄いからというのも確かにあるかもしれません。

まだ事情をしっかりと知らないからかもしれません。

ですが、それ以上に。

 

「お二人とも……」

 

「はいはい、おじさんですよー。悲しい顔なんてしない、しない。まぁ、確かに?ちょっとキッツい内容だったけど……でもまだ、誰も犠牲になんかなってないよ、ヒフミちゃん」

 

「小鳥遊さんの言う通り、既に手遅れなら話は別だろう。だが、まだそうじゃない。まだ、私達は間に合う、幾らでもやりようがある。ならば今やるべき事は悲嘆に暮れて足を折る事ではないだろう?」

 

 お二人は強いんです。

どんな逆境でも、いいえ逆境こそをひた走る彼女達は決してこんなところで止まらないのだと私に勇気をくれる。

そして、そんなお二人だからこそ笑みを浮かべて私達に安心感を与えてくれるんです。

これぐらいで折れたりする必要なんかないんだって。

だから二人は……いいえ。

 

「もう挫折も苦悩も私達は何度だって味わってきた。世界は悲劇に満ちていて、きっと残酷な真実は其処彼処に溢れている。それでも」

 

二人だけじゃありませんでした。

 

 

 

「それが達の足を止める理由にならない。そうだろう?ヒフミ」

 

 

 

 隣にいて私の手を握ってくれた彼女が言ったのはただの確認。

今までだってどんな辛い事も乗り越えてきた。

その度に私達は強くなってきた。

どんな不安を覚えたって、先が見えなくたって。

 

「……はい。トキさんが辛い選択をしたというのなら、丸ごと全部、ハッピーエンドに。トキさんが犠牲になる終わりを認めてなんかやりません!」

 

 アズサちゃんの言う通り、私の背中にはこれまで頑張ってきた思い出がたくさんあります。

 

 だから前を向く。

胸を張る。

トキさんが犠牲にならなきゃいけない。

サーヴァントの方を殺さなきゃいけない。

確実な方法はそれしかない。

それが現実的でそれが賢くてそれが一番安全な方法。

 

 

 

───()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「私は、私達はこんな所で足踏みしてなんかいられません!トキさんが自分を犠牲にしようとしているなら、それでモモイちゃんのように悲しむ人がいるなら私達で止めてみせます!……だから、みなさん!」

 

 お友達がいなくなるなんて嫌です。

そんな辛い想いをするのはもう二度とごめんです。そしてそれをモモイちゃん達に味わせるつもりだってありません。

 

 セイバーさんが頷きを返してくれる。

私のやり方を、サーヴァントを犠牲にしない方法を見つけるのを彼はその優しさから一度は反対した、いいえ、私達を想って反対して下さいました。

その理由も気持ちもよくわかっています。

 

 そして今、その想いを伏せて、納得して私と共に戦ってくれる。

だから怖さなんてありません。

辛い現実なんかに、私達は負けません。

 

「……いいね。少女を熱くさせるのはいつだってこういう空気だ。嘆いている暇なんてない、ましてやたかが蛇の腑なんぞに怯えているの馬鹿らしい。もう止まってる暇はないね、ヒビキ、コトリ!大仕事だぞ!用意された以上のゴールを私達の手で掴み取る!しかも大の大人がこれ以上の答えは用意できないと投げ出した仕事だっていうじゃないか!これを達成した暁にはきっと痛快な逆転劇が待っているぞ!ああ、そうだとも……ハッピーエンド、上等さ!」

 

「ヒフミ達の言う通りです、会長。私達セミナーは全校生徒の為に、自治区住民の為に存在します。それは今も昔も変わりません。セミナーが生徒会になったあの日からずっと!生徒を、千年難題という大きな壁の頂を共に目指す彼女達の健やかな学校生活を守り通し!いつの日かあの難題を私達ミレニアムの手で踏破する!その使命は変わらない!それなのに……友達(トキ)一人救えないんじゃお話になりません!」

 

 ウタハさんとユウカさんが力強く机を叩く。

その目には力強い熱が籠っています。

 

「……しょげてる暇なんかないよ、お姉ちゃん。私達でトキさんを救うの。あの人意地っ張りな癖に面倒くさがりなんだから、さっさと重たい荷物降ろさせてあげなきゃ!」

 

「アリスちゃん、大丈夫。私達だけじゃなくて……ここには沢山の人がいるから。みんなで考えればきっと良いやり方……その、絶対思いつくから」

 

 まだ終わってないと、下を向いていたモモイちゃん達の前に立ってミドリちゃん達が弱々しく垂れた手を握る。

 

「うふふ♡たとえ無理難題があっても前を向いてしっかり⬛︎って歩く♡いつも通りの私達ですね♡」

 

「なんでこんな時までふざけるのよ!おばか!……でも今更よ。なんてたって私達、あの時だってちゃんと試験をパスしたんだから!バカだから無理だって、そう思って諦めかけても!ちゃんと頑張れば、みんなで一緒に戦えば!最後にはちゃんと乗り越えられるのよ!」

 

 コハルちゃん達が吠える先にあるのはきっと、目に見えないけど私達に襲いかかってきた辛い現実。

負けてやるかと自分達のこれまでを掲げてくれる。

みなさんの目にやる気が灯り、空気が一変しました。

 

「なら手早く情報の共有を済ませようとしちゃおうか。私達ヴェリタスとエンジニア部からの調査報告はこれでお仕舞い。ここからは次の話───小鳥遊対策委員長」

 

「うへー。私ぃ?いやさぁ、こういうのって……」

 

 これからの話ということもあってか、アビドスの話をするのに言い淀むホシノさんに対して、フォローを入れてくださったのはいつも頼りになるお二方。

 

「ヒフミが気になるという話だからね。僕からもぜひ話を聞きたい。アーチャーやライダーとの戦いを経た君たちの近況も気になるところだしね」

 

「情報共有は必要だ。我らは同盟を組み、志を同じくして問題解決へと乗り出したチームである。そしてこの場で最も情報を交わせていないのもお前とだ、アビドス、神秘満ちる土地より来た娘よ」

 

「……ふぅん。()()()()()。貴方達って、本当はそういう感じなんだね」

 

 何やら意味深な感じにセイバーさん達も不思議そうにしていますが、ホシノさんは流し目をしつつのんびりと答えます。

 

「いやぁ?ヒフミちゃん達の隣にいるっていうのは()()()()()なのかなぁってさー」

 

 それがどういう意味なのか聞こうとする前にミノリさんから提案がありました。

 

「良い機会だ、スパルタクスのステータスを全て提示しよう。なに、見てくれ通りのそれだ。私が言うのもなんだが……期待してくれていい」

 

「なら私達が集めたシャドウサーヴァントも含めた各サーヴァントについての情報もおさらいしておきましょう。データを表示するから確認お願い」

 

 ユウカちゃんの一言で画面にサーヴァントの方達のデータが表示されます。

ホシノさんがこれまで戦った経験なんかを聞けば、さらに具体的な形にもなるでしょう。

 

『……ユウカ達もこの話し合いを終えたらそれぞれの部署に戻る予定よ。今日最後の検討会となるわ……明日からまずどの陣営の攻略に注力するか、まだ情報が足りない陣営はどこか。今後の動きも含めて話を重ねていき、結論を出しましょう』

 

 調月会長もいつも通りの調子に戻ってきました。

あとは彼女だけ。

そう思って見れば。

 

「くよくよなんかしてられないね。ごめん、ヒフミ。情けないとこ見せちゃった!」

 

「モモイちゃん……」

 

 いつもの元気な笑みを彼女は見せてくれました。

 

「もう大丈夫!ヒフミの願いを叶えにいかなきゃ!さあ話し合いだよ、ヒフミ!こんな所でヒフミもみんなも折れたりしない……でしょ?」 

 

「えぇ勿論!」

 

考えるべき事は山積みです。

挑まなくてはいけない現実の壁は大きいです。

でも、だとしても。

 

『(それが諦める理由にはならない、そうですよね)』

 

『(……嗚呼、良い言葉だ。それでこそ、だよ)』

 

『(あはは……アズサちゃんの受け売りですけどね)』

 

 前を向いて、歩く。

トキさんの事も、マリーちゃんの事も、アルさんの事も。

色んな事があるけれど、それでも私達なら前に向かって進んで、必ずハッピーエンドに。

誰も犠牲にならない終わり方に辿り着けると信じてるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なるほどねー。聖杯戦争、殺し合いの強制参加者はもれなく棄権もまとめに出来ないし、殺し合わないって方針を選んでも最終的には……かー」 

 

 私達が知っている聖杯戦争についてとこれまでの経緯をお伝えした後、腕組みをしたホシノさんは難しい顔をしていました。

 

 私自身、逆の立場で自分のお友達からそんなお話をされたらなんて返すべきか迷うところ。そんな悩ましい話にしばらく目を瞑ってから、ぱちりと彼女のオッドアイが開きました。

 

「いやー、これは確かにアビドスみたいに小さな自治区で手に負える問題じゃないねー。万一の実働協力って形で前に対策会議に参加させてもらえただけでもありがたい話だよー」

 

「ホシノ先輩……それについては……」

 

 三校でしたという会議。

実際協力関係を結んだとかの話は聞いていましたが、具体的な細かいところだったりは甘えさせてもらってきました。

 

 そんな会議をナギサ様と共に主導してくれていたユウカちゃんは申し訳なさそうにして頭を下げようとしたところを、ホシノさんが手を振って止めました。

 

「いーよいーよ、ユウカちゃん。トリニティの紅茶ちゃん*1とも話し合ってうちを巻き込むのは最低限にしようって心配してくれたんでしょ?分かってるってー」

 

 にこやかにそう言いつつ、彼女の思考はそれとは別の方へと向かったのを感じました。

その予想通り、次に口にしたのはやはり()()のことについて。

 

「しかし便利屋ちゃん達がマスターねぇ……しかもあの様子かぁ……」

 

 

 この話をする際にみなさんに改めてお見せしたアルさんの記録。

そこに残されていた彼女の姿についてをホシノさんは口にする。

 

 

 

─── 少しだけ……少しだけでいいの。時間を頂戴、ライダー。

 

 

 

 アルさんとは私もホシノさんも、そしてこの場ではユウカちゃんもお付き合いがあります。

気丈で優しくてとても爽やかな方です。

 

 世話焼きさんで私にもいつも良くしてくれる大好きなお友達。

そんな彼女が誰にも聞かせないように真っ暗な部屋で一人、堰を切ったように泣いていた姿。

それを見た、直後でしたからホシノさんが彼女について話題に触れるのは自然でした。

 

「アルさんは……今もマリーちゃんや他の陣営と小競り合いを続けていると聞きます」

 

「ヒフミには悪いが、はっきり言っておこう。私達のところにも、なんならレッドウィンターにまで足を伸ばしてライダー達は殴り込みに来ている。それも一度や二度の話じゃない。恐らく、この聖杯戦争でもっと好戦的かつ意欲的に戦闘行為を行っているのは彼女達だ」

 

「ただ、()()()()()()()()()()。勿論、サーヴァントや陣営の強さもそうでしょう。でも、一番はきっとそこが問題ですね」

 

 ミノリさんとハナコちゃんの話を聞いて改めて考える。ミ

ノリさんの願いは『富の分配』。

 

 それは聖杯で願いを叶える権利という富も含めて全員が平等に得られないといけない矛盾した願いだったから、ミノリさんは叶えない(願わない)と決意された。

それもあって彼女は戦いにも消極的でした。

 

 マリーちゃんの願いは『ランサーさんの受肉』。

ですがこれについては……まだ妙に足りていない。そう思います。

 

同じようにモモイちゃんは『キャスターさんの受肉』。

キャスターさん自身もそれを願っておられます。

これは私達の思う犠牲のないハッピーエンドを目指す方針とも合致していたという理由もあって同盟を組めました。

 

 そしてトキさんは『聖杯戦争の恒久的な停戦』。

そのためには七騎全てのサーヴァントの方の命とご自分を犠牲にする以上は勝ち残る必要がある。

だから無駄な戦闘を控えて令呪とサーヴァントを引き渡すよう交渉したり、それが駄目なら他陣営との戦闘も私達以上に積極的に行っているらしいです。

 

 なら一体、アルさんの願いはなんなんでしょうか。

 

「……ヒフミも分かると思うけど、アルさんはしっかり者だわ。内容……は今は置いとくとしても会社の運営だって立派にされてるし。そんな彼女が……()()()()人を殺す戦いを選んだ」

 

「思い詰めてる感じだったねー。()()()()()、って話だけど……もしかして私達が知ってる内容、全部最初から知ってたんじゃない?あの子」

 

 ホシノさんはそう言うとぐるりと私達を見渡しました。

それは推測というよりどこか確信めいた言い方。

 

「考えてもみなよー。言っちゃ悪いけど、あの子達って度がつくぐらい真っ直ぐだよ?不義理な事なんて出来っこない、それこそ空回りすぎて一周しちゃうぐらいにはさ。だったら人殺しに()()()()()()()『理由』がある。つまり、トキちゃんだっけ?その子と同じパターンってこと」

 

 そう、引っ掛かるのはあの優しいアルさんがどうして聖杯戦争に、殺し合いに積極的なのか。

それを考えていくと自ずとなんらかの理由があるのではと思うんです。

そうしなくてはいけない理由があるんだと。

 

 改めてアルさんが抱えている物を知らないと前に進めないなと再確認していると、ウイさんも頷きながらホシノさんの話に補足をしてくれます。

 

「……聖杯戦争という物は基本的には魔術師達が願いを叶える為に聖杯を奪い合う儀式です。その願いというのは形はどうあれ俗人的な物ではなく、()()と呼ばれる物への到達、魔術師自身のアイデンティティや存在に纏わる願いです。であれば、私達のように巻き込まれた人間というか魔術の存在しないキヴォトスで、人を殺してまで叶えたい願いを抱える。その重みは相当な物でしょう」

 

「前に話したが人を殺すというのは倫理的な枷、そして社会的な枷、この二つのハードルを越えない事には発生しない事象だ。勿論、時に感情はそんなハードルを踏み越えてしまう事はある。だがそのハードルをただ越えるだけ、となれば聖杯戦争は()()()()しあまりに()()()()だ。昂った一時の感情を持ち続けて……というには君達から聞く限りの『陸八魔アル』という人物像と一致しない。後は立場だが、人が善良な倫理観の一線を踏み越える時というのは大抵は社会的な要因がある。そして彼女は……」

 

「会社を運営し社員、それも友達を養う立場にある、か。調べた限り、決して大儲けしてるわけではないけど首が回らなくなるほどアルさん達は困窮してたわけじゃないわ……そのここ最近は、という話になるけど」

 

 ミノリさん達もまたお昼に話してくれたことを続けながら、アルさんのパターンに置き換えて話してくれます。

聞く限り、アルさんが誰かの命を奪ってでも利己的な願いを叶えたい、という風には思えませんでした。

それにしても。

 

「いやー、しっかり者が多いねー。おじさん、安心だよー……ところで、ウイちゃんだっけ?随分詳しいんじゃない?───聖杯戦争のこと」

 

にこやかに目を細めた奥からなぜでしょう、鋭さを感じる目線をホシノさんが送ると。

 

「……ヒナタさん経由である程度聞きましたから」

 

 初対面ということもあって緊張なさったのでしょうか。

目線を逸らされてしまいました。

それになんとなくぎこちない空気が流れ出しそうになったタイミングでぽつりと静かな声がホールに思いの外響きました。

 

「陸八魔さん、すごい思い詰めてた。もし初めから全部、聖杯戦争のシステムを知ってたなら。あんな風になるのも分かる気がする……それに逆説的にだけどヒフミさん達の動きとの違いも説明できるんじゃないかな?」

 

 ヒビキちゃんの言葉に私達の頭の中で描くのはこれまでのこと。

確かに初日に襲われて、二日目にランサーさんと戦って、そこからまたランサーさんと戦うまではケセド戦はともかくあまりサーヴァントの方と戦ったりはしてきませんでした。

 

 とにかく情報を集める事に集中していたのは、他の方との命の取り合いなんて嫌だったのもありますが。

そもそもこのキヴォトスで初めての聖杯戦争という事もあって、私を含めたマスターになった人に事前の情報が何もなかった、というのも大きいんです。

 

「初日からマスター含めて随分派手に動いてたからね、彼女達。聞けば脱獄の幇助もやってるんでしょ?それに戦闘となれば監視カメラにマスター本人が映るのも気にしないぐらい。ちょっとランサー陣営とは動きが違わない?ほら、拒絶反応発症済みでマスターになるリスクとか分かってるあそこはわりと慎重に動いてるし」

 

「うちにも喧嘩吹っかけてきたしねー。いやぁ、あれはびっくりしたよー。うちの自治区でパトロールしてくれたトリニティの……ええっと正義実現委員会だっけ?あの子達を路地裏で襲おうとしてたから止めに入ったんだけどさ。そのつい一日前だってアーチャーとかいう大人がうちの可愛いかわいいセリカちゃんに粉なんかかけてさー……本当、次会ったら必ず仕留めてやる」

 

「あはは……い、一体何があったかお聞きしても?」

 

チヒロさんの言葉に頷くホシノさんの目は笑っていません。

 

「んー、まぁ。あんまり聞いてて気持ちいい話じゃないんだけどさ」

 

なので恐る恐る聞いてみると───。

 

 

 

「うちの可愛いセリカちゃんをあろうことか夜遅くにナンパしてきたんだよ、アイツ」

 

 

 

そう笑顔で、ですが綺麗な青筋を立ててそう言われました。

 

「詳しく聞いてもいいかな?」

 

「……別にいいけど」

 

 セイバーさんからの問いに言い淀みつつ、ホシノさんは頭をかきました。

ふわりと髪が膨らむようにその線を揺らしながらホシノさんの眉間には皺が寄る。

 

「アーチャーだっけ?その大人がセリカちゃんにちょっかいかけたのは、夜の10時頃。明らかに変な気配なのに姿が見えないから尾行してたらセリカちゃんが働いてる柴関ラーメンに入ってさ」

 

 以前、先生から頂いた報告書にもあった話です。

どうやらホシノさんの話を聞く限り、セリカさんとアーチャーさんの間で問題が発生するより前から霊体化してアビドス自治区に入ったアーチャーさんの気配を偶然見つけた彼女が尾行していた。

 

 なら彼は一体何のために自治区に来ていたのでしょうか?

 

「そこは屋台だから、何してるかは外からでもよく見えたよ。普通に食べて、その後会計して立ちあがろうとしたタイミングでセリカちゃんに喋りかけた……セリカちゃんは大した話じゃないって言ってたけど確か『その耳は本物なのか?』とか、聞いてきて。その後色々話をしてからセリカちゃんの腕を掴もうとしたから私が割って入って……まー、あとはおじさんと追いかけっこって感じかな?」

 

「アーチャーさんはその時何か、たとえば自治区に来た理由とかは?」

 

「『偵察』、とか言ってたかな?なんかマスター……ああ、トキちゃんだっけ?その子が気にしていたから『一応見に来ただけ』とか言い訳してたよー」

 

 話し終えた彼女へハナコちゃんの疑問に投げられますが、これといって詳しい話は分かりません。

アビドス自治区には何か聖杯戦争と関係する物があるのか。

それとも本当にただの偵察だったのか。

真相を知っていそうなのは当人達と、あとは花の魔術師さん(彼女)ぐらい、でしょうか。

 

「どう思う?セイバー」

 

「さて。彼とはそれなりの付き合いがあるけど……どうだろうね。本人に聞くか、より詳しくその時話していた内容と状況を聞いてみないと少女の腕を掴もうとした理由も僕には分からないとしか言えないかな」

 

「なんだ、セイバーは随分とアーチャーについて詳しいんだな。生前からの付き合いか?」

 

「……いや、彼とは前の聖杯戦争でね。今と同じクラスで互いに呼び出された事があったんだよ」

 

 アズサちゃんとセイバーが交わした会話にふいに疑問を持ったのかそう尋ねたミノリさんに、セイバーさんは少し困ったような顔をする。

馴染みがあるとは前に少し聞いていましたが、具体的にどういう関係だったかまでは聞けませんでした。

ただなんとなく、敵とか味方とかそう単純な話ではないんだろうという直感はありました。

なにせ、それだけならそう言えば済む話ですから。

 

「ふぅん。じゃああれとか知ってるの?あの、えと、ホウグ?とか言うの」

 

「……そうだね。僕は彼の宝具を知っているし実際にそれが使われた場所にもいた事があるよ、コハル」

 

 下唇をセイバーさんが軽く噛んだのが一瞬だけ見えました。

隠しておきたい話、というより言いたくなかった事なんでしょうか。

けれど彼は僅かに逡巡してから結局話してくれました。

 

「……彼の宝具はかなり特殊でね」

 

その宝具をセイバーさんが話したがらなかった理由というのも、すぐに分かることに。

私達は理解することになりました。

 

 

 

「その銘は───流星一条(ステラ)

 

 

 

何せそれは、ともすれば私達にとって、いいえ。

私達の目指すハッピーエンドにとってある意味で()()とも呼べる宝具。

 

「アーチャー、いやアーラシュ・カーマンガーという偉大な英雄がその生涯の果てに放ったとされる奇跡の一矢、その伝説(幻想)が形となった物」

 

マーリンさんが言っていた同じ結末という意味もまたこの時になってやっと得心がいきました。

サーヴァントとマスターは触媒という物なしで召喚される場合、大抵はそれぞれと似た性質の方が選ばれるのだという。

 

「和睦の為に、万の軍勢をたった一射で押し留めた大地を割る一撃は、文字通り矢を放った後にその反動でアーチャーはその命を燃やし尽くしたと伝承にある……つまり、それを元にした宝具も正しく逸話を再現する」

 

そして今回トキさんは、自分の命を文字通り賭ける形で聖杯戦争に臨まれた。

 

 

 

「アーチャーの宝具は、一度でも発動すると絶大な威力と引き換えに霊基の消滅を引き起こす物なんだ」

 

 

 

 自己犠牲。

それがお二人に共通する一面なのだと、私達はその時にはっきりと知ったんです。

 

 

 

 

*1
イマジナリー(u‿u໒꒱「こっ、紅茶ちゃん……!?」





1じゃんね☆
なんと!アーチャーの宝具は自爆宝具だったじゃんね!!!!
い、1は知らなかったじゃんね……
FG○で酷使しすぎて絆上がりまくって引退したとか水着クロエちゃんで宝具3連射とかそんなの全然知らないじゃんね……

……というのはさておき、次回というか今日はもう1回か出来たら2回更新するじゃんね☆
なぜってこの作戦会議、めーちゃくちゃ話す事が多いからじゃんね☆
1もバックアップとか元々書いて手元に残してた分を読み直して笑ったじゃんね☆

あ、次の前書きはスパさんとかアーチャーのステータス分も追加したサーヴァントのステータス一覧のリンクをのっける予定じゃんね☆
良かったら、()()()()()()にちょろっとでも追加された分だけでもざっと眺めてみてもらえたら……それはとっても嬉しいじゃんね☆
つまり、いつものそういう事、じゃんね☆

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