阿慈谷ヒフミは聖杯戦争に参加するようです   作:1じゃんね☆

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シロコ先輩、定時連絡が入りました。
……はい、そうですBブラックの仮設事務所からです。
今のでちょうど6件。
あとは……ふふっ、もう。

そうですね、ちょっと肩の力を入れすぎました。
まだお夕飯から時間も経ってませんし

───軽くお茶でも頂きましょうか?




雨はまだ止まない

 

 ぐるりと私達の反応を見て、ミノリ先輩は一つ頷かれました。

まるで得心がいったというような表情をされた彼女は私の、いいえ。

 

 

 

 

 

 

「─── 契約継承(バックフローファンタズム)

 

 

 

 

 

 

 私達の誰もが知らない単語を口にされました。

 

「……という名前らしい。正確には類感性逆流現象、だとかなんとか。まぁ、私もあくまで監督役の奴から聞いた話だが」

 

 セイバーさんの顔を見ればはっきりと分かるのは明らかな動揺。

いえ、セイバーさんだけでなくキャスターも目の光を瞬かせるように点滅させておられます。

私は、そして真向かいにいるモモイちゃんも頷く。

 

 今から聞く話は、恐らくセイバーさん達サーヴァントの方も全く予期していない物なのだと、そう確信して。

 

「あくまでも、()()()()()()()()()()()()()()()()()、というやつらしい。このキヴォトスの住民は多少の多寡はあれどサーヴァントに準ずる神秘とやらを保有しているらしい。サーヴァントの持つ霊基や魔力とそれらが反応してその名の通り逆流現象のような形でスキルの恩恵を、現界中のみだがマスターは受けるのだと」

 

 信じられないと言葉をなくしてるセイバーさんとウイさん達を置いておいてハナコちゃんは疑問を投げかけました。

 

「では、もしかしてミノリさんが拒絶反応が軽かったというのは?」

 

「あぁ。私の場合は被虐の意思というスキルがそれに該当する。『被虐の意思』は魔力に応じて肉体に作用する回復スキル。おかげで魔力が溢れようが拒絶しようが、体内に魔力がある事自体で体力や身体の傷が回復されるっていう寸法さ。もっとも、それでも抑えきれなくて結局君たちの厄介になったわけだけどね」

 

 情けない話だと少し冷めた珈琲を啜りつつそう語るミノリさんに私達もようやく納得がいきます。

何故かミノリさんだけ軽かった拒絶反応の症状。

その理由はスパルタクスさんとの契約を通じて獲得したスキルによってでした。

 

 そうやって考えると、もう一人の理由も分かるかもしれない。

そう思って真剣な眼差しで聞いているモモイちゃんの方をちらっと盗み見ました。

 

「契約継承に該当するのは契約したサーヴァントの持つスキルのうち、ある程度相性がよく、かつ()()()()()()()*1だそうだ。大抵は1つ、多くても2つ程度。要するにサーヴァントが持つスキルの中で親和性がある物を私たちも()()()()()()使()()()という話だ」

 

 モモイちゃんは今のところ拒絶反応の症状を発症していません。

もしそれがキャスターさんのスキルによる恩恵なのだとすればそれはとても()()()()()です。

自分が体感してはっきりと理解しました。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、と。

全身の血管に針を突き刺して通されていくような痛みや内臓が抉り出されていくような感触。

本来魔術回路のない私達の体内に仮想的に作られたパスに耐えきれなくなって身体の内側から燃やされいるような、頭をかち割ってしまいたくなるような激しいそれ。

あんなもの、モモイちゃんが味わって欲しくなんか絶対にありません。

だからもしもスキルによって今も拒絶反応が出てないなら、どのスキルの恩恵なのか調べて今後も症状が出ないようにと思っています。

 

 でも、モモイちゃんは困ったような顔をしつつ悩んでいる様子。

どうやらあまり心当たりがないのかもしれません。

 

「私は相性が良すぎて不要だったのが一つ、スパルタクスの逸話に強く依存していたのが一つ、だから該当したのが『被虐の意思』だけ……さて、二人にも思い当たる節があるんじゃないか?」

 

「わわ、私達、ですか……?」

 

 ミノリ先輩の話を聞きつつ、そんな風にモモイちゃんの事を考えている中で急に話題が振られて少し焦ってしまいました。

とにかく必死にこれまでのことを思い出そうとして。

 

「(あれ……そういえば……)」

 

降ってきたのは一つの疑問、いえ───。

 

 

 

 

 

 

「もしかして『直感』……でしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 そうずっと、この聖杯戦争が始まってから気になってはいました。

妙に勘が冴えたり、考え事をしていても大事なところだとこれを忘れてはいけないと直感する事が度々あったんです。

 

「なるほど。確かめる術はないけれど、恐らくはそうだろうね。流石に魔力放出をヒフミが持っているとは考えにくい」

 

そしてそれは、確かにセイバーさんのスキル欄にもある物でした。

 

「あはは……確かにそれはちょっとですね」

 

 自分の身体からセイバーさんのように魔力を噴き出して、というのはちょっと想像できません。

けれど、自分がこれまで信じたり頼ったりしてきた直感には理由があった。

知らず知らずのうちに彼が助けてくれているみたいだと思うと、それがなんだか嬉しくてはにかんでしまいます。

困った時も悩んだ時も、考える時も、どんな時だって。

たとえ寝室で夜ベッドに寝転がって心細い時でも私は一人じゃなかった。

彼が、彼を通してスキルが傍にいて私を見守ってくれていた。

それを今改めて知って心が温かくなる気がしました。

 

「(……ありがとう、セイバーさん)」

 

『(ははは……どういたしまして)』

 

『(もうっ!そうやってすぐ一人言に割り込んでくるんですから!)』

 

 そんな風に私達が念話でやり取りしているとモモイちゃん達も困惑顔で考え始めていました。

 

「じゃあ、私の場合はなんだろ?一意専心とか?」

 

「モモイよ。お主がその恩恵を受けているのなら遅々として進まんシナリオなる物の筆運びにも幾許かの力になっていよう物だろう」

 

「私のシナリオ進んでないのは聖杯戦争のせいだからノーカン!」

 

 確かにキャスターさんのスキルはかなり特殊な物が多いです。

宝具に付随する形の物がほとんどですから、キャスターさんは揶揄っておられましたがモモイちゃんの言う通り『一意専心』かなと考えていると。

 

 

 

「……モモイのは『機関の鎧』ではないでしょうか?」

 

 

 

 アリスちゃんの小さな呟きが、私達の耳に届きました。

とはいえ当然、その呟きに待ったの声を掛けたのはモモイちゃん本人です。

 

「ちょ、ちょっとアリスー!いくらなんでも私に鎧はついてないよー!」

 

「はい!ですからモモイのそれは魔力の抑制に転用されているとアリスは推測します!」

 

『機関の鎧』。

確かキャスターさんの発明されたという蒸気機関を搭載した鎧自体の効力を示すスキルの筈です。

勿論モモイちゃんにそんな鎧はありませんし、キャスターさんが彼女用の物を作っているなんて話も伺っていません。

 

『(言い忘れていたけど、ヒフミ。キャスターに防刃ベストを作ってくれるよう頼んでおいたよ)』

 

『(あはは……ちょっと静かにしててくださいね、セイバーさん)』

 

 なんで今その話をするんですか。

とりあえずセイバーさんの話を無視する事にしてアリスちゃんの説明を待っていると彼女は両手を腰に当てて胸を張ってから話出してくれました。

 

「キャスターの『機関の鎧』はキャスターが身につけている鎧があってこそです!でもモモイにはありません……ならもし仮に適用されるとしたら何を強化するでしょうか?」

 

 なるほど、と思わず手を叩きそうになりました。

キャスターさんの機関の鎧は身につける鎧があってこそ。

じゃあ、()()()()という想定で柔軟に考えるのも一つの手です。

以前セイバーさんがモノレールステーションを壊した時もそうでしたが、スキルは割と融通と言いますか画一的にそれ以外の使い方ができないってわけではないようですし。

 

「アリスはきっと、モモイの神秘や身体自体を強化しているのではと推理します!今日のアリスは名探偵です!そして、それならモモイが拒絶反応になっていない理由になります!」

 

 だから鎧がないから代わりのものを強化しているというのは確かにしっくり来ます。

しっくり来るんですが、何故でしょう。

違和感を忘れるなと『直感』が騒ぎ立てる気がしたんです。

 

「よ、よく分かんないけど、ミノリ先輩のスキルみたいな事?」

 

「で、できると思いますか、ウイ先輩……?」

 

「わっ!?私に聞くんですか!?……ぃぇぇっと、そっ、そうですね。サーヴァントのスキルや宝具というのは杓子定規な物ではありません。ある程度の融通が利きますから……可能、かもしれないとだけ」 

 

「はいっ!アリス、そんな風に推理しました!」

 

 とはいえ、みなさんは納得した様子です。

そしてそれはスキルを持っておられるキャスターさんもそうでした。

 

「……ふむ。一理あるな」

 

「……なるほど。考えられない話ではありませんね」

 

「はい!ですよね!キャスター!」

 

「……うむ。ならばその話は今は置いておくとしよう。まだ気になる問題はある。ミノリよ、霊基の逆流についてマスターへの影響は?」

 

 そのキャスターさんの疑問に『一切ないそうだ』の二言でミノリさんが返したところで。

 

『なら聞かなくてはいけないのは一つね。貴女達であればライダーに対処できるという話だけれど、それはどうやって?』

 

 調月会長がすっかり外れていた本題へと話をもどされました。それにミノリさんも不適な笑みを浮かべられました。

 

「スパルタクスのスキルに『不屈の意思』というものがある。君達が問題視しているオートマタやライダーのスキルを相手にして私はともかくスパルタクスは精神的な不調を一切受けない。そしてそれはそのスキルの恩恵を受ける()()()()()()()以上、私も恐らくは同じだろう」

 

「数の差を覆す戦い!寡兵を率いて敗色濃い戦場に立つ!これぞ叛逆!圧政者よ見るがいい!スパルタクスが今剣を摂るぞ!」

 

「……というわけでやる気も十二分だ。ライダー戦では私達が前面に出よう。敵の坑道を破壊するなり攻略するというのなら陽動を引き受ける形も出来るな」

 

「二面作戦か……だがあの坑道をどう崩すべきか……」

 

 あんなにどうしようか悩んでいた特殊なスキルやオートマタについても解決の糸口が見えたところで、今度出てくるのは『どうやってライダー陣営と事を構えるか』、もっと簡潔に言えば『どう攻勢に出るか』という問題です。

 

 いずれにせよ、なんとか交渉しようにもその席についてもらえないことには始まりません。

 

「サーヴァントの影響がなくなれば良いという話なら、個人的には坑道は触れなくても良いかもしれない。足を踏み入れるだけでも危険だし、火薬でも飛ばそう物なら内部のガスと反応して酷い事になる」

 

「だが彼処は敵の兵廠を兼ねている可能性が高い。そこを突かれれば相手も反応せざる得ない。それこそ逆に陽動という形で坑道に潜入するのも一つの手だ。踏み入れるのが危険なら、無人機を使うというのもある」

 

「地面の崩落が怖いな。私達でも修復作業となればそれなりに手間だぞ?ゲヘナがそこまで許してくれるかどうかだな」

 

 坑道から侵入するにしてもあの映像から危険性はよく分かりますし、かといって正面から吶喊、というのも坑道で産み出される戦力を放置する事になります。

消耗戦になった時に不利になるのはこちらでしょう。

アズサちゃんが言ったようにオートマタや銃弾の供給を断つという方法をしっかり検討した方がいいでしょうか。

 

 結局、アルさん達のところの攻略をどうしようか悩んでいるとハナコちゃんの両手が乾いた音を鳴らしたのが聞こえました。

 

「ひとまず対ライダー陣営については置いておきましょうか?アズサちゃんがお話ししてくれたみたいに一当て、という形になるかはさておきまだまだ戦略的な意味で彼女達の情報が足りません」

 

 実際、まだ現地にすら赴いていません。

今後のことを考えるとなるべく早く、実際に彼女達のところに行って色々と戦略を練るのも大切かもしれない。

そう考えたところでおずおずとホシノさんが話を切り出されました。

 

「えぇっと話終わった感じでいいのかな?それじゃあちょっと聞かせて欲しいんだけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユウカちゃん。私達が()()()()()()()()の件ってどうなったの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はい?」

 

 一瞬、ひやりと空気が凍てたと感じました。

 

「いやいや、昨日の話だよー。うちでパトロール手伝ってくれてる正義実現委員会の子達経由で連絡したじゃーん。アビドスに『おかしな生徒』が現れてるよーって」

 

けれどそんな雰囲気をやだなーと手をはたくように振るホシノさんに、ユウカちゃんは困惑顔のまま、思い返すようにしながら答えました。

 

「……いえ、トリニティからはもちろん。正義実現委員会からもそういった報告は届いてません。定時報告書はありましたけど、特にそういう話は……」

 

勘違いだろうと、そう言うように。

ホシノさんは軽く笑っておられます。

でもちょうど斜め前にいた私は、見たんです。

 

「えー!?そうなのー?おじさんの勘違いだったら申し訳ないんだけどさ……じゃあ、()()()()()()()()?それも似た内容だったよ」

 

「……いいえ」

 

 次の言葉を聞いて、その瞳にゆらりとほんの一瞬。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アビドスからなにか変わった事があったっていう連絡は、先週の会議からこれまで、私達もトリニティも受け取ってませんよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 剣呑な色が妖しく灯ったのを。

 

 本当に心当たりがないと、ユウカちゃんがそう言った時。

本当に一瞬だけ、ホシノさんの目が揺れたんです。

さっと私達全員を見渡して、私の顔を見て強張るような緊張と動揺が走っていく。

それは目を逸らしていたら気がつかないでしまったと思わせるには十分なぐらい細やかな動き。

もしかしたら私の勘違いだったかもしれません。

 

 でも私は、その姿になんだかとてつもない不安が頭をよぎりました。

何か気になることがありましたか?

たった一言、それを喉の奥から出そうとして。

 

 けれどその前にホシノさんは照れたように頭をかきながら口を開いてしまいました。

 

「そっかそっかー。おじさん、勘違いしてたみたい!いやー、ごめんねー。ちょっとさ、うちで()()()()()()()()()()()()()気になっちゃっててさー……おじさん、敏感すぎたけど、あの子達気を利かせてくれたのかな?」

 

「そういう事でしたか。確かに連絡の際は聖杯戦争に関わりある内容に留めるよう伝えてましたし、不良生徒に関しては対応した数を報告するだけに簡略化してましたから」

 

「いやー、焦った焦ったー!そういえばそういう取り決めだったのにねー、ごめんねユウカちゃん。心配させちゃってさー」

 

 そんな風に話す、ホシノさんの言葉を皮切りに私達の会議は終わりました。

ある程度の収穫もあります。

いくつか今後検討していきたい案も出ました。結論こそ出ませんでしたが、明日からの動きも色々考えられました。

 

けど私は。

 

『(……ヒフミ。君に任せるよ)』

 

『(はい。後ろ、お願いしますね)』

 

 ホシノさんがその会議終わりにちらりと私を見た時の。

あの綺麗なオレンジが射抜くように鋭く私に『警告』を知らせる視線を送ってきたのがどうしても気掛かりでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に泊まっていかれなくて良いんですか?ホシノさん」

 

 

 拠点の入口。

私は会議が終わって、遅くなったからと申し出たところ、すぐに帰らなくてはいけないと言った彼女を見送りにきていました。

本当でしたら引き留めてこのまま拠点に残って頂きたい気持ちがあります。

時間だって遅いですし今は聖杯戦争中。

ホシノさんはとってもお強い方ですけど何かあったらと思うと、我慢なりません。

何より、久しぶりにお会いできたんです。

叶うならもう少し一緒に。

ゆっくりお話とか出来たら、なんて思いが口からころんと出てしまいます。

 

「ごめんよー、ヒフミちゃん。私もそうしたいのは山々なんだけどさー……ちょっとやらなきゃいけない事、残してきちゃったからさ」

 

 でもホシノさんはそう言って困った顔をされました。

久々に小雨が降り出し始めた外に向かって透明な傘を広げて私達のいる暗がりから、明るい人工の明かりが照らす夜のミレニアムの方を見ておられます。

 

 どうしても帰ってやらなくてはいけない事があるのだと、そう言葉に()()()()()に仰っているのが分かりました。

アイコンタクトで送られた()()

ホシノさんはユウカちゃんとの会話の中で何かに気づかれた。

それは嫌な想像だけは幾つか浮かびますが、今この場ではどれが正解だとは断定しきれない。

 

 けど恐らくホシノさんはその事態に対処する為に戻られるんだと私は思って。

だから、情けないけどつい伸ばしそうになってしまっていた手をぐっとこらえました。

 

「でもさ、()()()()()()。色々不安なことはあるけど……ヒフミちゃんの元気な顔見れたのが私は一番だよ」

 

 顔に出したつもりはありませんでした。

でも気づいておられるのでしょう。

ホシノさんは優しい雨音と共に私を労わるようにそう仰られました。

 

「ありがとうございますっ、私もっ!……私もホシノさんに会えて、すっごく嬉しかったです!」

 

 のんびり屋さんでふわふわしてる小柄な先輩。

でもアビドスのみなさんのこともしっかり見ておられるのを、私は知っているつもりです。

そんな彼女は私の気持ちもお見通しのようで。

さりげないその気遣いへのお礼の気持ちもちゃんと込めて私は感謝を伝えました。

 

「……うへへー」

 

 優しく目を細める彼女は、身長は私の方が高いのにとってもお姉さんな感じがします。

包容力、というのでしょうか。

流石3年生としてアビドス高校を引っ張っておられるホシノさんです。

彼女の安心できる雰囲気が私を包んでくれます。

 

「ねぇ、ヒフミちゃん」

 

「はいっ!どうしましたか?」

 

 しとしとと、搬入口の屋根から地面にかけて流れていく雨粒の音に混ざって、柔らかく私の名前が呼ばれる。

そっと掌で包むような、大切に、丁寧に。

温かいお昼の日差し。

陽だまりの中で寝転びながらお昼寝するみたいな、優しい気持ちにさせてくれる名前の呼び方。

そんな風に、ホシノさんのしには慈しむような心配が込められていました。

 

「これから大変なこと、たくさんあると思う。時間制限の話とかさ、流石におじさんも聞いてて辛いぐらい。それを全部乗り越えるって、何も捨てずに全部抱えて歩くのは……うん、とても辛い筈だよ」

 

「あはは……とっても、大変です」

 

「……そうだよね。ねぇ、ヒフミちゃん。ヒフミちゃんは優しい子。本当はおじさんみたいに戦うのだって、人を傷つけるのが得意な子なんかじゃない。だから、そのさ」

 

 心配してくれている。

一つ年上で、出会いはブラックマーケットで、その後は銀行強盗したりとはちゃめちゃで。

暮らしている自治区も通っている学校だって違うけど。

この他校に出来た、強くて優しい私の大事な『友達は、私のことを心配してそれを言おうとしてくれているのに気づきました。

 

 

 

「それでも」

 

 

 

()()()()()

言わせてなんてあげない。

いつも頑張って、一人で無茶しちゃう人だって事は私もよく知ってますし、()()()()からも聞いてます。

それに。

 

「……うん」

 

大好きなこの人にしっかり私の気持ちを伝えたいですから。

 

「それでもハッピーエンドを目指します。だって私がそれを見たいですから。だって私、ハッピーエンドの物語が好きなんです!」

 

 私のやりたい事、目指す事。

それは困難だしもっと分かりやすくて簡単な道もあるでしょう。

でも、それでも。

やり遂げたいと真っ直ぐに伝える。

彼女は困った顔をしつつ、仕方ないなぁとため息を吐いた。

 

「……もうーっ、ほんとさー。ヒフミちゃんは頑張り屋さんでおじさん参っちゃうなぁー」

 

「あはは……ごめんなさい。でも」

 

「んん?なになにー?言ってご覧?おじさんなんでも「私一人じゃなにも出来ませんから」……」

 

 もう一つ。

届けたいのは『覚悟』だけじゃありません。

心配性なこの人にしっかりその気持ちが届くようにと胸を張ります。

今日久々に会った時の顔を覚えているからです。

会議中の真剣な眼差しだって忘れてません。

 

 だから、精一杯背伸びして、ホシノさんみたいに言葉を優しさで包んで。

 

「みんなで歩いていきます。モモイちゃんもミノリさんも、ハナコちゃんも、コハルちゃんも、アズサちゃんも、セイバーさんも。他にもたくさんの人が傍にいてくれるから、だからきっと大丈夫なんです」

 

 ずっと私を心配してくださったこの人少しでも安心させられるように、私はそう言ったんです。

少し冷え始めた雨空から振る音より小さくなくて、でも決して響くほど大きくはなかったその声に、ホシノさんは微笑ってくれました。

 

 

 

「そっか。そうだよね。うん、なら───安心した」

 

 

 

「はいっ!あっ!も、もちろん!ホシノさんの事も頼りにしてますよっ!」

 

「あははー、分かってるよー」

 

 ホシノさんは口元に笑みを浮かべつつ力瘤を作られながら、もう片方の手に持っていた傘を手放した。鉄板で出来た床に小気味いい音が鳴る。

 

「よーしっ!おじさんもヒフミちゃんの為に頑張っちゃうぞー!」

 

 それから彼女は、私のそばに来てそっと、私を包んでくれました。

それからそっと私の髪を撫でてくれる。彼女の掌の温かさは染みるように優しかった。

 

「だからいつでも頼ってね」

 

その言葉に頷いてから、返事をしようとして。

けれどその前にホシノさんは囁くように。

 

……詳しい話はまた後で。朝になっても連絡出来なかったら、アヤネちゃんにお願いしとくから

 

そして誰にも聞かれないように、そう耳元で囁いた。

 

「えと、ホシノさ「よーしっ!」はえっ……?」

 

「それじゃあ、またねー!」

 

そしてすぐに、パッと私の身体を離すと。

さっと傘を拾い上げて駆け出していかれました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしもし?アヤネちゃん?うん、そう。今から帰るからねー……おじさん?だいじょーぶ、だいじょーぶ。迎えはいいから……あ、ヒフミちゃんね。うん、元気だったよー。ただちょっと、しんどそうだったかな?……そうだね、無理させたくないや」

 

「うん、うん。そっちかー、そっちはねー……『やっぱり』当たりだったよ。うん、大当たり、かな?……そう、準備と連絡だけしておいて……うへー、大丈夫だよ。最悪そうなったらどっちも『私』が潰すしさ。いやー大変だー……うへー。全くもう困っちゃうよね。おじさんもちょっと頑張んないと。なにせ」

 

 

 

「───少し賑やかになりそうだからさ

 

 

*1
サーヴァントが所持する保有スキルというのはその生前や死後にその英霊が持っていたとされる技能や特性が形となった物である。したがって中にはその出生や伝承に由来するその個人に依存したスキルも多数存在し、逆に多くの英雄が持つ広く共通した物もある





1じゃんね☆
キリがいいからここまでじゃんね……

今回出てきた契約継承、どっかで見覚えあるなと思ったマスターな読者さんは正解じゃんね☆
あれが元ネタじゃんね☆

ずっとこそこそ直感を強調してたから今日ようやく発表できて良かったじゃんね☆

1話ごとの文字数で望ましいのは?

  • 3000文字〜4000文字
  • 4000文字〜5000文字
  • 6000文字〜7000文字
  • 8000文字〜90000文字
  • 9000文字〜10000文字
  • 10000文字〜12000文字
  • 12000文字〜15000文字
  • 15000文字以上
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