こちら、売買出来ます。またのご利用をお待ちしております。   作:かんざきしおん

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荷揚げ屋

 俺の朝はまぁ早い。

 今日は大工のおっちゃんと約束してた材料運びの日だ。

 着替えて触り心地の悪いタオルで体を拭いて、今日も異世界で生き抜く。

 

 「おぉノア、来たか!」

 「おはようございます。っぁぁ⋯⋯まだ若干肌寒いっすよね」

 「あぁそうだな」

 

 と言う割には60ギリギリのはずだが。

 この爺さんの名前は通称マダ爺。『マダル』だからマダ爺な。

 にしても、春先でタンクトップ1枚で元気に工具を持って既に作業を始めていた。

 早すぎんのよ。元気すぎるだろ。

 

 「ノア、そこ頼むよ」

 「うっす」

 

 長い建築資材を複数担ぎ、マダ爺の指示する場所に置いていく。

 

 「ノア坊は本当体強えよなぁ。ギフト持ちか?」

 「ギフトじゃないんすけどね。体は強えす」

 「字も読めるし話も出来る。是非未来の大工に⋯⋯」

 「なりません」

 

 肩に手を置くマダ爺を追い払っては次々と資材を運ぶ。

 俺には細かい仕事とか向いてねぇし。

 

 「うぅ⋯⋯昼かぁ⋯⋯」

 「ノア坊はメシ食ったか?」

 「まだっす」

 「近くに安くてウメェ食堂があんだよ。行かねぇか?」

 「おぉ、是非」

 

 

 流石に混んでるな。

 歩いて大体10分程した場所にある、食堂アンケグ。

 名前は聞いたことがある。客層に結構冒険者もいるというが、俺は来たことがない。

 なんでかって? そりゃあまぁ⋯⋯アリィ以外の奴らとはあまり馬が合わねえからだな。

 

 どいつもこいつも絵に描いたような男ばかりで、話が合わん。

 

 「ご注文は?」

 「俺はラッキーボアの串焼きだな、ノア坊は?」

 「おすすめはありますか?」

 「そうですね。今日はナック鳥の卵が入ってますから、オーレツなどいかがですか?」

 「おーいいじゃん。じゃあそれで」

 

 従業員が一礼して去っていくと、マダ爺が短く息を吐いた。

 

 「ノア坊⋯⋯オーレツじゃなくてもっと肉を食えよ肉を!」

 「マダ爺はいっつも肉ばっかじゃないっすか」

 「いいんだよそれで。男はそんな物よりも肉だ、肉!」

 

 何か突っ込もうもしていたら既に追加で肉を注文させられていた。

 まぁ胃袋は空いているからいいんだけども。

 

 「ふぅ〜。にしてもノア坊はまだ銅ランクなんだろ?なんでこんな依頼ばっかりやるんだ?」

 「誰もやらない依頼というのも良いですし、別に出世を望んでいませんからねぇ」

 

 まぁ予想はしていた事だが、俺は地球人としての記憶があるからか、あまり出世と聞いていい気分はしない。むしろ殺されたり訳の分からんヘイトを買ったりとむしろマイナスに働くと思うんだ。

 

 「珍しいタイプだな⋯⋯ノア坊は」

 「別にこうして過ごせるから良いじゃないですか。無理しないで、等身大に生きてければ、それが一番ですよ」

 「お待たせしました〜!」

 「ほら、こうしてマダ爺と食事が出来る訳ですし」

 「調子のいいこと言いやがって⋯⋯追加で報酬加えてやるよ」

 「よっしゃ!」

 

 そうしてメシを終え、午後も張り切って依頼へ勤しむ。

 夕方になる前には俺の依頼は無事完了し、マダ爺の元へ達成の報告。

 

 「おう!ありがとな!また頼むわ!」

 「ウッス〜!」

 

 背を向けて手を振り、俺はギルドに依頼達成の報告へと向かう。

 

 

 「お疲れ様でした、ノア」

 「リーファは隈が凄いな」

 「やめてやめて。今日一日で何回食事の誘いを受けたか⋯⋯ハァ、男はなんでああも下手くそなの?色々と」

 

 リーファの言う事はだいぶごもっともである。

 並んでいてちょくちょく聞こえてくるが、色々直球過ぎであり、下心が全く隠せていないのだ。

 

 「視線が落ち過ぎだし、金で釣れると思ってる感じとか、護ってやる!みたいな顔してるんだけど⋯⋯いや好きな人に護ってもらいたい訳で⋯⋯」

 「ハハハ⋯⋯同じ性別として謝るよ」

 「ノアは悪くないんだからいいでしょ」

 「そう言ってもらえると助かるよ」

 「そういえばアイツは? 今日は居ないけど」

 「どうせまた娼館だろ?依頼金のほとんどをぶち込んでる訳だし⋯⋯っと、並んでるしそろそろどくわ」

 「あーそうね。またね」

 

 あんまりに背後からの殺気がやばくて会話どころじゃねぇ。

 軽く手を上げてギルドを後にする。

 そうして歩きながら向かうのは、もうずっと居続けている宿、『安楽』だ。

 

 「あっ、お疲れ様です」

 「お疲れーノアくん!」

 

 カウンターに立っている逞しい印象を持つ彼女はゾネさん。ハキハキしてて色々助かる場面も多い。

 

 「ご飯はすぐ出来るから用がないなら降りてきてねー!」

 「了解です〜」

 

 階段を登って角部屋の一つ手前が俺の部屋⋯⋯まぁもう数年宿にいるから実質もう住んでるも同然だが、鍵を開けて中へ入る。

 長年のせいか、サービスで家具やらなんやらが増えて、ベッドに手窓、衣類の収納なんかも増えている。

 

 「ふぅ〜」

 

 部屋着に着替えたらベッドにダイブ。

 リラックスしまくる長い吐息を終え、天井を見上げる。

 

 まぁこんな感じに過ごしているのが俺、ノアの今世⋯⋯ってわけだ。表向きには──な。

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