ズゴォォン!!
巨大な、そして重量級の一歩。
赤く熱のこもった巨獣が、都市を踏みしめる。
「グオォォン……」
その、黒い巨躯を見上げる、二人。
小柄な少女は、スーツに身を包み、深々と帽子をかぶり、どこか胡散臭く。
うねった茶髪の……まあ、いささか性別の分かりづらい青年は、少女に視線を流す。
「ミツレ様、ニヤニヤしてないで」
「ん~、仕方ないねえ。まあ、あれはマヒトツのとこの子だ。誰のせいで暴れてるかは知らないけど……うん、私には多少どうにかする義務が、」
「御託はいいよ! さっさと倒そう」
「っふ、はいはい」
ミツレ様、そう呼ばれた少女は、紫にぎらついた目をのぞかせる。
「……っは!」
青年はその胸から、光とともに……「それ」を引きぬく。
「神獣の名前は……デマーガ。頑張ってな~、サネミ」
「分かってる」
そしてその手の光は、ハンドベルの形を成し……。彼の服が、ふわりと変化する。……巫女が着るような、白と赤の、それに。
がらん、ごろん。
からん、ころん……。
鳴り響いた音色のなか、ミツレは飛び跳ね、踊り狂う。青年……サネミの周りをくるくると回りながら、ブレイクダンスのような、激しい踊り。
サネミがそのベルを空に掲げれば、光が放たれ……。
「ライラァァァァァァ!!!!」
巨人が、降りたつ。
「デュゥ……!」
巨獣に……デマーガに放たれる一撃。重く硬い拳が、そのツラをひしゃげる。
「キギュァァァ!!!」
「デェァ!!」
甲高い咆哮のデマーガに、低く、響く声の雄たけび。
巨人は、
ウルトラマンは、デマーガの腕をつかみ。次は重く激しい蹴り。怯むその身の下に潜り込み。
「ヘゥァァ!!」
投げ放つ!!
「ギィィァ!!」
「いいねえ、やってるやってる……」
屋上でその様を眺めながら、ミツレはケタケタと笑う。
避難の済んだ町は、営みがなく静かである。デマーガとウルトラマン、その声とぶつかり合いの音が、ただただ響く。
「グギャアア!」
「シュゥワッ!!」
デマーガが、その口から熱線を放つ! クロスした腕で防ぐウルトラマンだが、いささか苦しみの様相。それでも、ウルトラマンは無理矢理駆け出す。
「ディヤ!」
そして熱線覚悟のタックル! 怯むデマーガの頭部に、手刀を叩き込む。
「ぎぃぃ……!」
「グゥゥェア!」
だが、デマーガも簡単には怯まない。尻尾の反撃にフッ飛ばされたウルトラマンはビルに突撃、その胸のランプが、赤く点滅し始める。
ウルトラマンの中、精神の世界にミツレが現れ、苦悶のサネミに声をかける。
『あーあ、儀式に慣れてないって感じだねえ』
『わざわざ茶々入れに来たの?』
『おいおいおォい……そんな邪険にするかね』
『戦ってるんだから静かに見ててよね……』
中でそんな軽口を叩きつつも、ウルトラマンの苦境は変わらない。
……だが、デマーガが消耗しているのも事実だ。ウルトラマンは立ち上がり、その手を下に伸ばし交差する。
「デゥァ!!」
背面に飛び退きながら、L字に組む腕。放たれた光線が、デマーガの体を捉える。
「ギィアアアァァ!!」
直撃、光がスパークし、そして、
爆発!!
デマーガの中の熱が、熱波として放たれ……。
戦いの済んだウルトラマンは、両手を伸ばし空へと飛び上がる。
「デェゥワッシャ!」
町に残るのは、炎の弾ける音を除けば……静寂である。
第一話「夜と、神事」
熔鉄神獣デマーガ
酒神獣アルスター
登場
けたたましく通知音が鳴り響く。
少し暗い部屋の中、あまたのモニター達が、その存在を警告する。
「反応あり、海中です」
「どこのッスか!?」
「兵庫、尼崎近くのだよ!」
「ンのまえの、何でしたっけ? デマーガ? あいつも兵庫だったっスよね。何があるってんですかね……!」
「さあな、とにかく、今は分析が必要……動かせそう?」
「出撃準備ならいつでもオッケーっス」
指で丸を作った女性は、ヘルメットをもって扉の前へ。
地球防衛組織「
「……連絡が入った」
指令の、寡黙な男が口を開く。
「この件は、一切の対応を必要としない。一般市民の避難の際に問題が発生したときのみ、限定的な対応を許可する。これは会長からの通達だ」
「……は?」
「ウゲ、この前の奴と同じっスね……デマーガん時と……」
「一体何が、」
「これ以上の連絡はない。前回同様追及はするな……とのことだ。あと……怪獣の名前は、アルスターだそうだ」
同時に、中継映像に映る怪獣の姿。海の中でとどまっているのは、ヒトデをつなげ合わせたかのような異形の怪獣。
つなぎ目にあたる部分には、兎のような、コウモリのような……そんな頭がある。
「……失礼します」
「え、ちょ、ドコ行くんスか!」
呼び止められながらも、止まることなく一人の青年が立ち去る。ヒロネ・カザト……憤りの残った目で、彼は動き始めた。
「ま、待って、自分も行くっす!」
「オリカワ隊員は待機だ」
「なんでっスか!」
「君はパイロットだからだ。……正直、この判断に私も納得しているわけではない。二回目ともなれば、なおのこと」
「……元秘密宇宙情報部門のエースは泳がせるってことっスか」
「そうだな。……まあ、尻尾切りになっては、さすがにかわいそうだ。私が最後は責任を負わねばな。……いや、どっちにせよ監督責任か」
秘密宇宙情報部門……ACHE隊のなかでも、宇宙からの存在を扱う、秘匿性の高い部隊である。
情報収集と、扱いなら自信があるわけだ。……資料室で、ひとまずつながりそうな足掛かりを探す。とりあえずは、リスクの少ない行動から……。
最終的には、会長室への侵入も視野か……そんなことを考えながら本をめくった時、ふと、
「……! 誰だッ!!」
背後に感じた『異様さ』。本を捨て銃を向け……冷や汗を額に流しながら、カザトは気配の正体へ視線を向け。
「……会、長?」
「学校で習わんのかったかのォ。本は、だァ~~じにせんといかんぞ?」
普通の、まあ、少し毛髪がこんもりしている、それぐらいで、風貌はいたって普通の女性。物言いは古臭いが、服装は現代的だ。
彼女こそ、ACHE隊の会長フタクラ・シュウ。
言ってみれば、「怪獣を前に何もするな」と言い出した張本人。
「……会長」
「アルスターの件なら何も聞く気はないぞい」
「なぜです」
「何も聞く気はないと言うておろうが」
「……。そうですか」
「気にせず本を読む胆力は評価するがのう……」
「暴力や権力で訴えてみますか。実際、俺はいま命令違反の最中ですからね」
「野蛮だのォ。まあ、せいぜい頑張るとよいぞ」
「ありがとうございます」
相変わらず、怪しい空気を零しながら、フタクラ会長は踵を返す。そして振り返り、ひとこと。
「ヒントをやるなら、……そうだの、儀式を邪魔立てするな、そういう話じゃ」
「儀式、何を…………」
追おう、という気は起きなかった。彼女が姿を消した時点で、垂れていただけの汗がどわっと、吹き出し始めたから。
本は大事に、正論だ。
彼は本を閉じ、零れ落ちそうな汗をぬぐった。
儀式。
たしかに、儀式らしい。
相撲がそうであるように、巨人と怪獣の取っ組み合いは、何かに奉納する物のように感じた。
「君が、カガワ・サネミか?」
「……僕に、何か?」
カザトは、兵庫県尼崎の某所にいた。小さな、ボロボロの神社……。夕陽に照らされるそこは、いちおう最低限の手入れはされているらしきもので。
声をかけられ、振り返るサネミ。その視線の訝しみは鋭い。
「カガワ・サネミ。都内某所の神社の家系で、」
「要件を先に言ってください」
「……なんていうか、見た目でふんわりした感じだと思ったけど、違うんだな」
「要件を言ってくださいってば……」
「君、ウルトラマンなんだろ」
「……。は?」
「俺はこういう情報の収集には自信があってさ。まあ、あえてこのACHE隊の服で来た辺りで…………意図は察してもらえるかなと思うけど」
サネミはカザトの顔を見て、うつむいて、また顔を見て。ため息ののちに言葉を続ける。
「飼い殺される気はないからね」
「おい待て何処に行く」
「買い物。あ、あんまり人の多いところで変なこと言わないでくださいよ。騒ぎになるのはACHEのひとも嫌でしょ」
「……胆力あるな、君」
少し感心した様子で、カザトはサネミを追う。
「あそこで生活してるわけ?」
「拠点ですよ。知ってんでしょ都内某所の神社住みなのは」
「いやそうだけどさァ……。いちおうさ、仲間に引き入れたいって言いに来たんだから! ほら、アイスをブレイクしたいわけで」
「仲間にって……どうせ監視対象でしょうに」
カザトだけに聞こえるように、「それか戦術兵器」と付け加えながら、サネミは大根をかごに入れる。
尼崎中央商店街は、怪獣の一件がありながらもにぎやかだ。怪獣騒ぎも、別に一度や二度ではない。世界自体が慣れつつあるのだ。
「ひねくれてんな君も」
「いやァ? みんなそう思う気がしますけどね」
「まあ、俺が胡散臭いのは認めるよ?」
「あなたが例えにこやかでカワイイ女の子でも、僕はあなたがたの下に入ったりはしませんからね!」
「はいはい……。でも、」
と、そのとき。瓦礫が崩れ、突如降り注ぐ。点検の行き届いていない場所だったというところか。
それはカザトの頭上に……。
「お兄さん危ない!!」
「うおッ!!」
避けきれない、カザトがそう感じた瞬間、彼はサネミに突き飛ばされていた。
「いだだだだ!!」
「ってて、っちょ、大丈夫か!?」
「まあ、死ぬような量じゃないですし。……幼稚なんだから」
「幼稚?」
「ああ……お兄さんのことじゃないです」
のそのそ立ち上がるサネミをカザトが手助けする。……まさか、こんな形で助けられるとは思わず、戸惑いながら、だが。
「ヒロネ・カザト。名乗らなかったのは失礼だったな」
「人の経歴いきなり読み上げようとする方が失礼なので、大丈夫です」
「……。」
結構毒舌だな、と思いつつも言い返しようのない話だ。居心地悪そうに、彼はサネミの横、先ほどと同じポジションに戻るのであった。
「まあ、正直監視や利用という側面は否めないだろうな」
「でしょうねえ」
「だが……現状、お前が正体とまでわかっているのは、俺だけなんだ。……あと、多分、会長」
「じゃあ、会長に言われて、ですか」
「いいや、俺の独断さ。俺は、……なんだ!?」
話の流れを切るのは、突如落ちる植木鉢。それをとっさにキャッチし……。会話は途切れたが、カザトは軌道修正に戻る。
「……で、俺はむしろ今は動くなって言われてんの。今きみに話しかけてるのも独断なんだよ」
「え、そういうの大丈夫なんです?」
「わからん。一件が終わったらクビかもな。抱えてるヒミツが多すぎるし、消されたりして」
「そ……んなリスクを冒してまで……」
「……」
「……僕をおちょくりに来たんですか?」
「おちょくりに来たと思ってたわけ!?」
「冗談ですよ」
淡々と毒を吐く、癖のあるキャラクターだ。……まあ、相手が相手、状況が状況。触れ合い方を間違えたかなと、そんなことを考えて、
そう、考えながら歩いていたのが祟ったか。
「うおおお!?」
「あ。」
「っでェ!!」
思いっきり、転んでしまった。
流石に情報部の出とはいえ、防衛組織の最前線で働く人間だ。完璧な受け身を取りつつ、気のゆるみかもな……などと考え。
「大丈夫です?」
「……あ、ああ」
こうして顔を向けられると、サネミの顔の綺麗さに気づく。
中性的なその様相は……何処か、妖しさもある。そこで思い起こされるのは『儀式』という、会長の言葉選びである。
「普段はこんなドジじゃあないんだがな」
「ええ、まあ、わかりますよ」
「ほんとか? 俺ァな……」
「いや、心当たりがあるんですよ。……まあ、そんなことは良いんです。なぜ、そんな危険なことを」
「情に訴えるための嘘だとしたら?」
「つく意味あるんです? 『俺の後ろ盾無くなるかも』なんて内容の嘘」
「ま、確かにね」
土ぼこりを払いながら、彼は続ける。
「単純に……『指をくわえて見てろ』、ってのが気に入らないんだ。人々が苦しまない、大丈夫だ、余計な手出しをしてはいけない……そういう理由があるなら、知りたいんだよ」
「……その言い方、怪獣とかが?」
「…………ま、ウルトラマンならいいか」
「あのですね、周りに人が居ないからって、」
「いま、ここに怪獣が近づいている。避難勧告は、未だ出ていない。曰く、『儀式のため手出しをするな』」
サネミは少し、眼を見開いて。
「……ま、わざわざ防衛隊にいるような人だし、そりゃあ志は高いか。ちょっと、ビックリしましたけど。……それに、儀式か」
「ウルトラマンと、怪獣の戦いを……相撲みたいな儀式になぞらえた、のかなってさ」
「それ、結構核心かもしれません。……その、」
サネミが言葉を選び始めたとき、突如避難勧告が鳴り響く。人々が慌て始める、その姿の先。……港の沖に怪獣アルスターが現れる。
「……!」
「出やがった……! 隠し切れなくなってから、避難勧告か? 何が意図なんだ……!!」
「……、なんのつもりだ!」
「ちょ、なんだ? ウルトラマンには……」
「きまぐれなんだ彼女は……!」
突如駆け出すサネミ、それを追うカザト。走り抜け、向かった先は、サネミの拠点である、小さな神社であった。
「ちょっと、ミツレ様!」
「は? みつ、何?」
「ミツレ様、姿出して。は? いいから早くしてよ!!」
虚空に声を上げたサネミ。……その前に、風と煙が舞い。
カザトの一瞬のよそ見の後、視線を戻せば、『彼女』はそこに居た。
「奴は、オオモノヌシのとこのやつだろー。私にどうこうする責はない」
「君になくても僕にはある。ACHE隊は、それを予期して部隊を出さなかったんだとさ。……つまり、儀式の」
「御託はいいからさー、」
「それはこっちのセリフ!!」
「待て待て待て、何を喧嘩してんだ?」
止めに入ったカザトを、ミツレが一瞥する。帽子の下からのぞかせた視線。サネミは特に恐れることもなく、彼女の顔を掴み自分に向かせる。
「こいつは誰だみたいな顔しないで。あの幼稚な邪魔、さすがに気づくから」
「ちぇー」
「……え? 俺もしかしてあんたのせいで転んだりしたわけ?」
「……そーだ。 サネミをもっていかせるつもりはない。こいつには、」
「いいから、僕をライラにして。神々の使い全体が苛立ってるんでしょ? 誰の使いとか関係なく、治めなきゃいけないと思うんだけど!」
「あーあー、分かった分かった。いいよ、ウルトラマンにしてあげる」
「っていうか、僕の意思でなれるようにしてよ。いちいちお伺い立てなきゃいけないの、めんどくさいし!」
「でもなァ……」
「じゃないと今後口きいてあげないから!!」
まるで小学生のようなやり取りである。カザトは戸惑いつつも、呆れムードである。
「え? え〜? でもでも、口聞けんくなったら、困るのはサネミだし。私の力がなきゃ、ひとを守れないんわけで〜、」
「良いって言ったら?」
「それは……っ、ああ、もうわかった、わかったよ!」
「ちょ、そろそろアルスター上陸するぜ? 結論早く出してくれって!」
「僕の意思で変身できるようになる。そう言うことだよね」
「その話はあ〜と! ほら!」
ミツレが指をはじくと同時に、サネミが胸から『ウルトラハンドベル』を取り出す。同時に、服は一瞬で巫女のようなそれに。背後で踊り狂うミツレをよそに、サネミをベルを振る。
がらんごろん、からんころん。
鐘の音を響かせ、掲げ! グリップ上部のスイッチを押せば、ベルのパーツが展開し、閉じた目のような装飾が現れる。
「ライラァァァァァァ!!!!」
「デュゥゥァ!!」
「キィャアアア!!」
金切り音のような方向を上げる怪獣アルスターに、ウルトラマンは、ウルトラマンライラは蹴りを浴びせた。
夜の港で、ライラと怪獣は向顔。
「まいーや。やるならやっちゃえ。頑張れサネミ〜」
「アルスターは……あいつ何処目指してんだ?」
「酒造だろうな。陸を進んだ先……伊丹は酒造が多いし」
「……なに?」
ライラを振り払いながら進むアルスター。その様を、ミツレとカザトは眺めていた。
「奴はオオモノヌシの……酒の神のとこの子。気が立って暴れてても、やることは酒を飲むか生み出すか」
「あんた、やっぱ神様なのか」
「じゃなかったらなにさ。ミツレヒメ、そう呼ばれてる。……地味なせいか記紀には書かれてないけどねえ」
「……サネミは、あんたを祭る神社のとこの?」
「そういうこと〜!」
アルスターの吹き出すアルコール霧が、着火。ライラの体を焼く。
「っぐ、デェェゥァ、」
「おいおい大丈夫かよウルトラマン……デマーガの時といい、火に縁があり過ぎじゃねえ?」
「まあ、あれでやられるほどヤワじゃないよ、サネミも」
「そうか。……あんた、なんで渋ったんだ? 日本の神様なら、人間を邪険に扱うってわけじゃないだろ」
「私にも立場ってもんがあ〜るの。デマーガのとこの上司は、かかわりが深いけど……あいつのはなァ」
「デェァ!!」
炎を気合いで耐えながら、ライラは拳を浴びせ続ける。怯んだ一瞬を逃さずつかみかかり……。持ち上げる!
「ダァァ!!」
「キィィィ!!」
海面に叩きつけられアルコールを吹き出すアルスター。発火する敵から離れつつ、ライラは一瞬潜って消化。起き上がる敵に、向き直った。
「オオモノヌシ……。って言ってたな。デマーガのとこの神様とは何が違う?」
「キミには関係ないことだよ」
「あっそう。……だが、俺からも頼みたいね。あいつの判断で変身できないのは不便だろ」
「えー? あの子を捕まえて好き勝手したいだけじゃんね」
やはり言われるか、苦い顔のカザトをよそに、ライラとアルスターの戦いは大詰めにあった。
「キィィァァァァ!!」
「ッグ、」
閃光を放ちながら、燃える体をぶつけてくるアルスターにライラは水をかける。気化したアルコールの発火で結局炎は免れないわけだが。
「デァァ!!」
「キォォ……!」
今一度肩をぶつけ、怪獣をさらに沖の方へとぶん投げる、ライラ。……避難はおおむね済んだが、それでも。
『街を燃やされたら……たまったもんじゃないしねッ』
放たれ続ける火炎に体力をすり減らし、胸のカラータイマーが鳴っても、どんどんと沖に追い込み、そして。
「……サネミ、あいつ」
「へっへへへ、あの子らしーぃ」
「シェゥァ……!」
両腕を下に伸ばし、クロス。エネルギーの通う両手を構え、バックステップと同時にL字に組み、放つ!
「デァァーーーーッッッ!!!」
必殺の光線、シャドーストリーク。
そのエネルギーの奔流すべてをアルスターの体が受け止め……デマーガと同じく、爆散。
守られた街へ振り返り、ライラは頷く。
「デェゥワッシャ!」
そして、空へ。
「……お疲れ様」
「どうも。……理由なんだけど、さっき言った通り、神様の力と神様の眷属の戦いだから、……だから、手出しをするなって、そう言ったんだとおもう。君の上司がなんでそーいう事情を知ってるかはわかんないけど」
「……そう、だよな、やっぱ」
「僕としちゃ手出しをしてくれたほうがいいんだけどね。まあ、いいや。そう言うことだから、とにかく勧誘は蹴ることになるよ。じゃ」
「あ、待て!」
「……何?」
「俺はこう見えて、情報の秘匿とかを仕事にしてきた。人々の混乱を、防ぐような。…………だから、手伝うよ。手始めに監視カメラの映像に工作でもする。多少神様のサポートとかあるかもだけど、気まぐれだろ?」
「それは……そっか、ありがとう」
少し笑んで、サネミはその場をあとにした。
後ろについてくるミツレの頭に軽いチョップを乗せると、何かを話しながら、去っていく。
「お主、宇宙人達の情報に触れる最前線じゃろ。よく神々とかを信じたのう」
「異星人たちは結構……地球人とは離れまくった生態をしています。神々も、人間より強くて、人間が明かせないロジックを持った、それだけの生命体とも言えるでしょう」
「……かっかっか!! なるほど面白いわ。そうかそうか……確かに、そうじゃの! うむ。お主には教えてみて正解だったかもな」
パタンと本を閉じて、本棚にしまって。
フタクラはカザトの一瞥に視線を合わせると、ニヤリと笑む。
「ウルトラマンについては、秘密にしておこうかの。お主と、我だけのな」
「……ライラ、ウルトラマンライラ。そう呼んでいました。神々の力であるなら、前例があるのでしょう……ウルトラマンにも」
「ほーぉ、いいのう、なかなかイケてる名前じゃ。ウルトラマンライラ……。うむ、それで登録させておこう」
立ち去るその背を見送り、また、カザトは自らの汗が溢れるのを感じた。
突如届いた通信は、異星人「レヴティン人」のものであった。
要求するのは、カガワ・サネミの身柄。
渡さねば、総攻撃を始めると言う!
言い渡された拉致にも等しい任務を前に、どうするカザト!
次回、「撃て、侵略者」