呪われたコールサイン・G13   作:山葵左門

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Mission1 グリッド132強襲

G(ガンズ)13 マース!

これより貴様に作戦を伝達する!

 

噂によると貴様は栄えあるコールサインを手に入れ浮かれ調子になっているそうだな。出撃経験及び戦闘技術も幼い赤子である貴様がのうのうとしていられるのは今日までだ。

 

今回、我らレッドガンはルビコン解放戦線が占拠するグリッド132を襲撃することを決定した。ここは要所ではないが、後々調査領域を広げる上で役立つこととなる。推定戦力はボーズ製MT。本来ならば独立傭兵に依頼するような雑用だが貴様のような赤子にはちょうどいい内容だ。

 

先輩として一つ忠告しておくがレッドガンに赤子の居場所はないぞ。荷物を放り出される前に自らの足で立てることを証明してみせろ!

奮闘を期待する!

 

  *  *  *

 

 G6レッドによるブリーフィングは以上のようだ。この俺を赤子とは言ってくれる。ベイラムMT部隊に所属され数年、ようやくコールサインまでこぎ着けたのだ。赤子どころかG13がエース機であることを示してみせるぜ。

 

  *  *  *

 

 ベイラムグループ専属AC部隊レッドガン。そのMT部隊にマースという自惚れ屋がいた。過剰すぎる自信と大口はベイラム社内でも有名だが、実践での成績はまずまず。悪くはないが良くもないと言った評価の男である。そんな未熟な男マースは、ひょんなことからG13のコールサインを手に入れることとなった。一カ月前、レッドガンの食堂でMT乗りの悪友ネマンと話していたときのことである。

 

「G13のコールサインの噂、知っているか」

 

 突然ネマンがそんなことを話し出した。

 G13の噂だって?レッドガンの一般隊員なら誰でも知っていることだ。マースも当然知っていた。

 コールサインG13をつけたパイロットは半月を待たずして戦死する。そんな迷信だ。

 

「何でもアーキバスに対抗するための兵力増強として新しいAC乗り候補を探しているそうだが…問題はコールサインがG13っていう点だ。俺はコールサインは欲しいけどよ、G13だけは勘弁だぜ」

 

「なんだと?」

 

 他愛のない会話だったが、マースは情けない台詞に不満を感じた。

 

「俺たちは天下のレッドガン部隊だぞ。そんな下らねえ迷信にいちいち左右されてんじゃねえ」

 

「けどよ、風水上よくないってG3の五花海さんも言ってんだ。あのナンバーは呪われてんだよ」

 

「みっともねえこと言ってんじゃねえ!」

 

 マースの声はレッドガン食堂の最奥まで響く。

 

「俺はG13だろうが乗ってやる。なんならそのコールサインのままエースになってみせるぜ。ACさえ乗れればアーキバスだろうがルビコン解放戦線だろうが捻り潰してやれるんだ」

 

「相変わらず自信過剰…っと!?」

 

 ネマンが突如、口を噤んだ。マースは自分の威圧感がそうさせたと勝手に解釈した。

 

「いいか、俺はMT乗りで終わるつもりはねえ。いずれはあのミシガン総長も越えてみせるぜ。ベイラムに”歩く地獄”は二つあったってな、ルビコン中に轟かせてやる」

 

「ほう、イグアスに負けず劣らずの減らず口だな、マース。舌を回す努力はしてきたと見える。もののついでだ、貴様の地獄とやらも見せてもらおうか!」

 

「ああ、いいぜ。ACさえ乗れればな…って」

 

 気付けば話していたのはネマンではなかった。背後から聞き馴染みのある声が飛んでいる。聞き馴染みがあるといっても怒号であるが。

 

「ミ、ミシガン総長…」

 

 G1ミシガン。木星戦争の英雄にしてレッドガンのトップ。徹底的に容赦のない罵倒と訓練はレッドガンでも恐れられていた。たが、その実力は本物。陰口や愚痴こそ溢すもののレッドガン部隊の大半はミシガンのカリスマに当てられた者たちだった。マースにとっても例外ではない。その姿には畏敬の念を抱いている。

 突如現れた歩く地獄にマースは一瞬口ごもった。

 

「どうした。続けてみせろ」

 

 マースの様子にミシガンはじっと睨みを利かせた。視線を逸らすようにネマンを見詰めれば直立不動で敬礼した状態で固まっている。情けない姿だ。負けん気のあるマースは、ああはならんぞ、と思い、腕を後ろに組みながら強気に宣言した。

 

「俺がG13のコールサインを取った暁には、ミシガン総長にも並ぶ実績を…いや、違う。越える実績を打ち出してみせますッ!」

 

 マースは自分で言ったあと、震えた。半ば勢いでとんでもないことを宣言したのである。マースは殴られることを覚悟したが、ミシガンはゆっくりとマースの瞳を覗いた。そして告げる。

 

「食事は済んでいるな。貴様の午後訓練は特別メニューだ。すぐに支度を始めろ。貴様に地獄を見せてやる」

 

 午後の特別メニューはレッドガンに新しく支給されたACのテスト運転だった。マースもACの訓練はシミュレータで何度かこなしていたが、実際に乗るとまた感覚が異なる。数々の罵倒を受けながらもマースは操縦をこなしていく。マースの集中力がズタボロになり、腕も痙攣してきたころ、ミシガンが訓練の終わりを言い渡した。

 

「レッドガン部隊のおまけ以下である貴様も鍛えればそれなりに動かせることが分かった。明日は今日の十倍鍛えてやる。訓練中に死にたくなければ今日は早めに休んでおけ!」

 

 マースの身体は重く、今にも倒れそうではあったが、要はAC乗りとしてミシガンに認められたということだ。心には満足感があった。廊下の隅で小さくガッツポーズをとると、すぐさまネマンに自慢をしに行くのだった。

 それからというもの、日々の訓練もACの操縦に変わった。訓練自体は十倍増しでキツくなったが、AC乗りとして十分な成長も感じられた。そして、ACの訓練を始めてから一か月後、ついにミシガンからコールサインを授与されることとなる。ミシガンからの最終的なACの操縦評価は”歩く弾除け”。マースにとって複雑な思いだったが。

 

 だがこうして、偶然ではあるが、マースは自らの手でコールサインG13を勝ち取ったのである。

 

  *  *  *

 

「所属不明の機影を確認!」

 

 グリッド132に着いたマースを出迎えたのはボーズ製の二脚MTと武装付きヘリコプター。ブリーフィング通り大した相手ではないが足場が悪い。グリッドは複雑な構造物同士が絡み合ってできたメガストラクチャーだ。死角に隠れ、目視で確認できない敵もいるだろう。レーダーで敵の位置を確認する必要がある。

 

「っ、未確認AC…あれは企業のACか!?」

 

「肩のエンブレムを見ろ!ベイラムの…レッドガンだ!」

 

 オープン回線からルビコン解放戦線の動揺が伝わる。レッドガンはアーキバスのヴェスパーと同じく恐怖の対象だった。

 

「G13が死神の番号(ナンバー)であることを教えてやる」

 

 マースの機体は腕部に装甲を追加した中量二脚型AC。機体名はクレイフィッシュだ。武装はアサルトライフルにパルスブレード、4連装ミサイル。MTを狩るには十分な武装である。

 相手のヘリが編隊を組み、5機で一斉に機関砲を放つ。だが、所詮は対AC用の武器ではない。装甲に阻まれ跳弾した。

 

「お返しするぜ、10倍でなッ!」

 

 マースは敵が有効打を与えられないと解ると調子に乗った。景気良くアサルトライフルをばらまく。

 

「うわあああ…! ……あれ!?」

 

 大してロックもせずに撃った弾はヘリを素通りし、グリッドの壁の染みとなった。ルビコン解放戦線はその様子を見て動きを変える。

 

「待て、こいつ大したAC乗りじゃないぞ!」

 

「同士よ、諦めるな。レッドガンにもハズレはあるらしい。勝てるぞ、攻撃を集中するんだ!」

 

 オープン回線からムカつく音声がとんできた。マースは歯ぎしりをしながらアサルトライフルを再び乱射するが当たらない。ロックが不十分なのだ。

 

「クソ、ちょこまかと雑魚どもが! どうせてめえらの攻撃なんて避ける価値もない! とっとと死にやがれ!」

 

 マースは被弾を気にせず今度は背中のミサイルで解放戦線へ攻撃を畳み掛ける。だが解放戦線の攻撃は少しずつクレイフィッシュのACSに負荷を与えていた。マシンガンを搭載した二脚MT二機が攻撃を集中したところで、スタッガー状態に陥る。

 

「なんだこれはっ、機体が動かねえ!」

 

 そこにグレネードキャノンがとんできた。建造物の影に隠れ、密かにチャンスを狙っていた二脚MTがいたのだ。

 マースは吹っ飛ばされ、ACクレイフィッシュと共にグリッドの下層へと落ちていく……。

 マースの中で何かが走馬灯のように過る。G13の呪いの話だ。マースもまたこのまま奈落に落ちて終わってしまうのだろうか。

 

「うおおおおお!」

 

 マースは雄叫びをあげながら必死にブースターをふかす。この程度の敵を倒せなければコールサインなどもらった意味がない。このまま死ねばレッドガン部隊の笑い者だ。それだけは死んでも嫌である。

 機体のジェネレータからEN容量切れのアラートがなった。再充填されるまでは時間がかかる。マースはぎりぎりで近くの構造物に飛び付き、機体を一旦停止させた。舌打ちをしながらも大人しく充填させるのを待つ。

 幸いにしてその時間がマースの頭を冷やしてくれた。上層にいる解放戦線の機体数と位置を見定める。

 

「射撃がダメなら近づいてぶった斬るしかねえ」

 

 よくよく見れば二脚MTの中には盾を持った機体が混じっている。先ほどアサルトライフルで撃っても効果が薄かったのはそれが理由かもしれない。

 

「いくぜ、クレイフィッシュ…俺たちの戦いは始まったばかりだ」

 

 左腕に装備しているパルスブレードを展開した。バルス特有の透明な輝きが空間を満たしていく。

 マースは飛んだ。目的は先ほどのグレネードを放った二脚MT。火力でいえばあの機体が侮れない。パルスブレードを目の前に構え、クイックブーストで突撃したのだった…。

 

  *  *  *

 

 気が付くと戦闘は終わっていた。周りには無数のMTの残骸。アサルトライフルは弾切れを起こし、機体も大きく損傷を受けていた。しかし、マースは勝利したのだ。

 

「へ、へへ、やればできるんだ…!」

 

 自然と笑みがこぼれる。ACを使っての初めての戦闘。初めての死闘。一人でこなせたことに達成感を感じる。

 

 ーーできる。俺はG13としてやっていける!

 

 マースは自信をもってレッドガン部隊の本拠地に帰投する。AC用のハッチからG6レッドが出迎えてくれた。

 

「MT相手に時間が掛かりすぎだ。もう少しで出撃するところだったぞ。……だがよく完遂した」

 

 激励のような言葉にマースの涙腺が緩む。だが、涙は決して流さない。レッドガンにそんなものは相応しくない。マースはもうレッドガンのG13なのだ。

 こうしてマースは初ミッションを終え、正式にG13マースとしてレッドガンとして認められた。

 

 後にマースの戦闘ログを見たミシガンから怒号を飛ばされることとなるがそれはまた別のお話である。

 

 

Mission1 complete

 

 

 

 




※オリジナルACの装備・武装、キャラクター設定などを以下に補足します。
 
G13 マース(Maas)
AC/ クレイフィッシュ (crayfish)
右腕武器:RF-024 TURNER(アサルトライフル)
左腕武器:HI-32:BU-TT/A(パルスブレード)
右肩武器:BML-G1/P20MLT-04(ミサイル)
左肩武器:ー
頭部  :HD-011 MELANDER
コア  :BD-011 MELANDER
腕部  :DF-AR-09 TIAN-LAO
脚部  :LG-011 MELANDER
ブースタ:BST-G2/P04
FCS  :FC-006 ABBOT
ジェネレータ:DF-GN-02 LING-TAI
コア拡張機能:ー

・AC適正にはあまり恵まれない本作品の主人公。あまり強くありません。名前はフランス、ベルギー、オランダを流れるマース川が由来です。
・AC:クレイフィッシュはザリガニの意味。(レッドガンはエンブレムが生物モチーフのため、マースはザリガニをモチーフとしています。G6がヤドカリなので近い実力としてザリガニにしています)
・機体構成はメランダー一式に腕部を天牢です。武装はG13 レイヴン/テンダーフットと同様。ただし、腕部の近接武器適正が68のためパルスブレードを振るには適していません。ジェネレータも霊台のため、非常に動かしづらいです。総じてチグハグな機体をベイラムから提供された設定です。
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