呪われたコールサイン・G13   作:山葵左門

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Mission2 輸送ヘリ護衛

G(ガンズ)13マースに伝達!

 

これはベイラム系列企業大豊からの依頼だ。

先の任務を達成したことで随分と舞い上がっているようだが、貴様が赤子であることは変わっていない。気を引き締めて傾聴せよ。

 

作戦地点はベリウス北西ベイエリア。大豊がルビコン解放戦線の要衝"壁"を攻略するため、拠点設営を行っている場所だ。ベイエリアは本部と離れた距離にある上、複雑な地形のため慢性的な物資不足に苛まれている。加えて、直近ではルビコン解放戦線が補給物資を狙い襲撃を繰り返しているとの報告が上がった。

 

そこで我々は補給用輸送ヘリを北西ベイエリアまで護衛する。敵戦力はボーズ製MTとの情報を得ているが、数は未知数だ。護衛任務であることも考慮し、今回はMTも同行させる。

 

壁を攻略するための重要な足がかりだ。

G13マース!確実な遂行を期待する!

 

  *  *  *

 

 まだ赤子扱いかよ。俺はもうレッドガンのG13なんだぜ。MTが何体来ようと関係ねえ。確かに護衛ってのは性に合わないが、わざわざMTまで同行させるとはな。随分と心配性なこった。仕方ねえ…MT連中にこのG13の実力を見せつけてやるか。

 

  *  *  *

 

 マースは慢心していた。先の任務を達成したことで有頂天になっていたのである。慢心は常に敵であるとミシガンに教わっていたのにも関わらずである。

 

「今回はお前も来るのか、ネマン」

 

 レッドガン食堂で出会ったネマンにマースは話しかけた。

 

「上からのお達しだからな。それにおまえだけじゃあ、護衛任務は無理だろ」 

 

「舐めんじゃねえよ」

 

 味方MTとして悪友のネマンも同行するらしい。相変わらずの減らず口だが、それも今日までかもしれねえぜ、とマースは笑う。ネマンは複雑そうな顔のままだ。

 

「G13の噂のこともある。あくまで慎重に行動しろよ」

 

「まだ噂のことを言ってるのか。あんなの迷信だよ、迷信。そんなことより飯を食べたらACを見に来いよ。アサルトライフルを新調したんだぜ、これでG13を歴史に刻んでやる」

 

「ライフル一つで相変わらずの自信ぶりだな、呆れを通り越して感心するよ」

 

「ああ、思う存分感心しとけ」

 

 マースはネマンに威張ると引き続き、自分のACについて自慢するのだった。

  

  *  *  *

 

 ルビコンの空は暗かった。曇天の空は輸送ヘリとマースに暗い影を落としている。護衛するヘリは3台。サポートするのは二脚MTが10台である。指揮はマースが取ることになっていたが、ネマンを含めMT乗りたちは総じて不満だった。

 

「マース、おまえの指揮になんか任せてたら部隊が壊滅しちまう」

 

 作戦前にネマンが深刻そうな顔で呟く。マースはそんなネマンの頭を小突きながら「指揮なんて関係ねえ、俺が全部倒すんだからな」というと、より一層ネマンの眉間に皺が寄った。ネマンにとっては調子に乗ってる悪友が何よりも不安の種だったのである。

 

 だが作戦が始まるとネマンの心配を他所に順調に進んだ。何せ機体の一つも見かけない。輸送ヘリ、マースのACクレイフィッシュ、MTを乗せた飛行ドローンは既に北西ベイエリアの近くまで迫っていた。

 

「ACが混じってるとなると解放戦線も襲ってこねえかもな」

 

 ネマンが周囲を警戒しつつも呟く。

 

「おいおい、そりゃねえぜ。折角ライフルを新しくしたんだぜ、試し撃ちもなしかよ」

 

「そりゃおまえの都合だろ、マース」

 

 ついに作戦領域終了間際になってマースもMT乗りたちも気が緩んで来ていた。

 そんなときである。

 

「南西方向から機体多数接近!ルビコン解放戦線です!」

 

 回線で誰かが叫ぶ。マースが慌てて確認すると確かにレーダーに機影が映っている。数も多い。10…20機だろうか。MTがこちらに向かってきていた。

 

「ネマンたちはヘリの護衛だ!絶対落とされるんじゃねえぞ!」

 

「おまえはどうする!?」

 

「先制して数を減らしてくる、撃ち漏らした分がお前らの取り分だ」

 

 マースはブースターをふかせると、解放戦線のMT群に突撃した。新調したアサルトライフルの調子もいい。二脚MT数台を蹂躙するように蹴散らす。

 

「…3…4…5機目! そんなもんかよ、解放戦線は!」

 

 だが調子に乗っていたマースに警告音が鳴り響く。

 どこかで狙われている…そう思った瞬間にキャノン砲が飛んできた。正確な狙撃である。ただのMTではない。一瞬でACS負荷限界にまで追い込まれる。

 

「こ、こいつは……」

 

 固い外殻に覆われた4本足の兵器がそこにはいた。ボーズ製の四脚重MT。通常の二脚MTとは比にならない運動性能、装甲を持つ。ACすら倒しうるその性能は解放戦線内で重宝されていた。

 

「なんで補給物資の襲撃にこんな奴が出てくんだよ!」

 

 マースは舌打ちする。現状、四脚MTに対応できるのはマースしかいない。マースが仕留め切れない場合は部隊が壊滅する危険性があった。他の二脚MTは後回しにするしかない。

 マースはアサルトライフルを放ち四脚MTの出方を伺った。だが、距離が離れている所為か、それとも敵機の装甲が硬い所為か、跳弾してしまい効いているようには思えない。対して敵の四脚MTは背中にでかいスナイパーキャノンを掲げている。先ほどの狙撃もこのスナイパーキャノンから放たれた一撃だ。クイックブーストで撃つタイミングを外さなければ鳥撃ちのように落とされる。こちらの有効打がない以上、このままではジリ貧だった。マースはミサイルで牽制しつつ、接近しようと画策する。

 

「装甲が硬いならブレードで貫くしかねえ!」

 

 だが距離を詰めた瞬間だ。四脚MTの右手が青白く光りだした。

 

「なっ……、コイツ!?」

 

 レーザーブレード。凶悪なまでの刀身の長さ、威力を誇る近距離用の兵器だ。マースは慌てて左手のパルスブレードで防御した。パルスとレーザーが干渉し合い、凄まじい轟音を立てる。数秒後にマースのACは吹き飛ばされた。四脚MTの方が出力は勝っているようだ。更に敵機は追撃としてショットガンを放つ。

 マースの機体が大きく振動し、確実にダメージが蓄積していることを思い知らされる。

 

「離れればスナイパーキャノン、近づけばレーザーブレードにショットガン……こいつは無敵か!? どうすりゃいい!」

 

 仕方なく中距離からアサルトライフルを放つ……が、ダメージはあまり通っていないようだ。再びスナイパーキャノンがこちらへ照準を合わせてくる。

 

「クソッ、こんなことならグレネードでも用意してくるんだった」

 

「落ち着け、マース!」

 

 打つ手が無くなりかけたときに、通信が入る。ネマンからだ。

 

「四脚MTは正面装甲は硬いが、背面の装甲は薄い。背後に回って攻撃しろ」

 

「背後に回るつったって、敵はこっちに狙いを定めているんだぞ、無理だ」

 

「俺が囮になる」

 

 マースは思わず手元が狂いそうになる。臆病者のネマンにしては随分とらしくない発言である。

 

「どうした、ネマン。お前はG13の名前すらビビる奴だったのに、いつからそんな勇ましいことを言うようになった?」

 

「うるせえな。どのみちおまえが奴を倒せなきゃ全滅なんだ。腹くくる所は間違えてねえ」

 

 ネマンはあくまで冷静だった。

 

「ヘリの護衛は?」

 

「ヘリは先に作戦領域から離脱させることにした。あと少し粘れば解放戦線も追撃できなくなる。なに、MT一機くらいこっちに割いても問題ねえよ」

 

 ネマンは堂々と答えるが、マースの身体は今まで感じたことのない緊張感を見せていた。

 

「俺のハンドロケットで注意をこちらに逸らす。その隙にお前は背後に回って、ブレードで斬りつけてくれ。チャンスは一回だ。しくじるんじゃねえぞ」

 

「……、」

 

 チャンスは一回。それで四脚MTを倒すことが出来なければ……ネマンは確実に死ぬ。

 自分の手に友の命が掛かっている。そう思うと、自然と手足が震えた。

 

「柄にもなく緊張してるんじゃねえ。いつも大口叩いてんだ、これぐらいやって見せろ、マース!」

 

 ネマンが励ましてくる。柄にもないのはどちらだ。マースは深呼吸した。

 

 ――そうだ。俺はレッドガンのG13。これくらいの事、やってのけて当然なんだ。

 

 マースは心の中で唱え、自らを奮い立たせる。

 

「誰が緊張してるって? 舐めるんじゃねえ。あんな四本足、すぐにぶった切ってやるさ」

 

「そうだ、その大口……それでこそマースだ」

 

 マースは距離が離れすぎないように、アサルトライフルで威嚇しながら四脚MTを引き付ける。ネマンが待機している地点まで敵機を引っ張り出すのだ。

 

 ネマンは小さい丘になっている地点に隠れ、様子を窺った。マースはつかず離れずで上手く敵を誘い出している。大丈夫だ、これなら上手くいく……ネマンは震える手を抑え、MTの操作に集中する。

 

「マース、こっちから合図を送るぞ……3、2、1、行くぞ!」

 

 四脚MTが射程内に入り、攻撃タイミングをネマンは指示した。

 ネマンの左手に装備されたハンドロケットが火を吹く。四脚MTは移動しているが、的はでかいため外す心配はない。この程度の的当てはレッドガンで散々訓練されていた。ネマンの放ったロケットは真っすぐに飛んでいき四脚MTの左腕に着弾する。ダメージこそ少ないが、四脚MTのバランスが少し崩れた。

 

「こっちを見ろ、デカブツ!」

 

 更にもう一発、ハンドロケットを放つと左後ろ脚に被弾する。流石に無視できなくなったのか、四脚MTが旋回を始め、スナイパーキャノンがネマンの方を向いた。撃たれれば即死である。

 

「今だッ!」

 

 ネマンが指示するより早く、マースが動く。クイックブーストで背面に回り込むと、パルスブレードを装甲に差し込んだ。ネマンが撃たれるまで時間はない。これで一気に片を付ける。

 

「うおおおおおおっ!」

 

 雄たけびを上げるマース。呼応するかのように、四脚MTから火花が上がり、内部で何かが爆発するような不快な音をたて始める。

 

 後少し――マースはミサイルとアサルトライフルも至近距離で放っていく。

 

 四脚MTの装甲が破れる音が鳴った。マースは迷わず亀裂にパルスブレードを流し込む。唸りをあげて、悶え苦しむように四脚MTはバランスを崩す。

 

「灰、かぶりて、我らあり……」

 

 回線から搭乗者の怨嗟がマースに届いた気がした。

 四脚MTは動きを止めると、爆散していく。

 

「生きてるか、ネマン」

 

「寿命は縮まったがな」

 

 ネマンの太々しい声にマースは安心する。四脚MTさえやれれば後は、ただの二脚MTだ。しかも大半は味方が片付けている。企業とただの民間人では同じ二脚MTでも練度が異なるのだ。

 このまま一気に片付けてやる、マースはそう意気込んで突撃していった。

 

  *  *  *

 

 ここまでは順調と言って良かった。後はただの後詰。マース達はそう思っていた。だが、此処はルビコン3である。敵対する勢力はルビコン解放戦線だけではなかった。

 

 何かが作戦領域に近づいていた。

 爆音に近いローター音を轟かせ、ACの何倍もある巨体が浮いている。圧倒的なまでの質量を持った怪物が、マース達の元へと迫っていた。

 

  *  *  *

 

「よし、解放戦線のMTは掃討できた。ミッション完了だな」

 

 解放戦線の残党を撃破した後、マースは息を吐き、安堵の表情を浮かべる。

 すでに輸送ヘリは戦闘領域を離脱。その後は追撃もなく、運転手から北西ベイエリアの基地に入ったとの知らせを受けた。損害はゼロといってもいい。十分な成果だった。これならG6レッドも赤子扱いをやめるだろう、マースはぼんやりと考えていた。あとは帰還するだけ……マースがそう思った瞬間である。

 

「なんだこの音は」

 

 最初に気づいたのはネマンだった。風に紛れてプロペラのような音が流れている。マースも含め、レッドガンのMT乗りたちが慌ててレーダーで探った。

 

「これは北北東方向から大型の熱源反応です!」

 

 MT乗りの一人が叫んだ。何者かは分からないが、少なくともベイラムの増援でないことは確かだ。マースとしてはすでに十分な戦果を挙げていた。これ以上の戦闘は意味がない。即時撤退を指示する。

 

「何者かは知らねえが、輸送ヘリは無事に離脱したんだ。撤退するぞ!」

 

「それが良さそうだ……!」

 

 ネマンも同意する。しかし謎の機影は速度を上げ、こちらを追跡してきた。ACだけならともかく、二脚MTのスピードでは到底逃げ切れない。ここまでMTを運んでくれた飛行ドローンも先ほどの戦闘で全て壊れてしまっていた。

 次第に距離は縮まり、機影が正体を現す。

 

「なっ⁉ サブジェクトガード……だと⁉」

 マースが思わず声を上げた。

 

 MTすら簡単に切り刻めそうな刃を回転させながらそれは空中に浮いていた。惑星封鎖機構の大型武装ヘリ。先ほどの輸送ヘリの数倍の大きさを持ち、左右の羽根にガトリングとミサイル。下部に大型の四連装ロケットを乗せた重装甲のヘリである。

 武装ヘリはしばらく旋回し、マース達の戦力を測定すると、まるで(あられ)のようにガトリングとミサイルを一斉に噴射する。レッドガンのMT達が木の葉のように散った。

 

「ぐあああああっ!」

 

 MT乗りたちの凄惨な悲鳴が回線から漏れ出す。

 マースはクレイフィッシュのブースターを全力で吹かした。

 今の掃射で5台のMTがやられてしまった。今まで共に飯を食ってきた仲間があっさりとである。マースは歯ぎしりした。

 

「ネマン! お前はMTを逃がせ! こいつの相手は俺がする!」

 

 マースは叫んだ。先ほどの四脚MTとの戦いで機体はダメージを受けているが、やるしかなかった。パルスブレードを構え、一気にブーストで近づく。

 だが、武装ヘリは冷静に対処する。狙いを一瞬で変更し、飛び出してきたマースにガトリングとミサイルの照準を付けた。

 

「な……っ」

 

 気付いたときには遅かった。

 クレイフィッシュに弾丸とミサイルの嵐が迫る。避けることは不可能。目の前が真っ白になり、クレイフィッシュの装甲が爆音を立てて削られていく。マースは必死に回避しようと操縦するが、一瞬でACS負荷限界まで陥り、動くことさえままならない。マースの額から汗が滴り落ちる。武装ヘリに容赦はなかった。敵勢力を排除するために、四連装ロケットが狙いをつける。機体はスタッガー状態のまま制御できない。マースの機体内で警告音が鳴りひびき渡る。その音はまさに死神の足音と呼ぶに相応しかった。警告音が止まった直後に爆発が起きる。

 

 マースの機体クレイフィッシュはなすすべもなく、地面へと墜落していくのだった……。

 

Check point passage

 




 ※オリジナルACの設定・オリジナルキャラクターを以下で補足します。

 G13 マース(Maas)
 AC/クレイフィッシュ (crayfish)
 右腕武器:RF-024 TURNER(アサルトライフル) → RF-025 SCUDDER(アサルトライフル)
 
・マースは前回の任務で使いづらかったライフルを新調しました。ほぼRF-024 TURNERの上位互換でクレイフィッシュは反動制御も高いため、使い勝手はまずまずいいはずです。それでもランセツ-RFといったライフルの方が強いですが……。

 ネマン(Nemunas)
 MT-E-104 BAWS BIPEDAL MT(二脚MT)
 右腕武器:マシンガン
 左腕武器:ハンドロケット

・名前は東ヨーロッパを流れるネマン川が由来。搭乗するのはボーズ製の二脚MT。本編同様強くありませんが、本編時の台詞からランク圏外のACなら相手にできるかも?
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