呪われたコールサイン・G13   作:山葵左門

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Mission3 ベイエリア離脱

G13マース!応答しろ!

北西ベイエリア周辺に惑星封鎖機構の巡回が来ているとの報告があった。

交戦は避け、今すぐそこから離脱するんだ。

ナイル副長が現在そちらへ向かっている、それまで持ちこたえて――

G13!聞こえているのか、返事をしろ!

 

  *  *  *

 

もう少し早く連絡が欲しかったぜ、レッドさんよ……。

文句を言ってやりたいが、もう出来ねえかもしれねえな。

ちくしょう、G13の伝説を俺が作る予定だったのに……ここで終わりかよ……。

 

  *  *  *

 

 マースの機体、クレイフィッシュは限界だった。惑星封鎖機構の武装ヘリの攻撃に晒され、地面に倒れ伏していた。もう操縦しても動くことはない。あとはこのACの中で死を待つだけだった。

 

呪いのコールサイン(ラッキーナンバー)G13か。噂は本当だったかもしれねえな」

 

 解放戦線を退けたかと思えば、惑星封鎖機構の巡回に出くわすとは。不運にもほどがある。つけなきゃ良かったぜ、こんなコールサイン。マースは一人愚痴っていた。

 

 あとはせめて、ネマンたちが離脱してくれるのを祈るだけか。ヘッドが壊れたことでコックピット内は真っ暗となり、周囲の状況は確認できない。強いて分かるのは、武装ヘリは依然として上空を飛んでおり、時折爆撃音を奏でているということだけだ。どうやらクレイフィッシュが沈黙したことでターゲットを二脚MTに変えたらしい。いくらレッドガン部隊でも二脚MTでは太刀打ちできないのは明白だった。狙われればあるのは死だけである。

 

「……くそっ」

 

 不甲斐ない自分に腹を立てる。武装ヘリと対峙したとき、突撃せず冷静に立ち回っていれば集中砲火など受けなくて済んだのだ。そうすればナイルの増援に間に合ったかもしれない。無造作にコックピットを殴りつけると、ハッチが開いた。衝撃を与えすぎた所為だろうか。マースは機体から降り、外へと足を踏み出す。

 

「これは……」

 

 外は地獄だった。

 二脚MT達が容赦のない四連装ロケットの爆撃に晒され、無残に焼かれて死んでいる。

 あたりには火薬の匂いと黒煙が上がっていた。此処には死しかなかった。

 

「マースッ!」

 

 だが、隙を見て一機の二脚MTがこちらへ降り立つ。ネマンの機体である。

 

「ネマンか!」

 

「マース、無事か。今助けに行く。二人で此処から離脱するぞ……!」

 

「……っ、来るなッ!」

 

 マースは大声で制止させる。武装ヘリが飛び出してきた二脚MTに気づき、狙いをネマンの機体に定めたのである。

 

「ぐ、マジかよ! こんなところで……」

 

 ネマンは唇を噛みながら機体を動かし、マースから距離をとった。これから訪れる攻撃……ミサイルとガトリングの群れからマースを遠ざけるためである。

 

「避けてくれ! ネマン!」

 

 マースは叫ぶが、二脚MTの機動力では武装ヘリからの攻撃は避けられない。マースの目の前で容赦なくミサイルの雨が降り注いだ。

 ネマンの機体はハンドロケットを武装ヘリに向かって撃とうとするが、ミサイルの攻撃で砲身が砕けてしまい、撃つことすらできない。

 何も出来ないまま佇み、集中砲火を受け……そのまま爆発四散した。

 

「うそ、だろ……?」

 

 武装ヘリは追い打ちとばかりにガトリングを放ち、少しの希望も残さず死が与えられる。ネマンは完膚なきまでに殺された。

 

「嘘だろ、ネマン……お前、あんなに生きたがってたじゃねえか……」

 

 マースの頬に涙が伝った。共に厳しい訓練を耐えてきた友が呆気なく死んでいく。戦場では死はつきもの。レッドガンには涙など似合わない。鋼の精神で任務を遂行する。そう分かってはいても、涙を流さずにはいられなかった。

 

「あんなにビビってたくせに……G13より先に死んでんじゃねえよ! 畜生が!」

 

 マースは近くの石を拾い上げると、頭上の武装ヘリに向かって投げた。届きもしない、マースが行える最大の攻撃だった。

 気が付くと、MT部隊は全滅していた。残されているのはマース一人だ。

 

「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう!!」

 

 マースは武装ヘリに向かって石を投げ続ける。

 武装ヘリはそんなマースに気づいたのか、ゆっくり旋回するとガトリングの照準をマースに合わせた。

 絶望しかなかった。そんな中、マースは石を投げ続けることしかできない。涙を流しながら死を覚悟する。

 

 だが、武装ヘリからガトリングが放たれる――まさにその瞬間だった。

 マースは目撃する。

 一羽の烏を。

 

――レイヴン。敵は封鎖機構の武装ヘリ一機みたいね。あなたの相手じゃないわ、すぐに終わらせましょう。

 

 烏は、素早く武装ヘリに近づくと、武装ヘリに何かをぶち当てた。突然の攻撃に武装ヘリはバランスを崩し、雄たけびのような轟音を上げる。

 

「違う……烏じゃない、あれはACか⁉」

 

 正体不明のAC。それが、左腕に持った凶悪な兵器を武装ヘリにぶち当てている。あれはパイルバンカー。大型の鉄杭を打ち込むことで敵を物理的に破壊する兵器だ。扱いが難しいため、現状のレッドガン部隊でも使っている者はいない。それを軽々とあのACは扱っていた。

 

 まさに、自由の鳥というべきか。

 

 クイックブーストを巧みに使いながら、背中の二連グレネードとミサイル、そして右腕のアサルトライフルを的確に当てていく。あれほど卓越したACの操縦は見たことがなかった。強いてあげるのならばミシガン総長……そのレベルの動きだ。マースからしてみれば目で追うのもやっとの有り得ない動きだった。

 戦闘は僅か一分足らずで終わった。

 武装ヘリはあちこちから火を噴きながら、黒煙を上げて沈んでいく。

 

「なんなんだ、一体……」

 

 呆然とするマース。正体不明のACがマースの方を見た。ACの赤い瞳が覗き込む。

 ACはしばらくマースを見つめた。殺されるかと用心するが、何もしてこない。すぐに踵を返し、どこかに飛び立ってしまった。

 とても企業所属には見えなかった。恐らく独立傭兵なのだろう。目的は不明だが、ひょっとすると惑星解放戦線と何か因縁があるのかもしれない。

 マースはあたりを見渡す。残ったのはMTと武装ヘリの死骸の山だけだ。

 

「これがルビコンの洗礼か……」

 

 マースは死骸の上で一人静かに佇み、友の死を追悼した。

 

 

Mission3 complete

 

 

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