呪われたコールサイン・G13   作:山葵左門

4 / 5
Mission4 ベイエリア拠点奪還

聞こえているな、G13。

前回は封鎖機構の連中にこっぴどくやられたそうだな。

貴様の減らず口も些か控えめになったと聞いている。

だが、生きて帰ったその経験を糧にするのも、腐らせるのも貴様次第だ。

レッドガンに居続けたいのなら、得たものは活かし続けろ。

 

これより作戦内容を伝達する。一字一句聞き漏らすな。

北西ベイエリアの大豊拠点が封鎖機構の連中に襲撃を受けた。

奴らの狙いは定かではないが、襲撃されて引っ込むようなうつけ者はベイラムには存在しない。北西ベイエリアを強襲し、封鎖機構のSG共をルビコンから追い払う。

今回は貴様と同じ減らず口のG5 イグアスも同行する。役立たずの減らず口同士、通じる部分もあるだろう。仲良く気を引き締めて行動しろ。

 

愉快な遠足の始まりだ!

 

  *  *  *

 

ミシガン総長直々のブリーフィングだ。

惑星封鎖機構が相手なら異存はない。

一機も残さずに打ち取ってやる。絶対に。

 

  *  *  *

 

 武装ヘリに襲撃された北西ベイエリアでは、マースただ一人がナイルによって回収された。その他に回収できたのはMT乗りたちの僅かな遺品とAC・クレイフィッシュの残骸のみ。マースにとって苦い経験となった。

 

 帰還してからというもの、しばらくマースは塞ぎ込んでいた。自分だけ生き残ってしまった不甲斐なさが後悔となり、亡くなった仲間たちの声が幻聴となってマースを責め立てる。夜も眠れない日々が続き、機体の修理が終わった後も、喪失感が胸に押し寄せていた。

 

「レッドガンは甘くない。戦っていればこういうことがあると分かっていたはずだ。赤子扱いされたくなければ、今こそ立ち上がる時だ」

 

 そんなマースだったが、暇な折を見て、G6 レッドは激励してくれた。レッドはミシガン総長のような口ぶりで罵倒するが、何だかんだ言っても面倒見が良い。心の中の重しに正面から立ち向かう気力をマースに分けてくれた。

 

 そしてマースが再びACに乗る決心をしたころ、ミシガン総長から依頼がやってくる。目標は憎き惑星封鎖機構。相手にとって不足はなかった。

 

「ネマン……待ってろ、敵は取ってやる」

 

 マースは静かに呟くのだった。

 

  *  *  *

 

「なんだ、今回は泣き虫野郎の世話かよ」

 

 作戦前の顔合わせで、G5 イグアスはマースに対して太々しく言い放つ。

 G5のイグアス。言動こそマースと同じで粗雑なところはあるがACの腕は一流。マシンガンとリニアライフルによる正確な狙撃、そしてパルスシールドによる徹底的な防御は並のACを寄せ付けない。ある種堅実ともとれる戦い方で、特にG4 ヴォルタと組んだ時は無類の強さを発揮していた。

 

「別に今は泣いてませんよ」

 

 マースは挑発的なイグアスを睨み返した。イグアスは鼻で笑う。

 

「いいか。てめえが死のうが死ぬまいが俺には関係ねえ。ミシガンの野郎はてめえの世話をしろとかほざいてやがったが、俺は俺の仕事だけして帰る。てめえの面倒はてめえでみやがれ」

 

「上等です……いや、上等だ。世話なんてこっちから願い下げだ。俺は一人でやれる」

 

 イグアスの言い方に不満を募らせ、マースは反抗的に言い返した。

 

「なんだ元気じゃねえか」

 

 イグアスはボソリと呟く。

 

「ならお互い勝手にやるとしようぜ。どうせ暇そうな任務だし、撃墜数でも競うか?」

 

 イグアスとしてはなんて事のない、一任務らしい。だが、マースにとっては重要な意味がある任務だ。

 

「必要ない。奴らは全部俺が片づけてやる」

 

 封鎖機構の連中は一匹残らずマースの手で倒すつもりだった。

 

「ケッ……、そうかよ」

 

 つまらなそうにイグアスは言い放つと、そのまま身体を翻して去っていく。マースはそんなイグアスの言動を無視し、自分のACの調整を行うためハンガーへ移動した。

 

 今回の任務に当たって、マースは出来る限り多くの敵を倒すために武装を変更した。左腕のパルスブレードはそのままに右腕はマシンガンを装備する。右肩はミサイルを取り外し、ガトリングキャノンに付け替えた。弾幕重視の戦法である。特に右肩のガトリングキャノンはレッドガン部隊が”提案”した兵器だが、最近になってようやく完成したらしい。テスト運用も兼ねて提供されており、有難く使わせてもらおうと、マースが肩武器として載せたのである。

 

「これで準備は整った。精々、楽しい遠足にしてやるよ」

 

 調整を終えたクレイフィッシュを見上げ、マースは呟くのだった。

 

  *  *  *

 

 北西ベイエリアの大豊拠点はブリーフィング通り、惑星封鎖機構に占拠されていた。近くにあるグリッドの影に隠れつつ、マースとイグアスは様子を探る。惑星封鎖機構のSG(サブジェクトガード)達が、辺りに散らばり哨戒していた。ただし、SGと言ってもネマンを殺した武装ヘリのような凶悪な機体は存在しない。二脚MTの部隊だ。十二機ほどは目視で確認できた。

 

「おい、泣き虫野郎。俺は面倒は御免だ。分かっているとは思うが……」

 

「もう敵は視認しているんだ、とっとと行かしてもらう!」

 

 惑星封鎖機構の部隊を視界に入れたマースは、イグアスの言葉を最後まで聞かず、飛び出していく。

 

「おいっ!」

 

 制止する声が聞こえたが構わず一番近い二脚MTにそのまま突撃した。

 

「コード15。侵入者を捕捉。敵はAC単機……か?」

 

 マースは右手のマシンガンと右肩のガトリングキャノンを敵に向ける。相手の二脚MTは肩部に備えたブーストユニットを使って回避しようとするが、逃しはしない。

 

 大量の弾丸が、舞った。惑星封鎖機構の二脚MTがボロボロの鉄屑になる。だが、こんなものでは気が収まらない。マースは更に撃ち続けた。

 

「所属はベイラムのレッドガン部隊と判定。迎撃を開始する」

 

 惑星封鎖機構の二脚MT達は統率のとれた動きで、飛び出してきたマースを囲み始める。イグアスは舌打ちをした。

 

「ちっ、馬鹿が。真っすぐ突っ込みやがって。あれじゃいい的だ」

 

 包囲網が完成する前にイグアスは敵の背後を取るようにして攻撃を始める。

 

「待て。二機目もいるぞ!」

 

 イグアスの出現に二脚MTは浮足立った。パズルのピースが欠けるように包囲網が崩れていく。

 マースにとっては攻撃チャンスでもあった。追撃しようと試みる。

 

「なっ……もうオーバーヒートかよ!」

 

 しかし、ガトリングキャノンはオーバーヒート。マシンガンはリロードのタイミングだ。何も撃てず棒立ちになっていると、レーザーガンが四方八方から飛んでくる。

 

「……くそがっ」

 

 マースの腕では被弾は避けられない。レーザーガンで機体が焼かれながらも、マシンガンのリロードを済ませる。クレイフィッシュの装甲は中量二脚のACとしてはやや硬いため、ある程度の無理はきく。マースは攻撃を受けながらも、マシンガンを連射した。

 

「うおおおおおっ!」

 

 例え相手の機体が壊れても関係ない。徹底的に撃つ。撃つ。撃つ。ガトリングキャノンも撃てる限り大量にばらまく。次第、二脚MT達はマースの作る弾幕に負け、次々と爆発していった。

 

「コード78、応援要請……っ!」

 

 惑星封鎖機構はたまらず増援を求め、何台かの二脚MTが加わるが関係ない。増援に来た二脚MTたちも片っ端からマースの弾丸でハチの巣にされていく。マースはとにかく撃つことだけを考えていた。あの時、ネマンを貫いたガトリングを再現するように破壊されてもなお撃ち続ける。

 

「もう終わりか⁉」

 

 気が付くと二脚MTたちは残骸に変わっていた。作戦完了……マースがそう思ったときである。

 

「コード23、現着。これより目標の排除執行を行う」

 

 新しく惑星封鎖機構の機体が一機舞い降りる。シルエットは人間に近いが、ACではない。両肩にミサイルと右手にバズーカを持っていた。

 

「まさか、LC機体か!」

 

 通常のSGでは配属されていないはずだが、封鎖機構のLC機体が投入されたようである。

 

「関係ねえ、やってやるさ」

 

 他の二脚MTは全て片付けている。交戦しても問題ないとマースは考えた。何より惑星封鎖機構の連中を一匹たりとも逃すつもりはない。マースはLC機体に向けてマシンガンを放った。

 

「ちっ、速い……!」

 

 二脚MTとは非にならない機動力である。マースのマシンガンをゆらりと交わし、大量のミサイルで迎撃してくる。なされるがまま、クレイフィッシュの装甲が削られていく。

 

「流石に食らい続けるのはまずいか!」

 

 相手の機動力が高いなら、弾幕を張って当てるしかない。マシンガンとガトリングキャノンを再度撃とうとするが……

 

「なっ!?」

 

 数十発撃った後、突然弾が出なくなる。先ほどの二脚MTとの闘いで撃ち過ぎたのだ。弾切れである。マースは舌打ちした。

 

「相手は腐っても封鎖機構だ。土着共とは勝手が違う。てめえの腕じゃ死体撃ちしている余裕はねえんだよ、馬鹿が」

 

 イグアスは弾切れしたマースを馬鹿にするように話す。しかし、マースは気にも留めずに次の手を考える。

 

「弾切れしようとまだブレードがある!」

 

 マースは左手のパルスブレードを展開し、再度突撃しようとした。当たりさえすれば勝てる、そういった安易な打算しか考えていなかった。

 

「ぐっ!?」

 

 しかし、突如背中にリニアライフルの弾丸が飛んでくる。衝撃で機体が揺さぶられる。残る惑星封鎖機構の機体はLC機体のみだ。だとすれば背中を撃ったのはただ一人しかいない。

 

「何をする、イグアス!」

 

 イグアスの射撃は正確そのものだ。誤射ではありえない。マースは突撃を止め、イグアスの方を振り返った。LC機体は突然の仲間割れに戸惑ったようで動きが鈍る。イグアスは逃さず追撃した。

 

「お前一体、どういうつもりで――」

 

「分かるか? 一発だ。俺が放った無駄弾はな。だが、てめえは一体何発無駄にした。おまけに次は機体まで無駄にするつもりか? 見ちゃいられねえんだよ、てめえの無様な戦い方は」

 

 攻撃の手を緩めず、イグアスは回線でマースを諌める。イグアスはマースの無謀な戦い方に苛立っていた。

 

「……、」

 

 マースにとってこの戦いは弔い合戦である。だが、イグアスにしてみればそれは、ただの八つ当たり以外何物でもなかった。

 

「いつまで過去の事を引きずってやがる、泣き虫野郎が。てめえがいくら撃ったところで死んだ仲間は返って来ねえんだよ。過去なんて見ている暇があるなら前を見ろ、敵を見据えやがれ。でなけりゃ作戦の邪魔だ。家ん中でいつまでも泣いていろ!」

 

 マースは唇を噛んだ。少なくとも、無意味な死体撃ちで弾切れを起こした現状、イグアスの言うことは正しいと言わざるを得ない。冷静ではなかった。イグアスは頭に血が上ったマースを止めるため、ライフルを放ったのだ。

 

「……くそっ」

 

 LC機体は攻撃の激しいイグアスを標的に変更しており、現在マースはフリーだ。一旦落ち着いて、深呼吸する。冷静に見れば、LC機体の移動は速い。マースの腕ではパルスブレードを当てることは難しいだろう。あのまま突撃していれば、殺されるのは明白だった。

 

「もう、俺に出来る事はないのか」

 

 イグアスに任せて、このまま離脱するか……マースは悩む。イグアスにあれだけ言われて、逃げ帰るのは癪でしかない。マースは諦めず、LC機体とイグアスの攻防を観察した。

 

――待てよ、イグアスの射撃は十分にLC機体にダメージを与えている。このままいけば……。

 

 一瞬だけ攻撃するチャンスが訪れることをマースは気づいた。戦況を見極め、付かず離れずの距離を保ちつつ、パルスブレードの準備をする。

 

 チャンスは想定したより早く来た。イグアスのリニアライフルが相手に当たった瞬間だ。LC機体の動きが不自然に止まった。機体のACS負荷限界、スタッガー状態である。マースは逃さず、パルスブレードで斬り込む。

 

「うおおおおおおっ!」

 

 パルスブレードの透明な輝きがLC機体を引き裂いていく。先の任務で戦った四脚MTよりは装甲は硬くない。真っ二つに斬りぬくと、LC機体は傷口から爆風があふれ出し、悶え苦しむように四散した。

 

「やった……」

 

 自分で対処できたことに喜ぶマース。イグアスは周囲を警戒した後、銃を下ろした。

 

「ケッ、泣き虫野郎に得物を取られちまったか」

 

 不満げに呟くイグアス。マースもまたイグアスに対して不満げに言い放った。

 

「もう泣いてねえよ」

 

「どうだかな」

 

 イグアスは鼻で笑う。まるで世話のかかる後輩が出来たような様子である。

 作戦完了、敵機の増援も無し。通信越しでいがみ合いながらも、マースとイグアスは二人で帰還するのだった。

 

Mission4 complete

 




※オリジナルACの装備・武装、キャラクター設定などを以下に補足します。

G13 マース(Maas)
AC/ クレイフィッシュ (crayfish)
右腕武器:RF-025 SCUDDER(アサルトライフル) → DF-MG-02 CHANG-CHEN(マシンガン)
右肩武器:BML-G1/P20MLT-04(ミサイル) → DF-GA-09 SHAO-WEI(ガトリングキャノン)

・マースが弾幕を意識して、装備変更しています。何も考えずに使用してみると、マシンガンのリロードとガトリングキャノンのオーバーヒートが同じタイミングで起きるので少し考え物です。(ちなみに右腕武器をガトリングにすると、重量オーバーでした。残念です。)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。