星達のオーケストラ~双星のセレナーデ~ 作:NiwaNiwa
音羽が西田と下校した、次の日。朝練を終えた音羽が教室に行くと、彼を迎えたのは男子面子であった。今日は1時限目から体育であった為、女子はさっさと更衣室へと向かっていたのだ。
「よ、おはよ東」
「うん、おはようみんな」
「聞いたぜ、東。お前、西田の事フったんだって?」
「フっ……!? え、僕は何もしてないよ!?」
心当たりのない音羽は、彼等の言葉に酷く慌てた様子であった。
「いやー。しかしあの西田がねぇ。あいつだって、もう5人はフってたと思うんだけどな。東が好きだったからとはな」
「でもよ。西田だって結構可愛いじゃん。何か不満があったのか?」
「だから、僕は何も……」
「はぁい、そこまでよ。音羽ちゃん、困ってるじゃない」
おどおどとしていた音羽に、助け船を差し出したのは。
「げ、西園寺」
「レディにげ、とは随分なご挨拶ね」
「レディならなんで俺達と一緒に着替えてるんだよ」
「細かい事は気にしないのよ」
「あ、美麗さん……」
音羽の数少ない同性―便宜上同性としておく―の親友。西園寺美麗だった。
「ほら、野郎連中は散った散った。ここからはコイバナなんだから、乙女のターンよ」
「僕も一応野郎だけどね」
「あら、音羽ちゃんは紳士よ♡」
「ありがと……」
「それで、どうしたのよ音羽ちゃん」
「うん、えっとね」
音羽は事の顛末、つまり昨日何があったかを事細かに話した。
「う~ん……いや、それは音羽ちゃんが悪いんじゃないかしら」
「うんうん」
「えぇ!?」
美麗はおろか、周囲の男子すら同調して頷く有様に音羽は困惑していた。
「アナタね、デート中に他の女の子の名前出しちゃダメよ」
「……あ、そうだった。すみれちゃんにも言われてたのに」
「え、アナタ平安名ちゃんともデートしたの」
「え? うん。かのんちゃんとも……」
「マジかよ!」
「東も隅に置けないなぁ」
「てか純粋に羨ましすぎる……! 澁谷さんも平安名さんも超絶美少女だし……!」
「音羽ちゃん、モテモテなのね……」
「そ、そんな! そういう風に見られるのは、みんなに失礼と言うか。デートって言ってもそれは形式上そうなったって言うか」
「なぁにが失礼なモノですか」
美麗は音羽に、デコピンをお見舞いする。
「あたっ」
「アナタね、少しは自分に向けられる好意ってモノに向き合いなさい。音羽ちゃんはLiella!のみんなが好きだし、その逆も然り。それは、あなたの中でも当然の認識でしょ?」
「う、うん……」
「だったら、その先の“好き”だってありえなくもない話でしょ?」
「そう、なのかなぁ」
「そうなの。さ、長く引き留めちゃって悪かったわね。早く着替えて、体育館向かいましょ」
「……うん」
服に手をかけながら、音羽は考える。音羽は恋愛というモノを、形式でしか考えた事がない。一般的に男女同士の、友愛以上の感情。それが、音羽の中での恋愛というモノの認識だ。無論、音羽はLiella!全員からの好意を無碍にするような人物ではない。だがしかし、それはあくまでも友情としてのラインであった。
(かのんちゃんとすみれちゃんが、僕を男として好き?)
音羽は今一度考える。音羽は過去の出来事もあってか、自分は否定される存在だと思い込んでしまう事がある。故に。
(……いやいや、そんなわけない。僕なんかの事、そんな風に思うわけない。寧ろ、そんな風に思われる事だって、かのんちゃん達はきっと嫌がるに決まっているよ)
その可能性はないと、自分の中で決定づけたのだった。
次回更新もよろしくお願いします。