疎遠になった幼馴染の距離感が最近になってとても近い気がする   作:ひざぎ

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「いいんじゃないかな」とルトは言った。珍しいというべきなのか、屋上という場所で煙草を吸っていないルトは、どこか生徒会長のような振舞いで、ポスターの件に関してを承諾してくれた。まあ、そもそも彼は生徒会長なのだが。

 

「そもそも、生徒会側もいちいち確認するのが面倒なんだよ。勝手にやってくれたまえ。怒られたその時には、俺の名前を有効活用してくれればいいさ」

 

「なんというか、先輩みたいですね」

 

「馬鹿にしているのか」

 

 彼は苦笑した。

 

「こういう立場になると、どうしても人の責任をとらなければいけなくなる。まあ、学生のうちの責任なんて大したものでもないし、なんなら大体のものは取り返しがつく。だから責任についてを俺が語るのは、なんとなく違うような気がする。でも、年上は年下の行動に責任を持たなければいけないような感じがするんだ」

 

「うわあ、生徒会長だ……」

 

「生徒会長なんだよ」

 

 俺と彼は笑った。きっと、哂うしかなかった。

 

 

 

 

 ちょっと来い、とルトに言われたので、そのまま彼の後ろについて行く。昼食をまだとっていないので、相応に時間を取られることは気持ちが良くなかったが、一応でも彼は恩人だ。恩人というか被脅迫者だ。それに逆らうのは気が引ける。

 

 階下に出て、しばらくまっすぐ歩く。通るたびにすれ違う他学年の視線を痛いほどに感じ取りながら、ルトの後ろにつく。

 

 そうして彼が連れて行った場所は──。

 

「……生徒会室って、俺に何させるつもりですか」

 

「そんなに怯えてくれるなよ。ひとつの先行投資のようなものだ」

 

 ──あまり中身を見たことがない生徒会室。移動教室の際に、閉められている戸口を何度か見たことはあるが、その中身についてはよく知らない。

 

 会議机が数台並べられて、大きな長方形を形作っている。まあ十中八九、ここで生徒会が活動をしていることを理解できたのだが、いつも屋上で煙草を吸い上げている彼が、どこか真面目に活動をしている様子を想像すると、どこかギャップを覚えて仕方がない。

 

「生徒会選挙がいつあるか知っているか?」

 

「知らないっす。俺、新入生なので」

 

 茶化すなよ、と彼は笑った。そうは言われても事実知らないので、どう答えようにもないだろうに。

 

「だいたい十月ほどだ。おおよそ半年未満くらい後の話になるけどな」

 

「はあ」

 

 そうですか、と適当な相槌を打とうとしたところで、それをかき消すように彼は言葉を続ける。

 

「俺は、お前を生徒会に引き入れようと思う」

 

「……なんで?」

 

 いや、どうしてそうなった。そうとっしか言いようがない彼の言葉には、俺も目を丸くするしかない。

 

「俺は自己犠牲を働かせる奴を信用することができる。だから、お前に決めた」

 

「エイプリルフールは先月ですけど」

 

「なら、尚更俺が本気だということも理解できるだろうに」

 

 くっくっく、と彼は笑った。

 

「というか、そもそも意味が分からないですよ。何をどうしてそうなったんですか」

 

「そうだなぁ」

 

 彼は生徒会室をぶらぶらと足を遊ばせるようにうろちょろとしながら、考える仕草をする。

 

 そのまま歩き通して、生徒会長が座りそうな、奥の方に中心として置いてある椅子に座った。座ると、あからさまに上から目線というか、上司というべきか、足を組む。偉そうな態度である。

 

「──面白そうだから?」

 

 ……どこか黒幕めいている雰囲気を感じる。

 

「そんなに難しい仕事でもないさ。適当に仕事をやっていればいいだけの簡単な役職だぞ。それでいて成績もなんかいい感じに評価される。どうだ、最高の仕事じゃないか」

 

 彼は納得させるための論材を吐き出すけれども、俺はそもそもの彼の思惑を理解することができなくて、何も返す言葉が思い浮かばない。

 

「まあ、一年目は庶務とか書記とか、そんな役職にしかならないだろうけれど、それでもいい経験にはなるし、成績が──」

 

「──だから、なんで俺なんですか」

 

 我慢できなくなって、整理をし終わっていないものの言葉を吐く。

 

 理由がほしい。理由がなければ、納得することもできそうにない。

 

 何が所以して、どうしてそんな結果を、そんな思考を辿ることになったのか。それを知らないままに俺は何かをやらされようとしている。

 

「俺は、お前が面白いやつだと思ってるんだよ」

 

 彼は、言葉を語る。

 

「お前、別に彼女に対してなんの思い入れもないだろう。それでも部活の存続に対して熱心に活動し、なんなら存続が確約している今でさえも勧誘活動を行おうとしている。

 

 もし、お前自体に思惑があったのならば、最初から勧誘活動に励めばいい。でも、お前はそうせず、俺を利用することによって、彼女の願望を果たそうとした。

 

 でも、彼女の願望はそれとは異なるところだったんだろう?」

 

 彼は、俺が手元に持っていた伊万里のポスター案を指して語り上げる。

 

「『天体観測』、いいじゃないか。確かにこれは同好会ではできない活動だ。

 

 夜に行われるそれは、きっと顧問がいなければ成立しないだろう、同好会には顧問もつかない。だからこそ彼女は俺が入っただけでは納得しなかった。それをお前は後ろめたく思ったんだろう? 勝手にな。

 

 別に、お前は同好会なら同好会でいいはずだ。昨日の昼間に語り上げたお前の言葉は、それで済む、というような言い方だったのだから、きっとそういう風に考えていたはずだ。

 

 だから、さっきの屋上の件については、どこか自己犠牲じみた感覚が拭えない。

 

 なんかそれが面白く感じるんだよな、俺」

 

 俺は、彼の言葉に反論したくなった。

 

 だが、彼の言葉に反論する材料を持てない。

 

 ──俺は、なんで伊万里に対して、ここまで行動しているのだろう。

 

 その理由を見つけることができない限りは、ルトの言葉に言い返すことはできない気がした。

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