疎遠になった幼馴染の距離感が最近になってとても近い気がする   作:ひざぎ

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 昨日の夕方よりも早い時間に来たからだろうか、そこそこに人が多く感じる。単純な明るさの違いもあるかもしれない。夕方と日中の明度の違いは、相応に人の多さを感じさせる要素につながっている。

 

「人、多いな」

 

「そうですか? いつもこんな感じだと思いますけど」

 

 彼女は、この時間にモールに来ることもあるのだろう。大したこともないというのに呟いた。

 

「よく来るのか?」

 

「別に、そういうわけではないんですけど」

 

 彼女は語る。

 

「暇になると散歩をしたくなるんです。その時に通ると、だいたいにぎやかだったりしますよ」

 

「へえ」

 

 大して興味がないから、そんな浮いた返事をする。でも、彼女はそれを気に留めずに話を続ける。

 

「ここじゃなくても、公園とか。家族連れの人がいて、なんかいいなぁ、って思うんですよね」

 

「……そうか? なんか日曜まで家族サービスをする父親の姿とか見ていると、こちらの方がげんなりする感じがあるけどな」

 

 幼少の頃、くたびれながらも俺たちの世話をしてくれた父親の姿を思い出す。

 

 俗に言うブラック企業のようなものに勤めている父は、なかなか家に帰ってくることはない。家に帰ってきても夜遅く。そのうえで日曜というたまにの休みで身体を使うことになるのだから、俺はいつも申し訳ない気持ちに晒された。

 

「……そうなんですかね。でも私はそんな風に感じます」

 

 彼女と歩みを進めて、モールの二階へと続くエスカレーターに乗る。上昇をするエスカレーターに合わせて動く視界で世界を見下ろす。一階にはそれぞれの物産が展示として売り出されている。割高だと思える値段が張り付けられており、俺は視線を挙げた。

 

 二階に昇れば、右方にはゲームセンター、左方には百円均一の店がある。

 

「とりあえず、こっちに寄ってみますか」

 

「……プレゼントが百円って、なんか申し訳がないような気がするけど」

 

「見てみるだけですよ。なんか思いついたものがあったら、他所で買うのもありだと思います」

 

 そうして彼女と店に入る。

 

 最初に見に行ったのは、さきほど料理の話をしたということで台所用品が置いてあるコーナー。

 

 よく台所で見かける調理器具が置いてはあるものの、それ以外については特に目ぼしいものはない。

 

「勝手に便利グッズとか想像していたもんだけど、なんもないな」

 

「こんなもんなんですね」

 

 そんなコメントだけを残して、次に行ったのはおもちゃコーナー。

 

 幼い頃に見たものとは異なって、遊びにあふれているグッズの数々。小学生当時にあったのなら、もらったお小遣いすべてをそれに費やしてしまいそうなほどにある模擬刀というか、プラスチックの塊、もしくはボードゲームなど。

 

「今度トランプとか楽しそうだから買っておきますね」

 

「……二人で?」

 

「……もしかしたら会長も来るかもしれませんし、さらに部員が増えたりするかもじゃないですか」

 

 ……俺には部員が増えるという想像ができない。彼女が部員を求めるのなら、それを容易く想像できるほどじゃないといけないのだろうが。

 

「増えたら何がやりたいんだ?」

 

「そうですね、大富豪とか」

 

「俺はダウトがいい」

 

「うっわ、性格悪いですね。さすが根っからの嘘つきです」

 

「……」

 

 ダウト、楽しいんだけどな。

 

 愛莉を含めたクラスの女子と修学旅行中にやったら、結構勝つことができた記憶があるから、きっと俺はダウトが得意なんだと思う。だから提案しただけなんだけれど、嘘つきと言われると、なんかやる気がなくなってくる。

 

「……傷ついてます?」

 

「……いや、全然傷ついてないです」

 

「え、あ、ご、ごめんなさい……?」

 

 疑問形で謝罪をする伊万里の姿。予想外に萎れた彼女を少し面白いと思うのは、申し訳なく感じるかもしれない。……いや、そうでもなかった。

 

 そこでトランプを一つ、あとはオセロを買い上げて、次は学習用品、事務用品のコーナーへと足を向ける。

 

「おしゃれなペンとかもらえると結構嬉しいと思いますよ」

 

「……確かに、無難なラインかもしれないな」

 

 流石に百均でペン類を買うのはどうかと思ったので、後で適切な場所で買うことを心に留めながら学習用品についてはスルーをした。

 

 

 

 

「だいたい贈るものは決まりそうですね」

 

 彼女は買ったものを学生鞄に詰め込んで、にこにことしながらそう言った。

 

「ああ。割と目的を定めるという目的なら百均も悪くない」

 

「置いてあるラインナップは強いですから。値段も安いので、冷やかしという気分にもなりませんもんね」

 

 彼女と百均をめぐり終わった後は、適当にフードコートに足を運ぶことにした。

 

 よくよく考えれば、今日は昼食をとるということをしていない。ルトに生徒会室に駆り出されて、ポスターに関して苦悩し、その勢いで屋上に昇ったもんだから、自分が空腹の中にいたことにも気づくことができなかった。

 

「俺は席を取っておくから、伊万里は適当になんか買って来いよ」

 

 俺が彼女に千円ほど渡そうとすると、彼女はいえいえ、と手をぶんぶん振ってそれを拒否しようとしてくる。

 

「自分のものは自分で買いますよ」

 

「あれだ、俺の付き合ってくれた分のお礼だから、素直に受け取ってくれ」

 

「……単純に暇だったから付き合っているだけなんですけどね」

 

 彼女はしぶしぶそれを受け取ると、どこかに歩き出す。俺は彼女の姿を見届けて、学生鞄から弁当と携帯を取り出した。

 

 携帯に新規の通知は来ていない。画面を開いて、皐から来た文言を見返す。

 

 ……ケーキ辺りも買っておこう。そこまで大きいのは買えないだろうが、せめて一切れでも買っておくのは悪くないだろう。

 

 

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